『G』の日記   作:アゴン

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体調を崩してしまい、更新が遅れました。

今回の話、別名“真・エレガント無双猛将伝”

最近、エレガント閣下を書くのが楽しくなってきました。


その58

宇宙要塞バルジの周辺宙域。ホワイトファングが挑む最後の戦い、死力を尽くして戦う彼等に対し、ZEXISもまた死力を尽くして応戦した。

 

気迫も覚悟も、これまでの敵とは段違いの相手にZEXISは最初こそ戸惑ったが……彼等もホワイトファング同様に相応の気持ちを持ってこの戦いに臨み、挑んだ。

 

世界にリアルタイムで発信される事と知りながら、人間の愚かさを見せ付けようと画策するイノベイターの策略に敢えて乗り、ZEXISとホワイトファングの両者は最後の戦いを繰り広げていた。

 

そんな中、ZEXISは宇宙戦艦リーブラから出撃してくる機体に苦戦を強いられている。ホワイトファングのリーダーであるミリアルド=ピースクラフトの駆るガンダムエピオン。

 

Mr.ブシドーと名乗り、これまでアロウズの───イノベイターの下でZEXISと幾度となく戦った彼は、擬似太陽炉搭載型MSであるスサノオを操り、ソレスタルビーイングと戦い。

 

そして、OZの元総帥でありロームフェラ財団の幹部だった男、トレーズ=クシュリナーダの機体トールギスⅡの出現により、ZEXIS側に傾いていた戦局の流れが再び変わり始めた。

 

宇宙要塞バルジ。コロニー支配の象徴と呼ばれるその周辺宙域で繰り広げられる死闘。光が弾け、その度に命が散っていく戦場で彼等は戦い続けた。悲しみでもなく怒りでもなく、己に課せられた使命の為に戦い、守るべきモノの為に光と共に消えていく戦場に、世界中の人々はテレビに映し出されているその映像を前に、罵声も罵倒もせず、静かにその行方を見守っていた。

 

涙を流しても、それでも目を背けてはならないと誰もがその光景を見つめ続けていた。大人も子供も関係なく、人類全てがこの戦いを見守り続ける中、二つの機体が激突した。緑色のガンダムと青と白のカラーリングを施されたMS、それぞれの得物で唾斬り合う二機はそれぞれ違った感情を抱きながら、激しくなる戦場を駆け巡る。

 

『どうしたのかね五飛、君の実力はそんなものだったのかな?』

 

『黙れトレーズ! 貴様を打ち倒し、今回の戦いを起こした責任を取ってもらうぞ!』

 

『ならば、その刃で私を止めてみせるといい。君も自身の正義を語るのなら、己の行動で示してくれ』

 

『貴様ぁっ!』

 

交差する青と緑の機体、五飛の操るアルトロンガンダムがビームトライデントでトレーズのトールギスⅡに斬り掛かるが、その異常な機動性と加速力によって避けられ、アルトロンの攻撃は虚しく空を切る。

 

瞬間、コックピットに鳴り響くロックオンアラートに五飛の顔が凍り付く。そんなバカなと否定しながら振り返ると、そこには此方の攻撃を避けたトールギスⅡの姿があった。ドーバーガンを向けられ、五飛は額から大粒の汗が流れる。瞬間、トールギスⅡから向けられていた銃口より光が放たれ、勢いは落ちる事なくアルトロンの背後に着弾しようとしていた。

 

だが、この時五飛が無意識に咄嗟の行動をした事が幸いし、放たれた弾丸は振り向こうとしたアルトロンガンダムの左肩に被弾。元々左肩には楯が装着されており、実質アルトロンは無傷でトールギスⅡの攻撃を防ぐ事が出来た。

 

けれど、この程度で気を抜く事は許されない。追撃を恐れた五飛はアルトロンガンダムを操り、少しばかりその場から離れる。だが、トールギスⅡからの追撃は来なかった。戦いに優雅さや美しさを見出すトレーズだが、戦いの中で勝機を見逃す程甘い男ではない。その事に訝しげに思う五飛だが、トールギスⅡ周辺を囲う白い物体により、何故彼が追撃を仕掛けてこないのか納得がいった。

 

『五飛、今の奴を相手に一人で戦うのは危険だ』

 

『私達も加勢させてもらう。納得出来ないだろうが理解して欲しい』

 

『アムロ=レイ、それにクワトロ=バジーナもか』

 

挟み込むように現れる白と金の機体。それぞれライフルをトールギスⅡに向けているが、今の所撃つ様子はない。アムロに至ってはフィンファンネルでトールギスⅡを囲んでいるというのに、仕掛ける素振りは微塵も見せていない。

 

まるで撃っても避けられるのを分かっているかの様な……ニュータイプの感覚が撃っても無駄だと告げているのか、アムロはνガンダムをそこから動かそうとはしなかった。

 

そんな時、トールギスⅡから笑みが聞こえてくる。こんな時に何を笑っているのか、不謹慎な態度を取るトレーズに五飛は苛立ちと悔しさを露わにする。

 

『……五飛。私は君に一つ謝らなければならない事がある。一対一の戦いを君は望んでいたようだけれど、実は私は一人で君と戦っていた訳ではないのだよ』

 

『……何だと?』

 

いきなり頓知な事を言い出すトレーズに五飛は訳が分からないといった様子で眉を寄せる。彼の口から告げられるその言葉をクワトロとアムロも不思議に思うが……実際、目の前のトールギスⅡは一機だけだ。

 

これまでも五飛はずっとトールギスⅡとトレーズだけと戦っていた。その間にホワイトファングの兵士達による横槍は無かったし、 ミリアルドやMr.ブシドーもそれぞれの戦いをしているだけで、加勢した様子は一度もない。

 

一体何を言っているのかと不思議に思う五飛達だが、トレーズはやはり笑みを浮かべ、分からないのも無理はないと話を進めた。

 

『私の乗る機体、トールギスⅡは我が友達二人による手助けのお陰で成り立っている。機体のデータはゼクス……いや、ミリアルドの嘗て愛機であったトールギスを参考にし、もう一人の友であるシュウジがこの機体の仕上げに手を加えてくれた。彼等のお陰で完成されたこの機体は正しく私達三人の力の結晶。つまり五飛、我が友よ、君は最初から私達三人を相手に一人で戦っていたと言うわけだ。───騙し討ちの様な真似をして、済まなかった』

 

トレーズの謝罪に五飛達は面食らう。確かに彼の言うようにトールギスⅡは様々な人の手が加えられた特別な機体だ。嘗てライトニング・カウントが駆ったトールギスの戦闘データを下に組み上げられた機体、更にそこへシュウジ=シラカワという優れた技術者が手を加えた事により、トールギスⅡの機体性能は使い手を選ぶ代わりに、本来よりも遙かに高性能な戦闘力を有する事になった。

 

その機体を十二分に引き出せる様になっているのは紛れもなくトレーズの実力。だが、彼は単騎で挑んでくる者に対し、些かアンフェアを感じているという。

 

トールギスⅡを操るのはトレーズの力、だがそのトールギスⅡは二人の友人の手によって生まれたモノ、その事に関してトレーズは感謝をしているが、同時に敵対者に対する躊躇を抱いてしまっていた。

 

これではあまりにも失礼だ。敵対する者に対しても、そして自分自身に対しても、トレーズは五飛との一騎打ちの最中に己を叱咤していた。そこへ現れたクワトロ=バジーナとアムロ=レイ、彼等の登場によりトレーズは己の内に刺さっていた楔が抜け落ちる感覚を感じた。

 

トレーズは感謝する。目の前の敵対者に、トレーズは謝罪する。未だ迷っていた己の心の未熟に対して……。

 

これで三対三、対等な立場となった事でトレーズは心の内で今度こそ遠慮はしないと決意し、誓う。最大限の礼儀と誇りを持って、トレーズは目の前の敵を屠る事にした。

 

気迫も威圧感も前とは違う。これがトレーズ=クシュリナーダの本気かと、アムロとクワトロは警戒を最大限に高める。これからが本当の戦いだと、そう気持ちを新たにする一方で……。

 

『……ふざけるなよ、トレーズ。お前はどこまで他人を見下せば気が済むんだ!!』

 

五飛は激昂する。訳の分からない理屈で自己満足し、訳の分からない言い分で他者を惑わそうとする。そういうやり方を心の底から軽蔑する五飛は目の前のトレーズに対し、最大限の殺意をぶつけた。

 

だが、そんな五飛の殺意も彼の笑顔を崩すまでには至らない。トールギスⅡのコックピットで不敵に微笑むトレーズに五飛はアルトロンのスラスターに火を噴かし、一直線に斬り掛かっていく。

 

アムロとクワトロはそれぞれ援護射撃でトールギスⅡの動きを牽制するが、トレーズはそれをあざ笑うかのようにトールギスⅡを操り、二人の援護射撃の射線をかいくぐる。

 

『っ!?』

 

『さぁ、第二ラウンドを始めよう。私を失望させないでくれよ? ZEXIS!』

 

これまでとは速さも機動性も違う。桁違いの性能に五飛は面食らうが、そんな隙も与えないとばかりにトレーズはアルトロンの懐に潜り込み、彼に向けて蹴りを放った。

 

蹴り飛ばされて体勢を崩すアルトロン、今度こそ追撃を仕掛けるトールギスⅡだが、そこにνガンダムのファンネルと百式のライフルによる弾幕が向けられる。

 

だが、それでもトールギスⅡには当たらない。百式の誘い込む為の射撃も敢えて踏み込んで避け、そこで待ち受けていたファンネルによる縦横無尽の攻撃もトレーズは全て“見てから”回避した。

 

デタラメな機動性、デタラメな加速力、唯一の欠点である火力不足もその手数と速さによって補われてしまう。これがトレーズ=クシュリナーダの本気か、自身の攻撃を避けられた事に戦慄を覚えるクワトロとアムロだが、唯一五飛だけは闘志を絶やさずにいた。

 

『こ、のぉぉっ!!』

 

崩された体勢を無理矢理に戻し、所々から火花を散らしながらも五飛はトレーズを迎え撃つ。アルトロンのトライデントとトールギスⅡのサーベル、二つのエネルギーの衝突により両者の間で激しく火花が弾け飛ぶ。

 

『そうとも、そうでなくてはいかん。五飛よ、我が最大の理解者よ。どうか君の手でこの戦いに終止符を打ってくれ!』

 

『トレーズゥゥゥウッ!!』

 

微笑む者と激昂する者、様々な意志を抱きながら戦いは第二幕へと移行する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────宇宙要塞バルジ・内部。トレーズによって斬られたシュウジはホワイトファングの手厚い手当を受け、コロニー支配の象徴と知られるこのバルジで、リリーナ=ピースクラフトと共に幽閉されていた。

 

意識が回復し、今度こそトレーズを止めようとバルジからの脱出を試みるシュウジだが、彼の前に一人の女性が立ちはだかった。

 

レディ=アン。嘗てトレーズの懐刀と恐れられた彼女が銃を片手にシュウジの前に立つ。意外な人物の登場にリリーナは言葉を失うが、シュウジの方は誰だか分からず軽く混乱していた。

 

(レディ=アン、なんかどこかで訊いた話だけど……そういや、コロニー側との交渉で地球連邦から遣わされた平和の交渉人とかだった人だっけ?)

 

これまでの旅の中で見聞きした情報の中にそんな人物がいたことを今更ながら思い出す。自分とは接点が欠片も無かった為に、今の今までその僅かな記憶は忘却の彼方に消し飛んでいた。

 

シュウジは蒼のカリスマとして、目の前の女性にそこを退いて欲しいと願い出るが、レディ特佐はその要望に応える事はなかった。

 

「レディ=アン特佐、申し訳ないがそこを退いては頂けないか? 今の私は急ぎの用事があってね」

 

「言った筈だ。貴様に拒否権はない。お前はここで大人しくしてもらい、トレーズ閣下の願いを聞き入れてもらう」

 

「その様子だと、貴方も彼の目的を知っている様ですね」

 

シュウジの言葉にレディ=アンは当然だと返す。そして、更なる敵意を募らせて銃を突き付けてくる彼女にリリーナは止めなさいと止めようとするが、二人はそこから一歩も動く事はなかった。

 

「蒼のカリスマ、何故貴様があの方の友人と呼ばれているのかは知らんが、閣下から直々に任された以上、喩え貴様であってもここから出す訳にはいかない。死にたくなければ大人しくしていろ」

 

「貴方がどれほどトレーズ閣下を慕っているかは私には計り知れませんが……成る程、流石は彼の懐刀と呼ばれるお方、その忠誠心はジェレミア卿とも渡り合えそうだ」

 

「……バカにしているのか貴様は」

 

目を細め、敵意どころか殺意すら滲み出てくるレディに、蒼のカリスマはまさかと肩を竦める。

 

「ですが、貴方に譲れないものがあるように、私にも譲れないモノがあります。───もう一度言います。そこを退きなさい。今の私にはあまり余裕がありませんからね、女性といえど……あまり、優しく出来ませんよ?」

 

仮面の奥で鈍く光る瞳、そこから感じ取れるハッキリとした怒気に、レディは冷静さを装いながらも戦慄を覚えた。

 

この男がどんな存在であれ、破界事変から続く戦乱を単独で生き抜いてきた猛者だ。一人でインペリウムと対立し、一人で世界と対立し……そして今、魔人と恐れられる存在が自分の前に立っている。そんな化け物を相手では瞬き一つも許されない。レディ特佐の緊張感が高まる一方───。

 

(参ったなぁ、この人想像以上に頑固だ。説得するのは少し無理っぽいな。あんまり暴れると傷も開きそうだし、どうにかしてここから脱出しないと……)

 

蒼のカリスマは仮面で表情が読みとれないことを良いことに、部屋からどう逃げ出すか算段を立てていた。とは言え、この部屋から出ていけるのは目の前にある扉のみ。通気口位しか出られそうに無いことを確認すると、蒼のカリスマは別の方法で抜け出せないか脳内で模索する。

 

ワームホールを開いてグランゾンを呼び出すか? 却下。ここでグランゾンを出してしまったらリリーナにまで被害が及ぶ。

 

捻り貫き手で壁に穴を開けるか? 保留。壁を壊して脱出するにもまずは目の前の女性をどうにかしなくてはならない。

 

他にも何処かの端末に繋いでハッキングを試みたり、強攻策を考えたりする事はあったが、どれもこれも目の前のレディ=アンという一人の人間によって阻まれ、蒼のカリスマの案は断念せざるを得なくなっている。

 

目の前の女性は自分の一挙一動を全て監視している。もし不審な行動を僅かでも見せれば彼女の手に持つ拳銃から容赦なく鉛玉をプレゼントされる事だろう。そうなれば敵対は免れず、最悪の場合彼はリリーナさんの前で殺人現場を見せ付ける事になるだろう。

 

レディ=アンはトレーズの懐刀と呼ばれる存在、友人の大事な人を死なせる事は流石にしたくないが、いつまでもここに大人しくしている訳にもいかない。だが、行動を起こすにしても僅かばかりの“間”が必要とされる以上、蒼のカリスマ───シュウジの選択肢は必然と狭められてしまう。

 

いったいどうする? このままでは自分はトレーズを止める事も見届ける事も出来ないまま終わってしまう。どうにかしてこの状況から脱したいと思ったとき、それは突然起こった。

 

 リリーナのいる場所とは反対の壁が爆発。壁を吹き飛ばす為の火薬の量が多かったのか、彼等のいる部屋は瞬く間に煙で蔓延する。

 

その最中、レディ特佐は見た。部屋を破って侵入してきたヒイロ=ユイの姿と、その隙を突かれて手に持っていた銃が蒼のカリスマによって払われる瞬間を──。

 

「し、しまっ───」

 

次の瞬間、うなじから伝わってくる衝撃にレディ=アンの意識は強制的に閉ざされた。煙の中からリリーナの下に駆け寄ったヒイロ=ユイが目にしたのは、無傷で座り込んでいるリリーナと床に倒れ伏しているレディ=アン、そして───。

 

血塗れの白いロングコートを肩に掛けて部屋を後にする仮面の男の後ろ姿だった。

 

 

 

 

 




もしこの主人公がスパロボOGに跳ばされたら?

1、アクセルさんやトウマ君達と同じ体力バカの仲間入り。

2、シュウ様御一行の仲間入り。但しパシり扱い。

3、グランゾンも一緒に転移してしまう為世界中から敵視されてしまう。(シュウ様だけは味方?)

どちらにしても碌でもない事になりそうなのは必須(暗黒微笑)


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