魔法少女リリカルなのはStrikerS~紅き英雄の行方~ 作:秋風
一向に話が進まないことに頭を抱え中ですが、考えた通りに話を作ると……一年で終わるのか、これ?
感想、意見、評価待ってます
ゼロがなのはと再会してから少し経った頃、時空管理局執務官、現在は機動六課ライトニング分隊隊長を務めるフェイト・T・ハラオウンは焦りながらその空を飛んでいた。
『今すぐこっちに来て! 急いで! 早くね!』
「な、なのは? どうしたの? なんでそんなに急いでって…」
同じく機動六課の隊長を務める自分の親友、高町なのはからの突然の緊急通信。しかし、フェイトはこれに疑問を持った。既に戦闘は終わっている。なぜ、そんなにも急ぐのか。
『え? 何故って…うん! 色んな意味で大変なの! 緊急事態なの!』
その言葉を聞いた時、フェイトの中で若干の焦りが生まれた。声からしてなのは自身に異常はないように思える。ならば、フォワード達に何かあったのではないか? そうフェイトは予想した。自分が後見人となっているエリオやキャロにもしも何かあったのなら…? そんな考えが頭をよぎる。
「っ…!」
頭を横に振ってその考えをうち消し、ひたすら目的地へと飛んだ。そしてようやく連絡を受けた地点まで辿りつく。フェイトはすぐに下へと降下した。そこにいたのは待機中のフォワードメンバーと、なのは。そして、別の影が2つ。
「あ、フェイトちゃん!」
「な、なのは! どうしたの!? 緊急事態って…なに、が…」
そこでフェイトは言葉を止める。そのなのはの隣にいる人物に釘付けになったからだ。流れるような金髪の髪。そして燃えるような紅いボディ…見間違えるはずがない。かつて敵として戦うも、同じものを守るために強大な闇を共に乗り越え、その後自分を理解してくれた人物が目の前にいたからだ。
「ゼ…ロ…?」
「…久しぶりだな、フェイト」
「ゼロ!」
フェイトはその再会に喜び、ゼロへと飛び込むのだった。
フェイトが駆けつける少し前
「なのは、お前にだけ話がある。少しいいか?」
「ふぇ? なんですか?」
ゼロの言葉に首を傾げるなのは。ゼロに言われ、なのはとゼロは共にフォワード、そしてシエルと距離を取った。
「…なのは、PT事件という事件を覚えているか? フェイトの話では、お前が魔法に初めて関わった事件だと聞いている」
「え? はい、そうです。フェイトちゃんと会ったのも、魔法に出会ったのも、その事件ですけど…なんでいきなり?」
ゼロからPT事件という言葉が出たことが、なのはにとっては意外だった。なのはがこの事件に関わったのはゼロが地球に来るよりも前のことである。フェイトから聞いたということで納得したが、なぜ今そんな話をする必要があるのか?
「……首謀者を覚えているか?」
ゼロの言葉に、なのはは少し険しい表情で頷く。なのはにとって、その女性の名前は忘れることは一生ないだろう。狂気に満ちた、親友の母。後の親友に、大きな影響を与えている女性。なのはは忘れたくても忘れることなどできない。
「はい。フェイトちゃんのお母さん…プレシアさん」
「……そのプレシア・テスタロッサを今、俺達のトレーラーに保護している」
「…!?」
ゼロの言葉に驚くなのは。それもそのはず。時の庭園での最後。プレシア・テスタロッサは自分の娘、アリシア・テスタロッサの亡骸と共に、虚数空間へと身を投げて姿を消した。虚数空間に入ったら最後、二度と出てくることはない。事実上の死亡である。そんな彼女が生きて、しかも今、ゼロ達のトレーラーにいるというのだ。驚かないわけがない。
「な、なんで…」
「理論はよくわからん。だが、プレシア・テスタロッサ、そして娘のアリシアを共に俺達のトレーラーに保護している。シエルに言って外に出ないようにはしてもらっているが…」
「ちょ、ちょっと待ってください! アリシアちゃん!? だって、あの子は…」
ゼロから受ける説明と、なのはの知る事実がまったくかみ合わない。なぜ、彼女の娘であるアリシア・テスタロッサが生きているのだろうか? アリシアの死から、フェイトは生まれた。なのに、そのアリシアが生きているというのは不自然だ。
「理由は知らん。が、ジュエルシードの力かもしれないと、プレシアは仮説を立てたようだ」
「ジュエルシードが…」
「だが、問題はそこではない。その死んだはずの…しかも、次元を揺るがした事件の犯人が生きていると知れば、管理局はどうすると思う?」
「それは…」
ゼロの言葉に、なのはの言葉が詰まる。PT事件。首謀者の名前が事件の名前になるほどの事件。それほどに彼女は凶悪犯として知れ渡っている。そんな彼女を管理局が放っておくはずがない。
「それに、フェイトの件がある。プレシアとフェイトをすぐに会わせるわけにもいかない」
「そう、ですよね…」
恐らく、プレシアの生存を知ればフェイトは間違いなく動揺するはずだ。プレシアの死を超え、散々辛い思いをして、今のフェイトがあることをなのはは十分に理解している。いきなり彼女に会わせるというわけにもいかないだろう。
「……わかりました。プレシアさんには、トレーラーの中でしばらくいてもらいたいと思います。フェイトちゃんには、落ちついてから話をします」
「ああ、頼む」
会話を終えると、そこに一人の女性が降りてきた。金髪をツインテールに結った女性。その黒いデバイスに、ゼロは見覚えがあった。
「ゼ…ロ…?」
「久しぶりだな、フェイト」
*
「ゼロ、本当に久しぶり」
「ああ、落ちついたか?」
「う、うん…ごめんね」
抱きついてから、しばらく泣いていたフェイトだったが、なのはに言われてからようやく正気に戻り、ゼロから離れた。それからすぐに、フェイトはなのは、フォワード、ゼロ以外にも人物がいることに気がつく。
「そういえば、そちらは…?」
「俺の世界の仲間だ」
「シエルと言います。初めまして」
と、シエルがフェイトの前に出る。フェイトもなのは同様、少し驚いてはいたものの、ニッコリと微笑んでから
「あ、貴女が…私はフェイト・T・ハラオウンです。シエルさんのことは、ゼロから少し聞いています。お会いできて光栄です」
と、同じように握手を交わす。それを確認してから、なのはがフォワードと呼ばれた子供たちに向き直った。
「じゃあ、さっそく六課に戻ろうか。フォワードのみんなはヘリでレリックの護衛をお願いね」
「「「「はい!」」」」
4人の子供たちが回収したレリックを持って、少し離れた広場に着地しているヘリへと乗り込んでいく。そして、改めてなのははフェイトに向き直った。
「フェイトちゃんも、護衛頼める?」
「うん、了解…あれ、なのはは?」
「ゼロさんとシエルさんたちの誘導。トレーラーをここから道路に動かすまで手続きもいるし…」
と、なのはがもっともらしい理由でフェイトをヘリの護衛へと回す。もし、ここでトレーラーの中に入り、プレシアやアリシアに会ってしまえば大変なことになる。フェイトも久しぶりに会ったゼロに対して名残惜しそうにしながらも、フェイトはフォワード達の所へと戻るのだった。そこで、ゼロが小さくため息をつく。
「なのは、助かった」
「にゃはは、じゃあ行きましょうか」
こうして、ゼロ達はトレーラーの中へ足を運び、ドアを開いた。そこではプレシアとアリシアが椅子に座ってゼロ達の帰還を待っていた。ゼロの姿を確認すると、アリシアが嬉しそうに笑顔を向ける。
「お兄ちゃんお帰り! 終わったの?」
「ああ、まあな…」
「…何かあったのかしら? この世界がどこかわかったの?」
プレシアは少しだけ後ろを気にしているゼロに首を傾げる。先ほど、人間がいるという話を聞いたことで、世界についても分かったのではと思っているプレシア。プレシアが首を傾げている所で、ゼロの後ろから人影が現れる。茶色の髪の毛をサイドテールに括った女性。歳は20歳くらいか、それより少し若いか…その女性が現地の人間だろうという考えをプレシアはしたが、そこで彼女の襟に目が行った。その着る服の襟には、時空管理局の紋章が輝いていたからだ。それを見たプレシアは咄嗟に身構えてしまう。
「落ちつけ、プレシア」
「…っ! 落ちつけるわけがないでしょう! まさか、管理局員のいる世界だなんて…」
強い警戒を示し、杖を構えたプレシア。それをゼロが宥めるが、プレシアはそれほど自分のしたことについて自覚をしているらしい。自分の名前が事件になっている、などとゼロから聞いて説明中に少し凹んでいたプレシア。もう時空管理局とも関わることが無いだろうと思った矢先に時空管理局との邂逅。そして、そのプレシアの様子に驚くアリシアだが、ゼロの後ろにいた女性は一歩、ゼロの前に出た。
「…お久しぶりです、プレシアさん。私からすると、10年ぶりと言うべきですけど」
一言、女性…なのはがそうプレシアにいう。そんななのはに首を傾げるプレシア。10年前、その時期は研究に没頭して人と会ってはいない時期のはず。ではこの女性は誰なのか? そう考えるプレシアには検討がつかない。
「貴方と10年前に? 私は面識がないわ」
「ええと…これで思いだしません?」
そう言ってなのははレイジングハートを取り出し、デバイス状態へと変化させる。その紅い宝石を宿したデバイスを見て、プレシアはハッとする。かつて、フェイトとジュエルシードを奪い合い戦っていた少女のことを思い出した。
「貴女、まさか…」
「はい。ジュエルシードを巡って…あの事件に関わっていた『高町なのは』です」
「…どういう、こと?」
プレシアの感覚では、時の庭園での出来事からそう時間は経っていない。目覚めてから半日ほど。しかし、プレシアの起こした事件は10年前に終わった物とされている。プレシアはますます混乱する。
「どういうことなの? 私は、あそこに落ちてから一体…」
「詳しいことは分かりません。でも、あれから10年という年月が経っている…ということは、事実なんです」
10年。この言葉は非常に重いとプレシアは思う。当時、フェイトは9歳。そのフェイトとまったく同じ年齢だったと推測できる少女がここまでの成長を遂げている。つまり
「フェイトは…」
「はい。フェイトちゃんも、もう19歳です。今は私と同じ部隊にいます」
「…そう、なの」
それしか言葉が出て来ないのが現状だった。プレシアが死んだとされたこの世界での10年間、フェイトはどのように過ごしてきたのか? どのような気持ちでいたのか? 正気を取り戻したプレシアにとって、それは重くのしかかる。
「これから、私達のいる部隊へとトレーラーを動かすことになっていて…それで、えっと…」
淡々と説明していたなのはだったが、ここで少しだけためらう。言っていいものなのか? 今はまだ、フェイトと会わせたくないからここにいてくれ、と。プレシアの死を乗り越えて、フェイトの今がある。だから、パニックにさせないためにも貴女とフェイトを会わせられないなどと。それをどう説明するのか。悩むなのはに、ゼロが助け船を出した。
「ここはお前の知っての通り、管理局に通じている世界だ。かつてお前の起こした事件もこの世界では広く知られてしまっている。混乱を招かないためにも、コイツの部隊の隊長と相談することにする。その部隊長も俺と面識のある人物だ。信頼もできる。悪いようにはしないだろう。しばらくこのトレーラーで過ごしてもらうが…」
なのはの言葉に続き、プレシアにゼロが説明を加える。少し考えるプレシアだったが、自分の立場を冷静に分析して頷いた。
「…わかったわ。私もまだ、フェイトと会う決心がついてないもの。もう少し、トレーラーの中でじっとしてるわ」
「(ゼロさん、ありがとうございます)」
ゼロのフォローに感謝し、なのはが小さな声でお礼を言う。
「…気にするな」
そう静かに言うゼロを見てなのはは嬉しそうに笑う。自分のためにフォローを入れてくれたゼロの行為が、たまらなく嬉しかった。
「じゃあ、出発しましょうか。レイジングハート、公道走行の申請をお願いね」
『了解しました、マイマスター』
こうして、トレーラーはなのはの誘導で公道へと辿りつくと、ゼロ達はそのままなのはの所属する部隊までトレーラーは向かって行くのであった。
*
機動六課 部隊長室
「遅いなぁ…何してんのやろうか…」
古代遺失物管理部 機動六課。その部隊長室で小さなため息が漏れた。そのため息の主はこの部隊をまとめる部隊長、八神はやての物であった。
「おーそーいー…なのはちゃんもフェイトちゃんも何してんねん」
「我が主、テスタロッサから先ほど次元漂流者を保護、と来ていました。恐らく、その手続きに時間が掛っているのでしょう。ですからどうか、その間にこの山のような書類の片づけを」
「あーうー…」
無事に任務を終えた機動六課の初任務だったが、それの報告書の他にも沢山の書類がはやてを襲っていた。机に重なる書類の山を見て、ガクッと首を垂れるはやて。そんなはやてに声をかけた女性、リインフォースⅠ(アインス)は苦笑しながら、書類を隣の席で片づけて行く。
「はやてちゃん、頑張るです! リインもお手伝いするですよ!」
「うぅ…ありがとなリイン」
はやての机にさらに小さな机が置かれており、その上には30センチほどの、リインフォースそっくりな少女が鼻を鳴らしながらはやてを応援している。彼女の名はリインフォースⅡ(ツヴァイ)。はやてとの融合が不安定になったリインフォースに代わり、はやてが作った新しいユニゾンデバイスである。そんな会話をしていると、ドアのノック音が聞こえた。
「どうぞ~」
「失礼します。ライトニング1、帰還しました」
入ってきたのはフェイト・T・ハラオウン。どうやら、任務の報告に来たらしい。
「お疲れさんや。あれ? なのはちゃんは?」
「なのはは次元漂流者の人達と一緒。もう少しかかるんじゃないかな」
「ほえ? ヘリで一緒に来たんとちゃうの?」
既に、報告で次元漂流者を保護したという話だったのだが、それならばヘリで一緒に来ればいい話だ。それなのになぜその次元漂流者となのははこの場にいないのか?
「うん、それが…次元漂流者の人達は乗っていたトレーラーごとコチラに転移したみたいで…公道を通ってこっちにくるよ」
「なるほど…って、あの山岳地帯をトレーラーで抜けるのは酷ちゃうか?」
「うーん、まあでも近くに公道へ抜ける道はあったみたいだし」
「そかそか、それで公道の通行許可証というわけか」
なのはから送られてきた申請書を見てはやてが納得する。
「それで、ハラオウン。その次元漂流者というのはどのような者たちだ? こちらの事に納得はしてくれたのか?」
アインスがそんな疑問をフェイトに投げかける。それもそのはず。この次元漂流者というのはその異常事態にパニックとなる者達が殆どで、発狂する人間も少なくはない。
「え? あ、ええと…うん、大丈夫。納得してくれたし、きちんとした対応だったよ?」
「「「?」」」
フェイトの若干焦った様子に首を傾げる3人。フェイトが先ほどからはやてにゼロの名を告げず、次元漂流者として扱うのはここに来る前に遡る。それは、フェイトがヘリに乗り込む直前のこと。
*
「フェイトちゃん!」
「なのは?」
「あのね、ゼロさんのことをはやてちゃんたちに内緒にして?」
「え?」
突然のなのはの言葉に驚くフェイトだったが、それをすぐに理解した。それはなのはの表情。ちょっとだけ悪戯っ子のような笑みであることから答えが導き出された。そんな様子のなのはに、フェイトは苦笑する。
「驚かせたいんだね」
「うん♪ やっぱり、再会ってのは大事だし」
なのはも悪意があって驚かせるのではなく、単に感動の再会というのを用意したいのだ。はやてがこの9年間どんな想いで過ごしているのかは親友であるなのはたちも理解している。だからこそ、はやてや、その家族であるヴォルケンリッターの皆と、感動の再会をして欲しい。
「わかった。ゼロのことは誤魔化しておくね」
「よろしく、フェイトちゃん」
そう言って、フェイトはヘリへと乗り込んだのだった。
*
「お話のわかる人達で助かるわぁ…多次元世界のことも理解済みなん?」
「うん。なのはが連れて来てくれるから、後で面会してあげて」
「了解や。到着したら教えてな~」
フェイトは了解、と返事をしてから部屋を出る。おそらく、こちらにゼロ達が着くのはそうかからないだろうし、はやての書きあげる報告書もそう時間がかからない。フェイトは部屋を出てから小さくため息をついて、苦笑しながらも『はやてへの報告終了。作戦も成功』そう、なのはに向けてメッセージを送る。
「9年ぶりの再会…はやて、喜ぶよね、きっと」
フェイトはそう呟きながら、自分も報告書を書きに作業室へと足を運ぶ。しかし、自分にも驚くような再会が待っていることを、フェイトはこの時はまだ知らないのだった。
…うん、メインヒロイン? がやっと登場するという遅さ
ちなみに、小説の長さはどうでしょう? 短い? 長い? 丁度いい?
一応、wordページ7~8に抑えて入るんですが
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