どうも、紅葉です。今、ボクは本職のDFポジションに居ます! 居るんだけど……。皆さんからの視線が痛いです。そういえば、視線で死ねるって言葉があったよーな、無かったよーな……。
まあ、そんなこんなで試合再開。
相手が攻め込んでくるのを見て、少し下がる。安藤? って人がタックルを仕掛けてきた。もしかして、ボクが女だからってなめてる?
予想通り、ボクにしてはかなり緩いタックルだった。あー、軽い力で吹っ飛ぶと思ったんだね。だけど、残念だったね。他の女の子だったら行けただろうけど、ボクは昔から楓と鍛えてたのっ‼︎
グッと足に力を入れて、耐える。安藤さんは案の定、吹っ飛ぶと思っていたらしく、驚愕の表情を浮かべる。
「こんなのでボクが吹っ飛ぶと思うなーー‼︎‼︎」
そう叫び、ボクはタックル返しをした。ボクのタックルは、楓も吹っ飛ばすもんね! 安藤さんは吹っ飛んだけど、ボールはキープしたままで、天河原キャプテンの喜多さんにパスを出した。そこにすかさず天馬くんが入る。
「……どけ」
「イヤです! 俺、知ってます。天河原中は昔強くて、何度も雷門と戦ったって……。なのに、何でこんな乱暴なプレーをするんですか‼︎」
「これが俺達のやり方だ」
喜多さんは天馬くんの言葉を撥ねつけ、試合前にボクに絡んできた西野空さんにボールを蹴った。やばっ、これ以上進まれたら点取られちゃう!
「DFを下げるぞ!」
拓人の指示通り、ボクは下がる。だけど、他のみんなが動かない。そうだった、フィフスセクターに逆らってるのはボク達だけだった……。
その間に、ボールは隼総さんに渡る。痺れを切らした拓人が、自分が止めるとばかりに走り出した。
ところが、隼総さんはニヤリと笑みを浮かべ、拓人と競り合う。
「お前に俺の化身が止められるか?」
「化身だと⁉︎」
化身っ⁉︎ え、使えるの⁉︎ 使える人って、ボクと楓と拓人と剣城くんだけだと思ってた!
隼総さんからオーラが放たれ、それは鳥人のような姿になった。
「出でよ、鳥人ファルコ‼︎」
うわぁ、本当に化身使いだったよ! すっごい!
「あ、そういやあいつ化身出せたな」
「知ってたんですか⁉︎」
「いや、すっかり忘れてた」
ベンチで、速水くんと楓の会話が聞こえる。てか、ちょっと待てや楓。知ってたのかよ! 相手に化身使いが居ること! そんな重要なことを忘れちゃいかんだろ!
ボクが楓に心の中でツッコミを入れていたら、隼総さんが化身シュートを放った。
「ファルコウィング‼︎」
これには反応出来ず、三国先輩も止められず、失点を許してしまった。と、ここで前半終了のホイッスル。今のところ、1対1だ。
ベンチに戻り、葵ちゃんからドリンクを貰う。飲もう、と思ったが、周りの空気が重いことに、思わずみんなに視線を向け、口を開いた。
「……何でそんな落ち込んでるんですか? まだ1点取られただけじゃないですか。大丈夫ですよ、すぐに1点取り返して……」
「勝てる、と? 本気で思ってるのか?」
剣城くんが、ボクの言葉を遮る。そして、さらに続けた。
「天河原中の隼総。奴も俺と同じシードだ。化身を自由にコントロールすることが出来る。キャプテン、あんたと違ってな」
剣城くんの言葉に、拓人が悔しそうに顔を歪める。でもさ、そんなこと何になるっていうの?
「だから何です?」
つい、強い口調になった。だって、こんなとこで負けたくなかったんだもん。少しの間、剣城くんと睨み合いになる。楓が制止したからやめたけど。
楓が、みんなを見渡して言った。
「お前らがどう動こうと、どう思おうと、もうこいつらは止められねえ。これは俺の勘だが、フィフスセクターは雷門を潰せない。絶対に、だ」
「楓、絶対っていうんならそれ勘じゃないよ……」
「あ、ホントだ……って、おい。話を逸らすなよ。ま、これだけは言える。お前ら紅葉をなめ過ぎだ。こいつは俺の妹だぞ? あの由緒正しいサッカー神社の巫女だぞ? 最強に決まってんだろ。お前ら1回見てんだろ? 紅葉の実力。あんまなめてると、フィフスセクターより先に俺がお前らを潰すからな」
キッと鋭い視線をみんなに向ける。楓がとっても怒ってるっていうのが声のトーンで分かった。楓はボクの方を振り向くと、ぽんぽんと頭を叩いて笑った。
「さあ、頑張ってこい! お前の力、見せてやれ‼︎」
そう言って、楓はボクの背中を押してくれた。少し、体が軽くなったような気がした。
テストなんてくそくらえだぜどちくしょうが泣
頑張ってきまーす……。