『G』の日記   作:アゴン

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今回は会話メインな為短めです。


その7

 

 

それは、彼等にとっては唐突な出来事だった。“WLF(世界解放戦線)”という国際テロリスト達の基地情報を入手した新部隊“ZEXIS”はコレを掃討する為にアザディスタン付近の砂漠地帯に直行。

 

抵抗するテロリスト達を退け、基地を壊滅状態にまで追い詰めたZEXIS、しかしそれは三大国家の連合軍によって仕組まれた罠だった。

 

圧倒的物量と軍の挟撃によりZEXISが絶対絶命の窮地に立たされた時───奴が現れた。

 

「スメラギさん! 周囲に強大なエネルギー反応を感知、これは……地中からです!」

 

「何ですって!?」

 

これ程までにない強大なエネルギー反応の出現に、プトレマイオスの艦長であるスメラギ=李=ノリエガを始めとしたクルー全員が驚愕した時、その驚きは更なる驚愕によって塗り潰される。

 

地響きと共に地中から姿を現したのは、最近話題になっているも、その目的、正体共に謎に包まれた“魔神”だった。

 

戦場が凍り付いた。突然現れた正体不明の魔神の出現により、戦場にいる誰もがその瞬間、行動を停止したのだ。

 

だが、“不幸”にもそれに抗う者がいた。幾度となくガンダムと戦ってきたAEUの若きエース、パトリック=コーラサワーだ。

 

彼の放つイナクトのライフルを皮切りに、周囲の機体も魔神に向けて一斉砲撃を浴びせた。たった一機に連合の大部隊が砲撃を浴びせている光景は、凄惨を通り越して一種の悪夢だった。

 

爆発と轟音、それによって舞い上がる砂塵と煙にZEXISの面々も圧倒された。

 

だが、煙が晴れた頃と同時に見えた無傷の魔神を前に、誰もが息を呑み込んで絶句した。

 

──魔神の胸部が妖しく輝く。その光を見た瞬間、スメラギは瞬時に危険を察知し、他のZEXISメンバーに後退を命じた。

 

「全機後退! あの魔神から可能な限り離れるのよ!」

 

魔神の出現に浮き足立った軍の隙を突いての撤退。有無を言わせないスメラギの指示に、ZEXISの面々は抗議の声を上げることなくこれを承認、マクロス・クォーターと共に戦域を離脱しようとした時、ZEXISはスメラギの判断が正しかった事を思い知る。

 

砂漠を覆い尽くす程に拡大した連合の軍隊が、一瞬にして地に伏したのだ。魔神に跪く様に、魔神に命乞いをする様に。

 

異常な光景だった。世界の圧倒的物量をたった一機によってねじ伏せている光景に、その場にいた全員が悪い夢を見ている気分になった。

 

イナクトが、フラッグが、KMFが、OZのMSが、たった一機によって無力化された。地に叩きつけられた事で多くの機体は損傷、或いは大破し、全ての戦闘行動が不可能とされていた。

 

あと僅かでも後退指示が遅れていれば、今頃は連合軍の様に地に這い蹲って行動不能にされていた事だろう。

 

───その光景を前に唖然としながらも、プトレマイオスとクォーターの艦長は速やかに現在の領域の離脱を宣言。各機はこの指示に従ってそれぞれの艦に戻ってその場から離脱する。

 

内心で深く安堵するスメラギだが、次の瞬間、背筋に言いし難い悪寒を感じた。

 

「す、スメラギさん……」

 

「フェルト、どうしたの?」

 

「ぐ、グランゾンと名乗る機体から文による通信が届いています」

 

「……っ!」

 

プトレマイオスの乗組員であるフェルトの言葉を耳にして、スメラギは背後の光学カメラをモニターに移すことを指示、そして次の瞬間……。

 

「……一体、何が目的なの」

 

追従するように後ろから追いかけてくる魔神───グランゾンにスメラギはイヤな汗が止まらなかった。

 

そして、送りつけてきた文通信には───

 

『話をしよう』

 

たった一言そう書かれているが、その文面には此方の追及を一切受け付けない凄みを感じた。

 

既に背後から狙われている以上断る事も出来ないスメラギは、クォーターの艦長と短い遣り取りを経て、グランゾンの指示通りに付近の孤島で身を隠しながら話し合いに応じる事にした。

 

一緒に降り立つ蒼き魔神を見据えながら、スメラギは言いようがない不安に駆り立てられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────やべぇ、どうしよう。

 

ZEXISの皆が我先にとばかりに逃げていくから、居たたまれなくなった自分も勢いで追いかけてしまった。

 

今、俺はとある孤島でマクロス・クォーターの格納庫にいるんだけど……皆グランゾンを囲んでメッチャこっち見てる。

 

しかも中にはあの竜馬さんやカミナの兄貴、黒の騎士団のゼロまでグランゾンの足下に集まっているもんだからスゲー出づらい。何か子供も興味深そうにしているし……ホントどうしよう。

 

そりゃゲッターを始めとした色々なスーパーロボットがいるんだから彼等の後ろには世界に名高い様々な博士がいたりするし、その中の誰かに話を聞けばシュウ博士の居所も分かるのではないのかと思ったりもしたけれど……やっぱりいきなりこうした出会い方は不味いよなぁ。

 

やっぱどこかで一度ちゃんと話をした方が良かったのかなぁ、暗黒大陸の時は思いっきり逃げ出してたし……。

 

けど、それはもう言っても始まらないから今更言いっこなしである。

 

というか俺、さっき慌てて通信送ったけど誤字とかなかったよね? ちゃんと『話をしましょう』になってたよね? “鼻しおしお”とか訳分からない文脈になってないよね?

 

どれもこれも今更過ぎる悩みだが、ここまで来てはもう後戻りは出来ない。向こうもそろそろ痺れを切らす頃だろうし、俺は仮面とコートを羽織ってスーパーロボットを駆るパイロット達の前に降りたったけど……。

 

うん、やっぱゼロと被るわこれ、仮面越しでもゼロが驚く様子が見て取れる。

 

此方もそんな話せる事はないし、手短に済ませようとプトレマイオスの艦長とクォーターの艦長二人と格納庫で面と向かって話をする事にした。

 

片や歴戦の強者を思わせる強面の艦長、対してテロリストの片棒を担ぐソレスタルビーイングの現場指揮者として活躍するのは、強面の艦長とは対照的なグラマーなお姉さん。

 

思わず鼻の下が延びてしまうが、仮面を被っている為にバレる事はない。けど、それ以上に周囲の視線がキツいので引き締めて話をする。

 

まずは此方から、呼びつけておいたのはこっちなのだから礼儀としてワビを入れるのは当然だよね。

 

「まずは礼を言わせて頂きたい。この度はいきなり此方の要望に応えて貰い、話し合いの場を設けて下さり感謝します。ZEXISの皆さん」

 

出来るだけ刺激しないように下からの姿勢で話し掛けるが……あれ? なんか周囲の視線の強さが三割程増してね? 竜馬さんなんか「ケッ、」て舌打ちしたんですけど?

 

何か間違えたか? そんな俺の疑問は余所に向こうからの紹介に自分の視線が自然と二人の艦長に向けられる。

 

「いえ、それには及びません。噂の魔神殿とこうして対面出来るのであれば我々にとっても望む所です」

 

魔神かぁ、まぁそんな感じの見た目だし、そう思われるのは仕方ないよね、一部の人には重力の魔神とか呼ばれたりしているし……。

 

けれど話も長引かせるのも悪いし、ここの人達にはそれぞれ機体の整備があるから長いことここに居座るのは止めておこう。

 

「シュウという博士号を持った人間を知りませんか?」そんな台詞を口に出す前にジェフリー艦長に遮られ……。

 

「自己紹介がまだでしたな。私はマクロス・クォーターの艦長を務めさせて頂いているジェフリーと……」

 

「プトレマイオスの艦長、スメラギです。……えっと」

 

丁寧に自己紹介をしてくれるスメラギさんとジェフリー艦長、お二人の紹介にこれはどうもと軽く会釈する一方、自分の思考が一瞬停止してしまった。

 

……あれ? そういや俺この時なんて言えば良いんだ? 素直に本名を名乗るの? いやいや無理無理! すぐそこでヨーコちゃん達がこっち見てるもの、カレンちゃんが疑わしそうにこっち見てるもの! 本名晒した瞬間面倒事になるのは目に見えているものぉぉぉぉっ!!

 

ヤヴァイ、焦りで汗がダラダラと流れる中、俺はひたすら偽名に思考を巡らせた。

 

様々な偽名候補が脳内で浮かんでは消えていくが、どれもしっくり来るモノはなく、時間が無情に過ぎていくばかり。

 

二人の艦長の目が細くなる。その視線に居心地が悪くなった時、ふとある名前が俺の中で閃いた。

 

いや、これは名前ではなく呼称だ。人らしくないネーミングだが、今はこれで誤魔化すしかない。

 

「……蒼のカリスマ」

 

「えっ?」

 

「なに?」

 

「私は蒼のカリスマ、自由を求め返還を求める者です。以後、お見知り置きを」

 

 

 

 

 

その後、簡単な会話を二、三回繰り返した後、俺は逃げるようにグランゾンのコックピットに乗り込みZEXISから離脱。

 

自分のあまりのネーミングセンスのなさに、俺はグランゾンの中で悶死していた。

 

あぁ、これが黒歴史か……!

 

 

 




主人公、絶望の未来に向かってシュゥゥゥゥっ!

超、エキサイティン!

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