『G』の日記   作:アゴン

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今回、主人公があることを暴露します。


その52 後編

 

 

───シュナイゼル軍中枢。シュウジとグランゾンを囮に本陣へと突き進むゼロ達、魔神と恐れられる彼等の力のお陰でモビルドール達を引き付ける事に成功した彼等は、ダモクレスがフレイヤ弾頭が使えない位置まで移動し、ブリタニア軍のKMFと激戦を繰り広げていた。

 

圧倒的物量でゼロ達を追い詰めるシュナイゼル軍。しかし、その物量を彼等はスザクのランスロットとゼロの蜃気楼、力と知によって悉く撃退していく。

 

ランスロットが凄まじい戦闘能力を発揮して敵KMFを破壊し、ジェレミアとC.C.が敵を誘導した所で蜃気楼が相転移砲で一掃。これを何度も繰り返している内に敵の数は減っていき、遂に目立った戦力を有しているのはナイトオブラウンズだけとなった。

 

帝国最強の騎士達の最後の戦い。戦闘は苛烈を極め、戦いはナイトオブラウンズのナイトオブワンことビスマルクとスザクを中心とした激闘へ移っていく。ダモクレスのフレイヤ弾頭の効果範囲に入らないよう、ゼロがスザクに指示を出し、状況を常に分析する。そんなゼロを守る為にジェレミアとC.C.が援護に回っているが、相手は帝国最強の騎士だ。そう簡単に事が上手く運ぶわけがない。

 

ジェレミアとC.C.、対するジノとアーニャ、この四人の戦いもビスマルクとスザク同様に刃を重ねる毎に激しさを増していく。互角の戦いをしている様に見えるが、やはり相手がラウンズだけに中々押し通す事が出来ない。何か策を講じねばと思考を巡らせた時、ゼロの駆る蜃気楼にアヴァロンの“LOST”の文字が出て来た事に、彼等の胸中に暗雲が広がっていった。

 

『アヴァロンが撃墜されただと!?』

 

『そんな……セシルさん! ロイドさん! 返事をして下さい!』

 

ゼロ達……特に、スザクは動揺が隠せなかった。ブリタニア軍に所属していた頃から何かとお世話になった特派の人達はスザクにとっては恩人とも呼べる人達だ。その人達の安否を確認する為通信を開いて確認するが、目の前の相手がそれを許す道理はなかった。

 

『枢木スザク! 貴様はナイトオブワンになる事が目的だと言ったな。だが、私こそが唯一のナイトオブワン! 裏切り続けた貴様が適う道理はない!』

 

『くっ!』

 

『スザク! 今は余計な事は考えるな!』

 

『で、でも!』

 

『今は奴を、シュウジ=シラカワを信じるしかない! 為すべき事を成す為に俺達は負けられないんだ!』

 

『く、分かった! 今は目の前の相手に集中する!』

 

今すぐロイド達の下へ向かいたいが、状況がそれを許さない。それが分かっているからこそスザクもゼロの言葉に従うしかなかった。

 

何故アヴァロンが落とされたのか、あのグランゾンが近くにいながら防げなかった事実。いったいどんな手を使ってあの魔神から母艦を落としたのか、改めて思い知る実兄シュナイゼルの手腕に戦慄を覚えながら、ゼロは再びスザク達に指示を飛ばす。

 

と、そんな時だ。突然ダモクレスから通信が入り、ゼロは仮面の奥で目を見開かせる。このタイミングで仕掛けてくるのはシュナイゼル以外有り得ない。この戦闘の中で奴の話を聞くのは危険を被るが、今は時間稼ぎの意味を込めて付き合うしかない。

 

通信回線を開き、目の前のモニターにシュナイゼルの顔が浮かび上がる。やはり現れた実の兄に、ゼロは表情を険しくして相対する。

 

『やぁ、久し振りだねルルーシュ。仮面を被って人を騙すのは相変わらず楽しいみたいだね』

 

『一体何のご用でしょうか? 私は貴方とはダモクレスで会うまで顔を合わせるつもりはなかったのですが?』

 

『なに、その前にどうしても君と話がしたいと言う人がいてね。彼女の頼みとなれば断るのは出来ないんだ。───さぁ、ナナリー。お兄さんと存分に話をしなさい』

 

『っ!?』

 

目の前に映し出される最愛の妹、足と目の光を失い、ゼロ──否、ルルーシュにとって全ての行動の原点となった彼女。

 

『ゼロ……いえ、お兄さま。私は貴方にお聞きしたいことがあります』

 

第99代皇帝ナナリー=ヴィ=ブリタニア。ルルーシュにとって何よりも代え難い存在が、彼の壁となって立ちはだかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふ、フフフフ、流石は魔神グランゾン。この程度の数では相手になりませんか』

 

『…………』

 

ルルーシュ達が追い詰められている一方、後方でモビルドール達とインサラウムの先兵を相手に戦っていた魔神グランゾンとシュウジ=シラカワ。インサラウムという予期せぬ増援にも対処し、着実に敵の数を減らしていった彼等は、更なる増援に客観的に追い詰められていた。

 

地球にガイオウを呼び寄せてリモネシアを破壊し、裏で今回の戦いを操っていた黒幕の一角、アイム=ライアード。

 

インサラウムを破滅へと導き、そしてまたこの世界でも己の好き放題に暗躍する男と相対し、シュウジは冷静さを装いながらも、仮面の奥の瞳には怒りの炎をたぎらせていた。

 

グランゾンの周辺に転がる無数のロボットの残骸。それら全てがアイムの乗るアリエティスと同じ姿であり、同じ機体能力を有していた。

 

“スフィア”未だ謎の多い未知のエネルギー機関だが、今のシュウジにはどうでも良いことだった。目の前にグレイスやイノベイターと並ぶ自身の敵がいる。ならば……やることは一つしかない。

 

スフィアの支配下から解かれ、光へと還っていくアリエティスの残骸を踏み砕きながら、シュウジはグランゾンを前に進ませる。

 

その先にいるアイムを倒すべく、グランゾンに剣を握らせ、バーニアを噴かせて一気に間合いを詰めようとするが……。

 

『良いのですか? 貴方の後ろには大切なお仲間がいるのでしょう? 離れてしまって大丈夫なのですか?』

 

頬を緩ませ、厭らしい笑みを浮かべるアイムにシュウジのコメカミに青筋が浮かぶ。それと同時に復活したアリエティスの分身とインサラウムの無人偵察機がアヴァロンに向けて一斉に攻撃を仕掛けてきた。

 

消火作業に追われて動けないロイド達。迫り来る敵の攻撃にシュウジは振り返る素振りも見せず───。

 

『ワームスマッシャー』

 

呟く、その瞬間アリエティスの分身とインサラウムの無人偵察機が光の槍に貫かれて爆散。同時にエンジンの修復に成功したロイドがブレイズルミナスを展開させ、爆発の衝撃も防ぐ事が出来た。

 

振り返りもせずに破壊される自身の分身。まるで眼中に無いと言いたげな目の前の魔神達にアイムの表情が……僅かに、苛立ちに歪む。

 

『確かにお前の言うとおり、ロイドさん達を放って戦っているのは拙いかも知れない。けどな、俺の直感が言ってるんだよ。ロイドさん達を庇って戦うよりも今のお前を背にする方がずっと拙いってよ』

 

『ほう? 何故そう思うのです?』

 

『前から思ってた。お前の口から紡がれる言葉は殆ど信用のない嘘ばかり。加えて破界事変の時にお前は南極で死んだとされてきた。その後ZEXISでスフィアなる存在を聞いた時はまさかと思ってきたけれど、今のお前の力を見て確信した。お前の機体の動力炉であるスフィアは“嘘を司る”スフィアなんだろ?』

 

『…………』

 

『死んだ事さえ嘘に出来る。そんなトンでもない力なら破界事変以降も誰かに姿を見られる事もなく立ち回る事だって容易い筈だ。胡散臭いお前の事だ。どうせ自分以外の誰かになりすまして来たんだろ?』

 

『貴方がそれを言いますか? 蒼のカリスマという自分以外の存在になりすまし、今まで他者を欺いて来た貴方が!』

 

本体であるアイムのアリエティスが腕から赤い刃を生やしてグランゾンに切りかかる。宝石の様に輝いておきながら、血の様に禍々しい輝きを放っている。その刃を受け止めた瞬間、衝撃が迸り、拡散し、大地を深く抉る。

 

受け止めてシュウジも理解した、このスフィアから生まれる力は厄介だと。自身の身に覆い被さるように来る圧力、ガイオウと似ているが微妙に違う。目の前のアイム……いや、スフィアから発する力がこれほどのものなのかと実感しながらも、シュウジはグランゾンを通してアイムとアリエティスを振り解く。

 

『どうですか? 私のスフィア“偽りの黒羊”から発せられる力の胎動は? 感じますでしょう? 凄まじいでしょう? 最早貴方の魔神程度では相手になりません。水天の涙は乙女の瞳より流れ落ち、黒き獅子は女神の慈愛に包まれる。黄金の天秤に支えられた巨蟹は水瓶に沈みながら黄昏の夕日の世界を想う───あらるきゅりうあ****♯§&♯§♯*』

 

『な、何だぁ?』

 

先程の嫌味ったらしい態度から一変。アイムの感情と機体の出力が上がったと思われた瞬間、突然訳の分からない言葉を喋りだし、遂には笑い出した。

 

発狂した様に笑い出すアイムをシュウジは不気味に感じる。すると、今まで光となって消えた筈のアイムの分身達が巻き戻されるビデオ映像の様に再生され、復元していく。

 

これもスフィアの力か、物理法則を無視した力を見ながら、シュウジは再び現れるアイム達を前に一度深呼吸をする。

 

この分ではどんなに倒してもキリがない。本体であるアリエティスを倒し、元を断とうとするが……それを読んでいたのか、今度も12の分身達がシュウジに向かって一斉に攻撃を仕掛けてきた。いや、その中にはアイム本人も紛れ込んでいる為、実質13対1。数からして圧倒的に不利な状況、避ければ近くにいるアヴァロンにまで被害が及んでしまう為、やむなく受ける事を選択したシュウジはグランゾンに剣を盾代わりにするよう命じ、13もの攻撃を受けきるよう指示した。

 

襲い来る刃の嵐、一つ一つがグランゾンの装甲を削ろうとしてくるが、生憎グランゾンも陰月での戦闘を経て出力が上昇しており、歪曲フィールドは更に強固となっている。迫り来る死の刃を浴びておきながらも、遂に無傷同然で耐えきって見せたグランゾン。僅かに見えたアイム達の攻撃の合間の隙を突き、今度は此方の番だとシュウジは目の前の空間にワームホールを展開させる。

 

『アイム、お前言ったよな? 俺は仮面を被って人を騙してるって、確かにその通りだよ。俺は自分がグランゾンに乗っている事を知られるのが嫌で蒼のカリスマなんてダッサイ名称を名乗ることになった。……けどな』

 

無数のワームホールがアイムとアリエティス達の周囲に展開される。そこから現れては消え、現れては消えるを繰り返していく内に、グランゾンの姿はやがて二つ四つと増え始め……。

 

『今の俺は、結構この格好が気に入ってんだよ! 好きでこの格好してるんだ! 人の趣味に他人がイチイチ口出ししてんじゃねぇぇぇぇっ!』

 

『がっあぁぁぁぁっ!?』

 

 

魔神グランゾンによる乱舞の剣撃。無数に湧き出るグランゾンの攻撃を受け、最後には光の槍で刺し貫かれるアリエティス達は爆発して消滅。本体であるアイムとアリエティス(真)もボロボロの姿となって地面に落下。シュウジはアリエティスが唯の鉄屑に成り下がった状態を目の当たりにするが、念の為にと奴から目を離さないようゆっくりと下がりながらアヴァロンに近付き、ロイド達と通信を繋いだ。

 

『どうですかロイドさん。アヴァロン、動かせそうですか?』

 

『そんな急には無理。今漸く消火作業が終わって防御システムを作動させた所、戦闘にはどうやっても間に合わないよ』

 

『いえ、無事ならそれだけで構いません。寧ろその場で防御に徹することを専念して下さい。幸いここはフレイヤ弾頭の射程範囲外の様ですし、余波だけ気を付けてくれれば……』

 

『そ、そんな事よりも……アレ、やっつけたんですか?』

 

『セシル君、それ今言うと色々拙いと思うんだけど……』

 

残骸となったアリエティスを見てアイムを倒したのかと思ったセシルだが、彼女がその一言を口にした瞬間、アリエティスの胸部付近から眩い光が放たれ、次の瞬間には……無傷のアリエティスがその場に立っていた。

 

倒した筈なのに次の瞬間には無傷にまで再生されている。修復とかそんなレベルの話じゃない事象を目の当たりにし、シュウジは勘弁しろと内心呟く。

 

『理解していただけましたか? 既に次のステージに達しつつある私の力の前には如何に魔神といえど無力。貴方では所詮かませ犬程度の役割にしかならないのですよ』

 

力で勝っていても、無限に思える奴の力の前では今の自分とグランゾンでは無理がある。このまま戦えばいずれは封殺されてしまう以上、手段は選んではいられない。

 

“ネオ”アンチスパイラルと戦った事で得られたグランゾンの本来の力を発揮させる。そうすることで一気に畳み掛けてしまおうとシュウジがその詠唱を唱えようとした……その時。

 

『蒼き魔神よ、悪いけれど彼のスフィアは僕が狩らせて貰う。手出しは無用だよ』

 

突如、空から飛来してくる黒い影。鴉を模した機動兵器がグランゾンとアリエティスの間に割って入って来た。

 

アサキム=ドーウィンとシュロウガ。彼等の乱入により戦線は更に混迷する事になる。

 

 

 

 




後編と書いておきながらシュナイゼル編はもう少し続きます。


以下次回(嘘)予告

蒼『アサキム、またお前か!』

黒『フフフ、今は君には用はないんだよ』

アイム『呪われた放浪者、そして蒼き魔神よ! あなた方二人まとめて私が消して差し上げましょう!』

二人『そんな事よりもレポート早よ出せよ』

王『レポート断罪剣!』

アイム『ノォォォォォッ!!!』


次回もまた見てボッチ!

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