春秋の恥さらしネタ帳   作:春秋

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メンテ入る前に呼符三枚残ってるの使うか

ん、なんだこのエフェクト?

ア ル テ ラ さ ん が 来 た!!

十連でアルトリアとかすまないさんとか来てくれるのも嬉しいんだけど、セイバー率高すぎない? ってことで、槍きよひーとか玉藻とか来なかった腹いせに書いてみました。
ところでうちにもジャックちゃんまだー?



こんなフェイトゼロが書きたい。の続き

 

 

 暗がりの中、屋内にテレビの音声が流れている。

 光源と言えるのは唯一それくらいのもので、現代家屋にあって電灯すら付けていない。

 そんな状態で陽気な声を上げているのは赤毛の青年。古びた本を片手に持って、足の指で描くのは血の魔方陣。

 

閉じよ(みったせ~)、みったせー、みったして、みったせー。繰り返すつどに4度、あれ、5度? ええと、ただ満たせる時を破却する、だよなあ。みったせー、みったせー、みったして、みったして、みったせと。はい今度こそ5度ね。オーケイ。ん?」

 

――これまで起こった3件の殺害現場すべてに、被害者の血で描かれた魔方陣と思われる謎の図柄が残されていたことが……

 

 ニュースキャスターが読み上げた内容は、まさに今のこの場を表していた。

 そう。彼はこの家の住人ではない。本来の住人を惨殺し、その血で陣を描いている件の連続殺人犯であった。

 

「ちょっと羽目をはずし過ぎちゃったかもな」

 

――描かれた魔方陣がいったい何を意味するものなのか。本日は、犯罪心理にお詳しい教授……

 

 青年、雨生龍之介はそこで電源を切った。

 向き直った彼の視線の先には、猿轡(さるぐつわ)を噛まされ手足を拘束された女性が横たわっていた。

 

「悪魔って本当にいると思う、お姉さん? 新聞や雑誌だとさ、よく俺のこと悪魔呼ばわりしたりするんだよね。でもそれってもし本物の悪魔がいたりしたら、ちょっとばかり失礼な話だよね。そこんとこスッキリしなくてさあ。チワッス、雨生龍之介は悪魔であります。なんて名乗っちゃっていいもんかどうか、そしたらこんなもの見つけちゃってさ」

 

 怯える女性の前にパラパラと見せびらかすのは、先程から手にしていた古本。

 時代を感じさせるそれは、何十年前のものなのだろうか。龍之介は朗々と語り続ける。

 

「うちの土蔵にあった古文書? みたいなやつなんだけどさ。どうもうちのご先祖様、悪魔を呼び出す研究をしてたみたいなんだよね。そしたらさ、本物の悪魔がいるのか確かめるしかないじゃん? でもね、万が一本当に悪魔とかが出てきちゃったらさ、なんも準備もなくて茶飲み話だけってのも間抜けな話じゃん? だからねお姉さん、もし悪魔さんがお出まししたら――一つ殺されてみてくれない?」

「ん、んん――ッ! んぅ――ッ!!」

 

 女性は狂乱していた。

 実家に帰宅した彼女は父母の死体と顔を合わせ、その一瞬の隙を殺人鬼に捕獲された。もはや恐怖や混乱などといった感情を逸脱している。これは狂気だ。しかし、そんな状態でさえまだ上がある。

 未知だ。人は未知を何より恐れ、故にすべてを既知に変えて来た。神の怒りは自然現象であると解明し、電力により夜の闇を追い払った。

 だがこれはどうだろう。死は恐怖であり苦痛だ。しかし、そこは多少なりとも想像ができる。理解が及ぶ。死は確かに恐ろしいが、苦痛は忌避すべきものであるが、それは生物としてある種の達観があるものだ。

 対して、この男はどうだろう。分からない。解らない。雨生龍之介という男が何を言っているのか、何を考えているのか。何をしようとしているのか(・・・・・・・・・・・・)がまるでわからないのだ。

 狂気。狂乱。恐慌。狂おしいほどの感情の爆発で、彼女の意識は今にも崩れそうであった。

 

「はははハハハハハハハッ! 悪魔に殺されるのってどんなだろうね! 貴重な体験だ、あ、痛っ、何だこれ?」

 

 と、殺人鬼(あくま)の笑い声に戸惑いが混じった。

 龍之介は唐突に訪れた痛みに困惑し、己の右手を確かめる。

 手の甲に現れたのは妖しく輝く赤の刻印。それは令呪と呼ばれる魔術刻印。本人も知らずして、彼は聖杯戦争の参加者となった。

 もしも雨生龍之介が用意した贄が幼い少年ではなかったら。堕胎を経験した女性(・・・・・・・・・)であったのなら、或いはこうなっていたかもしれない。

 光を放つ方陣より魔力の奔流が吹き溢れ、英霊の座より招かれし魂が降臨する。

 

「くえすちょん――わたしたちを招いたのは、あなた?」

 

 蒼氷(アイスブルー)の瞳に射貫かれ、龍之介は暫し茫然と立ち尽くしていた。

 

「俺、雨生龍之介。職業フリーター。趣味は人殺し全般。子供とか若い女とか好きです」

「わたしたち、ジャック・ザ・リッパー。おしごとはアヴェンジャー、おかあさんのお腹にかえるのが夢なの」

 

 自己紹介には自己紹介を。

 礼儀正しいジャックの挨拶に気を良くした龍之介は、少女の形をした何かへ問いかけた。

 

「君っていま、そこの魔方陣から出て来たよね。ってことは悪魔なのかい?」

「あくま? ちがうよ、わたしたちは英霊。復讐者(アヴェンジャー)のサーヴァント」

 

 英霊。アヴェンジャー。サーヴァント。

 どれも魔術師ですらない龍之介には理解できない言葉であったが、とりあえず少女が悪魔ではなかったらしいというのは分かった。ならばいったい何なのだろうか。

 思考を纏めていると、今度は彼の方が問いかけられる。

 

「あなたはわたしたちのおかあさん(マスター)?」

「ん? お母さんっていうのは違うなあ」

「違うの……?」

 

 両者ともに、致命的なまでに噛み合っていない。

 早くも破綻が見えて来た殺人鬼コンビは、獲物のうめき声によって致命的な決裂を免れることとなる。

 

「ん――ッ! んー、ん――ッ!」

 

 二人そろって目を向けると、女性は血走った眼でもがいていた。手足の拘束を外そうとしているのだろうか。その思考は既に崩れ落ち、周りの状況などまるで目に入っていない。

 そんな様ではあったが、龍之介は彼女を生かして捕らえた理由を思い出した。

 

「あー、そう言えば悪魔さんにプレゼントしようとしてたんだったな。でも出て来たのは悪魔じゃなかったし……君、あの人殺す?」

 

 まるで友人に飲み物を分け与えるかのような気軽さで話しかける。この状況にあって不快感すら覚える精神性だが、残念ながらこの場にまともな人間はいなかった。

 何故ならば、少女もまた稀代の殺人鬼であるからして。

 そしてアヴェンジャーのサーヴァント、ジャック・ザ・リッパーは愚かではない。仮にも英霊という存在である、むしろ並の人間を凌駕する知性を持っていた。

 故に彼女は思考する。令呪との繋がりを感じる事から、自分に話し掛けている青年が召喚者であるのは事実。しかし魔力の流れの乏しさから、魔術師ではないことも分かる。

 ジャックは聖杯が欲しい。だからこそこの戦争に参加している。彼女は持てる知略を駆使し、とりあえず魔力を補充するべきだと結論付けた。

 

「うん、殺すよ」

 

 言うが早いか両手に持ったナイフで獲物を仕留める。

 大雑把かつ大胆に、それでいて狙いは的確に、血が吹き散るより先に心臓を抉りだした。

 そのまま口を付けて血を啜る。吸血、吸精。そして吸魂。魂喰い(ソウルイーター)という邪道も邪道。真正の英霊ならば決してしない憎むべき外法だが、反英雄にして殺人鬼たる彼女にそんな理屈は意味を成さない。

 そして彼女のマスターたる彼も、人の道にいない殺人鬼。猟奇的な少女の姿を、感嘆すら覚えて魅入っていた。

 

COOOOOOOOOOOOOOL(クゥーーーーーーーーーールッッ)! 超COOLだよアンタッ!!」

 

 血を、命を取り込んでいる。血を啜る幼き死神の姿の、なんと退廃的で美しいことか。彼はかつてない感動を覚えていた。

 雨生龍之介は快楽殺人者ではあるが、殺人そのものに快楽を見出しているのではない。命を玩ぶ外道だが、死を軽んじている訳ではない。

 

 そう、死だ。

 彼は死を知りたかった。

 ()の意味を知りたかったのだ。

 そこに理由はない。原因も、因果もない。ただ知りたかった。

 それは生まれながらの起源覚醒者。卵の殻にヒビが入った程度だったそれが、ここに穴が開いて中身が見えようとしている。

 

「ジャック。ジャック・ザ・リッパー! これは恋だ。きっと恋だよ! 俺に君の殺しを見せてくれ! もっと、もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと! 俺は君のお母さんじゃないけど、それでも君を愛してる! 悪魔だって? ああ違うね。君は天使だ! 俺の天使だよジャック! あはっ、ハハハハハハハァ――ッ!!」

おかあさん(マスター)じゃないけど、愛してくれる人(おかあさん)なの?」

「俺は雨生龍之介だ。龍之介だよジャック! ああ、愛してるよジャック!!」

 

 殻が綻びたことで振り切れた高揚感に、龍之介自身なにを言っているのか理解していない。

 いや、彼の場合は普段からそういった面があったものの、それに輪を掛けて荒ぶっている。

 

「りゅーのすけ?」

「そうそう龍之介!」

 

 霧夜の殺人鬼(アヴェンジャー)とその信奉者(マスター)

 前途多難にも程がある主従が、第四次の聖杯戦争へ参戦する。

 

 




ジャックちゃんにおかあさんと呼ばせない方法。
勢いで押し切ってしまえ(暴論)

龍之介は原作からして起源覚醒してんじゃないかって気がします。彼の起源は「生命」とか「探求」とかそんな感じなんでしょうね。

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