巫女なボクと化身使いなオレ   作:支倉貢

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最初に言っておく。

今回はいつもよりかーなーり、甘い!


第50話 初めての

紅葉side

剣城くんに抱きしめられてから、しばらく経った。ずっと泣き続けていたけど、その涙も枯れ、今はただ、この温もりに身を預けるだけになっていた。

 

「……もう、大丈夫か?」

 

剣城くんがボクから離れる。ボクはそれがイヤで、剣城くんの腕を引いてまた彼の胸に顔を埋めた。

まだ。まだ、この温もりに包まれていたかった。

楓がフィフスセクターに連れて行かれて、1人だったあの時。寂しさを無くしてくれるような温もりは、一切無かった。まるで、それが許されないと神様から言われているような気がした。

でも、それでも……今だけは……。

 

「な、おい……」

「……もうちょっと、このまま…………」

 

剣城くんは何故か赤くなってたけど、頭を撫でてくれた。

優しい手つき。楓のとおんなじだ。

……何で、ボクの前からいなくなっちゃったの? 楓。

そう思うと余計悲しくて、枯れ果てたはずの涙が、堰を切ったようにボロボロとこぼれてきた。今まで散々泣いたくせに、まだ泣き足りないみたいだ。

でも、これ以上剣城くんに迷惑をかけちゃいけない。そう思って、ボクは剣城くんの胸から、顔を離した。

 

「……えっ?」

 

突然、剣城くんに腕を掴まれ、そのまま引っ張られる。いきなり引っ張られて体勢を崩し、ボクはただされるがままになっていた。

そのまま近付く、ボクと剣城くんの距離。何が起こるか分からなかったボクは、ただジッと剣城くんの何故か熱の込もった視線を受け続けた。

 

「剣城くん……?」

 

疑問の意を込めながら、剣城くんを見つめ返す。剣城くんはボクが投げかけた問いに答えることなく、そのままボクらの口同士がくっついた。

 

「んっ……」

 

くっつく、というよりもボクの口を塞ぐように剣城くんの口が触れる。

これは一体何なのか。

何も知らないボクは、ただそれを黙って受けていた。

そして、しばらくしてから、ゆっくりと剣城くんが離れていく。離れる直前に、少し下唇を噛まれた。

あ、全然強くなかったよ? 歯で噛むっていうか、唇で挟むって感じだったし。甘噛みっていうのかな?

顔を離しても、剣城くんの熱の込もった視線は変わらない。対してボクは相変わらずキョトンとしていた。

 

「剣城くん……?」

「……………」

「どうしたの?」

「…………いや……悪かったな」

「え? 何のこと?」

「だから……いや、何でもない……」

 

何やら話をぼかそうとする剣城くんにさらに問い詰めようとしたら、足音が聞こえてきた。

 

「紅葉先輩!」

「紅葉!」

「あ……みんな」

 

雷門イレブンのみんなが、ボクらの元に駆け寄ってきた。みんな、心配そうな目をボクに向ける。

 

「ちょ……紅葉先輩! どうしたんですか、その顔!」

「何があったんだ?」

 

天馬くんと拓人が、ボクの涙の痕を見たのだろう。オロオロとしている。三国先輩がよしよしと頭を撫でてくれた。

ポカンとしてみんなをボクは見ていたが、胸の奥にジンと広がる温かさに、思わず手を胸の前に置いた。それを見て、剣城くんが優しい声をかける。

 

「……ほらな、お前は独りじゃないだろ?」

 

全ての辛い思いが溢れ出るように、また涙がこぼれてきた。

 

「わっ! だ、大丈夫ですか⁉︎ 葵ー! 紅葉先輩に冷たいタオル!」

「うん!」

「う……ぅ、ううっ……」

「紅葉さん、泣かないで下さいよ〜……」

「ちゅーか、剣城が泣かせたんじゃね?」

「え……いや、俺は何も……」

 

みんな。

そうだ、ボクにはこんなに素敵な仲間がいるじゃないか。

たとえボクがバケモノであろうと、関係ないって言ってくれる彼らが。

 

ボク、やっぱり外に出られて本当に良かった。

 

みんなに出会えて、本当に良かった。




☆追記☆

あけましておめでとうございますm(_ _)m


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