『G』の日記   作:アゴン

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今回が再世篇最後のほのぼの回になるかと思われます。

……多分。


その50

アンチスパイラルとインベーダー、そして陰月による地球圏滅亡の危機から既に一日が経過し、全ての脅威から地球圏を守れた人類側は勝利の感傷に浸りながら、それぞれの陣営に引き返していった。

 

アロウズは地球に、ホワイトファングとそれを率いるミリアルド=ピースクラフトは拠点コロニーへと引き返していく。互いに協力して戦った仲ではあるが、地球側とコロニー側の隔たりが取り払われた訳ではない。一時共に戦った彼等は再び敵同士に戻る事だろう。

 

だけど、せめて今だけは同じ人類同士戦うのは止めよう。そう思った両陣営の指揮官達は、互いに不干渉を貫く事でせめてもの礼儀とした。今回の戦いで大きく疲弊した事で二つの陣営に属する兵士達は文句を口にする気力も無く、早々に各母艦へと引き返していった。

 

取り敢えず第二の大規模戦闘が避けられた事に見守っていたZEXISの面々は安堵の溜息を漏らし、今度は現在の地球の状況と情報を集める事にした。何せ気が付いたら時が二週間も進んでおり、あの夕焼けの世界から脱出できたと思ったらいつの間にか地球圏が窮地に立たされていたのだ。

 

一部の勢力が大型インベーダーを駆逐した事と、ZEXISの面々が戦線に参加した事で戦況は大きく覆り、後に増援として出てきた新手のムガンも、グレンラガンが暗黒大陸から浮上してきた巨大戦艦と合体した事でこれらを粉砕。その後も陰月を止め、本当の姿に戻した頃には残ったインベーダー達も駆逐されていた。

 

本来の姿を取り戻した陰月────超弩級戦艦は別の空間へと姿を消した。静寂に包まれる宇宙空間、地球圏を救う事が出来たZEXISは少しばかり喜んでいたが……。

 

「…………で? 何でアンタがルルーシュ達と一緒にいるわけ? しかもワザワザ死んだフリをしてまで私達を騙すとか、そこら辺の事も含めて説明して欲しいんだけど?」

 

「え、えぇっとぉ……」

 

ZEXISが属する艦とは別の航空艦“アヴァロン”そこで自分こと蒼のカリスマは、現在押し掛けてきたカレンちゃん達によって格納庫の壁際に追い詰められているとです。

 

あの後、アヴァロンの格納庫に戻ってグランゾンの中で少し休息を取ったら、どうやら自分が思っていた以上に疲労していたのか、目を覚ましたらなんと……丸一日経過していたらしいのだ。しかもその間にルルーシュ君達が彼女達を招き入れたというのだから驚きは倍である。

 

グランゾンのコックピットから出るまでその事を教えてもらえなかった自分は、待ち構えていたカレンちゃん達に捕まり現在に至るという。というかカレンちゃん近いッス、年甲斐もなくドキドキするじゃないか。無論恐怖的な意味で。

 

だってカレンちゃんの今の顔メッチャ怖いんだもの。額に青筋立てて本気で怒っているし、下手に言い訳したらコロコロされそうなんだもの。パイロットスーツで体のラインが出ていて艶っぽい筈なのに、彼女から醸し出されるオーラの所為でそうは思えない不思議。

 

しかも向こうではヨーコちゃんがライフルを磨いて此方に照準合わせているし、それ弾入ってないよね? 仮に入っていたとしても絶対に撃たないよね!?

 

「………フフ」

 

(ヒッ!?)

 

10年の時を経て大人っぽくなったヨーコちゃん。彼女の微笑みは見る者の視線を奪う魔性の笑みだったが……何故だろうか、その笑みを目の当たりにした自分には恐怖しか感じない。

 

彼女達を招き入れるとか、なんて事をしてくれたんだ。恨みがましく格納庫の端っこに居座っているルルーシュ君達を見るが、ルルーシュ君達はアムロさん達と話しているからか、此方に気付いていない。

 

「………フンッ」

 

いや違う! 彼は、ルルーシュ君は自分の視線に気付きながらその上で無視していた! だって今コッチを見たもの! 見たけど見ないフリをしたもの!

 

同じく自分の視線に気付いたセシルさんやスザク君達は苦笑いを浮かべて口パクでドンマイと言ってくれているが、C.C.さんはだけはザマァ(笑)と言いたそうに笑っていた。……前から思ってたけどルルーシュ君とC.C.さんって俺に対して妙に冷たくない?

 

そりゃあさ、肝心なところで姿を消した自分は彼等からすれば役立たずにしか見えないと思うけどさ、コッチはコッチで大変な思いをしてきたんだ。言い訳の一つくらいさせてくれたっていいじゃない。

 

「シュウジぃ? 聞こえてなかったのかしら? 話の途中で考え事なんて失礼だと思わない? ん?」

 

そんな現実逃避をしている内に迫っているカレンちゃんの迫力が三割ほど増した気がする。おかしい、今の自分は蒼のカリスマとして仮面を被っている筈なのに何故俺が考え事をしているとわかったのだ?

 

あぁそうか。カレンちゃんはゼロの右腕として活躍してきた人間だから、同じ仮面を被った自分の事も少しは分かると言うことか。成る程納得。

 

……なんて言ってる場合じゃねぇや。額に青筋を浮かべて、苛立ちを募らせているカレンちゃんに軽く死の恐怖を感じる。というかカレンちゃん、気付いていないだろうけど女の子がしていい顔じゃないよそれ、芸の領域に入っちゃってるよ?

 

怖すぎて若干ホラー気味になっているカレンちゃんから目を逸らして数分、前からはカレンちゃんが、そのカレンちゃんの更に後ろからはヨーコちゃんにそれぞれ狙われ、彼女達の迫力に怖くなり、いい加減泣きそうになりかけた時、そんな自分の前に救世主が現れた。

 

「シュウジ=シラカワ……いや、今は蒼のカリスマか。ジェフリー艦長達が君と話がしたいみたいなんだ。申し訳ないがブリッジに案内してくれないか?」

 

「勿論構いませんよ。さ、こちらです」

 

話しかけてくれたアムロさんがマジでこの時は救世主に思えた。彼が訊ねて来てくれた事を切っ掛けに包囲網から抜け出せた自分は、アムロ大尉と共にアヴァロンのブリッジに向かった。その際にC.C.さんがカレンちゃんに声を掛けて話をしていたみたいだけど……変なことは言ってないよね?

 

あの人何気にSっ気あるからなぁ、カレンちゃんに変な事を言って焚き付けたりしないだろうか……まぁ状況が状況だし、流石のC.C.さんも自重してくれるだろう。

 

「知ってるかカレン、あの男はな……実はナナリーにまで手を出しているのだそうだぞ」

 

「なあっ!? あんの変態仮面、とうとうそっちの道にまで手をだしたのか!?」

 

「しかも中華連邦では天子の姿に見惚れていたとも言っていたな。いやはや、見た目によらず随分守備範囲の広い奴じゃないか。流石は魔人と言った所か?」

 

「シュウジ=シラカワ、絶対許すまじ!」

 

「その話、詳しく聞かせてもらおうかしら? 」

 

「ヨーコ=リットナー、お前も知りたいか? なら私の部屋に案内してやろう。アイツ等の話は長いからな。存分に聞かせてやるさ」

 

 

 

 

 

 

……何だか一瞬凄まじい悪寒を感じたのだが、気の所為だろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

F月Z日

 

ZEXIS達とその日限りの共闘から一夜明け。自分達は現在、地球のとある海中にアヴァロンで潜伏していた。このアヴァロンは唯一自分達の足となっている航空艦なので、そこら辺の改修は済ませてある。二日程で仕上げた突貫工事だったが、問題のある報告がない所をみると、どうやら順調に運航は出来ているようだ。

 

さて、まずは何故最初に“共闘”という言葉が出てきたのか、そこから説明しようと思う。あの後アムロ大尉を連れ、アヴァロンのブリッジに戻った自分達はジェフリー艦長達とモニター越しで対談。ちょっとした報告会となった。

 

自分達は二週間の出来事だったけれど、彼等からすれば元の世界に戻ってきたら地球の危機に直面していたのだ。多少は混乱している事だと思い自分はこの二週間世界で何が起きたのかを掻い摘まんで説明した。向こうもあの戦いで陰月内部に進入し、そこで待ち構えていたアンチスパイラルの尖兵と戦い、これに勝利した事でひとまず陰月の落下を食い止めることが出来た事やニアちゃんがメッセンジャーから解放された事など、自分が姿を消していた合間の出来事を事細かく説明してくれた。

 

自分が消えていた合間、皆にはどこで何をしていたのかは聞かれる事は無かった。ジェフリー艦長が自分の意思を尊重して聞かないようにしてくれたのかは定かではないが、今は少し後悔している。

 

取り敢えずあの黒人間ことアンチスパイラルは此方に暫くの間手出ししてくる事はなさそうだが、それでも奴の持つ力は強大だ。せめてその時の情報を少しでも話して置こうかと思ったのだけれど、そこで空気も読まず敵が攻めてきた。

 

突然起こる時空震動。次元境界線が歪曲し、別の時空間に引き込まれた自分達とZEXIS。そこで待ち受けていたのは倒した筈のムゲ=ゾルバトスと、破界事変の頃にタケル君が倒したズール皇帝だった。

 

何でもタケル君をこれまで苦しめてきたゲシュタルトの正体がズール皇帝で、暗黒の王であるムゲも奴の持つ次元力によって復活、度重なる激闘に疲弊したZEXISを狙って仕掛けてきたのだろうけど……。自分こと蒼のカリスマとグランゾンが一緒にいるとは思わなかったのか、自分達が出てきた瞬間何やら驚いていた。

 

戦っている最中で「奴の所から抜け出したのか!?」「何者だ貴様は!?」とか言ってたりしたから、恐らく連中はアンチスパイラルを結構詳しく知っているのだろう。

 

そしてZEXISとこの時に共闘し、バラの騎士……いや、タケル君のお兄さんであるマーグの助力のお陰でタケル君はデビルリングを破壊。蝕まれていた命を快復させるとゴットマーズは金色に輝き、ズール皇帝を今度こそ完全に消滅させた。

 

ムゲ=ゾルバトスの方も忍さんと葵さんによるダンクーガのコンビネーション攻撃で粉砕されていた。今回の戦いでも雑魚の相手をしていた自分とグランゾンだが、真の姿であるネオへ至った為か出力が上がっており、いつもより簡単に雑魚敵を片付ける事が出来た。

 

二つの脅威を今度こそ消滅させた事で元の時空に戻った自分達はもう一度落ち着いて話をする事にしたのだが、ここにきて一つ問題が発生した。

 

問題と言っても、戦闘終了の直後、自分にだけ送られてきたある通信によるものだけれど……ちょっとシャレにならないんだよなぁ。

 

嘗てゼロ……ルルーシュ君が作り上げた組織、黒の騎士団の新しいトップとなった扇さんが自分に通信を送ってきたのだ。

 

その内容がゼロことルルーシュ君には気を付けろと言うものばかり。彼がルルーシュ君の持つギアスの力に不安を感じるのは分かるが、彼のしつこさもあり、オマケにその時の自分は戦闘時の興奮状態になっていたようで、少しばかり言葉を強めにして説教みたいな話をしてしまった。

 

その所為でZEXIS達とはまた微妙な空気になってしまったし……うわぁ、もうホントどうしよう。

 

自分の感情的な言葉でルルーシュ君達にも迷惑が掛かってしまったし、なんて謝ればいいんだろう。しかもカレンちゃんから聞いた話だとゼロを追放したのは黒の騎士団の独断で、ZEXISの人達は寧ろゼロ君を擁護していたようじゃないか。

 

恥ずかしい。穴があったら入りたい。結局あの後は喧嘩別れするみたいにあの場から離脱して地球に戻って来たわけなのだけれど……絶対印象は最悪になっただろうなぁ。

 

今度ZEXISに会ったら謝っておこう、その時までにはカレンちゃんとヨーコちゃんに対する言い訳も考えておいた方がいいかもしれない。

 

……何について言い訳すればいいんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アヴァロン内格納庫。機体の整備も終わり、人気の無くなったその場所でルルーシュは素顔のまま蜃気楼の前に立っていた。

 

「………」

 

思い出すのは先の戦いの終わりに聞かされた、扇要とシュウジ=シラカワとの舌戦。通信越しとはいえ嘗ての部下からの敵意ある言葉に、ルルーシュはそれが自分の業なのだと知りながら肩身の狭い思いをしていた。

 

嘗てルルーシュは許されない事を何度も繰り返してきた。絶対遵守の力であるギアスを用いて何度もその人の人生を歪めてきた。自分の目的の為に他人を利用して、初恋だった人も死なせ、親友だった者の信念も歪ませた。

 

黒の騎士団を騙し、ZEXISを騙し、自分すらも騙してきた人生。だから、彼から口に出される罵倒はその罰の一つでもあった。

 

これが自分のしてきた事なのだと、ルルーシュは歯を食いしばって耐えてみせた。仮面の奥でルルーシュは無表情に徹して彼等の話をただ耳にしていた。裁判を受ける被告人の様に、罪状を告げられる罪人の様に、ルルーシュはただひたすら耐えていた。

 

と、そんな時だ。今まで扇だけの声が聞こえてきた通信に別の声が混じってきたのは……。

 

『裏切り……ねぇ。果たして彼は皆さんを本当に裏切ったのでしょうか?』

 

『な、なに?』

 

『昔、とある王が言いました。裏切りというものは、同じ道を歩んでおきながら後ろから刺すような行為をそう言うのだと。話を聞く限り、どうも私は彼が裏切っていたとは思えないんです』

 

『だ、だがゼロは、ルルーシュという男はこれまで数え切れない人達の人生をギアスで歪めてきた! その罪は計り知れないぞ!』

 

『そのギアスの力に便乗してあなた方の組織はそこまで大きくなった。確かに事情を一つも話さなかった彼も悪いでしょうが、かといって一方的に切り捨てるのとはまた違うと思うのは……私だけでしょうか?』

 

『な、ならお前はその男を、ルルーシュを信じるというのか! ユーフェミア皇女を殺し、罪を押しつけてきた彼を!』

 

『当たり前でしょう? 彼は私の仲間であり友人です。それに、彼はその事について深く反省しています。勿論、それは謝って許される事ではないので今後は彼も贖罪の為に世界平和に尽力する事でしょう。それでも疑うのであれば、その時の彼の生き方に注目してみなさい。尤も、一つの事実だけにこだわって真実を見誤ってしまう貴方では到底無理そうですがね……』

 

……庇って貰ったのは一体何時以来だろう。言葉の使い方一つ一つは丁寧だったけれど、あの時の彼の言葉には確かな怒りが込められていた。

 

「アイツが、俺の為に怒ってくれたのか? 何故だ。一体、なんの為に……」

 

どんなに考えても答えは出ない。いや、本当は出ているのに認めたくないのが本心だった。その事が無性に腹立たしくなり、悔しくなって手を握る。と、その時だ。

 

「あれ? ルルーシュ君じゃん。どしたの? 眠れないのかい?」

 

「ホワァァァッ!?」

 

突然の本人の登場にルルーシュの声が裏返る。シュウジもシュウジで突然奇声を上げるルルーシュに驚きながら後退る。

 

「び、びっくりするなぁ。そんなに大声を出して……」

 

「あ、いやその……済まない」

 

「いや別に謝る事じゃないけど……本当どうしたの? 何か悪いものでも食べた?」

 

「う、五月蠅い! 俺に構うな! ───もう寝る!」

 

気遣ってくる目の前の男、戦いの時とは違いバカ丸出しのその姿勢にルルーシュは何も言う気が起きず、むしゃくしゃする気持ちのまま格納庫を後にする。

 

その彼の後ろ姿を見送って、シュウジは首を傾げた。

 

「……何だったんだ、今のは」

 

「やれやれ、女だけでなく男すら落とすとは……本当に変態だな、お前は」

 

「いきなり出てきて酷くない!?」

 

突然背後から現れたC.C.に冷たい言葉を投げ付けられたシュウジは一人、格納庫でうなだれる。

 

「訳が分からないよぉ」

 

 

 

 

 

 




ルルーシュ君との兄弟フラグが建ったようかもです(白目


そして毎回多くの感想ありがとうございます。



次回もまた見てボッチ!

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