魔法少女リリカルなのはStrikerS~紅き英雄の行方~   作:秋風

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やあ (´・ω・`)
ようこそ、バーボンハウス、エリアゼロ支店へ。
このエネルゲン水晶はサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。

うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。

でも、この小説を見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しいそう思って、この小説を作ったんだ。

じゃあ、注文を聞こうか。


…はい、というわけでお久しぶりです。2ヶ月間病院のベッドの上だったもので、小説放置でした。本当にごめんなさい。
急性膵炎とは長い付き合いですが、ここまで来るともうね…横浜の大学病院に入院して手術を行い、なんとか危機を脱しました。
話も書いているうちにコレはなんか違う、これもなんか違う、とこの8話は何度か書きなおししている上にフェイトの話をすっとばすことにしました。まあ、そもそもこの小説を覚えていてくれるユーザーが果たして何人いるのかという不安で胸がいっぱいですが…(汗

更新ペースは相変わらず亀ですが、頭の中の構想は大方固まってるので頑張りたいと思います。ちなみに、今回はシグナム戦後のafterみたいなもんなので、ちょっと短いです

ではどうぞ


08「信頼」

 

ゼロとシグナムの模擬戦はゼロの勝利で終わった。言うまでもなくシステムはゼロとシグナムの戦いで不調となりその日の訓練はそこまでとなった。その後はやてにゼロとシグナムが怒られたのは言うまでもないだろう。さて、それから次の日、ゼロはトレーラーの中でシエルに整備をしてもらっていた。

 

「左腕のダメージがかなり大きいわ。セルヴォがいればもっと早く終わるんだけど…」

 

「いない奴の事を言っても仕方がないことだ。シエル、別に急ぐ必要はない」

 

「…そもそも、ゼロがあんな無茶しなければシエルもこんな手間かけずに済んだと思うの」

 

 シエルとゼロの会話に若干不機嫌そうにクロワールが声を上げた。彼女もまた調整用のカプセルの中で回復している最中であり、退屈そうにそのカプセルの中を漂っている。

 

「空中で制御が効かない以上、ああするしかなかった」

 

「それでもシグナムの放った矢を逸らしてその反動で地面まで急降下なんて普通考えないわよ。やっぱり無茶苦茶だわ…そのせいで、サポートしてた私にまで影響が出てるし」

 

「無茶をしないと勝てない相手だった…ということだ」

 

 シグナムの実力はすでにかなりの物。分野にもよるかもしれないが、同じ近接戦闘をする相手として考えれば間違いなくゼロと同じレベルにまで達している。下手をすれば、かつてのネオアルカディア四天王などあしらえる程に。そんなことを考えていると、そのトレーラーの扉が開く。はやての権限において、このトレーラーにはいることが許されているのは機動六課でも各部隊の隊長と副隊長、そしてその補佐に当たるリインフォース姉妹、そしてシャマルとザフィーラだけである。ゼロがそちらへ視線を向けると、そこにはシグナムがいた。

 

「我が主から“調整中”…と聞いて、様子を見に来た。大丈夫か?」

 

「今のところは問題ない。腕は動く」

 

「そうか……私が本気で挑んでそれくらいの損傷というのも、流石だな」

 

「…その件だがシグナム。お前が本気と言った以上、お前は俺に本気で挑んだのだろうが…どこか違和感があった。ソレは何故だ?」

 

 ゼロの言葉に、シグナムは苦笑する。ああ、なるほど…と。まるでゼロが気づいているのは当然だったかのように。

 

「気付いたのか」

 

「1年前と比べて魔力量が低かった。最後の一撃も、逸らせたのは威力が低かったからだ」

 

「本気で挑んだことに偽りはない…が、魔力に関しては本気を出さなかったのではなく、出せなかったのだ」

 

「どういうことだ?」

 

 ゼロの言葉に、シグナムは説明をする。この機動六課にいる隊長、そして副隊長の面々には各自リミッターが付けられており、部隊で保有できる戦力ギリギリになるように設定がされている。そのため、各自の魔力量やランクが落ちてしまっていることを説明した。ゼロもその説明を聞いて、シグナムに対する違和感を理解した。

 

「なるほどな」

 

「部隊解散の時にはリミッターは外れる。その時には今度こそ何にも縛られない真剣勝負をやりたいものだ」

 

 そのシグナムの表情はまるで遠足に行くのを楽しみにしているような子供の様な笑みで、普段のシグナムとはまた違う一面であった。ゼロもシグナムの言葉に頷き、短く笑う。

 

「そうだな。その時を楽しみにしておこう」

 

「では、私は業務に戻る…ああ、それと。暇があれば少し主の相手をしてやってくれ」

 

「…?」

 

「最近はリインフォースと、リィンと共にずっと働き詰めでな。あのままでは過労で倒れてしまうかもしれないとシャマルも心配していた」

 

「……考えておこう」

 

 そのゼロの言葉を聞いた後、シグナムは満足そうにトレーラーを後にするのだった。

 

 

*

 

 

機動六課 部隊長室

 

 

 部隊長室のオフィス。そこでは部屋の主であるはやて、そしてリインフォース、リィンが仕事をする場所である。そんな部屋ではやては1枚の書類に目を通していた。

 

「うーん…やっぱり無理があるんやろうか」

 

「我が主…? いかがなさいましたか?」

 

「ゼロのことや…やっぱり、いくらなんでも誤魔化すのにも限界があるんよ…」

 

 がっくりと項垂れるはやて。その理由は機動六課内でのゼロに関する扱いについてだ。はやてと同じ性を名乗る次元漂流者であり、あきらかにカタギとは思えないその姿。ただそれだけならいいのだが、問題はそのゼロの実力についてだ。先日のシグナムとの模擬戦でゼロが夜天の書の守護騎士、烈火の将シグナムを倒したという話はすでに広まっており、それだけの実力を持っているゼロを機動六課の局員たちが本当に何者なのかと思っている。機動六課内だけでならまだいいのだが、これがこの部隊より「外」に漏れるのがはやては怖いのである。

 

「どうしてゼロさんのことを本局にお話できないのですか? はやてちゃん」

 

「……ゼロの場合、次元漂流者として扱ってもらえない可能性があるんだ、リィン」

 

「どうしてです?」

 

 デスクの上で可愛らしく首を傾げるリィン。そんなリィンにリィンフォースは小さくため息を吐く。

 

「ゼロはレプリロイド…元の世界での扱いは我々デバイスと同じだ」

 

 そう、これについて10年前にリンディも悩んでいた問題だ。はやても今、まったく同じ問題に直面している。ゼロは人間ではなくレプリロイドであり、これはこの世界で言う所のロボットなのである。故に、次元漂流者として扱われない可能性があり、それどころか解析されてゼロを量産する、などと本局の上層部が言いかねない。それほどに時空管理局は人手不足なのである。10年前の場合ゼロは地球に滞在していることもあり、リンディはそのゼロの存在をアースラスタッフとその関係者だけに留めさせた。これはリンディの持つ部隊の統率能力、アースラスタッフ達との間にある信頼の高さ故に出来たこと。しかし、一方のはやてが置かれている立場はリンディの時とはほぼ真逆だ。まず、ゼロが管理世界にいるという点、そしてはやてが部隊指揮をすることが初めてであるという点があげられる。そして部隊の規模故に情報の漏洩する可能性があるということ…はやては機動六課を設立する際は各部隊の上層部を身内で固めているが、それ以外はそういうわけではない。現にティアナのようにはゼロの存在についても疑っている者もいる。そして、一番考えたくないのが、自分や隊長メンバーたちがあまり知らぬ局員の中にスパイがいる場合である。

 

「ゼロの存在を隠し通すのは、やはり無理がありますね…」

 

「リンディさんの時みたくうまくいかないんは私が未熟だからや…なにか、いい方法は…」

 

 そんなことを話していると、ドアをノックする音が鳴り響く。はやてが「どうぞ」と促すと、そこにはバスケットを手に持ったゼロと、ポッドを持つクロワールの姿があった。

 

「ゼロ? どないしたん、こんな所に」

 

「差し入れを持ってきた…シグナムがはやて達の無理を心配していたからな」

 

 そう言ってゼロが応接用のテーブルにバスケットを置き、バスケットを開いた。そこには幾つかのサンドウィッチとポッドとティーカップが置かれていた。そのサンドウィッチはホットサンドウィッチらしく、香ばしい匂いがはやてたちの鼻を刺激する。そして、それを見て一番に飛んできたのはリィンだった。

 

「うわぁ! すごくおいしそうです!」

 

「ゼロの作った料理だもの。味は保証出来るわよ」

 

「ゼロが?」

 

「……厨房の人間は夕食の準備に忙しそうだったからな。場所と材料を借りた」

 

 そう言いながら紅茶を入れるゼロ。はやてにとってこの光景は懐かしく、故に笑みが零れた。昔ははやてがリハビリに帰ってきて疲れた時にゼロが軽い軽食を作ったり、紅茶を入れたりしてくれていた。ゼロの世界の人間が見れば驚くようなことだが、それを仕込んだのは何を隠そうはやて自身である。はやても自分たちのために差し入れしてくれたというのが嬉しく、仕事の資料を置いてその応接用のソファに腰掛けてサンドウィッチを手にとって食べる。それに釣られるようにリインフォースとリィンも食べるが、その反応は様々だった。

 

「うん、腕は落ちとらんね♪」

 

「おいしいですぅ~♪」

 

「…女性として、負けた気がします」

 

 はやては自分が教えた技術が衰えていないことに満足そうで、リィンは純粋にその食事が美味しいことに驚き、リインフォースは自分ではここまで作れないと若干落ち込んでいるようであった。

 

「ここ1年、ゼロは炊事班のレプリロイドに料理を教えたりしていたから当然だわ」

 

「私はそんな貴方が想像できないんですが…そうなんですか?」

 

「やることが他になかったからな」

 

 リインフォースの言葉に答えるゼロ。エリアゼロに平和が戻ってからというもの、ゼロを始めとする戦闘型レプリロイドが行う任務と言えば哨戒任務やバグを起こしたメカニロイドの掃討くらいで、特にゼロの様な強力な戦闘力を持っているレプリロイドが必要となる場面は無くなっていたのである。なので、ハッキリ言ってゼロはエリアゼロには不要と言っても過言ではなかった。そこでクロワールが提案したのがゼロの八神家での生活を活かしたことを仕事にするというもの。もっとも、これはクロワールが地球の料理を食べたいという思惑があって起きたのが発端ではあるが。

 

「じゃあ、私も1つ…」

 

「お前はさっき散々『味見』をしただろう。いい加減にしておけ」

 

「ケチ」

 

「あはは…クロワール、また食べすぎたん?」

 

 ゼロとクロワールの会話を察するに、相当な数を食べているのだろう。過去、ゼロが料理を作る時に味見をするのはクロワールの役目なのだが、食べ過ぎて料理が無くなって作りなおした、などと言う記憶ははやてにとって懐かしいものだ。二人の会話に苦笑しながら食事を進めていると、はやての前にゼロが封筒を置く。

 

「差し入れの他に1つ…はやて、これを」

 

「ふぇ? なんなん、これ」

 

 ゼロが渡した封筒から出てきたのは何枚かの紙が束になったものが2つ。1つは読めない文字で書かれているが、もう1つはゼロが手書きで書きなおしたものらしく日本語の表記で書かれている。表紙には『武器の改装案』と書かれていた。

 

「俺の使うZセイバーやバスターについて悩んでいただろう。シエルが考えた改装案だ」

 

「改装案……拝見するで」

 

 サンドウィッチをつまみながら、ゼロから渡された改装案を見るはやては驚いた。そこに書かれていたのはこの世界の技術とゼロの世界の技術を混ぜ合わせて作り上げられた設計図であった。例えばゼロのエネルギーを変換して武器に変えるZセイバーやシールドブーメランなどはカートリッジシステムを柄に内蔵し、ゼロのエネルギーと魔力を混ぜ合わせることであたかも『魔力刃』を作り出すものに改造する。反応には実際魔力が宿っているのでそれが質量兵器とは気づかれにくいようにするなど、その設計図は技術部門に関して素人のはやてでもその考えた人間の技量の高さを分からせるものだった。

 

「シエルさんって、やっぱすごい子やな…」

 

「魔力を発生させるのもゼロのエネルギー変換を魔力反応とプログラムに誤認させる…ですか。これなら確かに魔力がなくてもカートリッジに込められた魔力を発動させられるというわけですね……私達の世界の技術だけでは難しいですが、これなら」

 

 はやてと途中から改装案を見ていたリインフォースはそのシエルの改装案について驚きを隠せない。これを書いた人間が自分より年下だというのだから驚きもするだろう。

 

「ただ、この案には『協力者』が必要になる」

 

「というと?」

 

「シエルはこの世界に来て日が浅い。故に、この世界での技術力を把握していない…出来ればはやてが信頼できる部下で、技術系に詳しい人間の協力を仰ぎたいということらしい」

 

 はやてはそのゼロの言葉にどう答えようか悩む。確かに、ゼロの言うとおりシエルはこの世界の技術を把握しつつあるもそれが完全と言うわけではない。実際、文字の翻訳などは全てゼロが行っているのはこの改装案を見れば明らかだ。だが、これを見せるということはその人間にゼロがレプリロイドであるということをばらすことになる。

 

「お前の心配はかつてリンディが言っていた俺(レプリロイド)という存在がこの世界に広まることだろう。遅かれ早かれ、部隊内には知れ渡る。もし、最悪本局の人間が動くようなら俺達は別行動でお前達をサポートするつもりだ。あまり気にするな」

 

「ゼロ…」

 

「お前の創った部隊だろう。俺はお前を信じている…お前も自分の部下を信じてやれ」

 

 言われて、はやては嬉しくなると同時に顔が熱くなるのを感じて思わずその渡されていた改装案の紙束でその顔を隠す。はやてを信頼しているからこそ、ゼロはその全てをはやてに任せている。はやてはそれが嬉しくもあるが、同時にそんなことを平然と言うゼロに恥ずかしくなる。はやても19歳の乙女であり、10年前にゼロの事が好きになってからずっと想い続けていればこういう反応にもなるだろう。そして反面でコレが面白くないと思うのがリインフォースだ。彼女も同じくゼロに好意を寄せているので、自分の主に笑顔が戻っているのは嬉しいが、ゼロの言葉を聞いてその心中は複雑だったりする。そんな二人を見て何かを察し、クスクスと笑うクロワールは楽しそうである。

 

「二人とも、ライバルは多いわねぇ…」

 

「「…!」」

 

 クロワールはそう笑いながら紅茶を楽しそうに飲むのだった。

 

 

 

 

「初めまして。ロングアーチ所属のシャリオ・フィニーノといいます」

 

「は、初めまして…シエルです」

 

「ゼロだ」

 

 翌日、1人の機動六課隊員がトレーラーに招かれた。彼女の名はシャリオ・フィニーノ。機動六課ではロングアーチ所属のメカニックである。はやての部下であり、同時に通常業務ではフェイトの補佐を務める彼女が今回はやての紹介する技術者であった。

 

「お話は既に部隊長から聞いています。事の重大さも分かっているので、もちろんゼロさんのことも他言しません…ただ、その代わり」

 

 そう言いながら、シャリオはシエルの手をガッシリと握る。その眼はどこか輝いているようにも見えた。

 

「管理局が把握していない、科学文明が進んだ世界の技術…! 是非、私に教えてください!」

 

「え、あの…」

 

「私、ゼロさんが『ロボット』だって知ってから、ゼロさんたちの世界の技術の高さに改めて驚かされているんです!」

 

 興奮でシエルの言葉がまったく耳に届いていない様子のシャリオ。そんなシャリオを見て、クロワールが不安そうにゼロに耳打ちする。

 

「…大丈夫なのかしら、この人」

 

「はやてが信頼している部下だ。俺達も信じるしかない」

 

 そうゼロが言うも、シャリオの暴走ははやてがやってくるまで止まることはなかったらしい。

 

 

 




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