巫女なボクと化身使いなオレ   作:支倉貢

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UA5000突破なりー‼︎
よく頑張った、俺‼︎



第37話 決意

剣城side

何故か病院に来ていて兄さんの病室の前にいた松風を連れ出し、松風を問いただしていた。

 

「……何の真似だ」

「あ、たまたま見つけたから……」

 

そんなことでついてくるか普通。俺は心の中で松風にツッコみ、呆れる。そんな俺など知らずに、松風は俺に言う。

 

「あのさ! 次の相手、帝国に決まったんだ! それで、帝国に勝つためにはアルティメットサンダーを完成させないといけなくて、剣城の力が必要なんだ‼︎」

 

何だ、そんなことで何故俺の力が必要なんだ。俺はもう、フィフスセクターに従うと誓ったんだ。兄さんのためにも。

 

「知るか。俺がじゃなくても於野兄妹がいるだろ」

「楓先輩達が、ダメだって……」

 

と、松風が肩を落とす。こいつはほっとくとかなりめんどくさい。ここでハッキリ言っておかなければ。

 

「いいかげんにしろ‼︎ 世の中にはどうにもならないことがあるんだ! もう俺に関わるな‼︎」

 

俺は呆然としする松風を無視して、去ろうとした。今日はもう帰ろう。そう思って携帯を取り出したその時。

 

「あぁーーーっ‼︎ しまった、紅葉先輩のことすっかり忘れてた‼︎ どうしよ、紅葉先輩あそこにいたままだ……」

 

紅葉が……兄さんの病室に……⁉︎ 色んな考えがぐるぐると頭の中を駆け巡る。俺は急いで兄さんの病室へ向かった。

 

 

 

 

 

やや乱暴に、ドアを開ける。

 

「兄さんっ…………‼︎⁉︎」

 

病室に入った途端、俺は目を疑った。

だって…………兄さんが、あいつの……紅葉の額に、キスをしようとしていた………………。

自然と、胸がざわついた。それと同時に高められていく何らかの感情。

……何だろうか。

 

ーーーーーーキニクワナイーーーー。

 

俺に気付いた兄さんは俺を見て、ニコッと笑う。まるで何も無かったかのように。

 

「おかえり、京介」

「……に、兄さん……」

「? どうしたんだ?」

 

本当に、何も無かったのか……? そのことに、少し安心を覚える。ってか待て。何で俺が紅葉の心配しなきゃいけねえんだ。別にこんな奴なんて、どうでもいいのに。そのはずなのに。

兄さんは愛おしそうに紅葉の頭を撫でる。それにも何故か、またイラっときた。俺は兄さんの腕の中にいる紅葉を引っ張ろうと紅葉に手を伸ばしたが、その手を兄さんが制した。

 

「京介、紅葉ちゃん……寝てる」

「は……?」

 

見てみると、紅葉は兄さんの腕の中でスヤスヤと小さな寝息を立てていた。気持ち良さそうに寝ている紅葉は、兄さんに身を任せ、(言うのも恥ずかしいが)可愛らしい寝顔を晒していた。

 

「ふふっ……可愛いね、京介」

「へっ⁉︎ あ……そ、その…………」

 

ここは可愛い、と言うべきなのか。でも言うのは何だか恥ずかしい気がする。どう言えばいいのか分からなくて、俺は俯くしかなかった。ふと、視界に、時計が目に入る。もうそろそろ面会時間が終わる……。このまま寝ている紅葉を放っておくことは出来ない。

 

「兄さん、もうそろそろ面会時間が終わるから……俺、家まで送るよ」

「そう? じゃあ紅葉ちゃん起こさなきゃね」

 

兄さんがぐっすり寝ている紅葉の背中をトントンと叩くも、逆に気持ちいいのかさらに兄さんの胸に顔を埋めるだけだ。俺は紅葉の頬を引っ張り起こそうとした。ビヨ〜ンと伸びる紅葉の頬にまた可愛らしさを覚えながらも、とにかく引っ張りまくる。しばらくすると、紅葉がやっと起きた。

 

「んにゅ……?」

「あ、おはよう紅葉ちゃん」

「ふぁ……ゆ、いち……さん……?」

 

まだ眠いのか、うとうとしながらも体を兄さんから離そうとする。目を擦って、呂律の回らない言葉でとにかく起きる紅葉の腕を掴み、ベッドから降ろさせた。

 

「ぅ、あっ……」

「じゃあ兄さん、俺帰るから」

「ああ。京介、紅葉ちゃんに乱暴しちゃダメだぞ? 紅葉ちゃん、またおいでね」

 

兄さんは最後に紅葉の頭を撫でて、俺達を見送った。

 

 

 

 

 

 

夕焼けが空を茜色に染める中、俺と紅葉は肩を並べて帰っていた。俺が紅葉の方を見ると、紅葉の頭しか見えない。それほど俺と紅葉では身長差がある。楓さんとはえらい違いだ。遺伝子どうなってんだよ於野兄妹は。

前方から、誰かが駆け寄ってくる。こちらからでは、夕日を背にしているので、誰かが分からない。その人物を見て、紅葉が声を上げた。

 

「楓‼︎」

「紅葉‼︎」

 

楓さん……? 俺も紅葉と一緒にその人物を見る。紅葉は楓さんに抱きつき、楓さんも抱き締め返した。楓さんは俺を見るとハッとして紅葉を背中に隠した。

 

「何で剣城クンがここに? 何故紅葉といる?」

 

威圧するような声。明らかに楓さんは俺を警戒している。いつもヘラヘラしてる楓さんだけに、この時の緊張感はかなりのものだった。そのプレッシャーを察し、紅葉が俺を庇う。

 

「楓、剣城くんは悪くないの。ボクを送ってきてくれただけだから。だから怒らないで……」

「…………分かった。ありがとな、剣城クン」

 

必死な紅葉の頭に手を置いて、楓さんが俺にお礼を言う。帰ろうと紅葉を促し、後ろを振り返ろうとしたその時、楓さんが俺に釘を刺した。

 

「…………何をしていたか知らないが、お前はやっとあの時から変われた。今こそ変わるべき時だ。頑張れよ、剣城クン?」

 

初めて出会った時と同じ、皮肉な言い方。何か企んでいるような笑顔。俺は俯き、立ち尽くすしかなかった。

今度の試合、俺はもう出ない。あそこは俺のいる場所じゃないんだ。

俺は遠ざかる兄妹を見ながら、背を向けた。

 

 


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