どことなく引っ込んでた部分があるので、ハードに暴力を……。
不愉快な気分になるお方もおるでしょうが、ご了承ください。
翌日、俺は
早朝ということもあり、開いている店は僅かだが、仕方ない。
そう考えていると、後頭部に鈍い痛みが走る。
「よう、黒髪、またあったな?」
振り向き様に鼻っ面に拳が炸裂する。無様に吹き飛ぶ。
がっしりとした体つきの男が二名。ここらじゃもはや定番となったゴロツキことジョニーとケビン兄弟だ。兄弟だから、というべきか、髪の毛の色やら顔つき、さらには言動までもがそっくりだ。
痛みに悶える俺の胸ぐらを掴み、同じ高さまで持ち上げる。首がしまり、息が出来ない。ばたばたと暴れると、鳩尾に痛みが。
「ぐぅっ!」
「はっ、わざわざ殺られにくるとは、お前らマゾヒストってやつか? ああ?」
右の頬が熱くなった。次は左だと言わんばかりに拳を高らかに振り上げる。
鈍い音を響かせながら、地面に放物線を描きながら倒れ伏す。
「ははぁっ! アニキ、温いぜ」
海老のように丸まった背中に、助走をつけたであろう蹴りを放つ。
「ーー!!」
肺の中の息が強制的に放出される。体中を駆け巡る熱に耐え、ゆっくりと立ち上がる。足はがくがくと震え、鼻からはおびただしい量の血が溢れ出す。
ふらふらと覚束ないステップの最中にもう一度鼻っ面に拳が炸裂した。
「うわ、黒髪の血が付いちまったぜ」
「速く洗わなきゃ汚れちまうなぁ! ヒャッヒャヒャ!」
大の字になった腹に足を置き、テンポ良く踏みつける。酸素が吐き出され、目の前が霞む。
「あ、コイツ死ぬんじゃね?」
「死んだら死んだでガルド帝国の残党狩りでボーナス貰えるかもだぜ」
ケタケタと笑い、蹴られ、殴られ、ささくれの多い壁に押し当てられる。
ぼやけた目で見ても分かる、侮蔑と嘲りの視線。行き交う大人や子供、さらには老婆ですらその視線を向けてくる。
ああ、クソが。俺はまともに生きることすらできないのか。
血を流しすぎたのだろうか、手足の感覚が無くなるのをきっかけに、俺の意識は闇に沈んだ。
◇◇
扇状に広がる銀髪を眺めながら、ゆっくりと少女は立ち上がる。人形のような顔には一切の表情がない。
肉でできた廊下、骨でできた壁。天井には細い糸に繋がった丸い球がぶら下がっている。
異形の世界に通常の体を持った少女が歩く。まるで歓喜するかのように肉が震える。
「落ちた鳥が一匹、うまいのかまずいのか」
しわがれた所々聞き取りにくい声。おおよそ少女の小さな体躯からでは想像も出来ないぐらいに声だけが老け込んでいる。
◇◇
目の前で、ふらふらと危なっかしげに木刀を振るう少年が、少女に話しかけていた。
「なんでみぃちゃんは強いの?」
「強い?おとーさんの方が強いよ」
赤い髪の少女はくすくすと笑う。笑われたのが癪なのか、少年は真っ赤になりながら言い返す。
「それなら、お師匠さまも強いじゃん」
ひらひらと桜が目の前を舞い落ち、少年は素振りをやめ、しばしそれを見つめる。庭の桜が散ったのか、そう思い至った。
すると、縁側からじゃりじゃりと小石を踏んづけながら白髪の老人があらわれ、少年の頭に拳骨を落とす。うずくまる少年に指を差し、けらけらと笑う少女にも拳骨を落とし、老人は縁側へと戻って行った。
「お師匠さまは怖いね」
「だね」
目尻に涙を浮かべ、何がおかしいのか二人で声を上げて笑う。
黒髪の少年は、もう一度木刀を持ち上げ、振り下ろした。
図書館に通う毎日になりそうだ……。ハードだぜぇ