⊕月(っ´ω`c)日
NERVとZ-BLUEが力を合わせたヤシマ作戦、アブダクターや機械獣軍団の連中が武力介入してきた事により一時戦線は危うい状況にあったが、彼等の持ち前であるガッツな底力により連中を撃退、菱形の使徒もシンジ君の放った超高出力の電磁砲によりコアを破壊。作戦は無事成功となった。
自分もシンジ君が乗る初号機を守る為に戦線に参加し、後からルルーシュ君ことゼロも蜃気楼と共に作戦に参加した事で盛り返す事に成功したのだが、その後自分はちょっとしたイザコザに巻き込まれてしまったのだ。
巻き込まれたというより、俺が巻き起こしたんだけどね。そりゃ再世戦争で自分達と戦った機体が戦線に乱入したとあれば戸惑いもするさ。……うん、シンジ君を気絶させた事と良い今回の俺ってばまるで役立たずじゃん。今回のヤシマ作戦はルルーシュ君が立てた作戦みたいだし、彼からすれば今回の俺は足を引っ張る厄介な人間でしかなかっただろう。
いやでもさ、まさか顔を合わせただけで気絶するなんて誰も思わないじゃん? 予想なんて出来ないじゃん? ……世間から見た蒼のカリスマってそんなにおっかないイメージ持ってたっけ? 映画化されているとか聞いたから、てっきりもっと親しみやすくなっていると思ってたけど……違うの?
で、全ての敵を撃破し、作戦が終わった所までは良かったんだけど、先も述べた通りこの時ちょっとしたイザコザが起こり、居心地が悪くなった自分は逃げるように第3東京市から離脱したのだ。
だってさ、色んな人が通信を送ってくる中、二人だけ何も言わずにこっち見てるんだもん。ヒイロ君とゼクスさん、一番自分に対して言いたい事があるだろうお二人さんが何も言わずジッと此方を見てるんだもの。居たたまれなくなっても仕方ないじゃない。
もうアレだね。コッチが不穏な動きを見せたら即斬り掛かってくる勢いだったね。特にゼクスさんの乗るトールギスⅢからの視線が個人的にはキツかったですはい。因みに、ゼクスさんは現在大統領直属の部隊に属しているらしく、所謂裏方で世界の役に立とうとしているのだとシュナイゼルから聞いていた。彼の乗っている機体についてもこの時に教えて貰っていました。
そんな訳で、個人的にその場にいる事に辛くなってきた自分はこのままルルーシュ君に自分の事を暴露される事を恐れ、トールギスⅡのスラスターを噴かせて即時撤退、煙に巻く様に逃げ出したのである。
まぁ、ルルーシュ君はああ見えて義理堅い子だし、彼が人の秘密をバラす様な事はそうそうしないと思うし、そこら辺はあまり心配してないけどね。本当はただあそこに居辛かっただけだし。
ともあれ、これで再び一人で戦う事になった自分ですが、めげずに頑張って行こうと思う。
ただ、少し気になった事が一つ。戦線に参加したあの青い機体、何だか知り合いの動きに似ていた気がするけれど……気の所為だろうか?
⊕月@日
今日、シュナイゼルから重要な報せが届いてきた。先のヤシマ作戦での戦いにより摩耗したトールギスⅡの整備をしていた時の事だ。秘匿回線で寄越してきたアイツの通信を開くと、驚くべき内容がシュナイゼルの口から飛び込んできたのだ。
“マリーメイアの決起”しかも政府の要人を人質に取ってブリュッセルの施設に立て込んだというシュナイゼルの話をヤケに冷静に聞いている自分がいた。きっと心の何処かでこの日が来ることを分かっていたのだと思う。
けれど、まさか人質としてナナリーちゃんやリリーナちゃんを誘拐していた事は驚いた。彼女達は先の争乱の事もあり、身柄は厳重な警戒網で囲われていた筈。特にナナリーちゃんの方は元が付くとは言え、ナイトオブラウンズの人が常に護衛に回っていた筈だ。
ジノ=ヴァインベルグ君、当時の帝国の中でも腕利きの猛者として知られる彼の守りがこうもあっさりと破られるのは少々納得がいかないモノがある。コレにはシュナイゼルも同感していた様だったので彼に訳を訊ねた所、何とも奇妙な話が出て来たのだという。
“理由は分からない。だがそうしなければいけない気がした”
この話を聞いた時、彼の正気を疑うよりも先に自分は違和感を感じ、そして同時に怖気を感じた。まるで何かから命令されたかの様にそう呟く彼を見て、シュナイゼルはまるでギアスに掛かったようだと話す。
確かに人を縛り付けるという意味ではギアスこそが有力な説かもしれない。けれどルルーシュ君がそんな事をするとは思えないし、何より妹を危険な目に遭わせる様な真似は絶対にしないと断言できる男だ。そんな彼が今回の事件に関係しているとは思えない。
オマケにこの事例と似たような話を自分は知っている。そう、あのX-18999コロニーで起こった騒動と同じ出来事が彼にも起きているのだ。あの時も暴徒化したのは突然だと聞くし、あの時の聞き取り調査でも暴徒化したパイロットは皆、今のジノ君と似たような事を話していたと耳にしている。
ギアス以外の何か、人を無意識に縛るその力に自分に心当たりはないが……可能性の一つとして提示出来るモノがある。
“スフィア”次元力を引き出す機関として知られ、それを手にしたモノには超常的な力を与える摩訶不思議な代物。クロウさんの相棒であるリ・ブラスタにもこのスフィアが動力源として搭載されていると聞く。
そのスフィアの扱いに長けたモノは事象をねじ曲げて無限の力を引き出すらしく、嘗てのアイム=ライアードもスフィアを扱って自分の死すら嘘にしたという実績を叩き出している。
そのスフィアにどれだけの力が備わっているのか未だに不明な所は多いし、本当に人を操るなんて事が出来るのかも分からない。けれど偽りの黒羊、尽きぬ水瓶、揺れる天秤の共通部分に気が付いた自分としては、今回の件に無関係とは言えないと思えてしまう。
この三つに共通しているのは……ズバリ“感情”である。
例えば、揺れる天秤は両脇に添えられた秤に目を向けがちだが、本質はその秤を支える支芯にある。例え気持ちは揺れてもその奥にある意志だけは折れないとそう言う意味なのだとか。再世戦争の時そう言った話を前にZEXISでチョロッと耳にした事があるから、多分間違いではない筈。
偽りの黒羊も己すら騙す虚栄心が関わっているらしいし、尽きぬ水瓶もスフィアの持ち主であるユーサーの国民に対する尽きる事のない愛がトリガーになっていたらしい。アサキムの持つスフィアの知りたがる山羊も、好奇心という言葉が当てはまる。
この事を踏まえれば、スフィアにはそれぞれ強い感情を引き金にしており、その時の想いの強さによってスフィアの力を引き出すモノだと自分は考える。
そのスフィアの力が他者にまで及ぶのかと訊ねられれば応える事は出来ないが……何分スフィア自体が謎の塊なのだ。そうそう否定する事は出来ないだろう。
以上の事を踏まえ、且つ今回の裏に潜む首謀者の事を考えると、恐らく相手は憎しみとか闘争心とか、そういったモノをトリガーにするスフィア所有者だと個人的に予想する。
シュナイゼルにはスフィアの事を触り程度に話しておいたが、どうやら奴はスフィア関連に関しては何も知らないらしく、自分が話すスフィアの話も終始不思議に首を傾げていた。
アイツならこの位知ってそうなモノだけどなぁ。取り敢えずその時自分はスフィア関連についてはトライア博士に聞けと言って通信を切った。本当ならもう少し情報を交換しておきたかったが、シュナイゼルから聞かされる地球連邦の動きに自分は急がざるを得なくなった。
なんと、連邦政府はマリーメイア軍のいるブリュッセルにN2爆雷を落とす事を決定付けたのだ。恐らくは地球至上主義の連中が関与しているのだろう。あの聡明な大統領が、ナナリーちゃんやリリーナさんが人質に取られる中で、戦略兵器を落とすなんて考えられない。
シュナイゼルが言うにはN2爆雷を落とすにはまだ幾分かの猶予があるらしいが、残された時間はそんなに残されていない。自分は今大慌てでブリュッセルに向かっている最中なのである。
恐らくZ-BLUEもブリュッセルに向かっている事だろう。自分も辿り着き次第状況に応じて行動するつもりだ。
なので、一方的ではあるが今回の日記はこれで終了する事にする。
◇
───ブリュッセル、施設地下。
幾つもの核シェルターで覆われた地下基地の司令室にて、モニターに映し出されているZ-BLUEが自分達の軍勢を相手に苦戦する様を見て、マリーメイア軍の総指揮官であるデキム=バートンはその表情を悦の笑みに歪める。全ては自分の思惑通りだと、そう信じて疑わない男にリリーナ=ドーリアンの冷たい声が司令室に響き渡る。
「デキム=バートン、今すぐ戦闘を停止なさい。こんな戦いを引き起こしてもなんの意味はありませんよ」
周囲に武装した軍人が自分に銃口を向けているが、それでも彼女は意志を弱める事なく、その眼光で今回の件の主犯格であるデキム=バートンを睨みつける。
しかしそんな彼女の前に立ちふさがる者が現れた。まだ幼い顔つきでありながら既に王者の風格を現している少女、マリーメイア=クシュリナーダ。自らトレーズの娘であるとする少女が、その無表情のままリリーナの前に立つ。
「リリーナ=ピースクラフト、先程も仰いましたよ。今のあなた達は人質、ご自分の立場を理解した上で発言しなさいと」
「マリーメイアさん、貴方は、どうしてそこまで」
「それも先程説明しましたよ。ナナリー=ヴィ=ブリタニア、私は勝者になるのです。敗者になる事で世界を導こうとした父とは違い、私は勝者となる事で世界を正しい方向へ導こうというのです」
「そんなの、誰も望んでません!」
「私が望んだ事です。私が望み、私が統治する事で世界はより良い方向へ導かれる。何故それが分からないのです」
───あぁ、ダメだ。今の彼女には自分達の言葉では届かない。まるで決められた台詞をそのまま口にするマリーメイアに、ナナリーは唇を噛みしめる。
対するリリーナは、歪んだ思想と思考を植え付けたデキム=バートンを睨みつける。洗脳に近いやり方で一人の少女を歪めた男を怒りと軽蔑の視線で穿つも、当のデキムは鼻で笑って肩をすくめている。
圧倒的物量を前に徐々に圧され始めるZ-BLUE、そこへネオ・ジオンの横槍が入り、戦局は更に泥沼化しつつあったその時、地下の司令室に敵影キャッチのアラームが鳴り響く。
「何処からだ?」
「じ、十二時の方角より機影1! ですが……これは!?」
これまでとは違い動揺を見せるオペレーターにデキムは訝しむ。一体何がここへ来ているのか。
(まさか、例の魔神か!?)
デキムの頭に思い浮かぶのは、破界事変と再世戦争でその猛威を揮ったとされる蒼き魔神。当時の地球連邦の半分の戦力を単騎で殲滅したという話は、当時宇宙コロニーにいたデキムにも戦慄と恐怖を与えた。
(だが、その心配はない筈だ! 奴が出て来た時は“彼等”が対処するのだと!)
自分の背後にいる者達の事を考えながらデキムは内心で焦り始める。額から大粒の汗を流し、部下にその機影をモニターに映せと指示を飛ばした時。
「そんな……バカな」
デキムの表情が驚愕の色で彩られる。
モニターに大きく映し出された映像の中には、弾幕を潜り抜きながら突貫してくる青い機体。
────トールギスⅡの姿が映し出されていた。
次回、炸裂!ボッチ神拳!
……多分嘘。