B.A.D. Beyond Another Darkness -Another Story-   作:Veruhu

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Section 13

 瞼を閉じ、暗闇に包まれた世界の中で、僕は考える。僕は異界の件が終わった今であったとしても、繭墨に付いていくことを決意した。だが僕は彼女と一体いつまで、このようなことを繰り返していかなければならないのだろうか。

 

 

 彼女が大人になるまでか? 彼女が偏食を止められるまでか? 彼女が誰かと結婚するまでか? 彼女が醜悪な趣味を止められるまでか?

 

 

 よく分からない。イメージがよく湧いてこないのだ。

 

 しかしそれならば僕はいつまで、彼女と共に居るつもりなのだろうか。

 

 

「考えたくないな…………」

 

 

 何か、深く考えてはいけない気がする。この先の考えは、何か今までの自分を破壊( ・ ・)する気がするのだ。 

 

 どうして僕は、今になっても彼女に付いて行っているのか。その理由が分かるのは、まだまだ先になりそうだ。

 

 

 

 

      

     ✽       ✽       ✽

 

 

 

 

 

 どこか窮屈だ。

 

 狭い、苦しい、暑苦しい。

 

 触るな、近づくな、微笑むな。

 

 

 どうしてそんなにも嬉しそうな顔をしているんだ。

 

 どうして僕はこんなにも嬉しいんだ。

 

 

 分からない。考えたくない。見たくない。知りたくない。

 

 

 あなたはどうしてそんな選択を。

 

 どうして僕はこんな選択を。

 

 

 

 どうして僕はここまでも……………

 

 

 

――――――醜悪なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「どうして……………っ!」

 

 

 僕はゆっくりと瞼を開いた。視界が晴れ、僅かな眩しさを感じると共に、小鳥の囀りさも僅かに聞き取れた。

 

 

しかしその時僕の視界には、信じられないおかしなもの( ・ ・ ・ ・ ・ ・)が飛び込んで来ていた。

 

 

「繭、さん?」

 

「やぁ…………おはよう? 小田桐君」

 

 

 僕の上司、繭墨あざかは、何故か僕の隣に( ・ ・ ・ ・)横向きで寝ていた。

 

 

「うわぁっ!」

 

 

 僕は飛び起きた。僕と繭墨を包んでいた毛布が勢いよく跳ね上がり、繭墨の上半身までもが露になる。

 

 

「どうしたんだい? 何か(うな)されていたみたいだけれど、どんな夢を見ていたのかな?」

 

「そんなのはもう忘れましたよ! というよりも貴方、一体ここで何をやっていたんですか!」

 

 

 繭墨は胸の前で軽く合わせていた両手をゆっくりと解くと、左腕を使って起き上がった。彼女の体が動くたび、頭の帽子についたシュシュが軽く揺れる。

 

 

「そんなこと、見れば分かることだろう?  添い寝( ・ ・ ・)をしていたんだよ」

 

「それをおかしいと言っているんです! どうしてそんなことを......」

 

 

 僕は繭墨を軽く睨み付けた。それを彼女は軽く笑って受け流す。

 

 

「別にいいじゃないか。こんなのはただの遊興だよ?」

 

「勘弁してください」

 

 

 僕はがっくりと項垂れた。対して繭墨は、どこか遊びを楽しむ猫を思わせるような微笑みを見せた。それは僕が嫌いな表情のひとつだったが、最近の彼女はなぜか、自然な笑みを見せているような気がする。これは僕の曲解だろうか。

 

 

「ともかく小田桐君。今日からまた、依頼の解決を行って行くんだ。心して掛かることだね」

 

「依頼ってまさか……昨日のですか?」

 

「そうさ。それ以外に何があると言うんだい?」

 

 

 繭墨はあっけらかんとして答えた。ならば昨日のうちに有馬にそう言っておけばよかったじゃないか。どうしてあんな曖昧な返し方をしたんだ。そんな抗議が喉まで出かける。

 

 

「あの時は仕方が無かったのさ。昨日のことは僕自身も初めての事でね。こんなにも早く終わるものだとは、思っても見なかったんだよ」

 

 

「さいですか……」

 

 

 出来れば人の心を読みながら、会話をしないで欲しいんですがね。今更そんな事を言ってみても、彼女は変わりやしないだろうが。

 

 


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