お怒りのコメント来るかなぁ……。先に謝っておきます。すみませんm(_ _)m
第48話 バケモノ
紅葉side
病院を退院して、初めての学校。そして、楓がいなくなって……久しぶりの、ひとりぼっちの登校。
サッカー部は、海王学園に勝利し、全国大会本戦へと駒を進めたらしい。これから、戦いはさらに厳しさを増すだろうけど……みんなで力を合わせれば、きっとなんとかなる! って、ボクは思ってる。よし! これからもっと頑張るぞ! ボクは気合いを入れなおし、足取りも軽く学校へ向かった。
登校する中で、なんだかみんなの視線を感じた。なんか、ボクを見てすぐ目を逸らしたり、ヒソヒソ何か言ったり……。
みんな、何言ってるんだろう……? 何かあったのかな……? でも、何でずっとボクを見てるの……?
こういうのにあまり慣れてないからか、少し居心地が悪くなる。自然と身を寄せるように、カバンの紐を握った。
「おはよう……」
「あ、紅葉!」
教室に着くまで、みんなの視線がボクに刺さっていた。それが、教室に入ると、もっと鋭くなったみたいで……自然と、声が小さくなった。蘭丸と拓人の心配そうな顔が、視界に入る。
「おはよう、2人とも」
「もう、怪我は大丈夫なのか……?」
「うん。みんなに心配かけちゃって、ごめんね……」
「いや、いいんだ。それより……、…………」
拓人が何か言いかけて、口ごもる。いつもなら、「どうしたの?」と聞き返しただろう。でも、この時のボクは、何も言わずにさっさと自分の席に着いてしまった。
時間が経つのは早いもので、もう部活動開始の時間が迫っていた。しかし、ボクは今日日直の仕事で、少し遅れ気味だった。
「わわっ、やばっ……!」
あと少しで、部活動が始まってしまう。あうう、部活に遅刻するのだけは、絶対にイヤだ‼︎ 急いで下駄箱まで行き、靴を取り出そうとしたその時。
「あ、あれ……⁉︎ ボクの靴が無いっ‼︎」
え? え? え? 混乱するボクは、下駄箱の近くをくまなくチェックして、靴を探す。どうしよう! このままじゃ、部活に行けない‼︎ 靴が無いからには、どうしようもできない。まだ、校舎内にあることを信じて、ボクは走り出した。
「はぁ……はぁ……。な、無い……。どこにあるんだろ……」
先生に申し訳なく思いつつ、中庭に出て、探していた。おかげで上履きは泥だらけだけど、それでも、あると信じて靴を探し続けた。
植え込みを掻き分けると、見慣れた形が。
「‼︎ あっ…………え?」
植え込みの中に入れていたからなのか、ボクの靴は酷く汚れていた。泥がまるで覆うようについていて、靴の中にはゴミやら何やらが入っていた。
「おかしいな……。何でこんなに……」
ガサッ‼︎
ドッ‼︎
「うぐっ……⁉︎」
突然、後ろから誰かに押されて、植え込みに顔からダイブしてしまった。木の枝が制服を破り、傷つく。
「くっ……」
「あれぇ? 何かと思えば。化け物じゃん」
上からの刺すような声に、痛みに耐えながらゆっくりと、植え込みから体を起こす。木々の陰から見てみると、5、6人くらいの男子女子がボクを見下ろしていた。
「……?」
「うわっ。こいつ生きてるよ」
「やだ〜何であんたみたいなやつが?」
「え……?」
さっきから、何を言ってるのかわからない。ボクはただ、彼らを見上げる他なかった。
「あんたの兄貴さぁ、こないだの試合であんなに会場を破壊しといて……その妹が、よくのこのこと学校に来れるよね〜……」
「⁉︎ か、楓はそんなことしないよ‼︎」
「っせーな‼︎」
「うっ‼︎」
植え込みに抑え込まれ、また顔や腕に枝が刺さり、血が出てくる。
「っく……!」
「とっとと消えろよ。
ーーこの"バケモノ"が」
「…………‼︎」
「気持ち悪〜い。やだ……早く行こっ」
女の子の猫なで声が、耳に入らない。彼らはボクを置いて、さっさと帰っていった。
バケモノ。この言葉が、ボクの中で波紋のように広がり、ボクの体を侵していった。
「…………」
バケモノ……。ボクが、バケモノ……。
「……ボクが……バケ、モノ……」
声が震えているのが、わかった。
ボクはこのまましばらく動けず、ただ植え込みの前でぺたんと座り込んでいた。