『G』の日記   作:アゴン

258 / 266
今回、日記要素あり。

そう言えばこう言う書き方をしてたなって話。


その227

 

 

 その異変に気付いたのは蒼のカリスマことシュウジだけだった。目の前にいたシャムナが手にしていた拳銃は、間違いなく自身のコメカミに押し付け引き金を躊躇なく引き絞った。

 

脳漿が血と共にぶち撒ける光景も覚えている。だというのに等の本人であるシャムナは呆然とした様子で佇んでいる。鮮血が辺りにぶち撒けられた様子はない、まるで数秒前の出来事が幻であったかのような錯覚。

 

(何が……起こった?)

 

言葉では到底説明できない摩訶不思議な現象、その違和感に何となくのレベルであるものの感じ取れたシュウジは戸惑いながらも整理する。

 

まるで波打ち際に立って足下が削られ引き寄せられるよな感覚、それが全身に渡って僅かだが感じ取れたシュウジは感覚的にだが理解した。

 

時間が巻き戻った。ボルボナや他の従者達がどうなのかは分からないが、少なくともシュウジには今この瞬間に時間の逆行が行われたのを感じ取った違和感から推理した。何故ならこうした出来事に直面するのは今回が初めてではない、次元将ヴィルダークと初めて顔を合わせた時にも時間の流れに深く関わった事を体験しているからだ。

 

 あの時はもっと体感的に感じ取れたのに今回は僅かな合間しか感じ取れていないのは、近くにスフィアリアクターがいないからなのか、それともあのときよりも規模が小さいから察知する事が間に合わなかったからか。何れにせよ仕掛けのタネについてはシャムナ本人に任せるしかない。

 

いや、今は考察している場合ではない。未だ放心しているシャムナに向かってシュウジは持ち前の脚力を以て彼女との距離を詰めていく。瞬きの内に懐に潜り込まれたシャムナは、今一度自決をしようと銃口を自身の頭部に打ち付けようとするが、それよりも速くシュウジの手が握り締めた拳銃を払い落とす。

 

 初めて目にする魔人の身体能力に驚く暇もなく、次いで奮われる手刀に彼女の意識は強制的に落とされる。これが蒼のカリスマの強さ、グランゾンばかりに気を取られ蒼のカリスマ自身の戦闘能力を見誤っていたシャムナは、悔恨や苦渋の呻きも吐くことなく呆気なく蒼のカリスマの腕の中へ抱えられる事になった。

 

「ふぅ、どうにか止められたか」

 

シャムナが意識を失った事でTARTAROSはその機能を停止させる。これで残る問題は、外で戦っているであろう五飛の所へ戻り戦いを終わらせる事だけだ。周囲には未だ戸惑いながらも敵意を抱いた従者達がその手に持った槍を此方に向けている。余程シャムナに対して忠義に厚い人達なのだろう、その瞳に畏れはあっても立ち向かう気力は失われていない。間違いなくシュウジと刺し違えるつもりでいる。

 

そんな彼女達をボルボナが宥め、彼女達を諫めた。

 

「もうよい。我等の戦いは終わった。これ以上血を流す必要はない」

 

「ボルボナ将軍閣下、しかし………」

 

「良いのだ。もう、戦うな。お前達も、私も、変わるときが来たのだ」

 

 ボルボナの説得に渋々ながらも受け入れた従者達は手にした得物を地面に落とし、泣き崩れる。自分達の国が無くなる事への不安感、それ故にすがるしかなかったシャムナのやり方、どんな理由があろうともシャムナのやり方には賛成できないが、それでも彼女達には彼女達なりの理由があるのだとシュウジは理解し、これからのジルクスタンに幾らか口添えをすることに決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯月∇日

 

 ───なんか、長らく日記を書いていなかった気がする。まぁ、それはいいとして今回の騒動について例に習い大まかにだが纏めていこう。

 

とりま結果だけを言えば、ジルクスタン王国は無くなることはなかった。TARTAROSとかいう物騒な代物が使われることは結局なかったし、シャムナがやろうとしていた事は結局自身と一部の人間にしか伝えていなかった事から、公的にジルクスタンは制裁を受けることはなかった。

 

ただ、蒼神教という厄介な宗教団体を創設し、あまつさえそれを利用して一般市民を巻き込み傷付けた連中の雇い主としてそれ相応の報いを受ける事になった。

 

具体的には更迭、シャムナというジルクスタン王国のトップだった人間の身柄はシュナイゼル………もとい国連の所へ送られる事になり、彼女の代わりにボルボナ=フォーグナーを国のトップとしてすげ替える事になり、ジルクスタン王国は国連に加わる事となった。

 

表向きは来る戦いに備え、世界を一つに統合するという建前で、本当は国連に参加する恩恵の代わりに監視下に置かれるという事。シャムナがやろうとしていた計画の重さから、これからジルクスタンは暫くの間少々窮屈な思いをすることになるだろう。

 

とは言え、国連に参加することで経済にも余裕が生まれる事だろう。国民との気持ちの整理はボルボナ将軍とその息子に頑張って欲しいモノだ。因みに息子さんは死んではいない、蒼神教の拠点の門番としていただけだから少しばかり脅かしただけだ。

 

 そしてシャムナの弟、シャリオ君だがこちらも五飛君と後から乱入したカレンちゃんが上手く相手してくれたお陰で、彼と彼が引き連れた軍隊を何とか無力化出来たらしい。俺が来る頃には全てが終わっていた。

 

流石に全くの無傷で終わった訳ではなく、戦闘のあった周辺では戦いの傷跡があちこちに刻まれていたが、それでも人的被害が殆ど皆無だったのが不幸中の幸いらしい。

 

 五飛君もカレンちゃんも度重なる戦いで戦闘技術は世界でもトップクラス、相手を殺さずに無力化出来る術は持ち合わせていたらしく、ジルクスタンの兵士も重軽傷者は出ても死傷者が出ることはなかった。

 

それに今回の戦闘の被害で被ったのはジルクスタン側、これを補填する意味を含めても国連への参加は意味のある決断だろう。

 

 しかし、シャリオ君はこれを頑なに反対した。姉上は渡さない、僕達から戦いを奪ったら何が残ると言うんだって、コックピットから引きずり出された後も喚き散らすものだから、堪らず自分はあることを彼に施した。

 

次元力。個人から惑星単位にまで命あるものには差異はあれど等しく持っているとされる力、これ迄の戦いを経て、特にヴィルダークとの一戦以来次元力をある程度使えるようになっていた俺は、シャリオ君の脚と目、数々の病を治しておいた。

 

多分、こう言う力はあまり多用してはいけないんだろうなぁ。次元力は文字通り万能に通じる力だけど、それ故に扱う者に対して厳しく律する能力が必要なのだと自分は思う。五飛君もカレンちゃんもビックリしてたし、取り敢えず二人に口止めをすることにした。

 

 それでシャリオ君だが、戦いしかないと宣う彼には申し訳ないが、正直それは甘えなのではないかとこの場を借りて言わせてもらうとする。長い間戦いに明け暮れていたのはシャリオ君だけではない。Z-BLUE、特にミスリルに属している相良君だって、シャリオ君より小さい頃から戦場にいたと聞いてるし、そんな彼も今では平和な日常に馴染もうと努力しているし、不器用ながらも年相応の人間らしさを手にいれている。

 

つまり、環境次第で人は幾らでも変わるんだ。それがニュータイプであろうとイノベイターであろうと、人は変わろうとする意志が有る限り幾らでも変革は起こせるという事だ。

 

 シャリオ君には既に立ち上がれる脚がある。前を向ける目も立ち向かえる体も裏技であるが取り戻している。もう、自身の体を理由に言い訳はできない。それだけを告げると彼は何も口にする事はなく、ぐったりと項垂れてしまった。

 

少々年下相手に大人気ない事をしたかもしれないが、彼も一国の軍を担っていた人物、いつか戻ってくる姉の為にそれまでに国の在り方を変えられるようボルボナ将軍達と頑張って欲しいものである。

 

 そしてシャムナだが、彼女にはどうやら死に戻りのギアス(多分これで間違いないはず)の保有者で、具体的には死した瞬間彼女は死ぬ六時間前へ意識だけ戻せるギアスをの持ち主らしい。

 

何とも便利そうで不便そうなギアスである。死ぬ瞬間発動するとか、だったら寿命で死ぬときは一体どうするんだよ。永遠にor延々と生と死の六時間を繰り返すの? それなんて無間地獄?

 

 それを何気なく本人の前で言ったら、なんか顔面蒼白になってた。考えたことなかったんかーい。国のことばっか気に掛けて自分のこと何も分かってないやん。

 

まぁ、縁があればまた逢えるしその時になったら何とかしてやるって言ったら、震えながらコクコク頷くシャムナに取り敢えず大丈夫かと思っておく。………敵対した相手にらしくもなく温情だねと通信越しにシュナイゼルにからかわれたが、元を辿れば今回の原因は自分にも僅かながら関わってるし、一度助けた事がある以上ちゃんと責任は取るべきだろう。

 

 そんなわけで蒼神教、並びにジルクスタンでの騒動はこれにて終わり。あ、TARTAROSは念のためにグランゾンで破壊しておいた。取り敢えず冥王星辺りに持ってってディストリオンブレイクで粉微塵にしたから、これでもう悪用されることはないだろう。

 

やたら威力が増していたのは気になったけど……なに? グランゾンまたストレス溜めてるの?

 

設計図等の回収と消滅もシュナイゼルが信用ある部下を使って確実に行うって言ったし、今度こそ一件落着。これにて漸く本来の目的であるキタンさんへの墓参りにいけるというものだ。

 

 ただ、一つ気になったのがオルフェウス君………だったかな? なんか彼ってば自分に対して妙に畏まってるんだよね。グリンダ騎士団ってシュナイゼルの部下? の彼女達に話し掛けても反応がよそよそしいし、心当たりのない自分としては首を捻るばかりである。

 

ともあれ、新大陸で起こった騒動は終わりこれからまた自分の旅は始まるのだ。………その前に、目の前の紅いお二人からどう逃げるのか、それが問題だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────ナントカニゲキッタ。

 

 

 

 

 




次回からELS襲来編。

多分一話で終わる。


Q.グランゾンのストレスはいつ解消されるの?

A.近々宇宙怪獣という最高の相手がきてじゃな……


コッコロママに癒されたい人生だった……。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。