巫女なボクと化身使いなオレ   作:支倉貢

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第52話 狩屋マサキとの出会い

翌日。紅葉side

「いいか、みんな! 今日は思いっきりボールを追ってこい! 革命も使命も関係ないサッカーを楽しむんだ!」

 

翌日の朝、河川敷のグラウンドに集められたボクらを見渡して、円堂監督が言った。天馬くんの話によれば、対戦相手は木枯らし荘のサッカーチームらしい。

革命も使命もないサッカーか……。私的な試合なら、確かにフィフスセクターも首を突っ込めないだろう。

 

「背負うものがない試合か……」

「忘れてたな、そういうサッカー!」

 

拓人が呟けば、三国先輩が笑顔で続く。2人共、嬉しいのが声音でわかった。天馬くんも隣にいる見たことのない少年に声をかける。

 

「面白くなりそうだね!」

「ああ! ……好きにやっていいのか……」

「?」

 

ボソリと呟いた声に、ボクはその真意を図りかねていた。じーっと見つめる視線に気が付いたのか、少年がボクを見下ろす。

 

「あんた……」

「ん?」

「あ、そっか。狩屋は知らないよね」

 

見つめ合うボクらに気付いて、天馬くんがボクらの間に入る。天馬くんが、「ほら、挨拶しなよ」と促す。

 

「初めまして……狩屋マサキです」

「狩屋、この人は於野紅葉先輩だよ。昨日話しただろ?」

「ああ……この人が、めちゃくちゃサッカーが強いっていう」

「於野紅葉です。よろしくね、狩屋くん!」

 

にこっと微笑み、右手を差し出す。初めて会う人には、笑顔と握手が一番良いって楓が言ってたもんね!

狩屋くんも、にこりと笑みを浮かべて握手を返してくれる。予想はしていたけど、やっぱりボクより身長が高いなぁ……ぐすっ……。

ボクらの元に、蘭丸が歩み寄ってきた。そして、狩屋くんを真っ直ぐ見つめて言う。

 

「狩屋。昨日みたいに強引なプレーは、相手に付け入る隙を与える。……気を付けろ」

「…………」

 

狩屋くんは不満げな表情を浮かべていた。そういえば、蘭丸の表情も、何だか冷たい……?

一体、何があったんだろう。2人の間で、ボクは首を傾げるしかなかった。

すると、突然狩屋くんが、ボクに抱きついてきた。蘭丸も驚いて、目をみはる。

 

「‼︎」

「わっ⁉︎ ちょ、狩屋くん……?」

「マサキ」

「え?」

 

耳元で、小さく呟く狩屋くん。少しくすぐったかったけど、混乱からか、ボクは聞き返していた。

狩屋くんは少し離れて、にこりと微笑んでいた。

 

「俺のことは、マサキって呼んで下さい」

「え? あ……うん。いいよ、マサキ」

「ありがとうございます。それにしても……先輩可愛いですね!」

「はい⁉︎ え、ちょっ!」

「おい、狩屋‼︎」

 

マサキはまた、ぎゅーっとボクを抱きしめる。蘭丸の制止も戸惑うボクも、完璧無視。

ていうか、何を言ってるんだいマサキ。ボクなんかよりも葵ちゃんたちの方が何十倍も可愛いよ。

でも、弟みたいに甘えてくるのが可愛くて、ボクはマサキの頭を優しく撫でた。そしたら、マサキはさらに強い力でボクを抱きしめた。

 

「……あの、マサキ。ちょっと苦しい……」

「あ。すみません、紅葉先輩」

 

ニコニコ笑顔を絶やさず、マサキは離れていった。その後天馬くんがマサキを呼んだため、ボクは蘭丸と共に残された状態になった。

マサキの後ろ姿を見てから、蘭丸がボクに近寄る。

 

「大丈夫か? 紅葉」

「うん、全然平気さ。ふふ、マサキって可愛いね。弟みたい」

「………………」

「さ、ボクらも行こうか!」

 

そう言って歩き出そうとした途端、パシッと手首を掴まれ、後ろに引っ張られる。体勢を崩しかけたところを、背後にいる人物に抱き止められた。

 

「蘭丸……?」

 

背後で倒れかけたボクを支える蘭丸を、見上げる。蘭丸は、何だか辛そうな顔をしていた。

 

「蘭丸?」

「……紅葉。あいつには……狩屋には、気を付けろ」

「え? ちょ、蘭丸……」

 

蘭丸はそれだけ言うと、ボクから離れて歩き出した。呼び止めようと手を伸ばすが、何だか引き止めてはいけないような気がして、その手は何も掴むことは出来なかった。


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