巫女なボクと化身使いなオレ   作:支倉貢

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すみません、紅葉ちゃんが出ないので(海王あまり知らないので)飛ばします。


第45話 紅葉の目覚め

「……ん」

 

目覚めて真っ先に見たのは、真っ白な天井だった。あれ? ここ、どこ……? あの時、意識を失ってから何があったのだろう。必死に、意識を失う前のことを思い出そうとする。でも、僅かな鈍い痛みの残る頭では、まともに考えられなかった。

ゆっくりと体を起こし、辺りを見回す。ボクはパジャマに着替えさせられ、ベッドの上に寝かされていて、どこかの部屋にいることが把握できた。

 

「ぅ……」

 

痛みに頭を押さえると、頭には包帯も巻いてあった。一体、誰が助けてくれたんだろう。ちゃんと怪我の手当てもしてくれているし……。

一人考え込んでいると、ドアの向こうからドタドタと足音が聞こえてきた。思わず、ボクの体が強張る。足音はドアの向こうで止まり、乱暴にドアが開かれた。

 

「紅葉ちゃんっ‼︎」

「えっ⁉︎ あ……雨宮くん⁉︎」

 

現れたのは、同じパジャマに身を包んだ雨宮くんだった。雨宮くんはここまでずっと走ってきたのか、息を弾ませている。

 

「紅葉ちゃん……気がついたの?」

「……はい、まあ……。あの、ここは……」

「ここは病院だよ。楓から聞いたんだ。紅葉ちゃんが意識不明の重体だって……」

「そ、そう……って! 何で雨宮くんが楓のこと知ってるの⁉︎」

 

さらりと聞き流したが、ボクは楓の名が出てきたことに驚き、雨宮くんに食い付く。

 

「えへへ。知らなかったの? 紅葉ちゃん」

「うん! 全然知らなかったよ〜!」

「ちょっと前に知り合ってね」

 

雨宮くんはボクのベッドに腰掛け、ニコリと微笑む。うん、天使みたいに可愛いんだけどな……行動がちょっと……。

 

「ねぇ、紅葉ちゃん」

「?」

「君は……今のサッカーをどう思う?」

「今の、サッカー……?」

 

突然雨宮くんに問われた。ボクは、キョトンとして雨宮くんを見つめ返した。雨宮くんも黙ってボクを見つめ返す。

今のサッカー、か……。

ボクは少し、んーと考え、見つめてくる雨宮くんに答えを出した。

 

「ボクは……今のサッカーは、間違ってると思う。本来あるべき姿のサッカーを、みんな見失っている。ボクは、サッカーを守らなきゃいけないんだ。それが、蹴球神社の巫女の仕事だから……」

「紅葉ちゃんは?」

「え?」

 

答えを出したはずなのに、さらに問われてボクは戸惑う。雨宮くんの指先がボクの頬にそっと触れた。

 

「それは蹴球神社の巫女としての答えでしょ? 紅葉ちゃん本人はどうなの?」

「どう、って……」

 

巫女としてもそうだし、自分自身の答えでもあった。それでも、雨宮くんはボクに答えを求めてくる。……ていうか何か、体重こっちに向けてきてない⁉︎

 

「あ、あの……雨宮くん、近くないかい⁉︎」

「ん? そうかな〜」

 

わっ! ニヤニヤしてる! 絶対分かってる‼︎

 

「ちょ、あ、雨宮くんっ……! わっ!」

 

ドサッと、ベッドに倒された。視界に先程の白い天井と雨宮くんの笑顔が映る。

 

「あの……えっと」

「一度、こうしてみたかったんだよね〜」

 

え、え、え……。展開に全くついていけないボクを放って、雨宮くんはボクの両手首を片手で拘束して顎を固定した。

 

「へ⁉︎ ちょっあ、あの」

「紅葉ちゃんはおとなしくしてていいよ。後は僕がちゃんとしてあげるから」

「は⁉︎ ちょ、ちょっと待ってよ! さっきの質問は⁉︎」

「ん? あー、もういいよ! 僕がこうしたくて油断させるために聞いたことだし」

「嘘だったの⁉︎」

 

こんなやりとりをしながら、雨宮くんはボクに近付いてくる。また顔を近付ける! ボクの顔に何かついてるの⁉︎ 距離がゼロに等しくなりそうになった瞬間。

 

「紅葉、入るぞ………………」

 

今度は静かにドアが開いた。入ってきたのは楓だった。楓はボクと雨宮くんの状態を見て、固まった。

 

「…………」

「やあ。久しぶり、楓!」

「……お、おう。久しぶり…………って、ざっけんなゴラァ‼︎」

 

まるで鬼のような形相で雨宮くんの首を腕で締める楓。その時、ボクの手を拘束していた手も離れた。そして、楓は雨宮くんをベッドから引き摺り落とした。

 

「てっ……てんめぇ‼︎ よくも俺の妹に手ぇ出してくれたな‼︎ ミンチになりてぇのか、ん⁉︎」

「か、楓っ! 落ち着いて……ぅ、ぅん……」

「「紅葉/ちゃん‼︎」」

 

頭に鈍い痛みが走り、フラつく。受け止めたのは雨宮くんだった。

 

「んぅ……」

「大丈夫? 紅葉ちゃん」

「チッ……」

 

受け止めてくれた雨宮くんに、何で楓が怒るんだろ?

 

「ねぇ、紅葉ちゃん」

「何……?」

「紅葉ちゃんはさ、僕のこと何て呼んでる?」

「……雨宮くん?」

「太陽って呼んでよ」

「あぁ? てめえやっぱ表出ろ」

「うん。いいよ? 太陽」

 

ボクが名前を呼ぶと、太陽は子犬のような笑顔を見せた。

 

「! 紅葉ちゃん大好き!」

「待てゴラァ‼︎ 抱きつくなアホ‼︎」

「何だよ! 別にいいじゃないか! 僕と紅葉ちゃんは将来結婚するんだから! ね? お義兄さん!」

「誰がお義兄さんだ。ぶっとばすぞてめえ」

「ま、まあまあ……。太陽、僕はまだ結婚できないよ?」

「大丈夫! 僕がちゃんと迎えに行くから!」

「いかせるかよバーカ‼︎」

 

太陽と楓がワイワイ言いだしたのを見て、ボクはクスリと笑った。仲良いなぁ、2人共。

 




海王戦、お楽しみにして下さった方、申し訳ありませんでした。
楓ハッスルさせるつもりだったんですけどね……そうすると収集つかなくなってくるので。
ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

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