ブラック・ブレットー白き少女ー   作:虚無龍

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ハーメルンよ、私は帰ってきた!












すいません。マジ謝るんで見捨てないでください。
色々と用事があったり、執筆意欲が湧かなかったりして遅くなりました。
暫くは早めに更新するのでお許しください。
それでは本編をどうぞヽ(*´▽)ノ♪


エピローグ

 『蛭子影胤事件』は表面上終息したかのように見えた。

 しかし、水面下ではいまだに『蛭子影胤事件』を発端とする『ある物』の交渉が行われているのだった。

 

 

ーーーーーーーーアリスのラボーーーーーーーー

 

 

 

  プルルルル プルルルル

 

 

「もしもし?」

 

『なんのようだ、アリス』

 

「取引しませんか? グリューネワルト教授(・・・・・・・・・・)

 

『取引だと?』

 

「私が欲しいのは貴方がもっている機械化兵士に関わる情報及び研究成果とガストレアウィルスの研究データです」

 

『…………これはまた随分な物を要求してくるじゃないか』

 

「此方からは『ゾディアック・スコーピオン』の組織を1kgだしましょう」

 

『っ! なるほど、今回の事件でどさくさに紛れて回収したと言うわけか』

 

「まあ、手に入る物なら手に入れておくに越したことはありませんからね」

 

『…………2kgだ。それならそちらの提案を飲もう』

 

「じゃあ、交渉成立ってことで♪」

 

 

 ピッ プーッ プーッ

 

 

「ふふふっ♪ なかなかの収穫かな?」

 

 アリスは自らのラボのデスクの回転椅子に座りながら、そのまま後ろへと椅子の向きを回転させ、その視線の先にある培養液が満ちている水槽の中に保管されている『ゾディアック・スコーピオン』の組織5kgを眺めながら満足そうに言ったのだった。

 

 

ーーーーーーーー蓮太郎sideーーーーーーーー

 

 

 聖居で行われている叙勲式。

 蓮太郎はその叙勲式で表彰され、IP序列十二万三千四百五十二位から序列千番まで上昇することが決まっていた。

 本来ならそこで叙勲式は終わる筈だったのだが、蓮太郎が聖天子に対して予定にない質問をし、聖天子がその質問に現状答えられる事だけを答え、今度こそ叙勲式が終わるかと思いきや、

 

「聖天子様。後、一つだけ聞きたい」

 

 蓮太郎が再び聖天子に対して質問をしたのだった。

 

「何でしょうか?」

 

「あの白髪の少女の事だ」

 

 蓮太郎自身はアリスの名前を知っていたが、聖天子はその名前を知らないので蓮太郎はあえてアリスの名前を告げなかった。

 

「お教え出来ることはあの時、全てお教えしましたが、まだなにか?」

 

「あいつがこの事件に関わっていた」

 

「っ!? …………それは本当ですか?」

 

 聖天子は一瞬狼狽したような表情を見せたが、流石は国家元首とでも言うべきか、すぐにポーカーフェイスに戻ったのだが、その声色は固いものだった。

 

「ああ、一度だけだが交戦もした。…………まるで歯が立たなかったけどな」

 

「そうですか…………。分かりました。しかし、今この場で貴方の質問に答える訳にはいきません。いつか時期が来たらお教えしましょう」

 

「ああ、それでかまわない。長引かせて悪かった」

 

 こうして叙勲式は終わったが、蓮太郎の心はもやもやとした気持ちに包まれたままだった。

 

ーーーーーーーーアリスsideーーーーーーーーー

 

 

 アリスのラボでは基本的には『武器の開発』『自身の能力について研究』『ガストレアウィルスの研究』が行われている。

 つまり、実質研究する事が無くなるというのはありえないのである。

 今もアリスはホワイトボードに一般人はおろか、並大抵の研究者では理解出来ないような数式や設計図が所狭しと書きなぐられている。

 ある実験(・・・・)の研究がもう少しで完成しそうになっているこの瞬間もアリスは高速で思考を続け、新しい物を作り続けているのだった。

 そんなアリスの集中力を削いで現実へと引き戻したのは小さな声だった。

 

「ん…………うにゅう…………」

 

「? もしかして夏世?」

 

 声の主はアリスがガストレアウィルスを注入してから数日ほど眠り続けていた千寿夏世だった。

 あの未踏査領域で気絶してからアリスが自らのラボに運びこんこんだのであった。

 

「…………ここは?」

 

 夏世はまだ少し意識がハッキリしない様子でデスクの横に設置してあるベッドから身を起こしていた。

 

「私の研究所だよ」

 

「え? …………アリスさん?」

 

「覚えてない? ガストレアにやられた時の事とか、そのあとの事とか」

 

 アリスに言われて夏世は考え込み三十秒ほどたった後に何かを思い出したかのように顔をあげて、今度は頬を赤く染めて俯いてしまった。

 

「あれ~? なーにを思い出したのかな~?」

 

「そ、それは…………その…………ふきゅう//////」

 

「ふふふふふ、可愛いいねーその反応♪」

 

 そのまま数分程、アリスはにやにやとしながら顔を真っ赤にしている夏世をいじっていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あの…………アリスさん」

 

「んー? 何かな?」

 

 時間が経ち、落ち着いてきた夏世はアリスに疑問をぶつけ始めた。

 

「あの時、私の体内侵食率は50%を越えていた筈です。なのに何故、私は無事なんですか?」

 

 そう夏世に問われると、アリスは難しい顔をして告げた。

 

「…………落ち着いて事実を認識するんだよ」

 

 そう言ってアリスは夏世に手鏡を渡した。

 

「それで自分の顔を見てごらん」

 

 夏世は疑問を持ったままではあったが、言われた通りに鏡を覗きこんでみるとそこには目を赤々と染めた自分の顔があった。

 

「? …………あ、あれ? 戻らない?」

 

 夏世は赤くなっている自分の目を見て、知らないうちに能力を使っていたのかと思い、目を黒く戻そうとしたが、一向に戻らず焦った様に呟き始めた。

 

「あの…………アリスさん? これ…………どういう…………」

 

「夏世…………本当はもう気づいてるんでしょ」

 

 優しく諭すように夏世に問いかけるアリスを見て、夏世は一つの結論に至った。

 

「私が…………ガストレア?」

 

「そう。それが唯一無二の夏世が夏世のままで生き残る方法…………人としての意識を持ったままガストレアになること」

 

 夏世は予想はしていたものの、面と向かって言われるとショックは大きく、思考が停止していた。

 

「夏世をそうしたのは私。だから夏世は私を恨んでもいいんだよ?」

 

 その言葉を聞いて夏世はようやく思考を再開させ始めた。

 

「でもね、一つだけ覚えておいて。夏世は一人じゃないってこと」

 

「一人じゃ…………ない? それってまさか」

 

「そうだよ、私もガストレア」

 

 それを聞いた夏世は全てのことに納得ができた気がした。

 アリスの強さ。人間性を保ったままガストレアにする方法を知ってたこと。そして、自分の窮地に現れたあの白い龍の様なガストレアのこと。

 アリスがガストレアだとしたら、全てに合点がいく事ばかりだったからだ。

 

「夏世?」

 

「…………私はずっと正気を保ったままでいられるんですか?」

 

 夏世はアリスに問いかけていった。

 

「うん。理論上はね」

 

「…………ならいいです。そもそも生きたいと望んだのわ私はですから、アリスさんを責めたり恨んだりするのはお門違いですから」

 

 まだ納得したわけでも。割りきることが出来たわけでもない。だが、夏世は今この瞬間生きていることはアリスのおかげだと思い素直に自分の気持ちをアリスに告げた。

 

「私を生かしてくれてありがとう。アリス」

 

「どういたしまして。夏世」

 

 こうして二人目の人型ガストレアが誕生したのであった。


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