結構重要な話になると思います。多分。
それではどうぞ。
剣城くんに連れて来られたのは、サッカー棟の裏だった。
人気の無いのを確認した剣城くんは、今まで掴んでたボクの腕を放した。
「あの、話って……?」
「…………」
ボクが尋ねても、剣城くんは何も答えない。しばらくジッとボクを見つめていたけど、確信を持ったように、口角を上げた。
その笑みを見た瞬間、ボクの背筋が寒くなった。
ーーニゲロ、コイツハキケンダ。
ボクの本能がそう察知した。でも、足が動かない。恐怖で震えているのが、自分でも分かった。動けないボクを真っ直ぐ見つめながら、剣城くんはボクとの距離を詰める。この時かろうじて、ボクの足が少し動いた。ジリジリと剣城くんが近づいてくる。ボクは後ろに下がっていくばかりで、それ以上何も出来ない。
背後に、トンという小さな音と、背中に何かが当たった感触がした。その音が、その感触が、ボクを絶望の淵に立たせた。頭の中に浮かび上がるのは、恐怖の2文字。普段人慣れしてない所為か、さらにその感情が高まった。
剣城くんはボクの顔の両サイドにそれぞれ手を置いた。
もう、逃げられないーーーー。
剣城side
監督の指示の為、俺はあのキツネ女に近づいた。目的は、こいつがあの楓さんの妹なのかを確かめることだ。言っておくが、俺はこんなチビ女に興味はない。確実にない。絶対にない。
人気の無い場所に連れて行ってから、改めてキツネ女を見る。赤い髪に、金色の目。これだけでも、楓さんとそっくりだ。だが性格が違う。まぁ当たり前か。
キツネ女を見ていると、自然と口角が上がった。確信した。やっぱりこいつは楓さんの妹だ。キツネ女は俺に怯え、俺が近づいていくのと一緒に下がっていく。ついに、キツネ女の背中が壁に当たった。その瞬間、女の顔が真っ青になった。
その反応が面白く、俺はわざと女の顔の両サイドに手を置いた。
「……お前、於野楓の妹だな?」
「え…………あ…………ぅ…………」
震えながら、唇を動かす。よく見ると、足がガクガクと震えていた。
突然、女の体が崩れかけた。腰を抜かしたのか……。
だが俺は、女の足の間に自分の足を押し込み、女を強く壁に押し付けた。
「ッ‼︎ ぃっ……」
「早く答えろ」
「ッ……ぅっ……そ、そうですよ……」
痛そうに顔を歪めながら、キツネ女は答えた。やはりそうだったか。キツネ女を見ると、涙目になって上目遣いで俺を見上げていた。
「ッ……うぅ……………ひっく…」
抑えろ、抑えるんだ俺。何こいつを襲いたいとか思ってるんだ、バカか俺は。
「痛い……」
本格的にこいつが泣き始めたので、俺はこいつから離れた。キツネ女は俺を見向きもせず、走って逃げていった。……足早えな、あいつ。
俺はしばらく、キツネ女の後ろ姿を見ていた。
余談ですが、剣城が紅葉ちゃんを呼ぶときにキツネ女と言っていましたが、あれは即興で考えました。彼は一応紅葉ちゃんが年上だと知っているようです。
あと、何故彼が楓のことをさん付けで呼んでいたかは以前会ったことがあるからです。何処でかは……分かりますよね?
これからもどうぞよろしくお願いします。