巫女なボクと化身使いなオレ   作:支倉貢

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第36話 vs万能坂2 〜最強〜

後半が開始される。剣城くんは天馬くんからボールを奪って、どんどん攻めていく。味方から強奪するなんて、どんだけ攻撃好きなんだ……。

ゴール前まで来た剣城くんが、シュート体勢に入る。

 

「デスソード‼︎」

 

これで2点目! ボクらは期待を込めてゴールを見た。しかし、GKはニヤッと笑うと、オーラを放出した。

 

「機械兵ガレウス‼︎」

「化身っ⁈」

 

ガレウスは自身の腕に付いているシールドを前に出して、デスソードを食い止めた。

 

「ガーディアンシールド‼︎」

 

GKはボールを投げて、ボールはFWの赤髪男子に渡った。彼もオーラを放出する。彼も化身使いか……!

 

「ッハハハハッ……ッ‼︎ 奇術魔ピューリム‼︎」

 

そしてさらに彼は腕を振るう。まさか、シュートを放つつもりじゃ……! ボクは急いで三国先輩の守るゴールへ走り出した。

 

「マジシャンズボックス‼︎」

「くッ、しまっ……!」

 

ボクはスピードを上げてまたさらに加速する。一か八かっ……! ボクはパチンと指を鳴らした。

 

「狐火ッ、バーン‼︎」

 

爆炎がボールに絡みつき、シュートを止めようとするが、詰めが甘かったらしく、シュートは炎を突き破っていった。三国先輩も対抗するも、ゴールを許してしまった。

 

「くっ……だ、大丈夫ですか⁉︎ 三国先輩‼︎」

「あ、ああ……」

 

三国先輩は手のひらを見て、少し顔を歪めた。その様子を見て、ボクは頭を下げた。

 

「すみませんっ……ボクがシュートを止められなかったばかりに……」

 

三国先輩は謝っているボクの頭に手を添えてきた。驚き、頭を上げるボクに、三国先輩は微笑みを向ける。

 

「謝るな。お前が必殺技で威力を減らしてくれたから、大したダメージは無かった。シュートを止められなかったのは俺の責任だ。だからお前が謝ることは無いんだ」

 

分かったか? と聞く三国先輩に頷いて見せると、三国先輩はボクをなでなでしてくれた。あ、このなでなでボク好きかも……。

でも、この事態は良いというわけではない。相手はGKとFWの2人が化身を持っている。攻撃も守備も両方いけるってことだ。それに対してボクらは化身使いは一応3人いる。ボクと拓人と剣城くん。ボクと拓人は勝利のために化身を使う。剣城くんは信じたいけど……ボクはまだ確信とは言えない。剣城くんには悪いけど、まだ君を信じられないよ……。

 

その後試合は動かず、万能坂のリードのまま。何でみんな動かないっ……! 分かってるはずだよ⁉︎ フィフスセクターの実力はこの程度だって……。

 

「っ…………‼︎‼︎‼︎ うぉおおおぉおぉおおおあぁあぁあぁああぁっっっ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

腹の底から大声を張り上げ、今まで体に溜まっていたものを全部出す。みんながボクの大声に驚いて思わず耳を塞ぐ。でもそんなこと、ボクにはどうでもよかった。このままじゃいけない。誰が何と言おうとボクは点を取りに行く。勝ちにいく‼︎

ボクはボールをキープしている選手の股をくぐってボールを奪い去る。すぐさま立ち上がり、走り出した。相手選手が次々とボールを奪おうと襲ってくる。

 

「ボクをなめるなっ‼︎」

 

トントントンと相手をかわしながらゴールへと向かう。力任せに突進しても、避けてしまえばこっちのものだ。このまま持ち込もう。チームのために、みんなの不安を取り除くためにも!

 

剣城side

キツネ女が突然大声を出したと思えば、あっという間にボールを奪い去り、ゴールへ走る。あいつ、1人で攻め込む気か……! 俺もあいつに追随しようと駆け出すが、キツネ女は軽やかな動きとステップでどんどん万能坂の選手を抜いていく。

その動きを見た途端、俺は一瞬時が止まったような感覚に陥った。キツネ女の手が、足が、指先が、動きの一つ一つが美しい。まるで神に神楽を捧げる巫女のようにーーー。あいつにとってはフェイントの動きなんだろうが、俺には舞を舞っているようにしか見えなかった。

一瞬にして、キツネ女の目付きが変わる。キツネ女はゴールを見据えていた。一気にオーラを開放し、オーラが化身・金剛尾神キュウビが現れる。指を鳴らし、その赤い目を光らせ唇を動かす。

 

「紅蓮地獄ッ……‼︎」

 

パチン、と再び指が鳴った瞬間、炎が猛り狂いGKを襲う。ホイッスルが鳴り、得点したことを告げた。俺もみんなも呆然と見ていた。見るしか出来なかった。

これが、於野一族の実力。一族の者以外、誰も彼女と並ぶことは許されない。まさに、最強の力。

キツネ女はクルッとこちらを向いて、すうっと息を吸った。

 

「みんなっ‼︎ 確かに、フィフスセクターが怖いのは分かる。でも、だからと言って逃げていては何も始まらない‼︎ だったらボクはとにかく抗う‼︎ 例えそれがどんなに惨めであろうが無様であろうが構わない‼︎ みんなでサッカー出来るのは、この一瞬一瞬なんだ! ならボクは後悔しないように思っきり走る‼︎ だって、初めてのチームメイトだもん! ボクはみんなとサッカーしたい‼︎ みんなァ‼︎ 一緒に…………サッカー、やろうよ‼︎」

 

赤いサイドテールを揺らしてニコッと笑い、自分の気持ちを伝えるキツネ女。ああ、こいつはただサッカーがやりたいと思っているだけなんだ。初めて出来た友達と、仲間と、サッカーをやりたいだけなんだ。こいつが、凄く眩しく見えた。綺麗に見えた。

俺はフッと微かに唇の端を上げ、キツネ女……いや、紅葉を見た。

脆く幼く、最強の女。なら、俺はお前に力を貸そう。お前と共に戦おう。




いよいよ革命の風が吹き荒れ始める‼︎
次回、乞うご期待‼︎

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