『G』の日記   作:アゴン

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今回は一気に話が飛びます。




その99

 

∵月γ日

 

ここ暫く決戦級の戦いが連続して行われた為、日記に触れる事も出来ないでいたが、漸く休める時が来たので、息抜きとコレまでの出来事の報告を兼ねて書いていこうと思う。

 

まず最初にアルテア軍に突入した自分とZ-BLUEはアルテア軍総司令官であるイズモと対決、ミカゲの奴の横槍があったりと割と苦戦を強いられたが、アンディ君とMIXちゃん、そして死を乗り越えたシュレード君の頑張りのお陰でこれらを撃破した。

 

アルテア軍と決着を付けた自分達はその直後突然現れた宇宙魔王の息子グーラ君と戦い、その後に控えていた宇宙魔王との決戦となった。

 

宇宙魔王とミカゲによって奪われた神話型アクエリオン、太陽の翼によって力の大部分を封印されていたと語る宇宙魔王はこの時遂に本当の力を開放し、自分とZ-BLUEを圧倒して見せた。

 

本当ならこの時点で自分も全力を出すべきだった。ネオになる事で奴に対抗する術を得るつもりだったのだが、先日交わした奴の───喜びクソ野郎との握手の所為でそうする事が出来なかったのだ。

 

奴と握手を交わしたその時、喜びのクソ野郎は自分に更なる呪いを、握手を通して流し込んで来やがったのだ。お陰で自分はより奴の呪いを受ける羽目になり、侵攻速度はより強いモノへとなってしまった。

 

その所為で自分は直接戦闘に参加する事は出来ず、ここ暫くワームスマッシャーによる援護攻撃しか出来なかった。おかげで宇宙魔王には嘲笑の笑みを向けられるわミカゲには舐められるわと散々な目にあった。

 

まぁ、結局はそのどちらにも勝てたから別に良いんだけどね。宇宙魔王には正太郎君の鉄人、ミカゲにはアクエリオンとアマタ君が、それぞれ太陽の力で連中を退ける事が出来た。

 

鉄人に施された太陽エネルギー、その全てを開放させての特攻はマイナスの次元力の塊である宇宙魔王には効果覿面で、奴は断末魔と共に鉄人の放つ光に溶けていった。

 

因みに、これは宇宙魔王の決戦の時に知った事なのだが、どうやらアルテア軍の母星は自分達が住んでいる地球から分かたれた存在で、人間で言うところの双子にあるらしいのだ。

 

何故アルテアの星と自分達の星が分かれたのか、それは嘗て滅びの時を迎える筈だった地球を救うために、アポロ君達が取った行動の果てに起こった出来事が原因であり、それにより時空震動が引き起こされ、日本が二つあるように地球も二つに分かれたのだという。

 

何とも壮大な話だが、あの不動さんが言うのだから間違い無いだろう。アルテアと地球、二つの星の真実を知った自分達は宇宙魔王を倒した後、導かれる様に再び転移する事になる。

 

この時、再びアンチスパイラルのメッセンジャーとなったニアちゃんが現れたのだが、どうやら彼女はアンチスパイラル直々の伝言があったらしく、転移される瞬間自分の所にメッセージを飛ばしてきた。

 

内容はアンチスパイラルからの決闘書、要約すれば待っているからはよ来いという奴のメッセージに、俺は呪いとは別件で頭が痛くなってきた。無限に等しい力とそれに見合った威厳を持っている割になんか乙女チックだよなアイツ。

 

グランゾンのモニターに映し出されるアンチスパイラルのメッセージに頭を痛める自分だが、そうこうしている間に次の戦場に到達、そこは以前Z-BLUEの転移に巻き込まれた際に訪れたパラダイムシティと呼ばれる所だった。

 

そこで待っていたのはザ・ビッグと呼ばれるロボット軍団と、ビッグオーの色を反転させたビッグヴィヌスという機体だった。

 

なんでもビッグヴィヌスにはロジャーさんの交渉相手が乗っているらしく、彼女の相手は専らロジャーさんが務める事になった。

 

けれど、目的もなく暴れ回る彼女を止めるのはロジャーさんだけでは難しく、アムロさんやシン君達が援護に回った。

 

しかし、ビッグヴィヌスの力は極めて特殊かつ凶悪で、攻撃されたモノは例外なく“消滅”パラダイムシティの世界から消えてなくなるらしいのだ。

 

しかも厄介な事にビッグヴィヌスの攻撃はその過程に関わらず必ず当たるというモノで、喩え直撃でなくとも彼女の攻撃を受けた者はこの世界から消えてなくなるというのだ。

 

過程に関係なく結果だけを具現させる。因果の逆転とか何処の青い槍兵の宝具だよ。絶対必中にして問答無用の一撃死とか、インチキどころの話ではない。

 

けれど、ここで彼女にとっての誤算が起きた。追い詰められたビッグオーを庇う為にビッグヴィヌスの一撃を受けてしまったのだが、どういう訳か自分は消える事なく、ダメージを受けるだけで済んだのだ。

 

恐らくビッグヴィヌスの力を防いだのは喜びクソ野郎の呪いの所為なのだろう。奴はおそらく宇宙魔王やミカゲよりも格の高い高次元生命体、それ故に格下の生命体の攻撃や干渉は受け付けず、ダメージを受ける事もない。

 

言うなればこれは奴の加護の様なモノなのだろう。奴に守られたと思うと正直反吐が出る思いだし、実際反吐を吐き出した。しかしお陰でビッグヴィヌスの虚を突く事ができ、ロジャーさんも彼女との交渉を成功させる事が出来た。

 

本当ならここで呪いごと自分を消滅させるつもりで、あわよくば開放されようかなと思ったりしたのだけれど、どうやらそこまで甘くは無かった様だ。消滅させられてたZ-BLUEの面々もロジャーさんが交渉を成功させると元に戻ると言っていたし、少し期待していたのだが……まぁ、仕方ないと言えば仕方ない。

 

で、その後はミカゲと奴の乗った神話型アクエリオンとミケーネとの決戦なのだが……ぶっちゃけそんな書く事はないんだよなぁ。強いて言うならばZマジンガーことゼウスさんが出てきて共闘してくれた事くらい。

 

ハーデスもゼウスとマジンガーの一撃により一応倒れたし、ミカゲの方もアマタ君達の力で退ける事が出来た。……その際にミカゲも自分が今一体どういう状態なのか見抜いたらしく、終始自分を見下していた。

 

まぁ、結局何が言いたいかと言うと、一連の戦いの中で自分はさほど活躍出来なかったと言うことかな。実際後ろからワームスマッシャーで狙撃していただけだしね。お陰で射撃技能が上がった気がした。

 

だが、この怒濤の連戦の所為で奴の呪いによる侵蝕がより強くなった気がする。ゼウスさん曰く、自分の呪いを解く方法は存在せず、命が続く限り呪いも続いていくという。

 

そこら辺は予め分かっていた事だから別に大した事ではないが、最近は呪いの影響力が濃く表に出てきた所為か、頭の痛みも酷くなっている。

 

日記を書けば少しは気を紛れるが、それでも辛いモノは辛い。今日も完徹かな、と空元気を振る舞ってみる。文章でだけど。

 

けれど、これで大体の連中とは一応の決着を付けた。地球にも無事に帰ってこられたし、後はネオ・ジオンとジェミニス、そしてアンチスパイラルだけである。

 

そしてそれらを越えた先に、自分の人生最大の山場が待ち受けている。奴に報復する最初の一歩を踏み出す為にも、自分は躊躇う事はしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────と、今日の所はこんな感じかな」

 

マクロス・クォーターの一室、割り振られた自室で今日までの出来事を書き終えたシュウジは、椅子の背もたれに寄りかかる様に伸びをする。

 

備え付けられた時計を見ると時刻は既に深夜を指しており、後数刻程で夜が明ける時間帯となっていた。本当なら眠る時間が無いと嘆く所だが、今の自分には有り難い事、今日もこのまま乗り切ろうと意気込み、横に置いてあった水の入ったコップに手を伸ばした時────

 

「あ………ッが………」

 

彼の者によって植え付けられた呪いがシュウジの内部にて暴れ始めた。完全なる不意打ち、これまでとは程度が違う呪いの奔流に、シュウジはなだれ込むように倒れ伏す。

 

遠くでコップが割れる音が聞こえるが、そんな事を気にかける余裕はシュウジにはなかった。全身が無数の蟲に這われる様な不快感、胸の奥で彼の者から受けた呪いがシュウジを塗りつぶそうと深く、強く胎動している。

 

グランゾンをネオへと至らせる時に似たような体験を経験しているが、それとはまるで別物。自我を書き換えるのではなく塗り替える、出来上がったキャンパスに別の絵の具を塗り重ねていく、そんなドス黒い衝動を前にシュウジは堪えるだけで精一杯だった。

 

早く収まれ、早く収まれ。懇願する様に衝動の沈静化を願うシュウジに反し、呪いは更に強さを増してシュウジを塗りつぶそうとしてくる。

 

やがて呪いは痛みとなり、頭の中にまで蟲が這ってくる。脳漿をグチャグチャにかき回されているかのような激痛にシュウジは悶え続けた。助けを求める声も出せず、薄暗い自室の中で苦しみ続ける中、それでもシュウジはこの呪いに抗い続けた。

 

耐えてやる。耐えてみせる。この程度の痛みは飲み干してみせる。目の前で大切な人達を奴に斬りつけられた事を思い出し、怒りを糧にしながら遂にシュウジは呪いの衝動に打ち勝った。

 

「………はぁッ、はぁッはぁッ、どうだ。勝ったぞ、クソッタレが」

 

呪いに打ち勝つ頃には既に朝日が昇りつつあった。水溜まりが出来るほどの汗を流し、髪は乱れ、目元には大きな隈を作りながらも、それでもシュウジは呪いに打ち勝ってみせた。

 

ザマァみろ。満身創痍の状態でありながら不敵な笑みを浮かべるシュウジは自室から見える朝日を眺め、勝ちを誇っていると……。

 

「これはまた、随分と無様な格好を晒しているじゃないか。いやはや、早起きというのも偶にはしてみるものだな」

 

背後から聞こえてきた声にシュウジは一瞬固まる。馴れ親しんだ声にまさかと思いながら振り返ると、そこには呆れた様な表情を浮かべた緑の悪魔(シュウジ視点)ことC.C.がドア越しに寄りかかりながら佇んでいた。

 

一体いつからいたのか、何故彼女がここにいるのか。疲弊しきった状態のシュウジは何とか誤魔化そうと思考を回転させるが、そうしている間にもC.C.はズカズカと部屋へと入ってくる。

 

「安心しろ。この事は誰かに話したりはしないさ、かの魔人の秘密を知ったんだ。そう易々と誰かに話したりするものか」

 

と、悪戯を思い付いた風に笑うC.C.にシュウジはぐうの音も言えなくなった。まさに魔女――常日頃からルルーシュが彼女に対して言っていた事をまさか自分が思うことになるとは。どうしたものかと弁明を考え始めた時、C.C.の手がシュウジの手を掴む。何だと思い抵抗するも、消耗しきった今のシュウジではC.C.の腕力にすら抵抗出来ず、されるがままに引っ張られる事になる。

 

こうなってしまってはもう止められない。仕方なくなすがままにされることになったシュウジは大人しく身を任せる事にする。しかし、その結果である今の状態に流石に納得出来なくなり、疑心感を露わにしながら彼女に説明を求めた。

 

「あの、C.C.さん? これは一体なんでせうか?」

 

「何って、見て解らんか? 膝枕だ」

 

こんな事も解らないのかと小馬鹿にしてくるC.C.に流石のシュウジも苛立ちを感じた。今の自分に彼女のおふざけに付き合えるほどの余裕はない。

 

それにもうじきブリーフィングの時間だ。早い所行かないと遅刻してしまう。起きあがろうとするシュウジだが、額に添えられた冷たい手にシュウジは動けなくなってしまう。

 

「お前は、少し頑張り過ぎだな」

 

困った子、そう慈しみの笑みと共に額を撫でてくるC.C.に、シュウジは再び何も言えなくなってしまった。

 

「……いつから気付いてたんですか? 一応、仮面を被って誤魔化していたつもりなんですけど……」

 

「相方も似たような仮面を付けているからな。オマケに面倒くさい所も似ているときている。そんな私が気付かないなんて、そっちの方がおかしいと思わないか?」

 

そういって先程の微笑みとは違う不敵な笑みを浮かべるC.C.に、シュウジは今度こそ毒気を抜かれる。降参だ。これでは誤魔化しようがないと観念したシュウジは、大人しくC.C.に身を委ねる事にした。

 

「………お前に掛けられた呪いは一種のギアスの様なモノだ。絶対遵守ほど強制力はないものの、その代わり受けたモノに生涯解ける事のない痛みと苦しみを与え続ける」

 

「そこまで分かるものなんですか?」

 

シュウジの問いにC.C.は静かに頷く。恐らくこの呪いを掛けた者は、自分と同じ永遠を得た存在なのだろう。故に気付けた、自分の膝に寝かされているこの男が今、どんな苦しみに苛まされているのかを。

 

「今お前に触れてみて分かった。このまま症状が進めばお前の心はこの呪いに染められるか、自我諸共砕けるかのどちらかしか道はないだろう。この呪縛から逃れる方法は唯一つ────」

 

死。呪いから逃れられる唯一つの方法、この選択を選べば確かに呪いからも開放されるだろう。けれど、それではどちらを選んでも結果は同じという最悪の結末に他ならない。

 

絶望。この呪いを掛けた者は自分を神だと自負しているつもりなのだろうか。人間では決して抗えないと、そう暗に示しているかのように……。

 

戦えば戦う程に、抗えば抗う程に呪いは強く大きくなっていく。ならばいっそのこと戦いから離れた場所にコイツを連れて行けばいい。いい加減この男は頑張り過ぎた、だからもう休ませてやろうとC.C.が言葉を紡ごうとした時。

 

「C.C.さん。一つ、俺と約束しませんか?」

 

「約束?」

 

まるで此方の意図を察したかの様に、シュウジ自身が彼女の言葉を遮った。

 

「もしC.C.さんがこの事を皆に黙っていてくれるなら、いつか美味しいピザをご馳走します。それこそC.C.さんがピザを飽きる位に沢山用意しますよ」

 

そういって笑みを浮かべ、小指を出してくるシュウジに今度はC.C.が息を詰まらせる。この笑顔を前に何か口にする筈の言葉が全て打ち消されてしまった。

 

既に、この男の気持ちは揺るぎないモノとなっている。本来なら止めるべき言葉を投げ掛ける筈だったC.C.の口は、自然といつもの憎まれ口に戻り……。

 

「……いいだろう。結んでやるよ、その約束を。けど忘れるな、私は決してピザに飽きる事はない。それは絶対に絶対だ」

 

不敵に笑うC.C.、呆れと悲しみの混じった笑顔と共に、彼女はシュウジの小指を同じ小指で絡め取り、静かに約束を交わす。

 

どうか、このボッチに祝福を。C.C.の祈りは誰かに届く事なく、静かに己の胸中に溶けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




宇宙魔王やハーデスとの決戦を楽しみにしていた方、すみません。
そろそろ時獄篇も佳境に差し掛かってきたのでこのペースで行こうと思います。
尚、主人公とC.C.はガイオウの時のような悪友的な関係にしていこうと思います。


Q主人公にとってこの世界に来て一番幸せだった時は

Aリモネシアに住み込みでバイトしていた頃


また見てボッチノシ

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