麦わらの一味の一人「一夏」   作:un

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十六話 ひと時の夏

 日本のとある孤島。

 

奪われた福音が島の中央にある隠されたラボに運び出され、革命軍の研究チームがデータの解析を行っていた。

そして、操縦者である女性。エレンが熱心に機体のデータに目を通していると一人の男が近づく。

 

 「ご苦労だったな、エレン」

 

 「!! 隊長!!」

 

「肩の力を抜いたらどうだ? それに、私にだって”ブラッド”と言う名ぐらいはある」

 

サングラスをかけた男ーーーブラッドは少し笑みを出し、彼の様子を見てエレンは口元を緩める。今回の新型ISの強奪と、ほんのわずかだが史上初の男性IS操縦者との戦闘データが採れた事で、二度の失敗に対するストレスが多少和らいでいたようだった。

 

「しかし、また黒騎士かーー奴の目的がわからない以上、今は兵力を整えつつあの計画を進める必要がある」

 

「はい」

 

エレンとブラッドは別の画面を見る。基地のどこかの部屋の映像だろうか、金属の部屋の中央に一つのカプセルが設置されており、その中には人口呼吸器等の医療機器を取り付けられ、カプセル内に流れる粒子を浴びて眠る赤毛の少年が写し出されていた。

 

「もうじき彼の調整も終わると報告がありました」

 

「うむ、そうか」 

 

画面の端には成功体「333」と表示されていた。そこで二人は次の作戦について話し合うため、部屋から出て行く。

そして、次もまた一ヶ月後にIS学園が戦場と化し、今は眠る赤毛の少年が後に秋人達に衝撃を与える。

 

 

一方。IS学園では、既に夏休みに入っており生徒はいない。外国から来た生徒などは一時帰国したりするが、青髪のこの少女は真剣にある物を見つめていた。

学園傍の海、そこで何かが建設されており、いくつもの船が作業を行っていた。

 

「学園際までには間に合いそうね」

 

手元の資料をチラリと見て、表紙には学園際特別ステージと書かれていた。が、これはあくまでも表向きであり、真の目的は別にある。

船が運ぶ機材の中には、何故か膨大な水も一緒に運ばれているのだった。

 

「ナノマシンの数も増やさないと。あぁ~~これで私の夏休みがなくなちゃったわ~~」

 

残念そうな顔をし、手に持つ扇子を広げる。そこには「残念無念」と書かれており、彼女の口元が緩む。

 

「...けど、また貴方と会えるなら、それもいいかも。ねぇ、黒騎士?」

 

まるで、楽しみを持った子共のようにわくわくさせながらその場を立ち去るーーが、彼女の幼馴染みであり、従者である虚と言う少女にすぐさま捕まり、膨大な雑務をさせられる事となった。

 

 

 

そして、一夏の弟である秋人はーー

 

秋人「せ、セシリア!! その赤いのはダメ!!」

 

セシリア「? ですが、このたこ焼きと言うのは中に赤いのが・・・」

 

鈴「それはタコの事よ!! なにタバスコ入れようとしてんのよ!!」

 

ラウラ「うむ? そういえば何故我々はたこ焼きを作る事に・・・?」

 

シャル「いや、ほら...秋人が台所の奥から見つけたからって事になって・・・」

 

箒「おい、果物なども入っているが?」 

 

突然押しかけた専用機持ちと一緒にたこ焼きパーティを行う秋人。何故かテーブルにはタコ以外のお菓子等も置かれており、もはやなんでもありだった。

秋人も昔、姉弟三人でこうやって楽しんだ事を思い出し笑ってしまう。

 

 「...」

 

そして、彼らのパーティを気づかれないように身守る千冬は、音を立てずに家を出て麻耶に電話を入れて数分後。近くのバーに二人で入るのだった。

 

「そうだったんですか...秋人君、皆と仲よくなって良かったですね~~」

 

「あぁ、そうなんだが...」

 

千冬は酒を飲み干し、一息ついてから話し始める。

 

「最近、秋人...いや、凰の奴もだが何か私に隠している気がするんだが...」

 

千冬がそれに気づいたのは、福音の奪還が失敗した時だった。最初は任務失敗で落ち込んでいたのかと思っていたのだが、時間が経つにつれ、それが別のものだと感じ始めた。

だが、いざ聞き出そうとしようとしたら、秋人の目が時々自分を見る目が、まるで他人を見ているようでそれが怖く、聞き出せないでいた。

 

(秋人、そんなに一夏を救えなかった私が、未だ憎いのか...)

 

千冬は、いつか必ず弟が心を開いてくれると信じ、グラスを一気に飲み干すのだった。

 

 

 

そして、様々な陣営から注目されている一夏は・・・

 

「「 カンパーイ!! 」」 

 

居間で束とクロエと一緒にコーラを飲むのであった。

 

「ぷはぁ~~」

 

「夏はやっぱり、炭酸だよね~~」

 

一夏が一気に飲み干し、束も美味しそうに飲む。ちなみにクロエはちびちびとコーラを口に入れる。

 

ーー事の始まりは一夏が「熱い…そうだ、コーラ飲もう!!」と軽いノリから始まり、店をいくつも渡りコーラを買い占めた。その後、一夏が「一緒に飲もう!!」と誘い、どうせならとクロエを無理やり呼んで、乾杯し始めたのだった。

 

 

「いや~~まさか、あそこで秋人のISがセカンド・シフトするなんて~~」

 

「もう!! 束さんもびっくり!! あれだね、主人公補正って奴だね~~」

 

「...」

 

何故か酔ったようにテンションが高い二人を呆れたように見つめるクロエ。そして、コーラを主体とした夜の飲み会? は次第に一夏の冒険の話しとなっていた。

 

「そうなんですよ~~もう、船大工がですよ? 全裸でポーズ決めて、かっこいいセリフ言って...」

 

「しかも、魚人島に入ってすぐに俺逮捕されて...」

 

「敵の本拠地入ってすぐにおもちゃにされて災難でしたよ...」

 

既に何十本もの瓶を飲み干し、束も一夏の話しを真剣に聞き、クロエも夢中になっていた。やがて、話しが船長の一夏を助けてくれた人の最後の話しになり、一夏は涙を浮かべる。

 

「あの人...最後まで、本当に自由気ままで...俺もあの人みたいに生きて見たいと本当に思ったんだ...」

 

そこで、一夏が目を閉じ眠り…束は彼を起こさないように傍で一緒に眠って、クロエが布団を持ち二人にかける。

 

「ありがとね?」

 

「このくらい、大した事では。ところで、束様。束様は、一夏様の事を...」

 

「うん、好きだよ...大好きだよ...」

 

そこで、二人は数秒見つめあい、クロエが少し笑みを浮かべ「分かりました」と言い部屋を出る。そしてクロエが出て行ったドアを見つめ「ごめんね」と短く呟くのであったーー 

 

 

 やがて、夏が過ぎ季節は秋ーー

 

 学園際で再び、彼らは出会うのだったーー    

 

 

  


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