クリスマス。それはキリスト誕生を祝福する年に一度の恒例行事、多元世界であるこの世界でもそういった風習はある様で、世間はクリスマス一色に彩られていた。
街中を彩ったイルミネーション、目映い程に綺麗な光に照された街道に幾つもの家族らが歩いている。
平和だ。破界時変と再世戦争という大戦を経て漸く掴みとった尊いモノ、多くの犠牲を払って手にした平和は、この世界にとってこの上ない価値のあるモノだろう。
だというのに……何故だろう。腕を組んでイチャイチャしているカップルを見ていると、無性に腹立たしくなるのは。
「あー、縮退ブッパしてぇ……」
無意識にそんな台詞が出てきてしまう程に俺のイライラは募っていたらしい。アッチをみてもイチャコラ、コッチを見てもイチャコラ、ラヴい匂いを来れでもかと漂わせているリア充共を見ればそれも仕方がない事だと思う。
現在自分はとある街角にて、サンタの格好をしながらケーキ配りに勤しんでいる。売り上げは上々で、このまま行けばバイト代も期待出来るかもしれない。尤も、お金を手にした所で大した使い道も無いんだけどね。
食糧もまだ備蓄があるし、資金の方も今すぐどうにかなる程切羽詰まった状態ではない。なら何故か、それは単にクリスマスという一大イベントで何もしないで過ごすという、ある意味独り身として一番やっては行けない愚行から逃れる為である。
クリスマスという日に何もしないというのは精神的に頗るキツイ、それはもう心が折れてしまいそうな程に。だからこうしてバイトして少しでも気を紛らわそうとしているのだが……。
(正直、これはこれでキッツイな。これならグランゾンのコックピットに引きこもれば良かった)
自分の視界を覆い尽くす程のカップル共を、俺は死んだ魚の目で眺めていた。体を動かせばクリスマスなんて気にしないと思っていたのに、こんなに苦しいのならグランゾンのコックピットに引きこもり“クリスマスなんてなかった”と自己完結出来たというのに……失敗した。
「ねぇ、今日これから予定ある? もし良かったらなんだけど、家でごちそうしようかと思っているんだけど……どうかな?」
「私の家、今日両親帰ってこないの。だから…………上がっていかない?」
「なんか寒いね」
「今日は雪が降るらしいからな。ほら、もっとくっ付けよ。風邪引くぞ」
あー、心が縮退するんじゃー。
耳に入ってくる恋人達の会話、彼等のこの後の事を考えると、本気でここら一帯を爆心地に変えてやろうかという考えが浮かんでいる。それこそ火星での戦い並に暴れてやろうかと思った。
ボッチの僻み? あぁそうとも、本日の俺は一人さ、ボッチさ、誰とも過ごす予定なんざねぇよ! 自分が抱いているこの感情は嫉妬以外の何物でもない。けれどそれ故にリア充には分かるまい。ボッチで過ごす男の業の深さを。
と、今までの自分だったら感情のままに動き盛大にバカをやらかしていただろう。だが今の自分は20を過ぎた男だ。大人とは言わないが僻み程度で世界を壊す程子供ではない。
ならどうするか、色々悩んだ結果、自分はある行動を開始する事に決めた。
名付けて“サンタのカリスマでこれまでのイメージを払拭しよう”作戦。クリスマスと言えばサンタ、サンタと言えばプレゼント。知り合いを始めとした多くの子供たちにプレゼントを渡す事で、世間が抱く蒼のカリスマのイメージを払拭しようという作戦だ。
既に蒼のカリスマのクリスマスVer.も用意しているし、相方であるグランゾンもトナカイ色に染め上げている。尤も、グランゾンには鼻の部分が無いから赤くしていないが、代わりに額部分の一部を赤く塗る事にした。その結果、グランビームは撃てなくなったけどね。
普段とは違う格好にグランゾンもどこか楽しそうだ。シュウ博士だけは何とも言えない表情で苦笑いしていたけど、一応年に一度という事で納得してくれた。
準備は万端、ルルーシュ君風に言うなら条件は全てクリアされた。後は時間が経過し、子供達が寝静まるのを待つだけである。
「ふふふ、これでもう蒼のカリスマをテロリスト呼ばわりする奴はいないだろう。来年頃には蒼スマと略称され、人々に愛されるユルカワ系になるに違いない。ぐ、グフフフ」
「シュウジさーん、気味悪い声出してないで働いてー」
「あ、スミマセーン」
そして夜は過ぎ、蒼のカリスマことシュウジ=シラカワは遂に作戦を開始させる。
ある時は小学生社長の所へ、またある時は小学生ICPOの所へ、更にはチルドレン達、元皇女様や親友の愛娘、
警備の突破や居場所はどうやって掴めたかって? サンタは全ての子供達の希望、不可能などありはしないのだ。
そして……。
「年に一度位は戻ってきてもバチは当たらないよな」
リモネシア。世話になった人達や子供達全てにプレゼントを配り終えたシュウジは、満足気に空の彼方へ飛び立っていった。
◇
───翌日。
「ふぁー、よく寝た。ん? 枕元に何か置かれてる?」
朝の日射しに目を覚ましたシオは枕元に置かれている箱に気付き、開けてみると……。
「なによ……これ」
丁寧に梱包された箱、そこに収まっていたのは……蒼のカリスマの変身キットだった。服のサイズから仮面の大きさ、更にはコートの寸法までその人に合わせて作られており、凄まじい手作り感を醸し出していた。
後にこれは蒼のカリスマプレゼントテロと称され、プレゼントを渡された人達は色んな意味で蒼のカリスマに対し戦慄するのだった。
尚、一部の人間には好評で変身キットを着用していたのは内緒である。
これで君も蒼のカリスマ! 変身して大胆不敵に相手を翻弄しよう!
蒼のカリスマ変身キット! 値段4800円! 今すぐゲットだ!
ナナリー「フハハー!」
ルルーシュ「ヴぇあぁぁぁ!?」
天子「フハハー♪」
シンクー「ヴぇあぁぁぁぁ!?」
マリーメイア「ふ、フハハー」
レディ「ヴぇあぁぁぁぁ!?」
C.C.「フハハー!」
ルルーシュ「ヴぇ…………………え?」
次回もまた見てボッチノシ