単なる自己満足になるかもしれません。先に言っておきます。
あ、Sideは無しです。
ーーーー楓、紅葉が10歳の頃。
ガチャ
「ただいま〜」
「おかえり、楓‼︎」
そういうなり、いきなり楓に抱きつく紅葉。抱きつく、と言っても威力はタックル並みである。しかし慣れた楓にとって、この程度のタックルは普通に抱きつくも同然なのだ。
楓は丁度、学校から帰って来たばかりだ。いつもなら、紅葉に学校や外の世界がどんなものなのかを話すところなのだが、今日は違う。
「紅葉、用意はどのくらい出来た?」
「もう殆ど出来てるよ! あとは、お酒だけなんだけどなぁ……」
「未成年は酒買えねぇよ。皆それぞれ、持ってきてもらおう」
「そうだね‼︎」
そう。今日は、円堂や豪炎寺、鬼道ら元イナズマジャパンメンバーが蹴球神社の母屋、つまり紅葉達の家に集まり、盛大な宴会を催すのだ。この企画はかなり前から立てられており、会場が家となった紅葉達は、食べ物などを準備していたのだ。
小さい頃からよく神社に来ていた円堂達は、紅葉達にとって優しいお兄ちゃん的存在でもあり、サッカー仲間であった。
「もうそろそろ来る頃かな」
「紅葉、永久櫻を見に行ってくれないか?」
「うん」
紅葉は下駄を履き、カラコロと音を鳴らしながら、櫻の元へ向かった。
ふと、視界に櫻と人影が見えた。お客さんだろうか? 紅葉が近くの木の側で少し様子を伺っていると、その人物がこちらに気付いた。
「おぉーい! 紅葉ー!」
昔と変わらないトレードマークであるオレンジ色のバンダナ。少し日に焼けた肌に、白い歯が映える。紅葉は何者かを確認すると、ぱぁっと笑みを見せ、その人物の元へ一直線に走って行き、抱き付いた。
「円堂さん〜‼︎」
「うぉっ……とぉ……相変わらずだな、元気だったか?」
「はいっ‼︎」
猫のようにスリスリと頬ずりをする紅葉の頭を、ぽんぽんと軽く叩く。
そうしていると、他の元イナズマジャパンメンバーが、次々とやって来た。
「皆さんっ‼︎ お久しぶりですーーーーっっ‼︎‼︎」
そして、一人ひとり抱き付く。中には、紅葉のタックルに耐えられず、倒れる者も居たが。
挨拶と言う名のタックルも程々に、紅葉は母屋へ円堂達を案内する。その途中で、吉良ヒロトが話しかけてきた。
「紅葉ちゃんは、今年で何歳?」
「えーと、10歳です!」
「そっかぁ。もうそんなに経つんだね」
「懐かしいな。何も考えず、ボールを追ってたあの頃が」
そう言いながら、風丸一郎太が空を見上げる。空は既に日が沈みかけ、茜色が空を染めていた。
円堂もその言葉を受けて、一緒に空を見上げた。
「そうだな、俺達ももう20歳になるもんな! 今日は、俺達の成人と再開を祝って、楽しもうぜ!」
「ふふっ……お料理も沢山ご用意しましたよ。あ、お酒はちゃんと持って来ましたか?」
「うん。その件については、もう吉良財閥が用意してるよ」
ヒロトの秘書である緑川リュウジが、トンと胸を叩いた。実は、紅葉が1番懐いているのが緑川なのだ。理由は分からないが。そして今、紅葉は緑川に抱き付きながら歩いている。
「も、紅葉ちゃん……ちょっと歩きにくいかな……?」
「離れませんよ」
即答した紅葉が、さらにぎゅうっと抱き付く。それを見て、吹雪士郎が苦笑する。
「相変わらず懐いてるね」
「笑い事じゃないよ……。紅葉ちゃん、抱っこしてあげるから」
「ホント⁈ して下さい‼︎」
緑川は紅葉を抱き上げた。紅葉は緑川の首に腕を絡め、スリスリと頬ずりをした。
「ちょ、紅葉ちゃん苦しっ……!」
「緑川さん大好き〜‼︎」
「良かったね、リュウジ」
「他人事だと思って……」
ヒロトの言葉に、緑川は肩を落とした。そんな緑川など知らず、紅葉は緑川に頬ずりをしていた。
母屋に着いた円堂達は、リビングへ向かった。楓が料理を並べており、円堂達の到着を待っていた。
「いらっしゃい、円堂さん達……って、紅葉! 緑川さん迷惑してるだろ、降りろ‼︎」
「あ、大丈夫だよ、楓くん。紅葉ちゃん……寝てる」
「は? 寝てる⁉︎」
楓は紅葉を緑川から渡してもらい、顔を見てみた。紅葉は大きな目を閉じ、すぅすぅと小さな寝息を立てていた。
「紅葉ちゃん、疲れてたんだよ。朝から用意してくれたんだろ?」
「あ……はい……」
この日の為に、紅葉は朝から料理を作っていた。久しぶりに円堂達に会える、と張り切っていた。
楓は眠った愛しい妹の髪を優しく撫で、円堂達に向き直った。
「俺、紅葉をベッドに寝かせてきます。円堂さん達、楽しんでって下さいね」
「おう、紅葉は任せたぜ。よし、みんな‼︎ 飲もうぜ‼︎」
「「「「おう‼︎‼︎」」」」
楓は紅葉をお姫様抱っこして、紅葉の部屋に連れていった。
「えへへ〜えんどーくーん〜」
「そめおかくーん〜おうちつれてってよ〜」
「よぉきどークン、飲んでるかぁ?」
「…………ダメだ、完全に酔ってやがる……」
楓は酔いがまわった大人達を見て、溜息をついた。ていうか吉良財閥どんだけ酒持ってきてんだよ、まだあるぞおい。楓が心の中でツッコミを入れたところ、ドアが開く音がした。
「んぅ……」
紅葉が起きてきたのだ。目をゴシゴシとこすり、よたよたと頼りない足取りで歩いてきた。
「あ、起きたか」
「ん……あれ? 円堂さん達は?」
「絶賛酔い潰れ中」
「?」
紅葉はどうでも良さそうに、後頭部を掻いた。
楓はこのままではこの酔っている大人達に絡まれたら面倒だと思い、紅葉を連れて自分達の部屋へ戻った。
ーーーー翌朝。楓はまだ重い瞼をこすり、体を起こそうとした。だが、体が重い。金縛りか? いや、ないないと自分で自分にツッコミを入れ、再び体を起こそうとすると、やはり体が重い。しかも何だか腰に違和感が……? ゆっくりと目を開けると…………。
「⁈ う、うわあああああああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎」
一方、まだ夢の中だった紅葉は、先程の楓の大声に目を覚ました。何事か、まさか悪霊か⁉︎ 紅葉の脳内を、嫌な予感が支配する。
紅葉は急いで楓の部屋へ走った。ノックもせず、バンッとドアを開けると……。
「楓‼︎ 無事⁉︎」
「も、紅葉ィ‼︎ 頼むから助けてくれ‼︎」
楓が昨日酔い潰れた円堂達の抱き枕になっていたのだ。紅葉はその光景を見た途端、ポカンと立ち尽くした。そして、立ち去ろうとした。
「何だ……悪霊じゃないんだ。そっか……」
「ちょ、紅葉‼︎ 頼むッ‼︎ 頼むから助けてくれぇぇ‼︎ 後でショートケーキ買ってやるから‼︎」
その言葉に、紅葉の肩がピクッと動いた。甘党である紅葉は振り向きざまに手に火の玉を出し、円堂達に飛ばした。
「ショートケーキィィィィィィ‼︎‼︎」
「「「「ぅぎゃああああああああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎」」」」
……………………朝から、蹴球神社母屋に、大声が響いた。
後に、円堂達は紅葉に逆らわず、楓はちゃんとケーキを買ってあげたそうだ。
……はい、お粗末様でした。
あ、本編にはなかなか出てこない蹴球神社の内部も出てきましたね。紅葉ちゃん達が住む母屋に、永久櫻。
永久櫻は、本編でも重要なポジションとして出てくると思います。多分。詳しい解説は、本編に出てきた時にします。
お付き合い頂き、ありがとうございました。