B.A.D. Beyond Another Darkness -Another Story- 作:Veruhu
瞼を閉じ、暗闇に包まれた世界の中で、僕は考える。僕は異界の件が終わった今であったとしても、繭墨に付いていくことを決意した。だが僕は彼女と一体いつまで、このようなことを繰り返していかなければならないのだろうか。
彼女が大人になるまでか? 彼女が偏食を止められるまでか? 彼女が誰かと結婚するまでか? 彼女が醜悪な趣味を止められるまでか?
よく分からない。イメージがよく湧いてこないのだ。
しかしそれならば僕はいつまで、彼女と共に居るつもりなのだろうか。
「考えたくないな…………」
何か、深く考えてはいけない気がする。この先の考えは、何か今までの自分を
どうして僕は、今になっても彼女に付いて行っているのか。その理由が分かるのは、まだまだ先になりそうだ。
✽ ✽ ✽
どこか窮屈だ。
狭い、苦しい、暑苦しい。
触るな、近づくな、微笑むな。
どうしてそんなにも嬉しそうな顔をしているんだ。
どうして僕はこんなにも嬉しいんだ。
分からない。考えたくない。見たくない。知りたくない。
あなたはどうしてそんな選択を。
どうして僕はこんな選択を。
どうして僕はここまでも……………
――――――醜悪なんだ。
「どうして……………っ!」
僕はゆっくりと瞼を開いた。視界が晴れ、僅かな眩しさを感じると共に、小鳥の囀りさも僅かに聞き取れた。
しかしその時僕の視界には、信じられない
「繭、さん?」
「やぁ…………おはよう? 小田桐君」
僕の上司、繭墨あざかは、何故か
「うわぁっ!」
僕は飛び起きた。僕と繭墨を包んでいた毛布が勢いよく跳ね上がり、繭墨の上半身までもが露になる。
「どうしたんだい? 何か
「そんなのはもう忘れましたよ! というよりも貴方、一体ここで何をやっていたんですか!」
繭墨は胸の前で軽く合わせていた両手をゆっくりと解くと、左腕を使って起き上がった。彼女の体が動くたび、頭の帽子についたシュシュが軽く揺れる。
「そんなこと、見れば分かることだろう?
「それをおかしいと言っているんです! どうしてそんなことを......」
僕は繭墨を軽く睨み付けた。それを彼女は軽く笑って受け流す。
「別にいいじゃないか。こんなのはただの遊興だよ?」
「勘弁してください」
僕はがっくりと項垂れた。対して繭墨は、どこか遊びを楽しむ猫を思わせるような微笑みを見せた。それは僕が嫌いな表情のひとつだったが、最近の彼女はなぜか、自然な笑みを見せているような気がする。これは僕の曲解だろうか。
「ともかく小田桐君。今日からまた、依頼の解決を行って行くんだ。心して掛かることだね」
「依頼ってまさか……昨日のですか?」
「そうさ。それ以外に何があると言うんだい?」
繭墨はあっけらかんとして答えた。ならば昨日のうちに有馬にそう言っておけばよかったじゃないか。どうしてあんな曖昧な返し方をしたんだ。そんな抗議が喉まで出かける。
「あの時は仕方が無かったのさ。昨日のことは僕自身も初めての事でね。こんなにも早く終わるものだとは、思っても見なかったんだよ」
「さいですか……」
出来れば人の心を読みながら、会話をしないで欲しいんですがね。今更そんな事を言ってみても、彼女は変わりやしないだろうが。