シグナムとシャマルのお腹が大きくなり、そろそろ出産予定日が近づいた頃。とある建物の屋上から1人の男性がシグナム達が通院している病院の周囲を見渡していた。
???
「……この世界の、この付近にまだいるとは……狙いは大方わかってるけど、呆れるな」
男性の名はドラル・バーソイル。かつて神であった身で、バッドエンドを避ける為様々な平行世界を移動している。その活動はバッドエンドや全てのクズ転生者がいなくならない限り終わらない。……物凄い苦労人だと作者は思う。
ドラル
「ま、こっちとしても好きでやってるんでね。誰もが幸せな結末を迎えればいいのさ」
地の文にツッコむとは、きさま! 見ているな!?
ドラル
「コイツの反応だとこっちを指し示しているが……ん?」
スルーされた……まあいいや。
察知した反応が向かう先を見て、ドラルはあることに気づいた。
ドラル
「病院……やはり、他の患者ごとか!?」
これから起こり得る可能性に確信を持つと同時に戦慄し、ドラルは目的地に向かう為大きく跳躍した。
???
「クソッ……! 何であんな男がリインフォース達にモテるんだ!? 俺の方が何倍もイケメンの筈なのに!!」
ドラル
(彼か……)
ターゲットの、転生者である少年―――名を
ガイア
「アイツとの間に産まれる子供は早く殺さないとな……でなけりゃ、俺の子供を産んでもらえないし……クククッ!」
ドラル
(女性にとって、好きな人との赤ちゃんはどんな物にも勝る宝物なのに、ましてや関係ない人達ごと殺めようなど……断じてさせない!)
強い怒りを胸に抱き、ドラルは物陰から飛び出ると同時にARX7-アーバレストの対戦車ダガーを背後から投げつけた。だが……
ガイア
「っ! そこかぁっ!」
気配を察知したガイアは、何と片手でダガーを叩き落とした。小型化されてはいるが戦車を易々と破壊できる威力を持つ対戦車ダガーを生身で防御したことには、さすがのドラルも目を丸くした。
ドラル
「対戦車ダガーを片手で……身体強化の類いか?」
ガイア
「お前が何者かは知らないが、俺を襲ったということは転生者の1人なんだろうな……この武器、アーバレストのだしな!」
ドラル
「(残念だけど、違うんだよね……でも思った以上に、洞察能力も高いな)本来なら一撃で仕留める筈だったんだけど、余計なことをしてくれて……」
身体能力もさることながら、彼の状況判断能力が高いことに感心しつつ呆れる。
ガイア
「ふん。ところで、俺を攻撃してきたのは俺の目的を知っているからか?」
ドラル
「……だとしたらどうする?」
ガイア
「また命を狙われたら困るからな。ここで潰させてもらうっ!!」
敵意をむき出しにし、ズボンのポケットから掌サイズのクリスタル状の物体を持ち真上に掲げ―――
ガイア
「テック、セッタァァァァァァアアアアアアアアアアア!!」
―――その言葉を叫んだ。
体の表面に強固な外殻が形成され、続いてアーマーやバーニア等強力な装備が組み込まれていく。
ランス
「テッカマァァァァァァン! ラァァァァァンスッ!!」
自身の名前を盛大に叫び、ガイアは変身形態―――テッカマンランスになった。
ドラル
「そうか、君の能力はテッカマン系列のものか。道理で生身で攻撃を防げる訳だ」
ランス
「ご名答。ではテッカマンの外装はテッカマンの武器以外で傷付かないことも知っているな? フフフ……さあ、どうする?」
テックランサーを肩に担ぎ、挑発するような口調で言った。が、対するドラルは何の迷いも動揺も見せていない。
ドラル
「そうだな……生身じゃちょっとハンデがあるから、これを使わせてもらうぜ」
ドラルは右手首に装着してあるモーフィンブレスに酷似したブレスを構え、モニター部に『G6』と入力した。
ドラル
「変身」
『システム
入力後、ブレスの『Change』スイッチを押すと音声と共にドラルの服装が一度全身が白で統一されたスーツに変化する。そして転送されて来た赤いアーマーが装着され、頭部も完全にマスクで覆われた。
この姿が、ドラルの技術(と趣味)の結晶である、仮面ライダーG6だ(より詳しい設定は銅鑼さんの小説に載っているから、そちらでチェックだ!)。
ランス
「仮面ライダー? それもオリジナル……特典か、もしくは自作といったところか」
G6
(凄いな、後者は大正解だ)
再び感心しつつ、右手に専用ブレードGB-09スキュラ(形状はオーガンランサー連結状態)を持ち、ランスにゆっくりと、しかし一歩一歩確実に近づいていく。
ランス
「だけど無駄だな。いくらオリジナルライダーに変身できたとしても、テッカマンの装甲の前には「うるさいな」ごはっ!?」
腹部に走った激痛にランスは体をくの字に曲げ、自分の腹を見る。そこには、G6がスキュラで腹を切り裂いていた。
ランス
「がっ、は……!? な、何故だ!? 何故テッカマンである俺にダメージを!?」
よろめいて後退しながら、G6に問いかける。
G6
「悪いね。こんなこともあろうかと、対テッカマン用にチューンしてあるんだよ」
G6の各種能力と武装はドラルによって大幅に強化されており、そのスペックは凄まじい。何せ、ハイパーデュートリオンエンジンを搭載してる程なのだから(これ以外にも色んな技術が使われているが、銅鑼さんの方に詳しく書いてあるので割合する)。
G6
「それじゃ、手早く決めさせてもらおうか」
スキュラに着いた血を払い、再度接近していく。
ランス
「や…やめろ! 来るなァァァァァァァアアアアアアアアアアア!!」
恐怖に駆られ、テックランサーを投擲するがスキュラで防がれ、触れたところから崩壊していった。
ランス
「う、嘘だろ!? ……! こうなったらァァァァァ!」
G6
「? ……っ! 何!?」
突如として向きを変え、クラッシュイントルードで加速したランスを目で追うと、病院から、勤務を終えた医師らしき女性―――石田幸恵がこちらに向かって歩いていた。
この道は人気こそ少ないが、彼女の家へ通じる帰路であり、いつもここを通って通勤をしているのである。
幸恵
「はぁ…シグナムさんもシャマルさんも、幸せで羨ましいなぁ……私も、好きな人ができたら毎日がもっと楽しく「おい、女ァ!」へ!? きゃあああ!?」
ランスはここで戦闘が起きているなど知らない彼女に接近すると、左腕で首を絞めるように抱き寄せ、G6を睨み付けた。
ランス
「動くな! 動けばコイツの命はないぞ!!」
G6
「貴様…!」
幸恵
「え? え? な、何? 何なの!?」
自分の身に起きたことを把握しきれず、混乱状態になる幸恵。
ランス
「黙れ女! でなければ、こうするぞ!」
右肩部からテックレーザーを放ち、付近のコンクリート壁を破壊する。それだけでも幸恵にとっては自分の状況下を理解させるに十分であった。
幸恵
「ひっ…!(こ、殺される!)」
G6
「彼女は無関係だ! 解放しろ!」
ランス
「なら武装を捨ててこちらに来い! そうすれば女を離そう!」
G6
「(クッ、まさかこんなことに発展するなんて……!)わかった……言うとおりにしよう」
スキュラを離し、慎重にランスへと近づく。途中で何度か右手を握り、スキュラを確認するがランスは気にも止めなかった。やがて、ある程度近づくとランスは「止まれ!」と命じた。
G6
「……次はどうしたらいい?」
ランス
「……いや、もう十分だ。人質を解放しよう」
一瞬何か考えた後、ランスは幸恵を乱暴にG6へと突き飛ばした。
幸恵
「きゃっ!」
G6
「っと、大丈夫か?」
幸恵
「は、はい―――」
ランス
「今だ! 食らえぇええええ! ボルテッカァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアア!!」
幸恵を受け止め、G6が安全を確認した直後、トサカを盛り上げたランスは首元のボルテッカ発射口から、近距離でボルテッカを放った。G6も幸恵も、反物質エネルギーの波に飲まれた。
ランス
「フッ…いくら対テッカマン用に調整したといえど、この至近距離からのボルテッカではひとたまりも……」
勝ち誇った様子で言葉を並べるランスだが、次の光景を見て逆に戦慄することになった。
G6
「…………」
ランス
「な、何!? まさか!?」
何とG6は背後に幸恵を庇う様に防御姿勢で立っており、しかも無傷だった!
実は、G6は右手のワイヤーでスキュラを回収した後、それに搭載されている小型のベクトル操作装置(今回は『受け流す』に設定した)で自身と幸恵を守ったのだ。
G6
「騙し討ちで、それも民間人ごと……こうされた以上、こっちも遠慮しなくてもいいよな?」
ランス
「な、何を言って……」
G6
「アーマー展開……!!」
『
スキュラを仕舞い、音声入力をすると両肩と胸部の装甲が展開し、その中にある丸い物体にエネルギーが収束されていき余波で周囲の景色が歪んで見える。それを見たランスは、何が起きるのかを速攻で理解した。
ランス
「や、やめろ……やめろぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」
G6
「ぐ、ううぅぅぅ……! ボルテッカァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
凄まじい叫びと共に各発射口から必殺武器、『ボルテッカ改』が放たれた。
ランス
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああ!!」
ランスは悲鳴を叫びながらG6のボルテッカ改に飲まれた。ボルテッカ改は通常のボルテッカより威力が高められており、例えテッカマンの装甲でも耐えきることは不可能だ。
死ぬことはなかったものの、ランスは変身が解除、システムボックスが破損した状態となり前のめりに倒れ気絶した。
G6
「ふむ……出力を最大にするのは止めておいて正解だったな。肉体どころかDNAの一片まで完全消滅しかねん……」
ふぅ、とため息をつき変身を解除すると、ガイアを担ぎ上げる。
ドラル
「さて、と……」
担いだ後、ドラルはふと自分の後ろを見た。そこでは、幸恵が気絶して倒れていた。死の恐怖とボルテッカの撃ち合いは刺激が強すぎたのだろう。
ドラル
「……こうなったのは俺にも責任があるし、せめて家までは送っていくか」
申し訳なさそうに幸恵を見つめると、ガイアをワイヤーで雁字搦めにして猿ぐつわを噛ませ、発生させた灰色のオーロラの中に放り込み、幸恵をそっと抱き上げた。
ドラル
「住所検索」
『
ブレスで住所を調べると、ドラルはゆっくりと歩いていった。