この辺りはあまりアニメ展開を覚えておらず、随分とテキトーになった挙句、お知らせも何もせずに青木さんを登場させました。
本当にすみませんでした。
これからも、何卒よろしくお願いします。
天馬side
俺、松風天馬。現在、帰宅途中なんですが、ちょっと困ってます……。
「…………」
「…………」
「…………」
今、ちょうど青木さんと帰ってるんだけど……青木さんが何も喋らないし、ずっと黙ってるからすごく話しかけづらい……! 俺も、本当は青木さんにサッカーのこととか、円堂監督のこととかも聞きたいのに……。
ていうか、一番びっくりしたのが、青木さんが俺と同じ木枯らし荘に住んでるってこと。秋ねぇ何で教えてくれなかったんだよ〜……。
はぁ、と俺は溜息をつく。青木さんはちら、と俺を見たけど、すぐに前を向いた。
……いや、こんなとこで立ち止まってちゃ、いつまでも青木さんに話しかけられない! ここは、勇気を持って話さなきゃ!
「あの、青木さん!」
『何だ? 松風』
「あの……って、何で俺の名前知ってるんですか⁈ まだ名乗ってないのに……」
本題に入る前に、俺がまたびっくりしてしまった。青木さんはまた何か書き、俺に見せた。
『円堂さんから、いろいろ聞いていた。もちろん、秋からも』
「秋ねぇとも知り合いなんですか?」
『ああ。当然だろう。私は元雷門中サッカー部員だぞ? お前たちから見れば、私はOGだ』
「あ、そっか……そうですよね……」
この人すごいなぁ……。俺が答えるよりも先に俺の答えを先読みして、見事俺の答えを当てている……。でも、何で声出さないんだろう?
「あの……青木さんは、どうして声を出さないんですか?」
「……」
青木さんはしばらく黙ってたけど、すぐにペンを走らせた。
『出さないんじゃない。出せないんだ』
「出せない……?」
『いろいろあってな』
「いろいろって……」
回答に呆れる俺。でも、一体何があったんだろ……。疑問に思ってると、俺の携帯の着信音が鳴った。
「? 円堂監督から? はい、もしもし。松風です」
『天馬! 大変だ! 紅葉が……‼︎』
「え……? 紅葉先輩が、どうかしたんですか⁉︎」
緊迫した円堂監督の声に、俺にも緊張感が走る。
『事故に遭ったそうだ……スーパーからの帰りがけ、工事現場から鉄骨が落ちてきて……!』
「えっ…………⁉︎」
紅葉先輩が……事故に? ただ驚き、呆然とするしかない俺に、事態を察したのか青木さんが俺の肩を叩く。
『何があったのかは知らないが、とにかく一度、皆で集まればどうだ。事態の収集がつかなければ、動こうにも動けない』
冷静な判断に、俺も頷く。
「円堂監督! 一度みんなを集めましょう! 詳しく説明して下さい! 紅葉先輩の身に、何があったのか!」
『……ああ。とにかく、サッカー部のミーティングルームに集合だ! 俺もみんなに連絡する』
「分かりました!」
通話を切り、俺は青木さんに事態を説明した。
「紅葉先輩が事故に遭ったそうです! 今から、ミーティングルームに行くんですけど……青木さんはどうしますか?」
『私も行こう。心配だ』
「分かりました! 行きましょう!」
俺は、帰り道から踵を返して、雷門中に向かって走り出した。だが、俺はすぐに青木さんの手に捕まり、引っ張られる。そして、足が地面から離れた。
状況を掴めず混乱する俺に、青木さんはスッとメモを見せた。
『しっかり掴まってろ』
「へ……う、うわぁああああぁぁぁああああ‼︎‼︎」
ミーティングルームに着いた頃には、俺は満身創痍な気分だった。だ、だって車道は普通に横切るしマンションとかの屋上を飛んでいくし挙げ句の果てにはそこから飛び降りるし‼︎
ミーティングルームには俺と紅葉先輩以外の全員が揃っていた。つまり、楓先輩もいる。
楓先輩は、今まで見たこともないくらいに落ち込んでいた。
『さて、どういうことか説明して下さい。円堂さん』
「ああ……。電話でも言ったと思うけど……紅葉が帰る途中の道の工事現場で、鉄骨落下事件が起きて……その鉄骨の下にいたのが、紅葉なんだ」
「「「「‼︎‼︎‼︎‼︎」」」」
俺たちは驚いて、目を伏せたままの円堂監督を見やる。
「幸い、事故が起こってすぐに、現場付近にいた人たちによって救出されたため、命に別状はないらしい。だけど、意識も戻ってないし……何より、サッカーを続けられるかどうか……」
「‼︎ そんな……」
サッカーが続けられないなんて……そんなの……不慮の事故でも、酷すぎる……。俺は、楓先輩が俺たちに話してくれたことを思い出した。紅葉先輩は、今までこうしてたくさんの仲間たちと共に、サッカーをしたことがなかった。外に出たくても、出られなかった。やっと外の世界に触れて、これからもっともっと楽しいことが待ってるはずなのに……もっともっと、俺たちとサッカーが出来ると思ってたのに……。
ダン‼︎ と机を叩く音がした。その音に振り向く。
「楓先輩……」
「俺のせいだ……俺が……あいつから離れなければ……‼︎」
「…………楓……」
力強く拳を握りしめ、悔しそうに呟く。誰も、何も言えなかった。
『しっかりしろ』
静かに、音も無く楓先輩に語りかける人がいた。
「……青木さん…………」
『こっちを見ろ、楓』
メモを見た楓先輩が、顔を上げる。その顔は涙でぐちゃぐちゃになっていて、あのいつもの強い楓先輩の面影すら感じられなかった。
『お前の妹はまだ死んでるわけじゃない。お前が望む限り、あいつは応える。必ずだ。お前たちはお互い求め合うように生きてきた。違うか?』
相変わらず無表情の顔が、楓先輩を捉える。楓先輩は泣きながらもフルフルと首を横に振った。その答えに満足した青木さんはニコリと笑い、続きを書く。
『そうだろう。あいつは大丈夫だ。蹴球神社の巫女一族は、そんなに軟弱ではあるまい。ちょっとやそっとの怪我でお前たちは潰せん』
楓先輩は、今度は首を縦に振った。
『なら、安心しろ。惑うな。あいつは必ず帰ってくる。絶対にだ。私も、その事故のことを詳しく調べよう』
そう書いて、青木さんは楓先輩の頭を撫でた。そして、俺たちを振り返って、また何か書く。
『お前たちも、今は次の試合に備えろ。お前たちの紅一点は丈夫だ。あの蹴球神社巫女一族の末裔なのだからな。事故如きであいつは潰せん』
「青木さん……。でも……」
何か言いかけたキャプテンの言葉を遮り、また青木さんがメモを差し出す。
『残念だが、復活するかは全てあいつ次第だ。お前たちがどう足掻いても、解決出来ない。ならば、お前たちに出来ることをしろ。お前たちに出来ることは何だ?』
「俺たちに出来ること……」
俺は青木さんの言葉を反芻した。そうだ。俺たちには、紅葉先輩に意識を取り戻してもらうために、何も出来ない。なら、俺たちに出来ることは……。
「次の試合……絶対に勝って、また紅葉先輩と戦えるようにすること。紅葉先輩が帰ってくるまで、ずっと勝ち続けること‼︎」
俺が言い切ると、みんなも頷きあって青木さんを見つめ返す。青木さんも頷き、
『その意気だ』
と笑ってみせた。
紅葉先輩……俺たち、何があっても勝ち続けます。いつか、紅葉先輩が帰ってくるのを信じて、ずっと!
前半、青木さんのネタバレ連発。まあ、話せなくなった理由はまた青き炎で後ほど……(^^;;
そして、紅葉ちゃんの事故。さて、一体雷門イレブンは海王に勝てるのか? そして楓くんはどう動く?
……いや、前者は知ってますよね。アニメ見てたら。
次回も頑張りますのでよろしくお願いします!m(_ _)m