魔法少女リリカルなのはStrikerS~紅き英雄の行方~   作:秋風

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第3話です。遅くなって申し訳ないです

感想、評価、お待ちしております


03「異世界での再会」

 

「うぅ…」

 

 マザーエルフの力の発動によって気を失った一同。しばらくして、シエルは目を覚ました。目に違和感を覚えながら、目を抑えて違和感を無くし、周囲を見渡す。倒れているのは先ほど保護したプレシア・テスタロッサと、アリシア・テスタロッサ。すると、トレーラーの扉が開き、そこにゼロが現れる。

 

「ゼロ、今のは…マザーエルフは?」

 

「…さあな。だが、“やられた”としか言えん」

 

「え?」

 

「周囲を見てみろ」

 

 ゼロに言われ、シエルは周囲を確認する。すると、周囲は生い茂った林が周囲一帯に広がっていた。

 

「これって…」

 

「昔、俺が体験した『次元震動』による『時空転移』だ。今、クロワールに周囲を偵察させている。もし仮にここが地球ならば、クロワールが持つ地図で場所が特定できる」

 

 以前、行方不明だった期間について、シエルたちからどこにいたのかとゼロは聞かれたことがある。シエル達も、どこか遠い場所にいたとは思っていたが、まさか次元を超えた場所である異世界にいるとは思わなかった。最初は信じていなかったが、ゼロが冗談や嘘を言うわけもなく。ゼロはその別世界での生活について話をしたこともある。レプリロイドがいない、人間達だけが暮らす世界。そこで出会った少女のことや、その場所に来た原因のことも、シエル達はゼロから教えられている。そんなことを言っていると、扉が開いてクロワールが入ってくる。

 

「ゼロ、周囲の地形と地球のデータを合わせてみたけど、地図が一致しないわ…」

 

「と言うことは、ここは地球ではない…か」

 

 マザーエルフとジュエルシードの力によってまったく知らない世界に飛ばされてしまった一同。もし地球であるのならばはやてたちとコンタクトを取ることもできたのだが、それはできないようだ。眠っていたプレシアたちも起こし、状況を確認した。その結果、全員に異常はない。まあ、プレシアとアリシアは元々ジュエルシードの力によってある意味異常な状態だが…変わったことと言えば、力の源だったジュエルシードがすべて消えていること。マザーエルフが持ち去ったのかもしれない。

 

「これからどうしましょうか…」

 

「…とりあえず、何かの反応があるまで待機する。もし、何かあれば動けばいい」

 

 そんなことを言っていると、トレーラーの中でアラートが鳴り響いた。

 

「何々~?」

 

 警告音が鳴り響く中、アリシアが興味津津にその画面を注視する。どうやらこの音が警告音であるとは理解していないようである。

 

「未確認のエネルギー反応…! 移動している…? この速度、列車か車かしら…それに、生体反応が4つね…」

 

「生体反応…この地の住民の可能性がある。可能であるなら、接触を試みよう」

 

「そうね…」

 

 と、ゼロとシエルが考える。もし、生体反応が人間であるならば、詳しい話を聞くことが出来るかもしれない。

 

「とりあえず、近くまでトレーラーを走らせましょう。それと…ゼロ、気を付けてね」

 

「了解だ。プレシア・テスタロッサ、アリシア・テスタロッサ、お前達はシエルとトレーラーに待機していろ。何かあるまではそこなら安全のはずだ」

 

「ええ、ありがとう…」

 

「おにーちゃん、いってらっしゃーい」

 

 今取るべき行動が決まり、ゼロたちは行動を開始するのであった。

 

一方、ミッドチルダ山岳地帯 リニアレール

 

 そこはミッドチルダと呼ばれた世界の山岳地帯。いつもなら静かなその場所は、今日だけ特別騒がしかった。卵型の機械達がそのレールの上を走る列車を襲撃しており、その影響なのか列車は暴走的な速度で走り続ける。そんな列車の上に、4つの影があった。

 

「こちらスターズ3、スバル・ナカジマ! ライトニングと合流しました。このままガジェットを殲滅してレリックの回収に向かいます!」

 

『了解、気をつけてね』

 

「行こうティア!」

 

「ええ、了解。二人もしっかりついて来てね」

 

「「はい!」」

 

 そこにいたのは4人の子供たち。時空管理局機動六課スターズ3のスバル・ナカジマと、スターズ4のティアナ・ランスター、そしてライトニング3のエリオ・モンディアルとライトニング4のキャロ・ル・ルシエである。4人は配属された部隊での初任務に当たっていた。任務内容はリニアレール内にあるロストロギア『レリック』の回収。ハプニングもあったが、無事に中間地点の車両の上で4人は合流し、無人機械兵器『ガジェット・ドローン』の殲滅をしながら先へと進む。

 

「スバル!」

 

「ウィング、ローッド!」

 

 ウィングロードと呼ばれた彼女の先天系魔法により、空への道ができる。スバルはそれをローラーで走りながらガジェットに向かっていく。エリオとキャロはキャロの使役竜であるフリードで空を飛びながらそのガジェット達の殲滅を図る。

 

「うおおおおおおっ!」

 

 AMF(アンチマギリングフィールド)と呼ばれる魔法無力化領域の展開により突っ込んだスバルの攻撃力が抑えられるも、スバルはそのまま突っ込み、ガジェットを破壊する。ガッツポーズをとるスバルだが、その後ろにいたティアナが叫び声を上げた。

 

「スバル! 先行しすぎ!」

 

 本来、FA(フロントアタッカー)と呼ばれる彼女は確かに先行して攻撃する役割だが、その距離はかなり離れている。一人で無謀に突っ込むのは得策とも言えない。何より、これではチームワークが維持できなくなる。

 

「ご、ごめんティア!」

 

「エリオ、スバルの隣までよろしく。キャロ、フリードはどれくらい持つかしら?」

 

「後、持って数分です。ブーストのことも考えると…」

 

「フリードは戻せる? 貴女のブーストは充てにしたいの」

 

 ティアナは現状でベストな方法を選択しながら、先へと進んでいく。ティアナは自分たちが初任務に当たっているということを考慮しながら、そのメンバーの力量配分を考えて指示を飛ばす。それがCG(センターガード)と呼ばれた彼女の役割なのだが、そこで問題が起きる。

 

「ティア! 敵の増援が!」

 

 そう、スバル達の目の前に、空中から別のガジェットの軍勢が押し寄せる。いずれも同じ卵型のガジェット・ドローンではあるのだが、前半での合流までに使った魔力量を考えると、これ以上の戦闘は辛い。

 

「う、嘘でしょ…!? スバル! エリオ! 一旦下がって! 防衛しながら隊長たちが来るまで耐えるわよ!」

 

 指示通り、スバルとエリオが下がりながらティアナとフリードがいる位置まで戻る。こうも数が多くては、AMFの濃度は上がるばかり。そうなると、自分たちは魔法を使うことは出来ない。

 

「ティア、どうするの!?」

 

「後退して距離を取るわ。遠距離からならまだ魔法は使える…」

 

 ティアナはいきなりの援軍に驚きながらも、頭をフル回転させて今できることを考える。エリオとキャロは合流までの戦闘で魔力が減っている。しかし、それは自分とスバルにも言えることだ。加えてこの数…ザッと合わせて50はいるだろう。自分たちの隊長達が救援に来るまで耐えられるか微妙なところ。そう考えているティアナが、ハッと声を上げる。

 

「スバル! 前!」

 

 ティアナの言葉に、スバルがハッとする。すぐそこまでガジェットが迫っていた。先ほどとは違い、加速しての突進に反応が遅れた。

 

「しまっ…」

 

 ティアナは慌てて自分のデバイス、クロスミラージュを構えた。だが、今引き金を引いてもその前に突進が当たってしまう。間に合わない。ティアナがそう思ったその時だった。後ろからエネルギーが収束される音が聞こえる。そしてティアナの後ろから緑色の巨大な光弾が凄まじい速度で通り過ぎ、スバルを襲おうとしたガジェットが撃ち貫かれた。ガジェットは突如として爆散する。その余りの事態に、4人は驚いて後ろを見る。すると、その振り向いた瞬間に紅い閃光が自分たちの間を通り抜けた。

 

「はああっ! せいっ! はぁ!」

 

 その翡翠に輝く剣でガジェットを真っ二つにし、光弾を続けて発射していく。ガジェットはソレを受けて成すすべもなく爆発した。

 

「え…?」

 

『ゼロ? 聞こえる? その列車、恐らく暴走しているわ…! エネルギーの出所を見ると、先頭車両みたい…! その子たちを助けてあげて!』

 

「了解した・・・任務(ミッション)を開始する」

 

 4人の目の前に、金髪をなびかせた男が現れた。

 

 

 

――MISSION START!――

 

 紅き戦士、ゼロは4人を見てから駆け出し、その自分を襲ってくる敵をZセイバーで切り裂いていく。ゼロは4人に話を聞く必要があるため、4人に怪我があると困る。それに、こちらを襲っている機械達がマザーエルフの言っていたことに関係しているなら倒すべき敵なのかもしれないと考える。そんなゼロを見てか、その自分たちを助けた人物の行動にスバルたちは驚きの声を上げていた。

 

「すごーい…」

 

「ガジェットを、いともたやすく…」

 

「それに、すごい戦い方だ…」

 

 そう、4人から見ればゼロの戦い方は熟練された戦士の動き。それは自分たちの上司である人物たちを彷彿とさせるもの。すると、ゼロはそのまま目のも止まらぬ速さで車両を突き進んでいき、見えなくなった。ようやく我に帰ったティアナは3人に声をかけて、ゼロを追うのであった。

 

 

 

 

 一方のゼロはさらに進んで車両の中へと侵入。ガジェット、ゼロからすれば未確認のメカニロイドを破壊しながら先頭車両を目指す。放たれるエネルギー弾をシールドで防ぎ、シールドブーメランをチャージしてそのまま投げる。

 

「でああっ!」

 

 そのシールドブーメランに引き裂かれ、ガジェットたちが瞬く間に破壊され、爆発が起きる。だが、そこにゼロの侵攻を阻むものが現れる。

 

「でかいな…」

 

 それは他のガジェットとは違う、球体の形をした巨大なガジェットだ。しかし、ゼロはそんなことは関係ないと言わんばかりにZセイバーを向ける。

 

「邪魔だ」

 

 ゼロは駆け出してZセイバーで巨大な無人機に斬りかかった。しかし、真っ二つとまでは行かずに、途中で剣が止まった。どうやら装甲が硬いらしく、普通のとは違うらしい。すると、大型のガジェットは無数の砲門を光らせてゼロに向ける。

 

「くっ!」

 

『ゼロ! チェーンロッドを!』

 

「わかっている!」

 

 既にゼロと一体になっていたクロワールの咄嗟の言葉で、ゼロはZセイバーをチェーンロッドに変えると、無人機のアーム攻撃を避けてチェーンロッドを天上に向けて射出。そのままぶら下がってターザンの要領で背後へと回りこむ。その際ガジェットはすぐにゼロに向かず、天上に対してアームらしきものを展開して撤去。ゼロの逃げ道をなくした。だがゼロはその間に連続でバスターの光弾を発射して敵にぶつけた。

 

「やったか?」

 

 ゼロがガジェットを見るが、ガジェットはゆっくりとゼロの方を向く。まだ健在のようだ。

 

「ちぃっ…!」

 

 再び飛んでくる光線をシールドで防ぐと、今度はZセイバーに戻して、チャージを始める。

 

「敵のほうが早い…クロワール、俺の反応速度とチャージ速度を上げてくれ」

 

『うん、了解』

 

 ゼロがこの敵を斬るだけのパワーを出すには、チャージに時間がかかる。だが、それまでにゼロがその攻撃に当たらなければいい話だ。ついでに、クロワールの能力でチャージ時間も短縮してしまえばいい。彼女、クロワールのサポートはゼロを守ることに徹底したプログラム。彼女の力によって防御力を上げることもできるし、走る速さも早くできる。なので、その速度上昇とチャージ短縮によって、敵を斬り裂くのが容易になる。

 

「はっ!」

 

 チャージを終えたゼロは、一気に飛びあがってZセイバーを振り下ろす。その開いた天上へ飛び上がったことで得られたチャージ斬りに加える多大な重力負荷によって、強力な一撃が炸裂した。

 

「はあああああああああああっ!」

 

 ゼロはチャージした一撃がガジェットに命中する。それにより、真っ二つとなったガジェットはバチバチと音を立てて爆発を起こした。それを確認したゼロはそのZセイバーについたオイルを振って払うと、さらに奥へと向かう。

 

『ゼロ!』

 

 そこで、シエルから通信が入る。どうやらトレーラーは隣を走っているらしい。そのため、シエルの声はよく聞こえる。さらに言うなら、そのゼロの中に内蔵された通信カメラによって、シエルと、その後ろにいるプレシアたちの姿がしっかりと確認できる。どうやら、車は現在自動操縦になっているようだ。

 

『中に強いエネルギーの反応を確認! プレシアさんの話では、それもロストロギアの可能性があるわ! 気をつけて!』

 

「了解した」

 

 ゼロはシエルとの通信を切ってからシエルの言う部屋のドアを蹴破り、中へと突入した。

 

「あれは…」

 

 そこにあったのは先ほど倒した大型のガジェットと同じタイプだった。しかし、機関室の防衛プログラムらしきものを制御しているらしく、なにやらロボットのような姿をしたものが出現する。

 

「なるほど…奴を倒せば、列車も止まる」

 

『ゼロ、武器は?』

 

「リコイルロッドを頼む。行くぞ!」

 

 

――WARNING!――

 

 

 

 ゼロはトンファー状の武器、リコイルロッドを手に、チャージしながら接近する。そして迫りくるエネルギー弾回避しながら、そのロボットらしきものに向かって一気に接近した。

 

「でえぇあ!」

 

 その突貫力に定評があるリコイルロッドのチャージ攻撃がロボットにヒットする。しかし、それでも凹みができ、少し亀裂が入るだけ。

 

「…頑丈だな」

 

『ゼロ、どうするの?』

 

「どんな機械にも、弱点はある」

 

 ゼロは再びチャージしてからそのロボットと床が密接している場所へ向けてリコイルロッドを放つ。相変わらずその攻撃は亀裂を入れるくらいだ。

 

「よし…はっ!」

 

 そして今度は距離を取ってからバスターを取り出し、天上にある非常用のスプリンクラーに狙いを定め、それを撃ち抜いた。

 

「亀裂が入っているだけで十分だ」

 

 そういいながら、Zセイバーにサンダーチップを組み込んで、それを水の溢れた床へと突き立てる。その瞬間にゼロはチェーンロッドでその体を宙に浮かせて退避。すると、激しい機械のショート音が鳴り響く。ガジェットとその防衛ロボットはショートを起こして動きを停止した。どんなに強い機械兵器でも、中の回線は非常にデリケート。これだけの電撃を受けてしまえば、電子回路が焼き焦げてしまうだろう。

 

「…終わったな」

 

 

――MISSION COMPLETE!――

ミッション

100%

20

タイム

62.35   

15

エネミーカウント

100     

15

ダメージ

0      

20

リトライ

0

20

エルフ

0

10

トータル      

100

レベル        

S

コードネーム

勇者

 

[ロストロギア:レリックを手に入れた!]

 

「これが原因のロストロギアだな」

 

 と、ゼロはその箱を開けて確認する。そこには紅く輝く宝石が鎮座していた。ゼロは若干そのロストロギアから出される覇気のようなものを不快に感じ、その箱を閉じる。そして、機関室の扉らしき場所をこじ開けて止まったリニアから降りた。すると、先ほどゼロが助けた少女たちが駆けて来た。

 

「無事だったか」

 

「止まりなさい!」

 

 ゼロが一歩そちらへ歩もうとすると、ツインテールの少女、ティアナがいきなりゼロに向けて銃型デバイスのクロスミラージュを突きつけた。

 

「…なんのつもりだ? 銃をつきつけられることをした覚えはないが」

 

 鋭い眼光でゼロが4人を睨みつける。はやてたちくらいの子供たち、エリオとキャロは少しびっくりしているが、ティアナはそのまま銃口を向けており、そして相方であるスバルはオロオロその場でどうすればいいか慌てている。

 

「時空管理局よ! 今すぐ[レリック]を地面に置いて、武装を解除しなさい!」

 

「…時空管理局だと?」

 

 思わずゼロはティアナに聞き返す。時空管理局。それはゼロたちにとって聞いたことのある組織の名前であった。

 

「そうよ! 一緒に来てもらうわ! 質量兵器の使用に、現在警戒態勢が敷かれている場所への介入! 聞きたいことも山ほどあるわ! さあ、早く武装を置くのよ!」

 

「ティア、やっぱり先にお礼言ったほうがいいって!」

 

 と、相棒のスバルがティアナに言うも、ティアナは銃を降ろそうとはしない。

 

「確かに助けられたことには礼を言うわ…でも、それとこれとは話は別よ」

 

「……」

 

「ゼロ、事情を説明すれば分かってくれるんじゃいないかしら」

 

 クロワールがそう言いながらゼロから出てティアナを見る。すると、クロワールの登場に一同が驚いた。

 

「え? ユニゾンデバイス!?」

 

「うーん、近いけど違うわ。私はサイバーエルフだから」

 

「サイバー、エルフ?」

 

 ティアナ以外の3人がクロワールの言葉に首を傾げていると、ようやく列車に追いついたトレーラーが止まり、シエルが降りてきた。

 

「ゼロ~!」

 

「シエル! 止まれ!」

 

 思わず、ゼロが叫ぶ。そう、既にティアナがもう一方の手で同じ2丁目のクロスミラージュをシエルに向けて構えていた。

 

「えっ…!?」

 

「ティア!」

 

 その相棒の凶行に慌ててソレを止めようとするスバル。しかし、ティアナはシエルに向けた銃を降ろさない。

 

「……あなたも、動かないで」

 

 普段のティアナなら、こんなことはしないだろう。しかし、現在の彼女は今、パニック状態であった。かろうじて意思を保っている状態で、目の前で見せられたゼロの力への恐怖心と、現状を飲みこめない状況把握不足により、それが彼女をパニックにしていた。

 

「ティア! 落ちついてってば! あの人は武装なんてしてないよ!」

 

「…お前達、時空管理局の局員のようだな」

 

 その現状を見かねたゼロは、レリックと呼ばれたロストロギアを地面に下ろし、装備一式を地面に下ろす。それを確認しても、ティアナは警戒をやめていない。

 

「は、はい…」

 

 そんな状態のティアナの代わりに、スバルがゼロの質問に頷く。ゼロは少しためらったが、その頼みを彼女にすることにした。

 

「時空管理局員に知り合いがいる。時空管理局提督兼、L級巡航艦アースラ艦長のリンディ・ハラオウン、その船に所属する執務官、クロノ・ハラオウン、その他、研修中であろう捜査官候補生の八神はやてと、その守護騎士ヴォルケンリッター、武装隊の候補生、高町なのは、執務官候補生のフェイト・テスタロッサ。このどれかに心当たりがあれば、連絡を取ってもらいたい。俺の素性については彼女たちに確認してもらえればわかるはずだ。俺は『八神ゼロ』。八神家の関係者だ」

 

 唯一、ゼロが管理局との繋がりを持つのはアースラスタッフである彼女たちだけ。一応、はやてたちは候補生。その関係者であることが証明できればこの現状を回避することはできるだろう。それを証明するためにも、ゼロはあえて『八神』の姓を使用する。しかし、はやてたちはまだ10歳。彼女達のほうが年上なので、そこにいる4人は知らない可能性がある。だが、リンディならば時空管理局員の中で提督の彼女を知っているだろう…ゼロはそう考えた。しかし、彼女達はゼロの言葉に驚いた様子。どうしたのかと思っていると、スバルが恐る恐る口を開いた。

 

「あ、あの~…」

 

「なんだ」

 

「なのは隊長たちのお知り合い…なんですか?」

 

「何?」

 

 スバルの言葉にゼロは一瞬その言葉を疑ってしまう。なのはのことを目の前の少女は知っているようだが、意味がわからない。彼女はまだ10歳であり、まだ候補生。そんな彼女が管理局で隊長などを務められるわけがない。

 

「あいつが、隊長だと?」

 

「はい…もうすぐ来ると思いますよ…あ、来た!」

 

 空から見える人の姿がそこにはあった。そんな様子にシエルが思わず「人が飛んでいる!?」なんて驚いている。そして、その影はゆっくりとスバル達の元へと降りてくる。そこに降りて来たのは一人の魔導士。白を基調とし、青や赤のデザインが入ったドレス。栗色の髪の毛をツインテールに結った姿。そして紅い宝石が印象的な杖。確かに、ゼロの記憶にある高町なのはがしていたバリアジャケットの展開状態だ。だが…

 

「誰だ?」

 

 そう、目の前にいたのは9歳の少女ではない。明らかにそれ以上の、目の前にいたスバル達よりも年上の女性だった。女性はスバル達の目の前に降りて4人の安否を確認しているため、どうやらゼロたちが見えていないようだ。

 

「スバル、みんな! 大丈夫!? AMFのせいで映像が回って来ないし、通信も出来なかったから…」

 

「はい、私達は…あ、その…なのはさん、そちらの方…お知り合いなんですか?」

 

 スバルが刺した方向をなのはと呼ばれる人物が見る。すると、なのはと呼ばれたその人物は驚きの声を上げる。

 

「ゼロ…さん?」

 

「そうだ」

 

「ゼロさん!」

 

 “なのは”とスバルたちに呼ばれた人物が、嬉しそうにゼロへと駆け寄り、ゼロを強く抱き締める。その余りの事態にスバルたちは驚く。後ろにいたシエルも、同じようにびっくりした顔になっていた。特にシエルは、あそこまで人間に好かれている様子のゼロを見るのは初めてだった。

 

「ゼロさん! ホントにゼロさんなんですね! わぁ…! 懐かしい! はやてちゃんからきっと無事だって言われたけど、本当に無事だったんですね!」

 

「まて、お前…本当に高町なのはか?」

 

 驚いて動けなかったゼロがそれを再度確認する。すると、なのははゼロから離れ、嬉しそうな満面の笑みで頷いた。

 

「はい、私もう19歳になったんですよ!」

 

「なんだと?」

 

その時、なのはの言葉でゼロはハッとする。自分の世界に帰った時、地球で過ごした時間は一年が経っていたのに、自分の世界では一ヶ月しか経っていなかったということに。そう、時差があった。ゼロの世界で12ヵ月過ごす場合、こちらの世界では10年という月日が経つことになってしまうのだ。

 

「はやてちゃんやフェイトちゃんたちもきっと喜びます!」

 

「あいつらもこの世界にいるのか?」

 

「はい! 私達、今は同じ部隊なんですよ! あ、フェイトちゃん? 今すぐこっちに来て! 急いで! 早くね! え? 何故って…うん! 色んな意味で大変なの! 緊急事態なの!」

 

フェイトと念話をしているのか、何故かフェイトをせかすなのは。そんな様子を見てため息をつきながら、ゼロは4人の子供たちの方を指差した。

 

「とりあえずなのは、アイツをなんとかしてもらえるか」

 

 ゼロが指差す方向には、未だに震えるティアナがいた。なのはは、「あ」と小さく声を上げてティアナに駆けより、そのクロスミラージュを握っていた手を自分の手で包み込む。

 

「ティアナ、大丈夫だよ。この人は味方だから」

 

「……わかり、ました。すみません」

 

「うん」

 

 そう言ってようやく落ち着きを取り戻したのか、ティアナはクロスミラージュを降ろした。

 

「すいません、ゼロさん」

 

 と、少々困った顔のなのは。スバルの話では彼女達の隊長と言うことらしいので、部下の行動に対しての謝罪らしい。まあ、ゼロはそれほど気にしてはいなかった。ゼロの実力なら、ティアナが引き金を引くよりも早く、彼女を抑えることが出来ていただろう。

 

「いや、気にするな」

 

 そんな話をしていると、ようやく銃を降ろされたシエルがゆっくりとゼロたちの方へと歩いてきた。

 

「あの、ゼロ…?」

 

「シエル、どうした」

 

「知り合い…なの?」

 

「味方だ…安心していい」

 

 ゼロの言葉に、シエルは安堵のため息を漏らした。よほど、銃を向けられていたのが怖かったようだ。

 

「えっと…」

 

「紹介する。俺の世界の仲間だ」

 

「あ、シエルと言います…一応、科学者をしています」

 

 と、シエルの自己紹介を聞いて、なのはが一瞬驚いた様子になる。彼女が、ゼロの封印を解いてゼロを目覚めさせたレジスタンスのリーダーなのか、と。なのはの想像していた印象とはちょっと違っていたのか、驚いた様子になってしまったようだ。しかし、なのはは大人の対応を見せるかのように笑みを見せる。

 

「高町なのはです。初めまして、シエルさん」

 

 にこやかな笑顔で手を出され、シエルも手を出して握手する。握手をしながら、なのはがシエルに謝罪をする。

 

「私の仲間がひどいことをしてごめんなさい」

 

「いえ、大丈夫です。こちらもしっかりとした説明をしませんでしたし…」

 

 と、謝るなのはに対して丁寧に返答するシエル。そんなシエルを見て、なのははこの少女が見た目の年齢以上の節度と行動力があることを確信する。

 

「なのは、現状を知りたいのだが…どこかで落ちついて話せる場所はないか?」

 

「それなら、私達の隊舎にまで来ていただけますか? そこならお話が出来ると思いますし」

 

 そのなのはの言葉に、ゼロは首を傾げる。隊舎、ということはどこかの部隊なのだろう。

 

「どこだそれは?」

 

「私達の所属部隊で、はやてちゃんが指揮する部隊…古代遺失物管理部 機動六課です!」

 

こうして、なのはと再会したゼロはシエルと共に機動六課へと赴くことになる。物語は、静かに動き出した。

 

 




んー…戦闘描写が相変わらず酷い(汗
増援については、次回理由がわかる……かな?

では、また

NEXT「それぞれの想い」

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