巫女なボクと化身使いなオレ   作:支倉貢

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久々の更新です。それではどうぞ。


第26話 神童の退部、届かない想い

紅葉side

「はぁ、はぁ、はぁ……や、やっと着いた……」

 

ボクが肩を上下させて立っているのは、拓人の家の前。拓人の家は初めて行くけど、何度か楓の記憶を見せてもらったお陰で、道は何と無くだけど知ってた。あの時楓をぶっ飛ばしてまで見せてもらって良かったなぁ……。ていうか拓人の家って最早お城だよね。絵本とかで読んだことあるけど、多分それの現代verだよ。

ボクは一度深呼吸して、拓人の家に乗り込んだ。あ、無理やりじゃないよ? ちゃんと玄関から通して頂きました。

 

神童side

俺が弾くピアノの音が響く部屋に、紅葉が俺の後ろで佇む。紅葉は初めてなのかどうかは分からないが、ポカンとしたまま俺を見ている。

紅葉を部屋に入れたのは、紛れもない俺自身だ。自分でも自分の行動が分からなかった。こいつと話すことなんて、無いのに……。

ふと、俺のピアノの上に走らせていた指を止める。紅葉はハッとして、居住まいを正した。こんな俺を見たことが無いからか、いつもより緊張しているようだ。そんな中、紅葉がゆっくりと口を開いた。

 

「拓人……す、凄いんだね!」

「…………何がだ」

 

思わず、冷たい声で接する。とにかく、今紅葉には会いたくない。帰って欲しかった。なのに、俺の心なんて知らず、紅葉は続ける。

 

「いや、その……拓人がピアノ弾くの……初めて見たから……ボク、拓人が神のタクトって呼ばれてるなんて、知らなかった。去年の試合も見たよ、凄かった……だ、だからさ! ボク、拓人とまたサッカーしたいんだ! こないだは出なかったけど……でも、今度は一緒に‼︎」

 

急に紅葉が黙る。紅葉はびっくりして俺を見つめる。俺が鍵盤を強く叩いたからだ。呆然とする紅葉に、俺は叫んだ。

 

「違うっ‼︎ あれはフィフスセクターが自由な試合を許可したからだ‼︎ 結局、あいつらの言いなりってことだろ⁉︎」

「た、拓人……。で、でも! ボク、拓人とサッカーしたい! 拓人の采配でプレイしてみたい‼︎」

「やめろ‼︎ これ以上サッカー部に居たら俺は、サッカーを本当に嫌いになる……」

「っ…………」

 

紅葉はぐっと拳を握り、床に転がっていたボールを手に取り、俺に語りかける。

 

「拓人は、サッカーを好きって気持ちを守る為に、サッカー部を辞めたの?」

「え……?」

「だって……今のままサッカーを続けていたら、嫌いになっちゃうんでしょ? サッカーが好きって気持ちを守る為に……サッカーが汚れないように、守ろうとしてるんでしょ? でも、ボクは貴方にサッカーを続けて欲しい。今辞めてしまったら、サッカーは……きっと、貴方と離れるのを悲しむよ」

「バカなこと言うな‼︎ 俺達は、栄都戦でフィフスセクターに逆らったんだぞ⁉︎ それが学校全体にどれだけ迷惑をかけることになるのか分かってるのか‼︎」

「っ、でもボクらは間違った事なんて、何もしてない‼︎」

 

キッと俺を睨み返す紅葉。でも、体がプルプル震えてる。怖いのか……。なのに、何で俺の所に……。

 

「どんなに喚いたって、今のサッカーに勝ち目は無い」

「……………………そ、う……」

 

紅葉は肩を落として、ボールを抱えた。やっと諦めたか、そう思い紅葉から背を向けた瞬間、背中を温もりが包んだ。

 

紅葉が、俺の背中を抱きしめていた。

 

「…………本当に、サッカー、辞めちゃうの……」

 

ぎゅう、と紅葉が腕に力を込める。寂しそうな声でポツリと呟く。

俺の方はというと、背中に感じる感触に、カァァと顔が熱くなっていた。俺の背中に、紅葉の……む、胸が……って、何考えてんだ俺は‼︎ とにかく、紅葉が俺に密着してる所為で俺の体温がどんどん上昇していく一方だ。

 

「っっ……あぁ、そうだよ。だから離れろ……」

「なら、拓人の必殺技を見せてよ。あのシュート技を」

 

そう言って、紅葉は俺から離れる。あぁ、やっと離れてくれた。でも、本当はもうちょっとあのままが良かったなぁ……って、一体何考えてんだ俺……。ん? ていうか、さっき何て言って……?

 

「今すぐ見せて。拓人の必殺技。フォルテシモを」

 

ビシッと効果音がしそうな勢いで、紅葉が俺を指差す。ニコッと笑いながら。さっきの寂しそうな声から一転して。

 

「拓人のフォルテシモを見てから、サッカー部を辞めて! なら、ボクも納得する。君を止めない」

「……紅葉…………」

「あっ……人に指差しちゃダメだったんだっけ……」

 

紅葉はしまった、と言うように、慌てて手を隠した。その姿が愛しくて、可愛くて……。

くす、と小さく笑った。こんなに心が穏やかになったのは、久しぶりだ。

 

「ありがとう、紅葉」

「え? 何が?」

 

分からない、そんな言葉が似合いそうな顔で俺を見つめる紅葉。

知って欲しい、知らないで欲しい。そんな俺の恋心。まだ、この想いを閉まっておくことしかできないのか? 今ここに居る想い人と、いつまでこの関係を保つつもりだ? 不意に、変な衝動に駆られた。

 

「拓人?」

 

ポカンとした紅葉の顔がより近くなる。俺は紅葉の小さな手を握り、ゆっくりと壁に紅葉を押し付けた。

 

紅葉side

「拓人? ねぇ、どうしたの?」

 

さっきから問いかけても、拓人は何も答えてくれない。それどころか、じっとボクを見つめて黙っているだけ。不意に、拓人がボクの頬をそっと撫でた。冷たい指先に、ピクッと体が反応する。拓人はボクの顎に手を添え、更に顔を近付ける。どうしたのかな? ボクと拓人の唇が触れそうな程の距離になったその時。

 

「はいはいそこまでね〜」

 

聞き慣れた口調と共に、拓人の顔が遠ざかる。拓人は首根っこを声の主に掴まれて、ボクから引き離された。

 

「ちょ〜っと俺と話そうか、神童クン?」

 

微笑みながらも目が笑ってない楓が、拓人の顔を覗き込んで言った。それから拓人と楓は部屋を出て、少しの間、帰ってこなかった。




あはは〜wwヤバイッッ‼︎ でも範囲内だよね? 壁ドンだもんね、OKだもんね‼︎
天馬の良いとこを取ってしまった……天馬、本当にゴメンッッ‼︎‼︎ 悪気は無いんだ‼︎
えーと、久々の更新……お粗末様でした(土下座。
これからもどうぞよろしくお願いします。

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