『G』の日記   作:アゴン

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閃の軌跡3をプレイして一言。

取り敢えず銅のゲオルグと黒の長は絶許。


その166

 

 

 

嘗てZ-BLUEと協力し合った事もあった謎の組織クロノの一員、アドヴェント。時には情報を貰い、時には共に戦場で肩を並べていた者が、突如Z-BLUE(自分達)にアサキムと共に牙を向けてきた。

 

動揺するZ-BLUEを前にそれでも攻撃の手を弛めないアドヴェントとその部下達、致し方なく迎撃する事を選択したZ-BLUEはアドヴェントとの望まぬ戦いを繰り広げる事になる。

 

必死に抵抗し、激闘の果て、漸く退ける事に成功したかに見えた。しかし、逃げようとするアドヴェントを追い掛けるヒビキに、アドヴェントはある真実を突き付ける。

 

自分こそがヒビキとヒビキの父と姉、唯一の家族を時空振動を引き起こして巻き込んで殺害したテンシなのだと。

 

自らを助け、導き、幾度となく救ってくれた者が何よりも許せない仇であると知ったヒビキは怒りと悲しみ、そして希望だったモノが絶望に変異した事により、肉体よりも先に精神が壊れそうになった。

 

錯乱状態に陥り、無抵抗のアドヴェントに必殺の一撃を見舞うヒビキ、しかし破壊された機体から現れたのは宙に浮かび、バリアの様な障壁を張る無傷のアドヴェントだった。

 

手を翳しただけで天変地異を引き起こし、ジェニオン・ガイを一撃で打ち倒すアドヴェント。その精神性は既に人間の範疇ではなく、その強さもまたZ-BLUEの理解の外側にあった。

 

誰もが絶句する。機動兵器の攻撃に傷ひとつ負わず、腕の一降りで天変地異を引き起こす絶大な力に。

 

誰もが驚愕する。他者を自分のモノだと微笑みを浮かべながら断言するその精神性に。

 

そして────。

 

「ぐ、ぐぅ…………」

 

「いつまで寝ているつもりだ? 立てないならそのまま叩き潰すだけだぞ」

 

誰もが唖然となり、目を点にする。今まで自分を完全に下に見ていたアドヴェントが、超常の力を有し、遥か高みから見下ろしていたアドヴェントが、血だらけとなって地に這いずるその光景に。Z-BLUEとクロノの隊員達、アサキムすらも驚愕と混乱に陥り、目の前の事態に理解が追い付けずにいた。

 

アドヴェントを見下ろすのは仮面越しからでも分かる程に怒りを露にする蒼のカリスマ、死んでいた筈の者が生きていたという事実に当然Z-BLUEも動揺していたが、その動揺の意味は最早別のモノに刷り変わっている。

 

ジェニオンですら傷付けられなかったアドヴェントが、同じ生身である魔人に一方的に打ちのめされている。一体これはどういう事なのか、混乱するZ-BLUEが現実に引き戻されるよりも早く、彼の部下の一人であるコードネーム:ブルーが機体を加速させて蒼のカリスマに斬りかかる。

 

『貴様ァッ!! よくもアドヴェント様を!』

 

『ブルー!?』

 

『おい、よせ!』

 

以前、彼と何度も戦場を共にしたことのあるランドとクロウから呼び止めの声が投げ掛けられるが、既に彼の目には蒼のカリスマしか映っていない。自分達が慕い、崇拝するアドヴェントが一方的に殴り倒される光景を前に、彼の感情は怒りに振りきられていた。

 

ブルーと呼ばれるアドヴェントの部下に続き、他のクロノの面子も蒼のカリスマへ殺到する。アドヴェントを救うため、それ以上に蒼のカリスマに天誅を下すため、彼等は生身である彼の者に容赦なく得物を突き立てる。

 

人なんて容易く葬れる機動兵器の武装、迫り来る脅威を前にしかし蒼のカリスマは目も向けず…………。

 

「グランゾン」

 

突如、空間を穿つように現れる黒い孔。そこから伸びた巨大な剛腕は、ブルーの駆る量産型アスクレプスを殴り飛ばした。

 

波紋の様に広がる孔、そこから這い出てくる蒼い魔神に今度こそクロノの隊員達も息を呑む。破界事変の頃よりその猛威を奮ってきた多元世界最凶の魔神、グランゾン。かの魔神の顕現に、クロノ達の勢いは完全に削がれる事となった。

 

狼狽え、動揺するクロノの隊員達。しかし蒼のカリスマは彼等に目を向けず、依然としてアドヴェントを見下ろしている。

 

怒り。ただ怒りに燃えている魔人にZ-BLUEも声を掛ける事が出来ずにいた。遠巻きから眺めていたC.C.も、その様子を見守るだけに留まっている。

 

尚、ある意味で最も時間稼ぎに成功した功労者であるギルター=ベローネは白眼を剥いて気絶している。

 

「思い出すなぁ、リモネシアでの事を。あの時も確かこんな風だったっけ、まぁあの時とは状況も立場も真逆だったが」

 

「………………」

 

「あの時はお前の策略にまんまと嵌まってしまった訳だが…………さて、今回はどうする? お前を崇拝する部下達に突貫を命じるか? それとも単独で俺とやり合うか? 俺はどっちでも構わないぞ」

 

どちらにしても殺ることは変わらない。そう暗に語る蒼のカリスマ───いや、シュウジ=シラカワにアドヴェントは歯を食いしばって耐えている。こんな屈辱は初めてだと、自分を頂点に物事を考えるテンシたるアドヴェントは腸が煮えたぎる思いを抱いていた。

 

「ふ、ふふふ。素晴らしい、本当に素晴らしいよ蒼のカリスマ───いや、シュウジ=シラカワ。私にここまでの手傷を負わせるとは、どうやら既にその身は真化の先に至ろうとしているな」

 

「………………」

 

「成る程、それだけの力があれば私を殺しきる事も出来るだろう。しかし!」

 

瞬間、アドヴェントの腕のひと振りにより風が舞い上がり、砂ぼこりが辺りに蔓延する。視界を遮った事により魔人の眼から逃れたと確信したアドヴェントは、宙に浮かび空高く飛翔する。

 

これは逃走ではない。驕り、他者を侮る哀れな人間に天誅を下すため、地に這う人間にその思い上がりを正す為の必要処置だ。手を空に掲げ、掌握する様に握り締めると、アドヴェントの頭上に広がる天空が音を立てて悲鳴を上げている。

 

ヒビキを、ジェニオン・ガイを一撃で倒したあの攻撃が再び襲い掛かる。その力の程を間近で目にしたZ-BLUE、その一員であるヨーコ=リットナーはシュウジに逃げろと逃走を促す。

 

しかしもう遅い。既に攻撃の準備は完了した。後はこの一撃に巻き込まれないよう距離を可能な限り広げるだけ────と、飛翔しているアドヴェントの背後に突如壁が現れた。

 

「何処へ行く気だ?」

 

否、それは壁ではなかった。一瞬何が起きたのか理解出来ずにいたアドヴェント、しかしその声が意味することに気付いた彼は恐る恐る背後を振り返ると…………。

 

「まだ、俺のターン(攻撃)は終わってないぞ」

 

握り拳を掲げ、振り抜く様の魔人がそこにいた。

 

人は翼など持ち得ず、空を飛ぶことなど有り得ない。人類という種が誕生してから今日まで覆ることの無かった現実、その絶対と言える物理法則を、蒼の魔人はスキップ感覚で飛び越えて見せた。

 

Z-BLUE一同が固まり、思考が停止する中行われるのは、積もりに積もったシュウジのシュウジによる蹂躙だった。

 

驚愕に目を見開かせるアドヴェントに拳を捩じ込み、次に膝、蹴りを始めとしたあらゆる打撃を彼の者へ叩き込む。そこに一切の加減は無く、暴力の全てを受ける事になったアドヴェントは悲鳴を上げる事すら許されず、ただ一方的に打ちのめされていた。

 

「胴回し・踵落とし」

 

そして勢いを乗せて放った踵落としはアドヴェントの腹部を捉え、そのまま地に叩き落とす。物理法則に基づき、地表へ落下するアドヴェント。

 

しかしこの時アドヴェントは笑みを浮かべていた。漸くシュウジから離れることが出来た。この隙が自身の反撃の始まりだと確信しながら、蒼のカリスマに向けてその手を広げる。

 

瞬間、天上から降り注ぐ業火が魔人を瞬時に呑み込んだ。これで漸く始末が付いたと安堵するアドヴェントは、全身に力を込めて再びバリアを張って浮遊する。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、まさか、ここまでの力を付けていたとは……しかし、今度こそこれで終わりだ。私の祝福を受けていながら尚抗うその精神の強さは感嘆に値する……が、やはり君はまだ人間だったようだ」

 

シュウジもアドヴェントにとってはヒビキと同じ、自分が保有するに値する“モノ”だった。真化を果たし、太極へ至ろうとするシュウジ=シラカワはアドヴェントにとっても予想外で、且つ重要な案件だった。

 

しかし自分と敵対するのなら話は別、自分に牙を剥くのなら不要と断じて廃棄するのみ。多少惜しくは思っても自分の目的の障害となるのなら間引くだけ。

 

「いらない時間を掛けたな、早急に離脱すると────」

 

「人越拳奥義」

 

“千手──観音貫手”

 

瞬間、アドヴェントは全身を撃ち抜かれた。痛みよりも困惑、衝撃よりも混乱に陥ったアドヴェントは呆然となりながら、声のした方へ振り返る。

 

そこには所々焼け焦げた蒼の魔人が祈るように両手を合わせていた。人を恐怖させ、神々すら足蹴にする様な魔人が今更何に祈るというのか、それが可笑しくもあり、中々様になっている事に変に納得したアドヴェントは目を閉じて意識を手放した。

 

軈て地表へと落下したアドヴェントは落ちた際に起きた土煙の中へと消えていく。今の一撃で手応えを感じたシュウジも彼の後を追って地表へ着地する。初めての空中戦だったが上手く行って良かった。そんな事を思いながらアドヴェントのいる方へ足を進める。

 

風が吹き、土煙を吹き消していく。まだまだ奴に仕返し足りない所があるが、いい加減Z-BLUEに説明をしなくてはならない。ヒビキもあれから何の反応も示さないし、もしかしたら気を失っているかもしれない。

 

自分の復讐を一旦中断する事を決めたシュウジ、すると…………。

 

「シュウジ=シラカワ!」

 

突然、C.C.の方から怒声にも似た声が飛び交ってくる。いきなりなんだと彼女の方へ向き、C.C.が指差す方角へ視線を向けると………。

 

「っ、しまった!」

 

そこにいた筈の女、サクヤの姿が完全に消え失せていた。まさかと思いながら半ば確信を得ていたシュウジは慌てながらアドヴェントがいる場所へ駆けていく。

 

大きく窪んだクレーター、その中心にいる筈のアドヴェントの姿が何処にもない。しまった。アドヴェントへの復讐と初の空中戦でサクヤの事を完全に度外視してしまっていた。

 

けれど、少し安堵している自分がいる。宇宙の大崩壊を食い止めるにはスフィアの力だけじゃなく、四つの感情を司るテンシなる存在である奴等も必要になってくるからだ。あの調子だとうっかり消しかねなかったシュウジにとって連中の取り逃がしは手痛い失態だが、最悪の事態にはなり得ていない。

 

一方、グランゾンの出現で奥手になっていたクロノの隊員は戸惑いながらも戦域から離脱。アサキムもいつの間にか姿を消し、今この場には蒼のカリスマであるシュウジとZ-BLUEしかいない。

 

疑惑は増えた。困惑も、混乱もZ-BLUEに混沌と渦巻いている。その事を何となく察したシュウジは小さくため息を溢し…………。

 

「お久し振りですね、Z-BLUEの皆さん。積もる話もあるでしょうから…………取り敢えず乗せてくれませんかね?」

 

取り敢えず、Z-BLUEに情報を提供する為に艦に乗り込む許可を求めるのだった。

 

 

 

 




>おめでとう! ボッチ&グランゾンがなかまになった!(強制)

次回、ボッチ死す。

ヒントつドッキリ


それでは次回もまた見てボッチノシ

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