B.A.D. Beyond Another Darkness -Another Story- 作:Veruhu
しかし未だにこの作品に感想を下さる方の存在に気づき、嬉しさが込み上げ、またB.A.D.のSSを上げる人が私以外ゼロに等しいことからも、私はこの作品を継続し、読者さまの期待に応える責任があるのではと感じた次第です。
また、B.A.D.という作品は、私がこれまでに読んだライトノベルの中で、一番感銘を受けた作品です。現実を忘れ、非現実的な世界に誘ってくれるという点において、B.A.D.より優れたライトノベルはなかなかなか無いなと思う次第です。小説は創作する物語です。創作の世界で現実の世界を描いても、その面白さには限りがあります。なぜなら現実は我々がいつも体験していることであるからです。(もちろん体験していない現実もあるのですが)ですから創作の世界では、その現実では味わうことのできない新鮮味が面白さの秘訣ではないかと考えています。だから私は、現実では味わうことの出来ない、新鮮味のある物語をよく好んで読んでいました。その中でやはりB.A.D.は、現実では味わうことのできない非現実的で新鮮な事象を描いてくれる作品だったので、本当に面白かったのです。シリアスものが好きという点も、それを助長したのでしょう。
ともかく、この作品を継続したいという思い。そして繭墨さんを、しかも原作ではあまり描かれなかったもっとかわいい繭墨さんを描きたいという思いから、作品を継続してみようと思った次第です。ただやはり忙しさは変わりませんので、不定期になりいきなり作品の更新も停止してしまうかもしれません。結構な気分屋なので……。ただこの作品、少なくともStory 1のプロットは頭の中にずっと描き続けておりました。あとは文書化するだけですので、頑張って行きたいと思います。これからも、よろしくお願い致します。
僕は部屋を見渡した。窓は白いレースが閉められ、雰囲気の良いオレンジのライトが僅かに部屋を彩っている。一件、大変良さそうな部屋なのだが、僅かに異様さを感じる。
「どうだい、小田桐君? 君も…………
繭墨は、嫌な笑みを浮かべながら、横目で僕を見てそう言った。
確かにその通りだ。僕は、あまりに異界の影響を受けすぎた所為か、あれからいろいろなものが見えるようになっていた。もちろんそれは、繭墨が唐傘で見せるような明瞭なものではない。しかし確実に僕は繭墨が見せたような異常な物が、微かだが見えるようになっていたのである。
しかしこの部屋は、僅かに異様さを感じさせるのみで、特段大きなものは感じないし、見えない。もしもこの事件が怨霊の仕業ならば、その霊の痕跡が残っているだけという感覚だろうか。いまいちはっきりとしない感覚だ。
「何か異様さは感じますが、何も見えませんね。本当に微かに感じるだけで、ここが現場とは思えません」
「そうかい。まあボクもそんなところだろうとは感じていたよ――――――ここで人を殺すのは、あまりにも無粋過ぎる。もしそれだけの怨念があるのだとすれば、それだけの
「はい? あなた方は、この呪いは殺しの結果だと言われるのですか? しかしそれはあまりにも的外れです。私は人を殺したことなどありません」
有馬は、横からそうきっぱりと断言した。その言い様には自信があり、嘘を付いているようには見えない。
「ふーん? 確かに、――――――
繭墨は、有馬を横目で見ながらそう言った。有馬には、繭墨の自然に出る嫌な笑みが、嘲笑しているように見えているかもしれない。
「何をバカな。失礼にも程がある。……………私は失礼させて頂きますよ。後のことはメイドに言って下さい。では」
有馬は声を荒げ、そのまま踵を返した。憤慨しているためか、その足取りは早く足音は重い。
「おっと、待ってくれるかい? ボクたちもいろいろ調べたいことがあってね。他の部屋も回らせてもらうけど、いいかい?」
「どうぞご勝手に。持ち物を持ち出さない限り、好きにして頂いて構いません」
「では、メイドにも退散願えるかな? 後はボクたちが勝手に調べたいからね」
繭墨がそう言うと、有馬は軽くため息を付き、メイドの方を見て口を開いた。
「じゃあ行こう」
「畏まりました…………繭墨様、小田桐様、失礼致します」
メイドは僕たちにそう言い、軽く礼をするとそのまま踵を返した。有馬は部屋の外に出て行き、メイドは部屋の外に出るとその扉を閉めた。二人の足音が遠ざかっていくのが聞こえる。やはり有馬は少し怒っているような足音だ。
僕は軽く睨みながら繭墨を見て、口を開いた。
「流石にあれは言い過ぎではないんですか。僕もまだこれが殺しだとは思っていませんよ。現場とは言いましたがね、別に殺しの現場という意味ではなく、呪われている現場とは思えないという意味です」
繭墨はボクを見ると面白くなさそうな顔をした。そしていつも通りチョコレートを取り出すと、口に食む。
「君も鈍くなったものだね。初心にでも戻ったつもりかい? ………………まあいいさ。忘れたとでも言うのなら、いずれボクが無理やりにでも思い出させてあげるよ」
僕が鈍くなった? そうだろうか。確かに繭墨が関わる事件は、人死にばかりであったが、今回の件が人死にに関係するという証拠は、まだ出ていないと思う。確かに怨念は強力なのかもしれないが、人が本当に死んだ結果なのかはまだ分からないはずだ。
「さて、露払いも終わったし、いよいよ
繭墨はそういうと、ゴシックロリータのハンドバッグに手を伸ばした。