B.A.D. Beyond Another Darkness -Another Story- 作:Veruhu
Prologue
――――まただ。
また俺は真夜中に目が覚めた。
だが目覚めた直後だというのに、意識ははっきりしている。それが
俺は体を起こそうと力を入れた。だが途端に見えない強力な力によって、布団に押し返されてしまう。諦めず、何度も何度も体を起こそうと力を入れるが、体は言うことを聞かなかった。
――――なんで動けないんだッ! くそっ、動けッ! 動けよッ! 動けええええええええええええええええええええええええええええッ!!!!
そう叫ぶよう脳から口に命じたが、口さえも思うように動かす事が出来ない。ただ言葉にならない不規則な呻き声が少し、口から漏れるだけだった。
俺は腕も動かそうとした。しかしそれさえも叶わない。"いつもいつも"なんだというのだ! これは!
もうこうなった以上、俺の身体の眼球以外、全ての部位を動かすことが出来ないのではないだろうか。
恐怖のあまり、俺は必要以上に周りをぎょろぎょろと見渡した。激しく目を左右上下に動かす。その姿はまるで、処刑を前にした死刑囚の姿を思わせた。
やがて天井から二つの白い手が迫ってきた。その二つの白い手はゆっくりと、まるでふわふわとした軽い雪が降りかかってくるかのように、落ちてきた。
"俺はこの次に起こる事を知っている"
――――やめろッ! 来るなッ! 近づくなッ! 触るなぁッ! 掴むなああああああああああああああああああッ!
「うっ、ううっ、ぐっ、うっ、うううううううッ!」
またしても俺の口はうまく動かなかった。ただただ虚しい呻き声が漏れる。
二つの白い手は、やがて俺の首を掴んだ。その手はまるで死人のように冷たく、また"細かった"。
――――止めろっ! 止めろっ! 止めろよッ! 止めろッ! 止めてくれ! 止めてくれよおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!
しかし無常にも、その二つの白い手には強力な力が込められた。俺の首はまるで鶏の首を絞めるかのように、意図も容易く締められる。
「うぐぅぅぅぅぅううううううううううッ!」
虚しい呻き声が口から漏れた。だが今はそんな事などどうでもいい。このままでは"また"俺は殺されてしまう! 逃れなくては!
――――逃れろッ! 逃れろッ! 逃れたいッ! 逃れたいッ!
だが何時までたっても体は言うことを聞かなかった。何度も何度も動くよう脳から各部位の筋肉に対し、神経を通して命令を下したが、筋肉が大きく動くことは無かった。
最早俺の体は見えない強力な力によって、完全に拘束されてしまっていた。だがこんなところで死にたくない俺は、ただただ懸命に抗った。
だがその抵抗も呼吸困難の所為か、だんだんと出来なくなってくる。体からは力が失われて行き、最早動くのも面倒になった。息が出来なくなった俺は、ついに意識が遠のいて行く。何度も何度も懸命に新鮮な空気を求めるが、それが出来ない。
――――苦しい……苦しい……苦しいよぉ……
やがて視界が暗くなってきた。俺の視界から光が失われていく。
その暗くなる視界のなかで俺は思った。
――――あぁ…………今日もやっぱり…………
…………俺は死ぬのか。
そして俺はもう"
Prologue 了