春秋の恥さらしネタ帳   作:春秋

34 / 36
理想を示す戦い(Fate)

 

 

 だが、この身は不忠者だ。

 いくら奸計に嵌められた上の事とはいえ、主の武具を無断で拝借し。いくら魔女に幻惑された上の事とはいえ、装いが違っただけで主と見抜けず。あまつさえ、刃を向けるなど。

 ランスロット卿のように。モードレット卿のように。これが自らの意思と覚悟を以って成したのならば納得もしよう。王に仕える身で賞賛も肯定もできないが、しかしその意思を尊重はしよう。きっと、王がそうであったように。

 しかし違うのだ。

 自分はそんな決意などなかった。

 頼まれたから引き受けただけ。魔女の奸計に弄ばれ、アーサー王の騎士たらんとしてアーサー王に斬りかかるなど、笑い話にもならない道化の所業だ。いや、笑顔になど誰もならないのだから道化以下。

 そんな浅薄な行動の結果が王と彼女の関係を決定的なものにしてしまった。

 互いに憎しみを募らせるような結末を招いてしまった。

 いや、我が王は憎んではいなかったのかな。ただ、こんな浅はかで愚かな騎士の敵討ちにと、そんな心持でいたのかもしれない。自惚れにも程があると言われても仕方がないが、なんとなくそう思った。

 だから、こんな不幸を呼ぶだけの半端な男は、また何を成す事もなく終わるのだろう。と、そう考え――

 

――――――――――――――――――――

 

――――――――――――――――――――

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

『是は、己より強大な者との戦いである』

 

――――声が、聞こえた。

 ハッとして振り返ると、見えたのは細くも芯の通った背中。

 知っている。その男の顔を。その騎士の浮かべる穏やかな笑顔を。

 彼が何故ここへ。いや違う、そもそもここは何処なのだ。

 

 

 

『是は、真実のための戦いである』

 

――――声が聞こえた。

 そこにあったのは硬い背中。

 硬く引き締まったその肉体と、その生き様と、眉間に寄った(しわ)までありありと思い出せる。

 発せられる声は重苦しく、口にされる言葉には苦悩と決断が滲み出ていた。

 

 

 

『是は、人道に背かぬ戦いである』

 

――――声が聞こえる。

 そうだ、彼らは円卓の騎士。

 我が王に、我らが騎士王に仕える同胞たち。

 彼ら円卓はここに集い、その目的を果たさんとしている。

 

 

 

『是は、生きるための戦いである』

 

――――声が聞こえる。

 鼓膜を震わせる音が何を意味しているのか。

 それを理解し、だからこそ理解に苦しむ。いや、戸惑うのだ。

 自分にはその資格がない。踏み出す勇気も、背負う気概も欠けている。だというのに。

 

 

 

『是は、精霊との戦いではない』

 

――――声が聞こえる。

 これは円卓議決だ。主従ではあれど上下はない騎士たちの、承認採決。

 人が担うにはあまりに強大な星の息吹。在りし日のアーサー王が振るった大いなる奇跡。

 それを振りかざすべきかの決議を取っている。

 

 

 

――――即ち、聖剣を振るうに足る事態か否かを。

 

 

 

 何故、何故だ。

 こんな愚かな男に王の宝物を持たせる事だけでも大罪だろうに、何故それを振るう事を承認するのだッ!

 馬鹿なことを言うな円卓の騎士たちよ。この聖剣は騎士王の掲げる理想そのものではないか。俺のような不忠に奇跡(ヒカリ)を灯させるなど、そんなことはあってはならない裏切りだろうッ!

 

 

 

『是は、私欲なき戦いである』

 

――――その声は、一層重く胸に圧し掛かる。

 君が、それを言うのか、サーギャラハッド。

 私欲なき戦いだと。王に詫び、卿らに詫び、そんな我が侭で子供じみた願望のために戦っていた俺を、君はそう言うのか。

 違う、と。否定――できるはずがない。

 他ならぬ彼の言葉を。世界で最も偉大なる、穢れの無い、聖杯の騎士の言葉を。

 それを否定することは、人の善性を否定することになる。

 自分には、出来ない。半端で未熟な俺に、そんなことは。

 

 

 

十三拘束解放(シール・サーティーン)――円卓議決開始(ディシジョン・スタート)

 

――――その声が、聞こえた。

 

 

 

「……え?」

 

――声が聞こえた。

 聞き違えるはずがない/忘れるはずがない。

 

 

――甲冑の足音が響いた。

 罪悪感に身が竦む/高揚感で身が震える。

 

 

――その背中を見た。

 ああ、貴方まで/貴方こそ。

 

 

――――……はい。不肖の身ながら、御身の威光を借り受けさせて頂きます。

 なにも。なにも/言わなかった(言われなかった)

 かの方はただ/前のみを見続けて(背を向け続け)

 それでも、/笑っていたのだと思う(許してくれたのだと思う)

 

 ああ――ならば、我が生涯に憂いはなく。

 この身は貴方の威光に照らされていよう、燃え尽きようとも。

 

『承認――べディヴィエール、アグラヴェイン、ガヘリス、ケイ、ランスロット、ギャラハッド』

 

 卿らの意思に、俺もまた賛同する。

 これなるは星の息吹、輝ける命の奔流、理想なりし王の威光。

 

「我が名はアコロン! この光輝薄れぬ限り我が前に敵はなく、我が忠誠不滅たる限り王の威光に陰りはないッ!」

 

 何故ならば、王の掲げし理想は我ら円卓の胸に宿っているのだから。

 

「是は、理想(キセキ)を示す戦いである。その奇跡(しんじつ)を心に焼き付けろ。『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』ァァァァァァアアアアアアアア――――ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

【クラス】セイバー

【真名】アコロン

【マスター】――

【性別】男性

【属性】秩序・善

【ステータス】筋力B 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運C 宝具A++

 

【クラス別能力】

対魔力:C

魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。

Cランクでは、魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

 

騎乗:C

乗り物を乗りこなす能力。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。

Cランクでは正しい調教、調整がなされたものであれば万全に乗りこなせ、野獣ランクの獣は乗りこなすことが出来ない。

 

【保有スキル】

戦闘続行:A

名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。

これは『全て遠き理想郷』の加護によって騎士王を圧倒した逸話によるものであり、宝具を失えば消滅する。

 

心眼(真):C

修行・鍛錬によって培った洞察力。

窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

 

気配遮断:C

自身の気配を消すスキル。隠密行動に適している。

完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

アーサー王との闘いで互いに正体を看破できなかった逸話から得た、本人にとっては不名誉なスキル。

 

騎士王の赦免

陰謀によって忠義を立てた主に刃を向け、それを許された騎士の本懐。

人の欲望の行き着く先、運命とは斯くも残酷なものであるが、しかし。その結末には一握りの幸福が待っている。

 

【宝具】

『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』

ランク:A~A++ 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人

モルガンの策略によってアーサーと戦わされた逸話から所持している、正真正銘の星の聖剣。

ただし名剣としての切れ味がいくら凄まじくとも、本来の担い手ではない故に真価を発揮できない。

円卓決議による十三拘束の解放が成されて初めてその刃に光が灯るのだが、

円卓過半数の賛同という条件と本人の心情から令呪で強制されても発動は叶わないと言っていい。

 

『全て遠き理想郷(アヴァロン)』

ランク:EX 種別:結界宝具 レンジ:― 最大捕捉:1人

所有者に癒しの加護を齎す聖剣の鞘。

本来の担い手ではない故に絶対防御の力は発揮できないが、

それでも不老不死を与えるという恩恵は測り知れない。

 

 

 





という訳で、プロトセイバーFGO実装から思い至った設定でちょろちょろっと書いてみました。モルガンの愛人、アコロン卿です。詳しい状況とか相変わらず不明の状態だけど、ステータスと描きたいシーン書いたからひと満足。主役は本人じゃないけど宝具が主演なのでアーサー王きてくださいお願いします。初課金から一、二か月だというのにえっちゃんで盛大に爆死したのは苦い思い出。書けば出る、これに賭けるしかねぇ。
でもいつも思うんだけどプロト時空でランスロットって畜生じゃね? いや、Fate本編がTSしてるだけで元ネタそのままなんだけど。

よし、寝よう。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。