ブラック・ブレットー白き少女ー   作:虚無龍

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 なかなかアイデアが出なくて遅くなりました。


真の目的

「さてと、影胤の方はどうなったのか見に行ってみるか」

 

 気絶した夏世をいわゆる『お姫様だっこ』して持ち上げて、アリスは影胤のいると思われる方向へと走りだした。

 

 そしてその道中、思い出したかの様に盗聴機を使用して状況を把握しようとすると、

 

『…………そうか…………わた……き…………たのか』

 

「? 故障か?」

 

 いまいち音が伝わらないのをアリスが不審に思っていると、

 

『隠禅・哭汀・全弾激発(アンリミテッド・バースト)ッ! ザザー』

 

 最後の蓮太郎の叫びと破壊音でなにが起こっているのかアリスは悟ったのだった。

 

「まさか…………影胤が負けたのか?」

 

 真偽を確かめる為にアリスは速度を上げたのだった。

 

 

ーーーーーーーーー影胤視点ーーーーーーーーー

 

 

 …………私はどうなったんだ?

 

 確か蓮太郎君と死闘を繰り広げて…………

 

「はっ!?」

 

「あ、パパー!」

 

 私が目覚めてから最初に視界に入り込んで来たのは小比奈の姿だった。

 

「どっか不具合とか、不自然な感じがある場所はない?」

 

 私に声をかけて来たのは白いロングコートを脱ぎ、ズボンの裾を捲った姿のアリス君だった。

 

「ああ、不自然な箇所はない。…………私を引き上げてくれたのはアリス君かい?」

 

「そうだよ。お陰でびしょびしょだよ」

 

「手当してくれたのもお姉ちゃんだよ」

 

「そうか…………助かっ…………お姉ちゃん?」

 

 なにかおかしな呼称が聞こえてきた気がする。

 

「いやー、お姉ちゃん…………いい響きだ」

 

 アリス君がうっとりとした様子でそう言った。

 

 …………なにがあったのかは聞かないでおこう。

 

「じゃあ、私はそろそろ行かせてもらうよ」

 

「まて」

 

 まだ一番重要な事を聞いていない事を思い出した私は、その疑問をアリス君にぶつけてみる。

 

「ゾディアック…………ステージⅤガストレアはどうなったのだ?」

 

「ああ、あいつなら蓮太郎が『天の梯子』を使って倒しちゃったよ」

 

 その言葉を聞いて私が思った事は悔しさではなく、喜びだったのかもしれない。

 

「ふふふ、そうか…………蓮太郎君が」

 

 視界の隅でアリス君が走り去っていくのが見えるが私は既に蓮太郎君の事を考えていた。

 

「…………小比奈。そう遠くない内に蓮太郎君とは会う気がするな」

 

「今度こそは斬る!」

 

 頼もしい娘の声を聞きながら私は再び眠りに落ちていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 数日後ーー天童の屋敷

 

 

 東京エリア第一区の一等地に立つ天童本家の中の天童菊之丞の書斎。

 

 そこで蓮太郎は天童菊之丞と対峙していた。

 

 蓮太郎が今回の『蛭子影胤事件』の黒幕は天童菊之丞だと訴えていたのだった。

 

「貴様は答えを見つけたと言うのか?」

 

 天童菊之丞のこの問いは蓮太郎に向けられていたものだったが、結果的に答えが出たのは入り口にいるもう一人の人影からだった。

 

「ガストレア新法だろ? 天童菊之丞」

 

 その言葉を聞いた二人は反射的に、弾かれたかの様に銃を人影に向けた。

 

「な!? …………こんな所でなにしてんだよ。アリス」

 

 蓮太郎が言った通り、そこにいた人影はいつも通りに大太刀を持ったアリスだった。

 

「蓮太郎。お前は私が何故、今回の事件に関わっていたかと聞いたよな。なら今答えてやるよ」

 

 大太刀を抜き放ちながらアリスが語り始めた。

 

「私が今回の事件を調べていくつか疑問に思った点がある。大規模な援助とかな。それは天童菊之丞が黒幕だと考えると全て辻褄があうものだった。まあ、本来ならお前が犯人でも私はどうでもいいんだけどさ、一つだけ許せないんだよね」

 

 アリスは霞の構えをとり、太刀の切っ先を菊之丞に向けた。

 

「貴様の勝手な考えにあの娘達を巻き込んでんじゃねぇよ。あの娘達…………『呪われた子供達』に恨みでもあんのか」

 

 アリスの殺意が籠った視線を受けた二人ーー正確には殺意を向けられたのは天童菊之丞だけーーは何時でも引き金を引けるように、蓮太郎に至っては義肢の脚部カートリッジを撃発させる用意までしていた。

 

「まあ、理由はどうでもいい。唯、あの娘達を殺そうとするならーー」

 

 そうアリスが言った時には既に、菊之丞から1.5m程の距離まで接近し、太刀で切り上げようとしていた。

 

「ーーコロス」

 

 その光のない、まるで感情を見せないその赤い目を怖れるかの様に顔をひきつらせて引き金を引いた菊之丞だったが、

 

「…………まさか、銃弾を斬ったのか!?」

 

 そこに立っていたのは無傷で太刀を振り上げた体勢のアリスだった。

 

「抵抗は無駄だ、大人しく死ね」

 

 アリスから再び威圧が放たれた瞬間、

 

「うおぉぉぉ!!!」

 

 蓮太郎が脚部カートリッジを撃発させ、アリスに急接近する。

 

「『隠禅・黒天風・三点撃(バースト)』ッ!」

 

 当たると確信した必殺の一撃。

 

 しかし、

 

「我流戦闘術・速の型零番『刹那』」

 

 その声が蓮太郎の耳に届いた頃には、既にアリスは菊之丞に再び接近していた。

 

「ぐっ! まだだぁぁぁ!!!」

 

 蓮太郎は再び脚部カートリッジを撃発させ、その勢いで自らの体を回転させ、そのままXD拳銃を撃った。

 

「何!?」

 

 流石のアリスもこれは予想外だったようで、蓮太郎が拳銃の引き金を引こうとした瞬間に後ろに飛び退きその銃弾を回避した。

 

 アリスが体勢を立て直し再び構えをとった頃、その状況は振り出しの状態まで戻っていた。

 

 しかし、焦っていたのは蓮太郎達のほうだった。

 

 このままでは押しきられると分かっていたからである。

 

 膠着状態が続き、蓮太郎達にはそれが何時間にも感じられた。

 

 そして、アリスは何かに気づいたかの様に構えを解くと、

 

「…………邪魔が入ったか。今回は見逃してやるが次はないぞ」

 

 そう言ってアリスは背を向けて走り去って行った。

 

 訳が分からずその場に立ち尽くしていた二人だったが、それから数十秒後に聞こえてきた大量のパトカーのサイレンを聞き、ようやく助かった事を実感できたのだった。




 次回は1週間以内に投稿出来る様にします。
 後、我流戦闘術の名前は何か案を下されば変わるかも知れません。

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