黒い瞳の同胞 〜イシュヴァール殲滅戦〜 作:リリア・フランツ
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序章 ある旅路
アメストリス。
広大な砂漠。
そしてシン。
そのシンの東端から海を越えた先にその国はあった。
弓形の島国。これという国名も無かった。
当時その国は長き戦乱の中にあり、幾多の小国に分かれ、この島国独特の戦士「モノノフ」たちが覇権を求めて争っていた。
国が敗れ、滅ぶ。
国が勝ち、大きくなる。
さらにその国が滅び、勝った国が大きくなる。
愚かな戦乱の果てに島国は二つの勢力に絞られ。
そして数年後、島国は統一された。
敗れた国の王族たちはことごとく処刑され、血は残すことなく絶やされ。
永き戦乱の時代はようやく終わりを告げた。
敗れた国の王族は島国の中を逃げ回った。
ほとんどが捕縛、あるいは逃亡の過程で命を落とした。
しかし、一人の男が逃げ延びた。
その男は荒れる海を越え、シンにたどり着く。
シンまではさすがに追手がくるはずもない。
しかし男は病んでいた。
くるはずがない追手の影に脅え、眠れない夜が続く。
やがて疲弊した男は再び逃げ出す。
シンを転々とし。
やがてシンを抜け出し。
砂漠の真ん中、巨体な遺跡群の中でその男は死んだ。
男に従者がいた。
男に付き従う、という使命を失った従者は遺跡群を離れ。
やがてアメストリスの東の交易都市にたどり着く。
そこで行き倒れた従者はある民族の少女に命を救われた。
その少女は赤い瞳に白い髪、そして褐色の肌を持っていた。
やがて従者は少女と恋に落ち、契りを結んだ。
従者はこの場所を終の住処として子孫を残した。
黒き髪、黒き瞳を持った従者は子孫に二つのものを遺した。
ひとつは己が身に付けたモノノフの剣術。
そしてもうひとつは。
己の苦難を写し続けた黒き瞳…。
にじファンより移住してまいりました。
駄文ですがよろしければお付き合いくださいませ。