巫女なボクと化身使いなオレ   作:支倉貢

35 / 61
ここで、楓くんだけが知っている過去編です。
シリアス展開真っしぐらなので苦手な方はブラウザバック((
あ、Side無しです。

それではどうぞ。


第31話 楓の過去

ーーーー今から12年ほど前、蹴球神社。

双子の兄妹が、神社の境内の真ん中で、いつものようにサッカーをしているのを、2人の男女が微笑みを浮かべながら見つめていた。

双子は、彼らの子供だ。ここでは、兄のことを楓、妹のことを紅葉と呼ぼう。

 

12年前の蹴球神社には、現在は跡形も残っていないとても小さな祠があった。祠にはたくさんのお札が貼ってあり、いつも閉まっていた。まるで、この祠を開けてはならない、とでも言うように。紅葉達は、この祠の存在すら知らない。両親はそこに封印されているモノの名前だけ知っていた。

 

楓が蹴ったボールを紅葉が受け損ねてしまった。「何やってんだよー」「ごめん」と子供らしい会話をして、紅葉は転がっていったボールを追いかけた。

 

紅葉がボールを拾おうとすると、ふと、紅葉の目に小さな祠が目に入った。もちろん、紅葉は今まで一度も見たことが無い。何だろう、と不思議に思った紅葉はトコトコと祠に近付き、貼ってあったお札を剥がし、祠の戸を開けてしまった。

祠の中には、紅い石があった。熱を帯びた、紅い石。紅葉はコテンと小首を傾げ、じっとその石を見つめていたが、急に背筋に悪寒が走った。巫女特有の"勘"というものである。

逃げようとした紅葉を、石は逃がさなかった。やっと近付いてきた器。ずっとずっと求めてきた器。石に宿っていた"何か"は、怯える紅葉の腕を掴み、無理矢理彼女の中に入っていった。

 

「いやぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁーーーーー」

 

 

 

 

 

 

母親にも、紅葉が感じた悪寒が走る。それに気付いた父親は、彼女に問いかけた。

 

「どうしたんだ?」

「あの子が……紅葉が危ないッッ‼︎」

 

真っ青な顔をした母親は、巫女服の袖はたなびかせて紅葉が消えた先へ走って行き、後を父親が追った。それを見ていた楓は、事態の大きさを知らずについて行った。

 

両親が祠の元へ辿り着くと、祠の戸が開かれており、その前で紅葉が倒れていた。

 

「紅葉っ‼︎」

 

両親が紅葉に近付く。すると紅葉は突然、何事も無かった様に立ち上がった。それを見た両親は、怪訝に足を止める。だが顔を上げた紅葉に、両親は後ずさりした。

紅葉の目は大きく見開かれ、狂ったように紅い瞳が爛々と光っていたのだ。

母親はハッとして、紅葉を見つめる。この時、母親は察していた。紅葉が祠の戸を開けてしまったのだと。そして、封印されて石として生きてきた、キュウビに見初められてしまったのだと……。

紅葉は後ずさりする両親に手をかざし、まるで別人のような低い声でボソリと言った。

 

「…………消えろ。オレを封印した忌まわしき一族が……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……父さーん…………母さーん……」

 

ーーーーーー揺らめく炎の中、楓の声が響く。楓は気を失った紅葉を抱え、ひたすら両親を呼んだ。何度も何度も何度も何度も揺さぶった。この時楓は知らなかった。冷たくなった両親が、二度と目を覚まさないことを。帰らぬ人となってしまったことを。

やがて、火の手が楓達に迫る。楓は必死に両親を揺さぶった。

 

「起きてよ2人とも。ねえ。何で。火が来てるよ。熱いよ。逃げようよ。父さん。母さん。起きてってば。何でずっと寝てるの。死んじゃうよ。ねえ。ねえ。ねえってば。ねえ。ねえ。ねえ…………」

 

炎が、両親を飲み込んでいく。怖くなった楓は、そのまま気を失ってしまった。炎はどんどん燃え盛り、両親を跡形も無く焼き尽くしてしまったーーーー。

 

 

 

「……………ん……」

 

楓が再び目覚めたのは、ある木の下だった。隣を見ると、紅葉が眠っている。辺りを見渡しても、両親はいない。不安になる楓に、ある声が聞こえた。

 

『……心配しないで。貴方達を助けたのは私よ』

 

声がした方を振り仰ぐと、そのには桜の木があった。この桜は特殊だった。遥か昔から、この桜は咲いている。枯れたことは無い。桜の花が散ったことも無い。永遠に美しく咲き誇る桜、それが蹴球神社だけにある永久櫻だ。

 

「桜さん? 桜さんが、俺達を助けてくれたの?」

『えぇ。危なかったのよ、貴方達……。両親を助けれなくて……本当にごめんなさい』

「ねえ、桜さん……何が起こったの? あの炎は何? 何で……紅葉が倒れてるの?」

 

まだ幼い子供のはずなのに。楓は、事態の収集を行っていた。自分の不安と恐怖を取り除くためだろうが、楓の知性に永久櫻は感心した。

 

『貴方の妹に……紅葉ちゃんに、霊獣が宿ってしまったの。さっき、貴方の両親は……紅葉ちゃんに宿った霊獣によって、焼き殺されてしまったのよ。……紅葉ちゃんの体を使って』

 

まさしくそれは、紅葉が両親を殺したも同然の言葉だった。呆然とするしかない楓に、永久櫻は続ける。

 

『それだけじゃないわ。このまま紅葉ちゃんを放っておけば、またきっと霊獣が暴走する。今から私が結界を張るから。貴方は1回、神社から出てちょうだい』

 

永久櫻に言われるがままに、楓は神社の鳥居の前にある階段まで行った。永久櫻は結界を張り終えると、すぐに楓を呼び戻した。

 

『これで、紅葉ちゃんはこの神社から出られないわ。いい、楓くん。貴方が紅葉ちゃんを守るのよ。そうね……紅葉ちゃんが14になる年まで、ここから出してはいけない。紅葉ちゃんを隠すの。14の年になれば、きっと霊獣も流石に大人しくなるでしょう。それまで、絶対に紅葉ちゃんをここから出してはダメ。神社に閉じ込めておくの。大丈夫、一時だけ自由が無くなるだけよ。チカラをコントロールするため、ここに居るの。だから、楓くん……。紅葉ちゃんに、こう伝えて。

 

 

ーー"蹴球神社には巫女を継ぐ女の子は14の年になるまで神社を出ちゃいけない、っていう掟がある"……って』

 

 

 

 

 

突然両親を失った兄妹。原因は、妹の器に入ってしまった霊獣だった。

 

自身のチカラがコントロール出来るようになるまで、そう言い聞かせて、兄は永久櫻の言う通り、目覚めた妹に嘘を吐いた。妹は、霊獣が宿った激しいショックからか、両親を殺したことを覚えていなかった。

 

妹を守るため。兄は強くなることを決意する。

 

兄に寄り添うため。妹は強くなることを決意する。

 

 

 

 

ある不思議な一族の家族を襲った悲劇。

 

何も知らない妹は今日も無邪気な笑顔を。全てを知っている兄は、今日も作り笑顔を浮かべて、本心を押し隠し続ける。

 

ただ、この日々が崩れないことを祈って。

 

 

 




お、終わった……。
うん、やっぱ過去編ラクだわ。←おい
今回は色んなのが出て来ましたね。以前から出ていたキュウビや永久櫻についても、ここで新たに事実が発覚しました。キュウビが、紅葉ちゃんの体を操って、両親を殺させた犯人。卑劣ですね邪智暴虐ですね。さらに、紅葉ちゃんが14の年になるまで神社の中でしか暮らせなかった理由も明かされましたね。それを指示したのが永久櫻なんて……。一体誰の声なのか。何故永久櫻が永遠に咲いているのか。それは、まだこれから明かしていきたいと思っております。
さて、この事実を知った雷門イレブン。(この話文の書き方はかなり変ですけどちゃんと本当は天馬達に楓くんが語ってるんですよ‼︎)彼らは紅葉ちゃんをどう受け止めるのでしょうか。
貴方ならどうしますか?
それでは、次回もお楽しみに。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。