それではどうぞ。
ついに来た、栄都学園との練習試合。サッカー棟で集合なんだけど……。
「うぁぁぁぁぁ‼︎ 遅刻するぅぅぅぅぅ‼︎」
くっそぅ! 何でこんな時に髪が結べないんだよぉぉぉぉぉ! 何とか結べたけど、時計見たら集合時間20分前……ちょ、ボクの家から雷門まで30分くらいかかるよ! うぎゃあああああああああ‼︎
ーーーーーってことで、ボクは只今全力ダッシュしてます。そりゃもう全力で。道路とか塀とかすっ飛ばして走ってます。あ、良い子はマネしちゃダメですからね! めっ! ようやく校門が見えてきた。うおおおお‼︎ 間に合って〜〜‼︎
ボクは校門を飛び越えて、校内に入った。そしてまたまた全力ダッシュ!
「おはようございますーーーッ‼︎」
急ブレーキを掛けながら、ボクはみんなに挨拶した。何とか拓人の前で止まった。時計を見ると…………よしっ、5分前! つまり15分で学校に行けた!
「お……おはよう、紅葉」
拓人が若干引いている。うん、確実に引いている。でも取り敢えず挨拶を返しておく。
「おはようございます、拓人♪」
「? 何か嬉しそうだな」
「はい! だってだって、今日家出たの20分前ですよ? いつもは30分くらいかかるのに、今日走ってきたら15分で行けちゃいましたもん!」
「え、そっち?」
「え?」
「……………………そ、そうか。よかったな……」
何かまた拓人に引かれているような……。
ボクが周りを見ると、全員揃っていた。ボクが最後だったか〜。
「お前って、結構トロいんだな」
からかうように言ってきたのは……………………ん?
「誰だっけ?」
「おいコラ」
そう言われて、デコピンされた。痛いんですけど! 結構いい音したよ?
「3年の南沢篤志だ」
「ああ〜そうでしたね」
「興味なしかよ。っていうかお前……」
「はい! 何でしょうか、南沢先輩!」
今度はビシッと敬礼したボクを見た南沢先輩は、フッと笑うと、頭をポンポンと軽く叩かれた。
「ほんっとちっちゃいよな〜。倉間よりちっちゃいんじゃねぇの?」
「んなっ‼︎」
そんなことないーーーーーと言おうとしたら、あの時のことを思い出した。
そう。ボクと倉間くんが初めて話した時。あの時ボクは……彼を見上げながら話していた‼︎
「……そんな屈辱的なこと思い出させないで下さい」
「まあ気にすんなよ。俺はちっちゃい女の方が好きだぜ?」
南沢先輩はそう言って、前髪を掻き上げた。うーん、最後の仕草はいるのかな? ボクが首を傾げていると、倉間くんも来た。
「……南沢先輩、何紅葉を口説こうとしてんですか」
「口説こうとなんかしてねぇよ」
南沢先輩はニコッと笑うと、今度はボクの頭をなでなでしてくれた。優しい手つき……。何か、落ち着く……。ボクは自然と、南沢先輩に抱きついていた。
「なッ! お、おい紅葉‼︎」
「?」
「先輩〜もっとなでなでしてください〜」
南沢side
俺が紅葉の頭を撫でてやると、紅葉が突然甘えてきた。元々妹系だからか、実際に甘えられると、凄くしっくりくる。
まるで兄に甘えてるようにぎゅーっと抱きつき、頬同士ではないが、スリスリと頬ずりをしてくる。…………何だろうな。紅葉はスキンシップが好きなタイプなのか?
もっと紅葉のいろんな顔を見てみたいと思った俺は、敢えてなでなでをやめた。いや、本心ではこいつが可愛いからもっとやってやりたかったんだけど。そしたら紅葉は抱き締める力を強くし、離れなくなった。ま、紅葉の腕力だから、あまり苦しくなかったけどな。それでもなでなでをしない。不安になったのか、紅葉は顔を上げて……。
「なでなで…………してください……南沢先輩……」
上のセリフだけでは伝わりにくいかもしれないけど、これはめちゃくちゃヤバい。紅葉はうるうると涙目で、上目遣いしてきた。身長差があるから、必然的に上目遣いになってしまうのだろうが……。俺のジャージをぎゅっと握り締めて、じっと見つめて懇願する紅葉。俺もまさか紅葉がここまで甘えキャラだとは思わなかった。紅葉が今にでも泣き出しそうな顔でじっと見つめるもんだから、このまま放っておくのが出来なくなった。
「分かったよ……ほら」
俺が再び撫でてやると、紅葉は幸せそうに笑い、また俺に抱きついた。……こいつ、百面相か?
ま、こいつの可愛いとこが見れたからいいとするか。
紅葉ちゃん……可愛いよb
紅葉「え、お前に言われると……何か気持ち悪りぃ」
酷いっっ‼︎
そして南沢さん、もうほぼ初めてのご登場ですね。
南沢「今まで神童と霧野だけしか絡んでないよな」
まぁね。何かいろんな人を忘れていたから。南沢さんは後に退部しちゃうから、たくさん絡ませてあげるよ。私が個人的に南沢さん好きってのもあるけど。あ、言っときますが、オチは南沢さんじゃありません! オチの人は、後々分かってきます。
最後に南沢さんから一言!
南沢「俺と紅葉の初めての絡み、楽しんでくれたか? これからもよろしくな(ファサ」←前髪掻き上げ
紅葉「オレはこいつの前髪にハサミを入れてやりたいb」
南沢「おいっ⁈」