『G』の日記   作:アゴン

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FGO、噂の山の翁が実装された記念に試しに一度引いてみたらいきなりの虹演出にテンションはMAX、しかもアサシンで大いに期待してみたら…………。

「解体するよ?」

一瞬思考が停止したけど、持ってなかったしヨシとしました(笑)



その134

 

 

 

二つに裂かれた赤い巨体が、空を仰ぎながら地に倒れる。轟音と砂塵を撒き散らしながら沈んでいくその様に、コダールの搭乗者であるゲイツは目を大きく剥かせてこれでもかと見開き、その視界には眼前に佇む蒼い機体を映し出していた。

 

『おい、おいおい、おいおいおいおい! 何だよこれは! 折角持ってきた貴重なベヘモス一機が速攻でおじゃんってどういう事!? ただの弱小な反勢力のお掃除じゃなかったのかよ! てゆーかなんで蒼のカリスマが生きてるのー? 死んだって言ってたじゃん! こんなの聞いてないよおじちゃんは!』

 

音声通信から聞こえてくる部下達の動揺の声、それは増援として呼ばれたアマルガムの兵士達だけでなく、周囲の新地球皇国軍の兵士にも及んだ。

 

組織の要でもあるラムダドライバシステム搭載、それは搭乗者の精神エネルギーを物質世界に介入し、事象に干渉させるモノ。ラムダドライバを通して生み出された精神エネルギーは力場の無い力場を生み出し、自身に迫る事象に対抗する力を与える。

 

防ぐ時には壁のように己の身を守り、攻撃する時は全てを穿つ弾丸と化して敵を撃ち貫く。そしてそれは防御や攻撃だけでなく、ベヘモスという巨体を支える動力源にもなっている。

 

アマルガムが生み出したAS、ベヘモス。悪魔を冠した銘を持つその機体は言ってしまえば全身をラムダドライバという筋肉と鎧で覆われた怪物だ。当然通常の兵器では傷を付けることは勿論、進行を阻むことも出来はしない。MSといった機動兵器でも撃破に至るのは至難の業だろう。

 

なのに────それなのに、何故あの蒼い機体は唯の一振りでベヘモスを両断しているのか? 切断面から火花を放ち次の瞬間には爆発、唯の鉄屑と成り果てたベヘモス。燃え盛る炎の中から、モノアイを煌めかせて現れる蒼い機体───トールギスを前にゲイツはグヌヌとくぐもった声を漏らす。

 

『た、隊長! ホントにあれは蒼のカリスマなんですか!? 自分は蒼のカリスマの機体は例の魔神であると聞き及んでいますが…………』

 

『まさか偽者? 奴の名を欲した輩が自らそう名乗っているだけなのでは?』

 

『こぉのスカポンタン共! 今のを見てまぁだそんな口が叩けるのか! 夢を見るのはママの腹の中だけにしておけ! 次また寝惚けた事ほざいたら奴よりも先に俺がお前らを殺すぞ』

 

怒気をこれでもかと込めたゲイツの罵倒が部下達に浸透していく。その一方でゲイツもまた部下達と同じ気持ちをその内に抱えていた。

 

聞いていた話と違う。アマルガムの上層部から伝えて聞いた話では確かに蒼のカリスマは死んだと伝えられている。ここへ呼び出されたのも上層部が今の内にサイデリアルに貸しを作れという指示でやって来たに過ぎない。未だ全貌が明らかにされていない謎の組織、技術、軍事、その全てがこれまでの規模とは一線を画すその力、僅でも恩を売って損はないというその命令に…………。

 

弱小勢力の排除、ゲイツは面倒くさい掃除感覚でやって来たが、その考えは思い付く中でも最悪の形で裏切られてしまった。

 

目の前にいる蒼い機体、以前見掛けたグランゾンとは違いMSの類いであることは理解できる。一見すれば確かに蒼のカリスマだと気付くモノはいないだろう。

 

だが、ゲイツは覚えている。眼前に立つ機体から発せられる恐ろしいほどの殺気に睨み付けられたこの感覚を、全身の穴という穴から汗が吹き出し、モミアゲが危険信号をこれでもかと発しているこの体験を。

 

そもそも、ベヘモスをラムダドライバの上から叩き斬る存在など早々いてたまるか。Z-BLUEにはスーパーロボット並の力を引き出すMSは確かに存在するが、それはごく一部の火力に特化した変態MSのみ、あんなデタラメな力を持つMSを扱えるのはZ-BLUEを除いて一人しかいない。

 

(クソッタレがぁ、どうして俺様の任務って予想外の出来事ばかり起こるんだよぉ! モウヤダ、ボクちんオウチに帰りたい)

 

しかし、それでも普段の調子を崩さない限り彼も流石と言えた。傭兵の中でも極めて特殊な部類に入る彼は目の前に立つ蒼い機体を前に内心で決意する。

 

(よし、ここは適当に相手して逃げよう。うん! その方が賢明なのは状況的にも明らかだしネ!)

 

ていうか、何が悲しくて地獄から蘇った化け物を相手にしなくてはならないのか。ゲイツのその判断は間違っておらず、彼はその後四機のベヘモスを失うという大失態をやらかしながらも、帰路につくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おいシュウジ────いや、今は蒼のカリスマか。こっちは粗方片付いたぞ。そっちの援護は必要か?』

 

「いいや、その必要はありませんよ。此方も増援であるベヘモス四機を始末しましたので…………まぁ、指揮官機は逃してしまいましたが」

 

『らしくないな。お前が敵を見逃すなんてな』

 

「まぁ、相手が相手でしたからね。此方の敵はラムダドライバ搭載型5機に加えて元ラウンズ1機、念の為という事で深追いは自重する事にしました」

 

(その自重をもっと別の所に出してくれればこっちも助かるんだけどなぁ)

 

「ん? 何か言いましたか? 報連相は大事ですよ、気になる事があるのなら速やかに話してください」

 

『何でもないよ。しかしいいのか? 折角ここの基地を叩いたんだ。物資とか色々奪っても良かったんじゃないのか?』

 

通信越しで訊ねてくるギュネイだが、蒼のカリスマはそれは必要ないと慎ましく却下する。本来、今回の作戦は勝ち目の薄い博打の様なもの、自分達という別要素が加わった事で何とか達成できた作戦だ。

 

マリーメイアとシュナイゼル並びに人質になっていた元皇族一名の救出、止めに首謀者の一人だった元皇女の確保、最後を除いてそれは今回の作戦の第一目的であり、不可能とされていた目標だったのだ。それが達成された今、この場に長く留まるのは危険というものだろう。

 

それに、未だサイデリアルの全てが明らかになっていない現在の状況に必要以上の刺激は与えたくないというのもある。相手は地球よりも遥かに技術が進んだ力を有している。次元力の制御や応用、技術転換も向こうが格段に上、下手に反抗して相手をその気にさせてしまえば被害が出るのは此方になってしまう。

 

今はまだその時ではない。通信画面の向こうにいるギュネイもその事を分かっている様で、特に反論しないまま「了解」と言い残して通信を切る。直後、自分の反対側へ飛び立つ数機の機体を目にした蒼のカリスマは、それが撤退完了の合図だと理解する。今頃マリーメイア達も、先に脱出したシュナイゼルの所に合流している所だろう。

 

「…………さて、そういう訳で此方も撤退させて戴きたいのですが────まだ、やりますか?」

 

横で地に膝を着き、槍を突き立てているKMF────パーシヴァルを尻目に、蒼のカリスマはその搭乗者であるルキアーノに訊ねる。

 

アマルガムの横槍であるベヘモス四機と、その指揮官機であるコダール。止めに元帝国最強の騎士が相手とならば、それは正しく死地と呼べるモノだっただろう。しかし、そんな戦力を以てしても蒼のカリスマとその機体A.トールギスを追い詰める事は出来なかった。

 

機体もさることながら搭乗している者は破界事変、再世戦争、時獄戦役と度重なる大戦を生き抜き、更にはその中で多くの強敵と戦い、それらを降してきた猛者である。

 

本人に全くその自覚はないが、その実力は既にエースの範疇には留まらず、操縦技術だけでも凄腕揃いのZ-BLUEの中でも上位に食い込む怪物である。

 

その怪物が、一切の慢心も抱かずに友によって洗練された機体であるトールギスを駆って戦場を行き交えば、その結果は必然とも言えた。一騎当千、その意味を正しく具現化した猛者、それが今の蒼のカリスマ────シュウジ=シラカワである。

 

その彼が未だルキアーノを相手に仕留めきれていない。それは別に相手を侮っている訳でもなく、ただ単にルキアーノ=ブラッドリー本人の実力によるものだった。

 

アマルガムの横槍は確かに予想外の出来事だった。ベヘモス四機というデカブツに加え、恐らくベテランであろう傭兵が乗っている指揮官機も随伴、単純な戦闘力では負ける気はしなかったが、それでもシュウジは彼等との戦いに違和感を感じていた。

 

それもその筈、絶対に勝つ気でいるルキアーノに対し、コダールの搭乗者であるゲイツは体の良いところで逃げられる様に部下達を盾にしたやり方で戦っていたのだ。戦場では多くの感情、思考、思惑が渦巻くモノ、状況を打破しようと懸命に戦う者がいれば敵を倒そうと必死になる者や自分だけは助かろうと画策する者もいる。今回はそれが如実に表れた最たる例である。

 

別にその違和感に振り回されていた訳ではない。ただ、シュウジ自身よりもある意味で生き延びる事に秀でたゲイツと、貪欲に自分を殺しにかかっていたルキアーノが奇跡的に噛み合っていたのだ。ベヘモスという巨体の影から攻撃してくるコダールとパーシヴァルの連携攻撃、偶然か、それとも意図的なのかは定かではないが、シュウジにとって彼等の攻撃は自分の動きを阻害する一種の妨害行動であり、やり辛さを強調する攻撃だった。

 

だが、それでもシュウジはトールギスを信じ、友から渡された機体と共にその状況を打開して見せた。ベヘモスを斬り伏せ、その隙に攻撃してくるコダールに回し蹴りで反撃し、槍を構えて突貫してくるパーシヴァルを刀で反らして殴り飛ばして見せた。

 

残った二体のベヘモスも速やかに両断してみせた事で打破できたこの状況、指揮官機のコダールを逃がしたのは悔しいが、それでも充分時間を稼ぐことが出来た。後は自分もギュネイ達の所に戻るようこの場から離脱するのみ。

 

────だと、そう思ってもどうやら向こうはそうはさせないみたいだ。機体の至る所から火花を散らし、それでも立ち上がるパーシヴァルにシュウジは言い難い圧力を感じた。

 

『あぁそうだ。これだ。この感覚だ。圧倒的な力に押し潰されそうになるこの虚脱感、俺は漸くここへ辿り着いた────いや、戻ってきた』

 

「なに?」

 

『感謝するよぉ蒼のカリスマ。お前は俺の大事なものを根刮ぎ奪った悪魔であり、再び俺に機会を与えてくれた神だ。正直、お前には憎悪しかなかったが、今この時のみ素直にありがとうと口にしよう。────故に、今度こそ俺の大事なモノを取り戻させて貰う』

 

支離滅裂、少なくともシュウジには理解できない言動を宣うルキアーノ。一体何をするつもりなのか、シュウジは警戒から手にした刀を構えた瞬間、パーシヴァルから予期せぬ力の波動を感じた。

 

KMFとMS、その機体差は倍近くに迫り、トールギスとパーシヴァルもその例から外れなかった。端からみれば見上げ見下ろしている両者、しかしシュウジにはパーシヴァルが自分達より何故か大きく見えた。

パーシヴァルから発せられる力の波動、それはシュウジも何度か目の当たりにした事のある力だった。

 

「この力、この感覚、────お前、まさかスフィアを!?」

 

『いいや違う。俺が奴から与えられたのはほんの一部分だけさ。奴曰く、この力は立ち上がる者の意志に反応して力を増幅させるらしい。逆境に陥れば陥るほど、その時に得られる力は倍増していく。分かるかぁ? 今俺を通してパーシヴァルの力の強さのほどを!』

 

「立ち上がる者の…………意志」

 

『漸くこの時がきた。蒼のカリスマ! 再世戦争でお前に奪われたモノを奪い返させて貰うぞ!』

 

「これは…………ちょっと不味いかもな」

 

パーシヴァルから発せられる力は時間が経過していく度に増大していく。思わぬ所から出てくるスフィア所有者の情報に戸惑いながらもシュウジは構えを深くさせ。

 

『行くぞォォォォッ!!』

 

「っ!」

 

襲い掛かる吸血鬼の一撃を正面から受け止めてみせた。

 

 

 

 




パーシヴァル&ルキアーノ、まさかの超改造。

次回で今度こそオリジナル話は終わりにするのでもうしばらくお付き合い願いします。

それでは次回もまた見てボッチノシ

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