冬木に綴る超越の謳   作:tonton

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-Foreign visitor-

 

「ドウゾ、粗茶デスガ」

 

「あら、ありがとう」

 

 若干乱暴に置かれた湯呑。態度でまだ警戒しているぞ、と暗に示すセイバーに対し、凛はトテモにこやかに華麗に流す。

 

 自宅の門をくぐり、その先にいた作業着姿のセイバー。

 たしかに、修繕に精を出してくれていた事はありがたい。こちらとしてはその服はどこから調達したのだとツッコミを入れたい所だったがそんな隙もなく、傍らの遠坂を見たセイバーは虚空から剣を取出し、服装も黒い軍服姿と完全武装の彼女。

 そして主に刃を向けられたのならと、飄々としたこの男も己の得物を抜いて立ちはだかる。

 

 学園からずっと彼女の跡に付き従っていたのだろう。その言動から、主人の意向を軽視するといった自由奔放なきらいがあるように捉えがちだが、これで義理人情もあるらしい。もっとも、その判断基準が常人のそれであるかどうかは判断に窮するが。

 

 ともあれ、そんな玄関先での突発的な衝突は、互いの主の矛を収めろという命令によってことを荒立てるまでも無く終わった。

 凛と互いに目を合わせ、ため息をついたのは記憶に新しい。互いに一つの戦いを潜り抜けたところなのだ。話し合いをしに来たというのに、余分な厄介ごとなど勘弁してくれという話。玄関先で騒ぐなという個人的事情もある。

 皆聖杯を巡って争う敵同士である筈なのだからと、セイバーは不審顔のままだが、そうして玄関前で立ち会っていても話は進まない。彼女とは一方的に主従関係だと言われただけの間だが、ここは都合よくその威権を使わせてもらう事にし、二人を“無事な”客間へと案内したというのが先程のことだ。

 

「んー? っと、なぁ俺には何もないわけ? 客を選ぶとか随分不作法な騎士様もいたもんだなオイ」

 

 訂正。

 ここまでセイバーが不審顔のままだという話。約一名、彼女の不信というか、怒りに薪をくべる奴がいる所為もあったらしい。廊下から入ると縁側に向かう障子の傍に陣取り、胡坐をかく始末。セイバー程ではないが、不作法だという印象を受けるのは無理もないだろう。

 彼の言葉通り、その前置かれた簡易のテーブルの前にはお茶請けどころか茶の一つもない。代わりというのだろうか、温度の無い視線が胡坐をかいていた彼に降り注がれてはいた。

 

「アーチャー……お願いだから話を進めさせて」

 

 彼の主である凛の言葉に一息つく。

 互いに席に着き、セイバーがお茶を入れてくると積極的に出て行ったあと、こちらが聖杯戦争についてどこまで知っているかと話し終えたところだったのだ。これから本題に入ろうというタイミングでセイバーが戻ってきたこともあり、一呼吸入れるかと思えばこの横槍である。

 お盆を持つ手が震えているセイバーの気持ちも分からなくないが、それでは持ってきた湯呑が一つ余るだろう。折角彼女が善意で用意したもの、一先ずはと宥めにかかると彼女は溜息を吐き――彼に近いテーブルの端に湯呑を叩きつけた。

 絶妙な力加減か、湯呑自体には損傷がない。無論、その中身である液体の何割かは飛び散っているが。

 

「おぉこわっ」

 

 それを受けて懲りる様子が無いアーチャーに、彼女をとがめる言葉が口をついて出る事はなかった。

 

 

 

 市販の茶葉で入れたお茶が、何故か自販機に並ぶように整った味がするという奇妙な現象を目のあたりにした。

 これは一種の才能なのかとか、馬鹿な考えが頭を過ぎるが、全くの無駄な思考、今この場で割くのも余分だ。だからその液体をもう一度だけ口に含みつつ、目の前の朴念仁が話した情報を一先ず整理する事にした。

 

「なるほどね。あらかた、基礎的な情報はセイバーから聞いてたわけか」

 

 首肯する彼が話すに、噂の衛宮邸がサーヴァントの襲撃にあったという情報は確定的であった。

 情報が集めやすいのは、冬木の管理を任せられている“セカンドオーナー”たる遠坂の特権である。その為、事件当夜にも最後の英霊召喚から、二つの英霊の衝突は確認していた。

 そもそも英霊同士の激突を秘匿しきれないからこそ、聖杯戦争では早期決着が望ましいもの。故に、碌に隠蔽をしなければ他勢力に筒抜けであり、確証は得られなかったが、大凡どのエリアにサーヴァントが現れたという程度ならすぐにわかる。

 

 もっとも、マスターにとって鬼門中の鬼門であるアサシンに襲撃されて平然としていられる目の前の男の幸運さには呆れるが。

 

「アサシンにアーチャー、キャスターにライダー。まだ本格的に始まったばかりなのに、よっぽど不運な星の下みたいね」

 

「言うな……俺も結構真面目に頭抱えたい気分なんだから」

 

 いや、この場合はある意味で幸運なのか。若干悪運が強いだけな気がしなくもない。

 説明も終わり、改めて現状に項垂れている彼の姿には同情の余地があるだろう。

 

 自分は欠片も抱かない感情であるが。

 

 

 マスターに選ばれる条件は二つ。

 

 聖杯に願うだけの望い、或いは狂気を持っているか。

 

 そして、魔術師としての素養、その血筋だ。

 

 

 彼の願い、願望については幼い頃に触れているのでこの際は省略する。問題は、彼が曲りなりにも自らの意思で魔術を志し、養父である切嗣に師事したという事。

 

 遠坂の家に残る歴代の記憶から、マスターに選ばれる人間が一般人と遜色のない、或いは自覚の無い人間が選ばれたというケースが存在する。

 7人という大前提の枠を埋める為に、聖杯が本人の潜在的な魔術の素養、或いは過去の血筋で“魔術師”だったものが存在すれば選ばれるのだ。

 聞けば蓮のセイバー召喚ケースは、彼の意図しない偶発的なもの。事故とも捉えられるだろう。

 だが、彼は曲りなりにも“魔術が死と隣り合わせ”だと教えられ、それを承知の上で鍛練を本日まで続けてきたのだ。超常の戦いの只中に放り込まれたとはいえ、同情するのは話が違う。それは彼が魔道の修練につぎ込んだ日々を侮辱する行為に等しいと知っているから。

 

「ま、運が悪かったと諦めなさい。というより、この場合は命を繋いでいるだけ幸運ね。それも“最良”と謳われるセイバーのカードを引き当てたんだから、お釣りがくるくらいよ」

 

「いや、その理屈はちょとまて。そもそも俺はだな」

 

 戦う気が無い。聖杯にも興味がない。

 彼の主張は一貫してそれだ。そして、彼の願い、幼い頃から頑なに変わっていないそれを知っている身としては、その言葉が信用に足るということも身に染みている。

 だからそれを理解しつつも、こうして苛立たしく思うのも、自分の理屈に照らし合わせたモノなのだと理解している。

 

 

 彼と初めて出会った幼い頃の記憶。

 尊敬する父の紹介で、とても大切な友人の子供という事で、緊張半分、興味半分で落ち着かなかったのは良く覚えている。

 幼さゆえか、当時の彼の印象は、女であった自分をもってしても人形のようだと形容してしまう線の細い人。

 雄性よりも雌性を感じさせる顔立ち。

 男の子だと言われ、目の前で女の子みたいだと呟いてしまい、彼が見せた不機嫌顔がとても華やいでいたのは女性として心抉られるものがあった。

 

 とにもかくにも、相手方の印象はこの際なげるが、こちらとしては最初の出会いは好印象だったのだ。同じ年頃の子供。それも自分と同じように魔術を習っているというのだから、興味が無い訳がなかった。

 

 だが、

 

『そんなものに興味ないよ』

 

 なんとなしの言葉だった。

 彼も魔術を修めようとしたのなら、そこには何かしらの願いがある筈だという疑問と興味。

 だから、父から聞かされていた“根源”についてどう思うのか、何を知っているのかと、共通の話題を持つ歳の近い彼に聞いてみたのだ。

 

 だが、彼の答えは短かった。

 なんだそれはという、無関心。

 あまつさえ、彼女がこれまで認めてもらおうと血のにじむ様な努力をしてきた宝石(魔道)をそんなモノだという道具程度の認識。

 

 その時、生まれて初めて感情のままに人の頬を張ったのだと、痺れる掌の感触に遅れて認識した。

 

 彼が現実に悲観しているのだとして、それは別段どうでもよかった。

 魔道に対して不真面目でも、すこし苛立たしいが、それでもかまわなかったと思う。

 

 だが、彼は無知な井の中の蛙でも、甘え性の天邪鬼という訳でもなかった。

 彼は、衛宮 蓮は、養父だという切嗣に魔術を習い、まだ半年もたっていないという。

 自分が父に魔術を師事し、第四次聖杯戦争のころ、7つの頃には本格的な修業を始めていた。そう、彼と出会ったのは第四次終了から三年後。当時十歳を迎え、未熟だった魔術もある程度の水準に届き始めていた頃。

 そして、問題の彼は、魔術を習い始めてたった半年で、自分の二年分に近い研鑽を飛び越していた。

 

 追い付いてはいない。寧ろ比べたらその開きは歴然だろう。だが、その短い期間で彼が習得した魔術が、更に幼かった当時の自分には到底たどり着けなかった習得速度。

 

 はっきり言うのなら、その時彼の経歴を耳にして、まるで自分が無能者のように思えた。

 彼が言う大したことはない、興味がないと言う言葉が、そのまま自身の歳月を馬鹿にされたような気がしてしまったから。そこからは男女も関係なく、大ゲンカしたと記憶している。

 駆けつけた互いの両親にいさめられ、その場は流れる事になったが。

 しかし、ことはそれで終わらず、後日切嗣が家を空けがちだと心配した時臣の気遣いで、彼を家に預かるという事案が発生してしまった。その為、ことあるごとにであう彼と、絶える事の無い小さな戦いは継続していたが。

 

 

「――って、おい。聞いてるのかよ」

 

「え、ああ、ごめんなさい」

 

 目の前で覗き込み気味に、少々遠慮したようにこちらを窺う蓮の姿。自分はどうでもいいが、女性相手に窺うのはともかく、覗き込むのはご法度だろう。そういう奇美をあまり期待できない人種だとしてもだ。

 だがまあ、今回の場合は話半分に聞いていた時分の落ち度もある。その為、弁解に始まり、今は愚痴交じりの文句を大人しく聞いてあげようと耳を傾けていた、が。

 

「てか、今回の不運の一端だって、半分はどこかの暴力女の所為だろ。わけわからん質問の後に問答無用で殺しに来てるし、あと公共物滅茶苦茶だし」

 

「へー貴方、まだ本気でそんなこと言うんだ」

 

 少々こめかみに来た。

 かれこれ七年近くの付き合いになる筈だが、いまだにそんなことを口にするというのか。

 青筋が浮かぶどころか、腕の擬似回路が浮き立つのではないかと少々過剰気味に魔力を回し、“私大変怒っています”と無言の笑みでアピールをする。

 

 だけど、自分は知っている。

 

 こういうアピールを、この目の前の炭素男はまるで受け止めきれないのだと。

 

「いい機会だからこの際ハッキリとわかるよう強制してあげるわ――――そこになおれこの練炭ッ!!!」

 

 幼い頃の愛称を投げつけられ、相手も昔ならがらの反射でいきり立つ蓮。

 従者をいさめていた主達はここにきて、話し合わねばという建前をなげうち、テーブルを境に向かい合う。

 

 

「れーんー! おーなーかーすーいたーぁ」

 

 

 そして、とうとう取っ組み合いに発展するかという所で、玄関の方角から、客間に向けて気の抜けた大音量が響き渡った。

 

「この声って、藤村、先生?」

 

 互いに持ち上げた手の力が過多から抜けて下がる。蓮は脱力のあまり体勢を崩しかけているが、互いによく知る人物の乱入に矛先が鈍った状態だ。

 空気を察したのかアーチャーは人笑して霊体化し、何故かセイバーはその場にとどまっている。が、特に取り乱すところがない辺り、何かしら対策をとっているのだろう。というかそうだと思いたい。深く考えるのが面倒だとか、そんなことは決してない。

 などと、聞こえてくる足音に逃避時間もないと、互いにこの状況をどうするかと一瞬視線を合わせている。

 

「れーんー私はご飯を所望いた――――す? あれ?」

 

 乱入者は玄関からほぼ間を置かず、客間まで直行し、勢いよく閉じられていた襖を開け放つ。

 

「すいません。先ほどそこで会いまして」

 

「あれー遠坂さんも来てたんだ? こんばんはー」

 

 こんばんはと苦笑い気味に返すこちらに対し、自由奔放を地でいく大河がテーブルの上に身を投げ出す。続いて顔を覗かせたビニール袋を下げた舞弥が申し訳なさそうに頭を下げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 客人である凛。そもそも料理をする気が無い大河を余所に、舞弥と二人で手早く夕食を作り遅めのご飯となったのが先程の事だ。

 凛との話し合いに思ったよりも時間を取られていたようで、辺りは既に暮れていた。

 

「は? 俺が遠坂を送って行けって?」

 

 そして、家の用事で今日はいない桜を除き、五人で囲む食卓。そう、実はセイバーは霊体化していない。

 しかし、これも考えれば有り得た話。自分がアサシンに襲撃されて舞弥に発見されるまで、看病をしてくれたのは彼女だ。大河は自分の保護者だと自称する事もあり、夜であっても衛宮邸に顔を出すこともある。その時に顔を合わせているらしく、おかげで余計な説明の手間がなくなっていたのは好都合だった。

 もっとも、そのおかげでセイバーと義姉弟という設定が出来ていたが。

 

「そうよー。最近はこの辺りも物騒なんだから、このありさまを心配してきてくれた遠坂さんを、まさか蓮は女の子一人でほっぽり出す気じゃないでしょうね」

 

 そんな子に育てた覚えはない、と目尻に涙を浮かべる

小芝居までうつ大河。だが生憎と、自分も彼女に育てられた覚えはない。

 正確には、今日までの生活で世話にはなってるし、恩も感じている。それ以上に被った被害と、この家のエンゲル係数を右肩上がりにする実績が、非常に残念なことにそのありがたみを打ち消しているのだ。

 

「それとも、蓮は女の子を守るっていう使命より何か大切な事があるの?」

 

「いや、別に用事は――」

 

「あら、そうして頂けると私としても心強いです。ありがとう衛宮君」

 

 一つ言っておくなら、別に大河の主張を断る気はなかった。なかったが、横からステキに心を波立たせる凛の笑みに、本気で断りたくなった。

 結果としては承諾する事になったが。

 

「蓮。外に出るというのなら後でこれを投函しておいてもらえますか。後片付けはこちらで済ませておきますので」

 

「ん? 別にいいけど」

 

 と、片付けを簡単に済ませようとすると、台所から顔を出した舞弥が一通の封筒を手渡してくる。それは宛名もかかれていない奇妙な封筒で、一目で何かのメッセージだと悟り他の目に触れないよう懐に入れる。

 

「じゃ行ってくるから、後よろしく。あ、藤ねえは舞弥さんの邪魔だけはするなよ」

 

 玄関で靴を履いて板戸を空ける前、釘をさす言葉に中の方から抗議する声が響いてくる。が、それを無視して外へ出る。

 大河という一般人の目もある中、学園と同じく“大人しい優等生”という皮を被っていた凛を送る為に彼女の家を目指すが、

 

「で、さっきの手紙は何だったのよ」

 

 目ざとい幼馴染は先程舞弥が手渡した封筒について、しっかりと怪しんでいたようだ。

 

「……親父からの呼び出しだよ。昔から面倒事がある時は藤ねえの目もあるし、ああして手紙で場所を指定してくるんだ」

 

「へぇ、切嗣さん帰ってきてるんだ」

 

 昔から放浪癖のある人だが、それでもこちらを気にしてくれていたのか、時たま様子を見るように顔を出す事があった。家にいるより、外を飛び回っている親、というのも子供心に心配、というより怪しんだものだが。

 

 ともあれ別段隠すことでもない。先程のやり取りについて説明すると、何やら空いた妙な間に長年の付き合いからか、嫌な予感が脳裏をよぎった。

 

「って、まさかお前もついてくる気じゃないだろうな」

 

 何を今更当たり前だろうという顔をする凛だが、何が当たり前なのだと、この時間帯の住宅街で危うく怒鳴りそうになった。

 切嗣と凛は彼女の父親である時臣との繋がりもあって昔馴染みだ。時臣の事情もあり、切嗣が魔術の鍛練を見ていたという事もある。

 だが、舞弥がこのタイミングで切嗣からの連絡を繋いだという事は、恐らく今朝話していた件だろう。自分はなんとなしに聖杯戦争に巻き込まれた口だが、どうやら切嗣はこの事故に関して何かを知っていると彼女がほのめかしていたこともある。

 だから、彼から離される事はまだ自分でも消化できえ居ないこと。どんな内容が語られるか見当もできないし、出来れば第三者の立ち会いは遠慮してもらいたいのだが。凛は自分も切嗣に話があるとの一点張りで無理に主張を通そうとしていた。

 

「なんだよ。その話って」

 

「そうね。貴方にも話しておいた方がいいか。切嗣さんはね」

 

「お待たせしました、レン」

 

 話しながら歩いていると、いつの間にか自宅と遠坂邸へ向かう交差点、その坂に着いていた。そこにはセイバーの姿があり、どうやらマスター達が活動的になることを気にして、護衛の為に抜け出してきたのだろう。もしくは、舞弥が頼んでくれたのかもしれないが。

 こちらに歩み寄った彼女は凛の姿を見て、今日の不礼を詫びる為に頭を下げる。

 流石に先程まで敵意を向けられていた相手に、一転して頭を下げられる事態に彼女も慌てて顔を上げるようにうながし、今までのやり取りと気にすることはないお互い様だと場を収めると、自分も切嗣のもとへ同行する旨を告げた。

 件の件については、まだ自分は了承していない筈だが。彼女の中では既に決定事項なのだろう。無理に断わっても後をつけてくる光景が容易に浮かぶ。

 傍らで、セイバーがどうしてこうなったのかという、不思議そうな顔で小首を傾げている。

 

「ああ、その疑問については俺も非常に聞きたい」

 

 その回答すら面倒になり、道すがら話すか、凛が勝手に話すだろうと諦めを付ける。

 そうして、三人は遠坂邸に向かうのではなく、坂を下り、新都の方に足を向ける。

 

 封筒にある切嗣が指定した場所は新都にある大きな公園。この時間なら人目はなく、話しが魔道に寄った事という事もあってうってつけだ。

 彼が話すという言葉がどういうものかは想像できない。そもそも彼は昔から多くを語らないきらいがある。長年の付き合いからそれでも大切なことはしっかり話してくれているものだと信頼していたが、流石にこの件は事案が事案だ。言葉足らずで流すには少々大きすぎる。

 

 道すがら、彼に会って一番にどんな文句を言うかと考え、自分に続く形で三人は坂を下る。すると、突然セイバーが纏っていたコートを投げ捨て、自分と凛を庇うように前へ出た。

 

「こんばんは。ようやく会えたね“お兄ちゃん”」

 

 どうかしたかと、彼女に問う前に投掛けられた言葉。その声はどこかで聞き覚えがある物。

 セイバーが無手のまま構え警戒するその先、絹のように滑らかに、月明りに輝く銀髪を風に晒した赤い目をした少女が立っていた。

 

 

 






 平和な回(比較的)が終了。いよいよ夜パートだよ!!
『こんばんはお兄ちゃん』
 で漂う不穏な空気―――絶対オカシ――くなかった(両原作的に
 登場したのが彼女という事で、どのクラスが出るのかはお察しだろう(震え

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