それではどうぞ。
ボクの羞恥心を何処かへ飛ばして、先輩方の自己紹介を始めた。全員が終わると、すぐにユニフォームに着替え始めた。あ、当然女子更衣室でだよ? 流石にそこまでボクはアホじゃないよ。
第二グランドに出ると、部員達が練習をしていた。ボールを追いかけて、走るみんなは、何処にでもいる普通のサッカー少年だった。
ボクは自然と頬が緩み、練習を見ていた。
ふと、コツンと足にボールが当たる。ボクは足元に来たボールを爪先で蹴り上げ、リフティングを始めた。すると、倉間くんがイラついたのか、こう言ってきた。
「お前、練習する気あんのかよ」
「え? あ……」
嫌に思われたかな……? ボクはボールを足で踏んで、倉間くんにボールを渡した。シュンとして俯いていると、ボールが転がってきた。
「……? 倉間くん?」
「ほら、練習するぞ。来いよ。ぼーっとしてると、俺に取られるぞ」
「! はい‼︎」
ボクはボールを軽く蹴り、加速した。倉間くんを抜き去り、またブロックしようとしてきた倉間くんにフェイントをかけ、走り出した。
「チッ……」
倉間くんの舌打ちを流し、ゴール前までボールを運び、普通のシュートを打った。三国先輩はボールから目を離さず、ガッチリとボールをキャッチした。ボールはしばらく回転していたが、三国先輩の手の中で、おとなしくなった。
「いいシュートだったぞ!」
「は、はい‼︎ ありがとうございます‼︎」
ボクはペコっと頭を下げ、後退していった。
「……於野……本気の半分も出さずに打ったな」
「ですね。紅葉ちゃんが本気を出せる相手は、楓くんしかいませんからね……」
…………久遠監督と音無先生がそんな話をしてたなんて、知らなかったけどね。
練習が終わり、ボクは拓人と蘭丸と一緒に帰ってた。もうそろそろ別れるときに、ボクは拓人にどうしても聞きたいことを聞いた。
「ねぇ、拓人。どうして朝から時々顔が赤くなったの?」
「えっ⁈」
またカァァと拓人の顔が赤くなる。一体どうしたのだろうか。
「風邪引いた? 熱でもあるの?」
「あ、あ、あ……べ、別に何でもない‼︎」
明らかにテンパってる。分かり易いなぁ……。←貴女は神童の気持ちを分かってないです。
すると、蘭丸がたしなめるように言った。
「紅葉、神童は疲れてるんだよ。キャプテンだしな」
「あ、そっか」
「そ。じゃ、また明日な」
「うん。拓人が倒れたら大変だもんね。拓人、お大事に」
ボクは拓人に無理をさせてはいけないと思い、拓人達と別れた。
霧野side
紅葉と一緒に帰っているからか、さっきから神童の顔が赤くなっている。まあ、好きな奴と一緒に帰れたら嬉しいよな。
紅葉はそれに気づいていたのか、神童に何故顔が赤くなっているのかと尋ねた。神童の顔がより一層赤くなる。神童はテンパり、紅葉は分かり易いなぁという表情をしていた。……紅葉、お前は神童の気持ちを分かってないぞ。
ここまでやると、流石に神童が持たない。俺は神童に助け舟を出し、紅葉を納得させた。
紅葉と別れ、神童と話しながら、2人で帰った。
「……お前も大変だな、神童」
「霧野……すまない」
「いいよ、そんなこと。紅葉が、あんなに鈍感だったなんてな」
「…………紅葉はもともと俺に恋愛感情は抱いてないんだ。ていうか、紅葉が恋愛に興味があるのかどうか……」
「おそらくないだろうな」
「だよな……」
神童が肩を落とす。あぁ、絶望のオーラが……。
「……でも、俺……気持ちを伝えるまで、頑張るよ。俺を好きになってくれるように」
「紅葉はお前の事嫌いじゃないと思うぞ?」
「それは幼馴染としてだろ? 俺は……それじゃあ嫌なんだよ……」
ーー思えば、神童が俺にこの事を話したのは、小学生の頃だった。俺なんか、初恋もしたことなくて、羨ましいなと思った。でもその相手が紅葉だと聞いた時は、びっくりした。当時の俺は、紅葉のことは友達として好きだったが、恋愛感情は抱いてなかった。話しているときの神童は、もう本当に乙女みたいだった。だから俺は、神童の恋を応援しようと心に決めた。自分の想いを心にしまって……。
なっ……き、霧野⁈ お前もか‼︎
霧野「お前が書いたんだろ。ま……確かに紅葉のことは……き、嫌いでは……ないけど」
まさか……お主、ツンデレか⁉︎ 私は好きだb
霧野「お前に好かれても困る」
なはは〜ですよね〜。最後に、霧野から一言‼︎
霧野「俺はあくまで神童を応援するつもりだけど……ま、俺達のこと、あたたかく見守ってやってくれ。これからもよろしくな」