「二次試験後半、あたしのメニューは、スシよ!!」
二次試験もう一人の試験官、メンチは課題の料理を発表した。
((((((((((((((( スシ・・・!? スシとは・・・・・・!? )))))))))))))))
受験者のほとんどが、スシという料理がどんなものなのかわからなかった。
「ふふん、だいぶ困ってるわね。ま、知らないのもムリないわ。小さな島国の民族料理だからね」
メンチは受験者に建物の中を見せ説明する。
最低限必要な道具と材料はそろえてあり、スシに不可欠なゴハンも用意してあった。
「最大のヒント!! スシはスシでもニギリズシしか認めないわよ!!」
ヒントは以上のようで、
「それじゃスタートよ!! あたしが満腹になった時点で試験は終了!!その間に何個作ってきてもいいわよ!!」
メンチは試験を開始させた。
ニギリズシと聞いて、握って作る物だということは解るものの、用意された食材がライスだけでは、それ以上どうすれはいいのかわからない受験者達。
「ライスだけでつくるのかな」
「道具とか見ると他にも何か使いそうだぜ」
「カタチは大体想像ついてきたが、肝心な食材が全くわからねー」
それはゴン、レオリオ、キルアの三人も同様だった。
(スシ・・・昔文献で)
クラピカだけは、文献で読んで知識だけはあった。
しかし、クラピカ以上の知識を、いや、実際に食したことのある人間が近くにいた。
「ニギリズシはマイナーな料理だったのですね」
「「「「え!?」」」」
そんなナナミの言葉に、4人の目が集中する。
「ナナミ知ってるの?」
「ええ、試験官が言っていた島国は私の故郷のことでしょうから」
「作り方教えてもらってもいい?」
こういう時、駆け引きなしに聞けるゴンは他の三人にとってありがたい存在であった。
問題はナナミは了承するかだが、
「ええ、いいですよ」
問題が無いようだった。
「まず、ニギリズシでは主に魚を使いますので、捕りに」
「魚ァ!? ナナミここは森ん中だぜ!?」
スパコーン
レオリオに杓文字投げつける、クラピカとキルア。
「「声がでかい!!」」
魚!!!
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他の受験者達は一斉に魚を捕りに走り出した。
「ちィっ 盗み聴きとは汚ねー奴らだぜ!!」
「・・・あれは盗み聴きと言うのでしょうか?」
「「「言わない」」」
ゴン達も魚を捕りに向かった。
魚を獲ってきたナナミは、
「さてと、まず私が作りますので見ていてください。口で説明するより早いでしょう」
そう言って、さっそくスシの調理に取り掛かった。
獲ってきた魚を薄く切り身にし、片手でゴハンを一口サイズの楕円の玉を作り、その上に少量のワサビと魚の切り身をのせて軽く握ると、皿に載せた。
「完成です」
「え!それだけ?」
「なんだ簡単じゃねーか」
思ってたより簡単な手順に、少し拍子抜けな4人。
「そうだな・・・あまり複雑な料理では試験にならないから、おそらく試験官の言動をヒントにこの形を推測する事が、この試験の本題だったのだろう」
「俺達はナナミがいて、ラッキーだったな」
「じゃ、さっさと俺らも作ろうぜ」
「教えてくれてありがとうね、ナナミ」
ゴンに続いてレオリオ達もナナミにお礼を言い、調理に取り掛かる。
「では、私はこれを試験官に持って行きますね」
「頑張ってね」
「はい、・・・といっても後は持って行くだけですが」
「お、来たわね。あなたはすぐに来ると思っていたわ。服装からして、ジャポンの出身でしょ?」
メンチは試験が始まる時から、着物をきこなしているナナミに目をつけていた。
「ええ、お察しの通りです」
「ジャポン出身なら、スシを知らないわけないわよね。でも、自分がラッキーだったなんて思うのはあまいわよ。答えを知っていたらな、味の審査は厳しくいくわ」
「ふふふ、お手柔らかにお願いしますね」
ナナミは料理をテーブルに置き、クロシュを取った。
メンチはその皿に載ったスシを見て、
!っ
動きが止まる。
「・・・あなた、このスシどこで習ったの?」
「習ったと言いますか、私が食べた寿司の中で一番美味しかったものを真似ただけですが」
ナナミは率直に言ったのだが、
「・・・・・・そうね、確かに技術は、習うものでは無く、盗むものだものね」
メンチは職人的な解釈をしたようだった。
そして、メンチはスシを手に取り、口へ運ぶ。
だが、食べるまでもなく見た瞬間わかっていた、この寿司は、
「美味しい」
食べてほとんど反射的に、メンチはそう口にしていた。
「ふふ、では合格ということですね」
「え、ええ、そうね、合格よ。・・・あなたを落としたら、誰も受からないわ」
私を含めたとしても。
メンチは心の中でだけそう付け加えた。
「ありがとうございます」
ナナミはお礼を言って、ゴン達のところへ戻ろうとしたが、それはメンチに止められる。
「あなたは戻らないで他の受験者から離れた場所にいて、他にスシの作り方を教えられたら、試験にならないからね」
「・・・もう他の人に教えてしまったのですが」
「それは見てたから知ってるわ。あの時点では、あなたのスシが正しいかどうかは、決まっていなかったのだからいいのよ」
「なるほど、わかりました。・・・ところで」
「何?」
「私もお茶、もらっていいいですか?」
ズズズッ
ナナミはメンチから言われた通り、受験者から離れた場所でお茶を啜る。
「あの娘、何者なのかしら」
「まさかメンチが心から美味しいと思えるスシを、受験者が握れるなんて」
様子を見ていたブハラも驚いていた。
メンチを満足させられる料理人なんて世界に数えるほどしかいないのに、それを適当に獲ってきた魚でやってしまったのだ。
「スシ屋の娘、とかかな」
「それにしては、料理人の雰囲気はしないけど・・・」
「あ、ナナミ合格したみたいだよ」
戻らずお茶を啜っているナナミを見て、ゴンは嬉しそうに言った。
「てこたぁ、ナナミに教えてもらったスシは正解だってことだな」
レオリオも疑っていたわけでは無いが、これで100%正解なのがわかった。
「つまり、ナナミが作った通りにすれば、俺らも合格出来る」
「ああ」
4人はこれで自分たちも合格出来ると疑わなかった。
しかし
「ダメね」
メンチはレオリオのスシを食べもせず、そう言った。
「なんでだ。合格したナナミと同じ物を作ったんだぞ」
「同じ? これとあの娘が握ったスシが、同じだと言いたいの?」
メンチの顔に明らかな怒りの色浮かぶ。
「うっ」
気圧され、後ずさるレオリオ。
レオリオはナナミのスシと同じ物を作ったつもりでいた。
「あなた、あの娘のスシを見てどう思った?」
「え? あ~、うまそうだなって」
「そうね、それで正しいわ・・・で、これを見ても同じように思うの」
レオリオの作ったスシは、魚の切り方が雑で、ゴハンも形が悪くすこし崩れていた。
料理に慣れてなく、その上急いで作ったレオリオのそれは、ナナミのと比べるまでもなく、
「美味しくなさそう」
「そうよ。私に美味しいと言わせたいなら、せめて自分で美味しいと思える物を持ってきなさい」
同じ理由で、ゴン、キルアも食べずに返された。
比較的丁寧に作っていたクラピカのスシは、食べてもらえたが、
「美味しくないわ。握りが強すぎて硬い」
「しかし、この試験は」
「細かい味を審査するものではない・・・かしら?」
クラピカが言おうとした事を、先に言ってしまうメンチ。
「確かにそのつもりだったのだけど、あなた達はあの娘からスシの作り方を教えてもらった。だったら味での審査が厳しくなっても仕方ないでしょ」
「くっ」
「残念だったわね。あの娘のスシを試食してもっと詳しく教えてもらっていれば、及第点のスシぐらいは作れたでしょうに」
合格してしまったナナミに聞くことはもう出来ない。
「一見簡単そうだから自分達にも作れる、そう思ってたんでしょうけど、お生憎様」
メンチはふんぞり返って4人を見る。
「料理は単純な物でも奥が深い。まぁ料理に限ったことではないけどね」
「くそっ 楽勝で合格だと思ったのによ」
「作り方を教えてもらったせいで、より難しい試験になってしまうとは」
「でも、ひどいよな。人に聞いたらダメだなんて言ってなかったのによ」
不満顔で文句を垂れるキルア。
「ダメとは今も言ってないよ、厳しくなっただけで」
「でもよー」
「スシを作れたらではなく、美味しいと言ったら合格、というルールである以上、いくら文句を言ったところで覆らないだろう」
思うところはあるが、クラピカはきりかえることにした。
「幸い時間はまだある」
作り方を教えてもらったゴン達とは違い、他の受験者達の作った物はスシとはかけ離れている。
正解にたどり着くにはまだ時間が掛かるだろう。
「今のうちに何個も練習で作って試食し、美味しいスシを作れるようになるしかないだろう」
クラピカの案は間違っていない、時間をかければ、いつかは合格出来るスシが作れたかもしれない。
「メシを一口サイズの長方形に握って、その上にワサビと魚の切り身をのせるだけのお手軽料理だろーが!! こんなもん誰が作ったって味に大差ねーべ!?」
なるほど、そういう料理か!!
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「はっ しまったー!!」
馬鹿なハゲがいなければ、だが。
その後、受験者達がこぞって、メンチにスシを持って行き、クラピカ達が美味しいスシを作れるようになる前に、
「悪い!! お腹いっぱいになっちった」
終~~~~了ォ~~~~!!
第二次試験 後半メンチの料理 合格者1名!!
ズズズッ
「おや、合格はわたしだけですか」