巫女なボクと化身使いなオレ   作:支倉貢

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第42話 vs帝国学園5 〜これからもずっと〜

後半開始早々、剣城くんは颯爽と相手選手からボールを奪う。やっぱり、剣城くんのテクニックはなかなかのものだ。今の雷門には欠かせない力だとボクは思う。

 

「拓人! 剣城くんに、アルティメットサンダーを託そう!」

「ああ。行くぞ、剣城! アルティメットサンダーだ‼︎」

 

拓人の号令で、ボールが繋がる。きっと、剣城くんのキック力ならアルティメットサンダーは完成する。

 

「うおおおおおおおおっ……‼︎」

 

剣城くんの気合いの怒号と共に蹴り放たれたボールは、弧を描き敵陣に着弾した。よし! これで衝撃波が起きて、アルティメットサンダーの完成だ……と思われたが。

 

「えっ……⁉︎ 衝撃波が起きない……」

 

そんな……失敗……? 成功する、そう思い込んでいた矢先の出来事に、ボクのバカな頭が付いてこない。停止したボクの思考回路の代わりに、楓が立ち上がって叫ぶ。

 

「もう一度だ、みんな! まだ終わってない‼︎」

 

楓の声に我に返り、みんなが視線を交わし合って、頷き合う。そうだ。まだチャンスはある。

ボクらはもう一度ボールを奪い返し、拓人にまわした。

拓人の号令で再びパスが剣城くんに繋げられる。剣城くんは力を込めて蹴るも、また失敗に終わってしまった。

 

「剣城くん……」

「おい……まさか、あいつワザと手を抜いて失敗させたんじゃ……⁉︎」

「‼︎ そんなことっ‼︎」

 

ボクの隣で呟く倉間くんに、思わずボクは叫んだ。やっと、彼に想いが届いたと思った。彼の力なら、きっとなんとかなる。そう信じていた。

剣城くんを見ると、動揺しているのか、動かない。味方のパスにも気付けずにいた。パスは龍崎くんにカットされ、攻め込まれる。

まだ試合は終わってない。ハッとしたボクは、急いで龍崎くんのマークに入り、ディフェンスする。ボールを奪われまいと足でボールを転がす龍崎くんの隙を見、ボールが彼の足の外側に出てきた瞬間、ボールを掠め取った。

 

「っ……剣城くんっ……」

 

どう声をかけたらいいだろう。どうすれば、彼を動かせる……? 自問自答を繰り返していると、ベンチから今度は大声が響いた。

 

「ーー剣城京介‼︎」

 

観客の大声に混じらない、凛とした声がフィールドを貫く。剣城くんが、声のした方に振り向いた。

そこに立っているのは、楓だった。金色の瞳をギラつかせ、キッと剣城くんを睨む。あんな鋭い楓の目を見るのは、初めてのような気がした。

 

「お前は何を思ってここに来た。何を誓ってここに立っている! 覚悟を決めて来たんだろう。なら、お前のその覚悟を今、ここで見せてみろ‼︎」

 

剣城くんに指さし、楓は相変わらず鋭い目を向けていた。剣城くんは目を見開いて楓を見つめる。何かを悟ったようだ。それを見てとったボクは、剣城くんに向かって言う。

 

「剣城くん! もういっかい、やってみようよ! 君なら出来る。ボクは信じてる!」

「楓さん……紅葉……」

 

楓が鋭い視線を向け、ボクが剣城くんに笑顔を向ける。剣城くんは覚悟を決めたような表情になり、コクリと頷いた。ボクはもう一度、拓人に向かって叫ぶ。

 

「拓人! もういっかいだ!」

「……ああ、分かった‼︎」

 

拓人も頷き、もう一度賭けてみよう、とみんなを説得する。

 

「行くぞ! アルティメットサンダーだ‼︎」

 

拓人から速水くん、蘭丸、天城先輩に繋がる。剣城くんがボールを蹴るのと同時に、ボクは腹の底から大声を出して叫んだ。

 

「いっけぇぇえぇえええ‼︎」

 

ボールが弧を描いて敵陣に撃ち込まれる。見事衝撃波が発生し、DF陣を吹っ飛ばした!

 

「やったぁぁ‼︎」

 

歓喜のあまり、ボクはジャンプしてガッツポーズする。おっと、喜ぶのはまだ早い。点を取らなきゃ。

ボールは天馬くんに既に渡っており、ゴール前まで運び込まれていた。天馬くんはトップスピードで走り、ボールを蹴っ飛ばした。

 

「マッハウィンド‼︎」

 

風を(まと)った天馬くんの新必殺シュートが炸裂し、ゴールを見事貫いた。すごいすごい!これで同点だ! テンションが一気に上がったボクは、胸に込み上げてくる熱い何かを出したくて、みんなに向かって言い渡した。

 

「みんなっ! この調子でもっともっと、行こうっ‼︎」

 

きっと、ボクは今までで一番笑顔になっているのそんな気がした。

 

 

 

勢いづくボクらの前に、御門くんが立ちはだかった。

 

「はぁぁぁあああっ‼︎ 黒き翼レイブン‼︎」

「ここは俺がっ……!」

 

前進しようとする拓人の前を抜き去って、ボクは走る。

 

「オレに任せろ! 行くぜっ、金剛尾神キュウビ‼︎」

 

久々に暴れられる。もちろん少しだけなのは分かってた。ボールをキープしたオレは獲物(レイブン)に向かって加速した。

 

「カラス風情が……‼︎ オレにたてつくなんざ、5000年早えんだよっ‼︎」

 

レイブンの翼を食い千切り、一気に抜き去る。オレは一度ブレーキをかけてから、体を反転させて信助にパス……もとい、センタリングを上げた。

 

「紅葉先輩⁉︎」

「てめえなら届くだろ⁉︎ 一発ぶちかませ、信助ぇ‼︎」

「っ…………はいっ‼︎」

 

元気良く返事を返した信助は、ジャンプして空高く舞い上がった。

 

「飛ぶんだ、誰よりも高く……! ぶっとびジャンプ‼︎」

 

弾丸のように飛んだシュートはゴールに突き刺さり、得点したことを告げるホイッスルが鳴った。

 

「よしっ‼︎」

 

得点を見届けたオレは、すぐに主と交代した。

とにかく、これで勝った。しかし、得点したことにより生まれるこの快感に、まだ体がぞくぞくしてる。

こんなにボクは求めていたのか。仲間と勝利を掴むことを。

 

「そんなに飢えてたのかな、ボクは……勝利への喜びに……」

 

ボソッと呟いてみる。何だか少し、悲しくなった。

 

 

 

 

再びアルティメットサンダーを発動させ、更に追加点を狙う。剣城くんはボールをキープしたまま、シュート体勢に入った。

 

「デスドロップ‼︎」

 

フィフスセクターに刃向かうことを決めた、剣城くんの決意のシュートは、ゴールを破ることに成功した。

ここで、試合終了のホイッスル。スコアは4対2で、ボクら雷門の勝利となった。

みんなが喜びに満ち、その中で天馬くんと剣城くんがハイタッチをしていた。ボクはみんなから離れて、楓に問う。

 

「ねえ、楓。ボクらは、こんな素敵な光景を、これからもずっと、ずーっと見続けられる?」

「……さぁな……。そんなに不安なら、見守り続ければいい。お前が好きになった場所だ。俺は何も言わねーよ」

「何言ってるの? 楓」

 

ボクは楓を見上げる。そして、お互いの金色の瞳を合わせた。

 

「君も一緒だよ。今までも、これからも。彼らがいて……君がいて、ボクがいる。ずっと、ずっと、ずーっと、だよ」

 

ニコッと笑うと、楓も微笑んで、くしゅっと髪ごと頭を撫でてくれた。

 


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