『G』の日記   作:アゴン

113 / 266
最近暑さが酷くなっています。
皆さんも熱中症に気を付けて下さいね。


その94

 

 

 

△月β日

 

ブロッケンを旅のお供に加えて数日、相変わらずエタニティ・フラットが止まる様子は無く、この世界の時間停止の刻限は刻一刻と迫りつつあった。

 

この件に関しては今の所トライア博士に任せるしかないが、エタニティ・フラットの影響力を強く受けているリモネシアの事を考えると焦ってしまう自分がいるのも……また事実だ。

 

以前トライア博士と出会った街もエタニティ・フラットの影響力を強く受けており、自分達以外の人間が殆ど動いていない状態になっている。恐らくはリモネシアもあの街と同じ状態に陥っているのだろう。

 

動きが止まった子供達とお年寄り、ラトロワさんやジャール大隊の皆、ガモンさん、そしてシオさん。止まった時間の中で、彼等が自分と全く異なる時間を生きている事を考えると、焦りと苛立ちばかりが募ってくる。

 

とはいえ、先程も述べた通りこの件に関してはトライア博士に一任するしかない。歯痒い思いだが彼女に任せた以上、自分も信じるしかないのだろう。ここはグッと我慢して耐えるしかない。

 

ネオ・ジオンの総帥も一応考えはあるみたいだし、ここは彼を信じて待つしか無いだろう。特異点や大特異点に関しても彼に任せるしかないみたいだし。

 

今は自分に出来る事を探してそれを実行するのみ、未だクロノの全容も暴けていないし、自分は自分でやるべきことをやっていこうと思う。

 

そしてブロッケンの件についてだが、現在彼はあしゅら男爵に対する気持ちに一応の踏ん切りを付けた為か、ここ暫くは割と良く働いて貰っている。

 

彼の役目は立ち寄った村や町で簡単な情報収集で、訪れた際には結構な量の情報を集めてきている。元々がDr.ヘルによって生み出されたサイボーグ戦士という事で、俺の作った新しい体を与えたところ、本人のやる気もあって結構重宝している。

 

旅の資金も彼特有の一発芸、首なしデュラハンのお陰で今の所困る事はない。遊園地などの娯楽施設に立ち寄った時なんかはそのコミカルなキャラが幸いし、ちょっとしたマスコットキャラになる程だ。

 

ジャンル的に言えばキモカワイイという奴なのだろう。女子高生にチヤホヤされているブロッケンもマンザラでは無さそうに見えた。尤も、その人気ぶりもボン太君が出て来た事により瓦解したんだけどね。この時調子に乗ってたブロッケンが見るからに落ち込んでいたのだが、その前の調子の乗りっぷりがウザかった為同情はしてないんだけどね。

 

しかし、あしゅら男爵って奴は一体何がしたかったのだろう? ブロッケンも再世戦争が終わってからのあしゅら男爵の様子は変わったと言っていたし、Dr.ヘルとの決戦の時も、敵だったのが急に人が変わった様に態度を変えて甲児君に協力していた。

 

先の機械獣軍団とZ-BLUEの戦いの時の采配も、今思えば何だか奇妙に感じる。まるで最初から負ける事を想定していた様だった。

 

……何だか胸騒ぎがする。今後はあしゅら男爵の動向も探った方がいいのかもしれない。出来れば捕らえて目的を吐かせるのが理想的だが、相手はDr.ヘルによって改造を施された怪物、生半可な攻撃では太刀打ち出来ないだろう。

 

その時になれば最悪あしゅら男爵を倒す事も視野に入れる必要があるが……その時はブロッケンの奴は関わらせない様にしよう。幾ら見捨てられたといっても、あしゅら男爵はブロッケンにとってただ一人の戦友だ。戦友が殺されるような場面を見せるのは酷だろう。

 

ともあれ、明日も早い。エタニティ・フラットの完成まで残りの猶予がなくなってきている今、自分も行動を進めていこうと思う。

 

 

 

△月γ日

 

────甘かった。今日までのあしゅら男爵に対する自分の考えは、まさにこの一言に尽きた。

 

奴の動向を探っていくに連れてあしゅら男爵の目的がZ-BLUEと……いや、甲児君と決着を付ける事だと分かった自分達は、Dr.ヘルとの最後の戦いに用いた場所、日本にある光子力研究所へと向かった。

 

自分達が訪れた頃には既に戦いは決着しており、あしゅら男爵の持つ全ての機械獣は破壊されていた。このまま甲児君の戦いにも決着が付くかと思われたその時……奴等が顕れた。

 

“ミケーネ”遙か太古の時代より存在していたとされる神話の神々があしゅら男爵の手によって復活、その時の衝撃により時の牢獄が一瞬破壊された。

 

自らを生け贄にする事でミケーネの神々を復活させたあしゅら男爵は絶命し、形も残らず消滅した。ブロッケンは死んだあしゅら男爵に動揺していたが、正直自分はそれどころではなかった。

 

何せあのZ-BLUEが手も足も出ないで追い詰められていたのだ。神話の神を相手に為す術もなく追い詰められた彼等は、圧倒的とも言える連中の力により心が折れそうになっていた。

 

ミケーネの神々、特にハーデスと呼ばれる連中のトップが顕れた際に、宇宙魔王やミカゲが顔を出してこの星は諦めると言ったのだ。それだけでも連中の凄まじさは計れる。

 

本当はこの時に自分も参戦したかったのだが、倒れていた錦織つばささん……甲児君のお母さんを放っておく事も出来ず、ゼウスというミケーネの神が連中を追い払うまで行動に出る事が出来なかった。

 

 ───今、ミケーネの連中は日本の熱海に侵攻している。先の戦いで大きく消耗した今のZ-BLUEでは、奴等の相手をするのは難しい。

 

ならば、自分が行くしかないだろう。地球連邦が軍を派遣して迎撃に向かっているが、人智を超えた相手を前にしては……言っては悪いが、正直時間稼ぎ程度しかできないと思う。

 

人類は今、追い詰められている。それは月が落下し、インベーダーの大群が押し寄せてきた時以来の危機的状況だ。そんな追い詰められた状況だからこそ、グランゾンの力が必要になってくる。

 

既にブロッケンが現地に急行し、逃げ遅れた人々の救助をしてもらっている。新しい体を得た今のアイツなら、瓦礫に埋もれた市民を助け出す事も可能だろう。

 

……ミケーネの神々、その力はZ-BLUEを叩きのめす程に強力で、とても手を抜いたり周りの被害を考える余裕なんてないだろう。規模こそはアンチスパイラルに及ばないまでも、決して下に見ていい相手ではない。

 

けど、だからといって放っておく訳にもいかない。喩え相手が神……いや、神だからこそ俺は退くわけにいかない。ぶっちゃけ、あんな奴ら許せないというのが本心な所だ。

 

神? 高次元の存在? 奴等について詳しく教えてくれたシュウ博士には本当に申し訳無いが、正直そんな事はどうでも良かった。

 

ぶっ潰す。俺が奴等に対して抱く気持ちはこれだけだ。神が相手? 上等。だったら俺はグランゾンと共にその傲慢ちきな神を滅ぼすだけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────熱海。海に面しており、温泉宿が数多く点在し、常日頃から人々で賑わっていた活気ある街並み。

 

旅人や地元の住民問わず、過ごしやすく恵まれていたこの地は……今や見る影もなく、熱海の街は瓦礫と炎に包まれた地獄と化していた。

 

この世の終わり。終末を思わせる光景と、その中に響く人々の悲鳴と断末魔が熱海に響き渡る。そんな人間たちの叫びを肴に嘲笑う者達がいた。

 

ミケーネ。神話の神々であるその者達は逃げ惑う人々を見下ろし、嘲笑い、罵倒した。人間風情がと、自分達こそが支配者に相応しいと断じる彼等は、やってきた連邦の戦力ごと熱海を蹂躙した。

 

暴虐の限りを尽くす彼等の様子は神と言うよりも悪魔に近い。燃え盛る炎の中を闊歩する彼等の力は、正しく超越した存在に相応しかった。

 

そんな彼等に一つの声が轟く。低く、潜もった声でありながら絶対的な存在感を出しているその者の名は────ハーデス。ミケーネ神の三大柱の一柱である神の一言に、これまで騒いでいた神々は静まり返る。

 

『ここは忌まわしきゼウスの臭いが一際強い。一切の容赦なく、完膚無きまでに破壊せよ』

 

座していながら放たれるその命令にミケーネの神々は雄叫びを上げる。自分達のトップであるハーデスに忠誠を誓う彼等はその命令に従い、熱海の街を更に破壊しようとした。

 

と、その時だった。空の向こうから見えた蒼い光にミケーネの神々は注視する。また人間の増援か、半ばウンザリしながらミケーネ神の一人が迎撃しようとした時、それは起こった。

 

『ワームスマッシャー』

 

『なっ、あ、ぐ、ぎゃあぁぁぁぁっ!!』

 

突然ミケーネの神が悲鳴を上げたと思ったら、体の内側から無数の光の槍が飛び出し、彼の者の肉体を破壊し尽くしたのだ。内側から破壊された神の一人は断末魔を口にしながら消滅、その光景に他のミケーネ神達に戦慄が走った。

 

『……ほう?』

 

ミケーネの神々が狼狽する中、ハーデスだけは熱海の地に降り立つ蒼い機体を興味深そうに注視する。禍々しくも猛々しいその機体から発せられる雰囲気は、これまで出会ってきたどの鋼の巨人とも違ったのだ。

 

恐らくは先のZ-BLUEとやらの連中と関連する者なのだろう。だが、その存在は明らかに他とは違う。永い時の中を生きてきたハーデスにとって、目の前のソレはそれだけ興味を引かれるモノだった。

 

炎の剣を片手にハーデスが立ち上がる。ただそれだけで他のミケーネの神々は落ち着きを取り戻し、それぞれが持つ武器を手にし、蒼き魔神に向き直る。

 

神が敵として認識した。向けられる神の敵意を前に、常人なら尻込みするだろう。

 

しかし、男は違った。沸き上がる恐怖よりも怒りの方が遙かに大きいその者は、魔神の中で更なる怒りを募らせる。

 

『……嫌な事を思い出させやがって、覚悟は出来てるんだろうなぁ!!』

 

猛る。神の敵意を跳ね返し、空間の穴から剣を取り出した蒼き魔神は主である魔人に従い、単騎で神々に突貫していくのだった。

 

 





絶対的な力を持つミケーネに為す術ない熱海、そこへ更に現れる魔神の登場に果たして熱海は無事に生還出来るのか!?

お願い負けないで! ここで貴方が倒れたら皆との約束はどうなるの!
大丈夫、ここでZ-BLUEが来たらまだ勝機があるわ! 希望を捨てないで!

次回、Gの日記

“熱海死す”

デュエルスタンバイ!




▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。