『G』の日記   作:アゴン

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仁王が面白くて更新が遅れました。
次は、Apocryphaコラボで遅れるかもです。

こんな作者を許して…。


その218

 

 

 

カミナシティから車で数時間、行けども行けども続く荒野の世界。時折水辺へ立ち寄り小休止を挟みながら、マリーベル達は勧誘者が残した教典に記された蒼神教の本拠地へと向かっていた。

 

「えぇ、はい。ではその手筈でお願いします。では」

 

「マリー、シュバルツァー戦術顧問はなんて?」

 

「直ぐに行動を開始してくれるそうよ。ロシウ大統領にも許可を戴いたし、これで万が一に備えての保険は完了したわ」

 

「サイデリアルが地球から撤退したとはいえ、よく他国の軍事を受け入れられるな」

 

「それだけ私達の事を信頼してるんでしょ、流石一国のトップ。器がデカイにゃー」

 

ティンクが運転するジープの車内、マリーベルの通信内容を把握したグリンダ騎士団の面々は、もしもの時に自分達の愛機が飛んでやってきてくれる事に一先ず安心した。

 

「本当は、戦闘にならないのが一番なんだけど……」

 

「レオンの懸念も当然ね。まぁ、あくまで私達の目的は蒼神教の内部調査だし、戦闘は万が一の手段として頭の隅に入れておきましょ」

 

「まぁ、個人的にはほぼほぼ黒なんだけどね。幾ら宗教団体とはいえ、KMFやASの目撃情報があるのはおかしいし」

 

「やはり、どこかの裏組織が介入しているのでしょうか」

 

カミナシティでマリーベル達が得た情報の中にはMSやASと言った機動兵器らしきモノが度々目撃されている。マーティアルの様な大規模な宗教ならいざ知らず一介の、それも新興されたばかりの宗教団体が短期間の間に機動兵器を有するまでに成長するのは有り得ない。

 

これも蒼のカリスマという名前による影響なのだろうか。確かに蒼のカリスマの強さは絶大だ。一度はZ-BLUEに討たれたとしても、別に蒼のカリスマとグランゾンが弱くなった訳ではない。その蒼のカリスマが援助を求めれば、その強さに目を眩んだ他国が手を貸すのは容易に想像できる。

 

問題なのは、仮に援助する国があったとしても、それがどこの国で、何の為にそんなことをするのかだ。

 

蒼のカリスマだって相手を選ぶだろうが、如何せんあの蒼のカリスマだ。あの力を自国の一部に一時的にでも出来るのなら、その引く手は無数にあるだろう。だが、サイデリアルは去り、国連が軍を建て直している今の地球の状況なら少し話は違っている。

 

度重なる大戦を経て、世界は今一つに纏まろうとしている。これ以上誰かの血を流さない為に、一つ一つの国々が一丸となって世界を建て直そうと必死に頑張っている。状況が分からないのはそんな国連に加盟していない一部の諸国だけ。

 

「…………与している組織、もしかしたら当たりが付けられるかもしれないわね」

 

「マリー?」

 

マリーベルはその優れた頭脳を以て蒼神教に関与している組織に幾つか候補を割り出して見せる。一気に解決策が見え始めたが、それ以上に嫌な予感がする。顔色が僅かに青くなるマリーベルにオルドリンが心配そうに覗き込む時。

 

「見えた。あそこだ」

 

ティンクの一言に車内にいる全員の視線が外に向けられる。見えてきたのは巨大な岩山、双眼鏡で見れば機械仕掛けの巨大な扉と、岩山には所々窓の様なものが見えることから、その様相は自然に見せ掛けた要塞の様だった。

 

気持ちを切り替え、潜入調査の体を隠しつつ、扉の前まで来たマリーベル達は真剣な面持ちで身構える。扉の前に立つ男は顔立ちの整っており、その表情は何処か不機嫌そうだった。

 

「───止まれ、何者だ」

 

「は、初めまして、私達は蒼神教に入信したくやって来た者達です」

 

「…………そうか、ならば入れ」

 

(あ、あれ?)

 

(検問とかしないのかしら?)

 

不機嫌な表情の割には入信したいと口にするマリーベル達を碌に調べず通す男、機動兵器すら通せそうな巨大な扉なのに検問もせずに通そうだなんて、一体どういうつもりなのだろうか。

 

訝しむもそれだけで実際に扉を開ける男、気にはなるが、何故調べないかを聞いて不審に思われるのも避けたいマリーベル達は今は深く追及せず、開けた門を潜るのだった。

 

「───全く、何故誉れある我がフォーグナー家が門番なんてしなくてはならないのだ」

 

マリーベル達を門の奥へと通した男、シェスタール=フォーグナーは不満と苛立ちに満ちた愚痴を人知れず溢す。こんな雑用如き仕事、自分がする仕事ではない。プライドと傲慢さに凝り固まる男はそれでも仕事には手を抜かず、やるべき事を行う。

 

懐から取り出すのは一個の通信端末、繋がっているのは自分の直属の上司であり、父親である人物。

 

「───父上、今しがたマリーベル=メル=ブリタニアとその騎士達を“工場”へ通しました。えぇ、では後は此方の手はず通りに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────いやぁ、まさか電子ロックの錠を外せるとは、お前さんやるなぁ」

 

「仕事柄、物弄りには自信がありましてね。上手くいって良かったです。へへ」

 

牢から脱出し、人気のない通路を走るのは自称旅人のシュウジとズィー、そしてオルフェウスの三人。牢を閉めていた最新型の電子ロックに懐から取り出したカードで触れるや、いとも簡単に解錠してしまったのは、流石のオルフェウス達も目を見開いて驚愕した。

 

「………ただの物弄りにしては手際が良すぎるな。お前、本当は何者だ?」

 

「いや、だから今の俺は唯の旅人なんだって、新大陸へ来たのも元々あった用事と友人に頼まれて来ただけだし、本当に大した人間じゃないんだって」

 

明らかにシュウジという男は何かを隠してる。怪しさもそうだが、何よりも軽薄そうな態度がオルフェウスには気に入らなかった。自分を偽り何か都合が悪いこともあるのか、後ろめたい事でもあるのか、此方が何度質問してもはぐらかすシュウジという男に、オルフェウスは少しずつ苛立ちを募らせていた。

 

「………まぁいい。お前が錠を外したお陰で俺達は自由に動けた。それについては感謝している」

 

「いやぁ、良いってことさ。兄さん達が手際よく見張りの奴をやっつけてくれたから、こうして上手くいったんだから」

 

「───だが、もし何か怪しい事をしたらその瞬間俺はお前の敵になる。胆に命じておけ」

 

「う、うん。分かった」

 

此方の脅しに震えながら頷くシュウジに取り敢えず釘を指すことができた。それにこの程度の脅しで震えるなら本当に唯の旅人なのかもしれない。沸き上がる罪悪感を圧し殺しながら通路を走り続けると、三人は広い空間に出て。

 

「っ!?」

 

「ここは……!?」

 

そこで信じ難い光景を目の当たりにする。

 

何処までも広がる地下空間、そこにあるのは無数の機動兵器。組み立てられ、建造され、完成されていく平和を脅かす無数の鉄巨人。KMFやASだけではない、MSやAT、世界中のあらゆる兵器が新大陸の地下深くにて造られていた事実に、オルフェウスとズィーは驚愕に目を剥かせる。

 

しかし、驚愕すべきはそれだけではなかった。機動兵器の数々を作っている機械を操っているのはこれ迄蒼神教に入信していたとされる多くの若者達の姿があった。

 

「もう、もう家に………家族の所に帰らせてくれ~!」

 

「私達はただ、蒼のカリスマ様にお礼を言いたかっただけなのに!」

 

「折角世界が平和になったのに、どうしてこんな事に……」

 

「お父さん、お母さん……」

 

「うるせぇぞテメェら! 泣き喚いてないでとっとと働けぇ!」

 

老若男女問わず、全ての人間が重たい機材を運び、機体を組み上げ作業している。普通なら全て組み立て用の機械で運んだりする筈なのに、この工場にはそれがない。必要最低限の機械以外多くが手作業で行われてしまっている。

 

「ここのところ新大陸への検問が厳しくなってきて、運搬用の機体はめっきり入って来なくなっちまった。大型の機体以外は皆規格の小さい物ばかりなんだ! ちゃっちゃと働けやこのぼんくらどもが!」

 

倒れる者を容赦なく鞭で叩き付ける。原始的でありながら何処までも野蛮な光景。

 

それはまるで古代の奴隷制度を見ているかのようだった。人を人と思わぬ所業、蒼のカリスマという名前を使い、彼に恩を感じていたもの達を捕え、労働力にしている。人が感じる感謝の気持ちを利用する悪辣さに、ズィーもオルフェウスも激昂する。

 

「ひでぇ、これが蒼神教の正体かよ」

 

「…………」

 

二人とも怒りを露にする中、シュウジはただ静かに眼下の人々を見つめて………。

 

「────野郎」

 

その表情は幸いにも二人に知られる事はなかった。

 

 

 

 

 

 




そして短くてごめんなさい。



─── とある日常の一コマ編。

グラハムの場合。

「ほう、この世界に訪れて最初に出会ったのは私だったと? 何とも、不思議な縁があったものだな」


シャーリーの場合。
「あ、あの。蒼のカリスマ……さん、ですよね? あ、やっぱり、何となく雰囲気が似てたからそうじゃないかと思ってた!」

「あの、貴方にお礼を言いたくて。あの時約束、守ってくれてありがとうって。そしてこれ、少ないけど依頼のお金……え? いらない? お礼の言葉も不要?」

「約束は守れていない? 自分はルルーシュ君の弟を守れなかった? ───あ」

「そう、ですか。ロロ君が………」

「でも、それでも! どうかお礼は言わせてください! ルルを、ナナリーちゃんを、カレンを、スザク君を、守ってくれて───ありがとう!!」





「シャーリー、奴とそんな約束をしてたなんて……」

「健気な事じゃないか。精々、泣かすなよ坊や」





それでは次回もまた見てボッチノシ


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