魔法少女リリカルなのはStrikerS~紅き英雄の行方~ 作:秋風
どうにか2話目でございます。ちなみに、これでプロローグは完結となります
次回からは世界を移し、新たな世界での戦いがゼロを待っています
では、本編をどうぞ…!
感想、評価を常時お待ちしております
02「変わる世界、変わる存在」
レジスタンストレーラー 医務室
ゼロに運ばれた女性、プレシア・テスタロッサは静かに目を覚ました。薬品の匂いが鼻をつき、独特の匂いを感じて体を起こす。
「…? ここは…そうだわ、アリシア!」
周囲を見渡し、最愛の我が子であるアリシアの亡骸を探す。しかし、その亡骸を入れていたカプセルが見当たらない。すると、そんな所に医務室のドアが開く。そのドアの前にいたのは紅い体に、金髪の髪をした男。
「目が覚めたか、プレシア・テスタロッサ」
「貴方は…」
「俺はゼロ。そして、ここは俺達レジスタンスのトレーラーだ」
そう言いながら、ゼロは手にしていたお盆をテーブルの上に置く。どうやらプレシアの食事らしい。
「ここはいったい…いいえ、それより。私の娘、アリシアは? アリシアはどこなの!?」
「安心しろ、こちらに運び込んでいる。手荒なこともしていない。落ちついてくれ。俺達はお前に危害を加えるつもりもない、だが、現状の説明は聞いて欲しい」
「っ…そう、ね。取り乱していたわ」
狂ったかのようにプレシアは愛娘であるアリシアの亡骸を求めたが、その狂気もゼロの鋭い眼光に寄って制止させられてしまう。言いながら力なくそのベッドに座るプレシア。そんなプレシアを見ながら、ゼロはプレシアに説明を始めた。
「まず、お前にはいくつか確認がしたい。ソレを追って現状を説明するが、構わないか?」
「…ええ、いいわ」
プレシアは力のない声でゼロに答える。この男の質問に答えさえすれば娘に会える。そうプレシアは感じさせる姿勢だった。しかし、ゼロはそのまま説明を始める。
「まず、この世界はお前にとって異世界である、ということを説明しておく。お前は俺達が調査する地域で倒れていた」
「…異世界? どうして貴方はそれがわかるのかしら?」
プレシアの疑問はもっともである。何故、自分のことをこの男は異世界から来たという認識が出来るのだろうか。確かに、次元世界は数多く存在するが、それを認識できる者が多いと言われればそうではない。次元世界よりも未開拓の世界の方が圧倒時に多い。
「それは、俺が異世界に行った経験があるからだ。その中で、お前が異世界から来たことを確信したのは…プレシア・テスタロッサ、俺はお前の娘であるフェイト・テスタロッサと面識がある」
「っ…! フェイト、ですって?」
「そうだ。お前の知る、フェイト・テスタロッサだ」
「は、はは、あはははは! あの子は私が死んでもなお、私を母と呼ぶの!? 傑作だわ!人形の癖に! アリシアの代用のくせに!」
プレシアはそう言いながら高笑いをする。ゼロの隣にいたクロワールが怒鳴ろうとするが、ゼロはそれを止める。ゼロには分かっていた。彼女の口から出る言葉が、彼女の本心ではないということを。プレシアは笑い終えた後に、それを止めて小さく呟いた。
「本当に、馬鹿な子、なんだから…」
「……」
「私なんかに囚われず、自分の人生を進めばいいのに…なぜ、私なんかを母と呼ぶのよ…」
プレシア自身、心のどこかで彼女のことを娘と認めたいと思った。しかし、ソレはできなかった。自分は彼女を傷つけすぎた。そして、自分自身に残された時間は限りなく少ない。だからこそ、冷酷者の仮面を被り、悪女を演じ続けた。そして迎えた自身の最後。あの時、自分の娘が伸ばした手を取らずに奈落の底へと落ちたつもりだった。
――残りの人生は貴方の物。貴女を縛るものは何もない。自由に生きなさい、フェイト
最後の最後、自身が狂気の中で人形と呼び続けたフェイトにプレシアが向けた、最初で最後の母親としての愛情だった。なのに、フェイトは未だに自分を母と呼んでくれる。しかし、そんなことが果たして許されるのだろうか? プレシアの思考回路はグルグルとフェイトに対する罪悪感で埋め尽くされて行く。そんなプレシアに、ゼロは口を開く。
「プレシア・テスタロッサ…フェイトは言っていた。どんなに生まれ方が違えど、自分の母親はプレシア・テスタロッサなのだ、と」
「……フェイト」
「お前には、確かに拭いきれない罪がある。だが、ソレを一人で抱え込む必要はない」
「どういうこと?」
「……入ってこい、アリシア」
「え…?」
ゼロの言葉に、プレシアは耳を疑った。しかし、次の瞬間プレシアの目に飛び込んできたのは、プレシアにとって最愛の娘であるアリシア・テスタロッサの姿だった。小さいピンク色のワンピースに身を包み、ピンクのリボンでその髪をツインテールに縛っている。そして、ニッコリと笑みを見せた。
「おかあさん」
「ア…アリシア? アリシア、なの?」
「うん、おかーさん、おはよう」
「アリシア!」
プレシアは無我夢中で我が子を抱きしめる。ずっとずっと会いたかった。目を開けて欲しかった最愛の娘。それが今目の前にいる。もう離すものかと、もう離れないと、力いっぱい自分の娘を抱き締める。その眼には、喜びの涙が浮かんでいた。アリシアもまた、そんな母の様子に苦笑しながら笑顔になる。
「いつものおかーさんだ」
そんな風に言うアリシア。そのアリシアが目覚めたのは今から30分ほど前のこと
「ゼロ、この人達は一体…」
「俺が行った異世界で出会った奴の家族だ。話では既に死んでいると聞いていたが…」
トレーラーの医務室でシエルとゼロがそんな話をする。ゼロがフェイトから聞いた話では、自身が関わった事件「PT事件」と呼ばれた事件で首謀者であったプレシア・テスタロッサは虚数空間と言う場所に消えたと聞いていた。
「それと、これか」
「それがロストロギア?」
「ああ、聞いた話でしかないが…なんでも、願いを叶える石ということだが」
そう言いながら回収したジュエルシードを手に取るゼロ。すると、寝ていたうちの1人、金髪の少女が目を覚ました。
「ふぁー…あれー? ここどこー?」
「…目が覚めたか」
「あれ? お兄さんとお姉さん誰?」
と、首を傾げる少女。そんな少女に対し、シエルがニッコリと笑みを見せる。
「私はシエル。こっちはゼロよ。お名前は言える?」
「うん! 私はアリシア。アリシア・テスタロッサだよ!」
ニッコリ笑みを見せるアリシアだが、ゼロとクロワールはますます考えることとなった。やはり、彼女は自分たちの知る人物、フェイト・テスタロッサではない。しかも、アリシアはフェイトから聞いた話で死亡していることをゼロは知っている。確か、プレシアはPT事件で彼女、アリシアを蘇らせるために事件を起こしたはず。なのに、そのアリシアが生き返っているのは何故か。すると、アリシアがジーっとゼロを見つめている。
「何だ?」
「ううん、なんでもないの…でも、お兄さんをどこかで見た気がするんだ」
「俺を?」
「うーん…違うかなぁ、お兄さんを見たんじゃなくて…そう、お兄さんと同じ目をした人を見た気がするの」
そう無邪気に説明をするアリシアだが、ゼロはさっぱりわからない。すると、アリシアはようやく隣でプレシアが眠っていくことに気がつく。
「あ! おかーさん! おかーさん! 朝だよ!」
「う、うう…」
「おかーさん…」
アリシアが揺すってプレシアを起こすが、唸るだけで反応が無い。そんな母を見ていたアリシアの表情が段々と暗くなっていく。シエルはそんなアリシアに優しく語りかける。
「どうしたの? アリシア?」
「…おかーさん、どうしたのかな?」
「…倒れているところをここに運んだ。体に異常はないが、少し衰弱している。そっとしておけ」
ゼロの説明に頷き、離れてからアリシアは改めて母プレシアを見る。
「おかーさん、目が覚めたらいつものおかーさんかな?」
「え?」
「私ね、ずーっと怖い夢を見ていたの。お母さんが私に似た女の子をずーっと虐めているの。お母さんのその時の顔、すごく怖くて…いつものお母さんじゃないみたいで…」
ゼロは知っている。プレシア・テスタロッサがフェイトに対して虐待を重ねてきたことを。しかし、何故死者であった彼女がそれを知っているのか。その疑問は尽きない。死者であったアリシアの蘇生。行方不明であり死亡扱いであったはずのプレシアの生存。そして、紛失したはずのロストロギア「ジュエルシード」その全てが今、自分たちの所にある。もしかしたらロストロギアであるジュエルシードの奇跡かもしれないが、ゼロにとってはどうでもいいことだった。大切なのは、この後どうするか。シエルもゼロから詳しい彼女達の経歴を知り、頭を悩ませた。というのも、ゼロから言われた通りの人間ならとてもではないが危険な人間である。キャラバンではとても受け入れてもらえそうにない。だが、シエルはそんな中で結論を出した。対話をする。彼女、プレシア・テスタロッサの本質を理解する意味で、シエルはそんなことを言いだした。これから彼女達がエリアゼロの集落で暮らすとしたら、彼女のことを知っておかなければならない。なので、フェイトと繋がりがあるゼロはプレシアとの対話に臨んだのだった。そして、現在に至る。
「俺から説明することはだいたいそんなところだ」
時間を戻し現在。プレシアはアリシアと共にこの世界のことについて説明を受ける。機械文明が発達して生まれたレプリロイドという存在。そして、ゼロが訪れた異世界、地球での事件のこと。フェイトの今。
「そう…ありがとう、十分よ」
「お前達の今後だが、俺達が住む《エリアゼロ》と呼ばれる場所へ連れて行こうと思う。そこは多くの人間やレプリロイドが暮らしている場所だ。そこなら幾分安全だろう」
「何から何まで申し訳ないわね…本当にいいのかしら?」
「はい。もちろんです。ゼロから聞きしましたが、プレシアさんは魔導師であると共に科学者であるというお話を聞いたので、是非私にもお話を聞かせて欲しいですから」
そんなシエルの言葉に、プレシアは少し驚いた表情になる。
「ということは…貴女も?」
「はい。昔はネオアルカディアと言う場所で科学者をしていましたから」
「そうなの…若いのに立派だわ」
「そ、そんな…」
シエルはプレシアからの純粋な褒め言葉に恥ずかしそうに顔を紅くした。人からあまり褒められたことのないシエルとしては、そんな褒め言葉が嬉しいが、それと同時にすごく恥ずかしく思える。
「そ、ソレを言ったらプレシアさんだってまだまだお若いじゃないですか」
「何を言っているのよ。私なんてもうオバサンで…」
シエルの言葉がお世辞だと思いながらプレシアがふと、鏡に映った自分の顔を見た。その鏡に映っていたのは、アリシアが死んだ年くらいに若返っている自分の姿。
「う、うそ…これって」
「どうかしました?」
「その、体が…若返っている…の。それに、今更だけど呼吸も全然苦しくないわ…私、結核に掛っているはずだったのに」
プレシアがその現象に戸惑いを見せる。何故自分の病気の病状が消えている? 何故、自分は若返っている? そして最大の疑問点。何故、アリシアが生き返った? 様々なことを思考していると、フェイトをつき放して虚数空間へ落ちた時のことを思い出した。
――――願わくは次の人生では、我が子と進む最高の道を
そんな願い。持っていた残りのジュエルシードが叶えたのかもしれない。すると、心配しているシエルがプレシアに声をかける。
「あの、プレシアさん? 大丈夫ですか? 体には異常はなかったんですけど…」
「あ、ああ…ごめんなさい。何でもないわ…大丈夫」
(神様は私にチャンスをくれたのかしら…再び、生きる上でのやり直すチャンスを)
ならば、今度こそ掴まなければならない。本当の幸せを。そして願わなければならない。もう会うことはないであろうもう一人の娘の幸せを
「そろそろエリアゼロに戻りましょうか。未確認のエネルギー反応のことを特定できたし、すぐに…」
と、シエルが立ち上がったその時だった。テーブルに置かれていたジュエルシードが突然発光し、宙に浮く。
「なっ…」
「ジュエルシードが…!?」
「プレシア・テスタロッサ!封印を…」
「も、もうやったはずよ!なのになぜ…」
ソレの光景に驚くシエルと、封印をしたのにもかかわらず起動するジュエルシードに驚いてアリシアを抱くプレシア。そしてゼロは3人を庇うように前に立ちふさがる。しかし、その時だ。ゼロは懐かしい気配を感じ取った。
《ゼロ…》
「この声は…マザーエルフ!」
そう、少し前にゼロを宇宙空間から助け出し、異世界に送ったマザーエルフの姿があった。オメガの姿をしたロストロギアとの戦う前、一度だけ夢の中に現れたマザーエルフが、ゼロの目の前にいる。
《ゼロ…》
「まさか、二人をこの世界に連れてきたのはお前か?」
《……》
ゼロの質問に、マザーエルフは答えない。しかし、ゼロは言葉を続ける。
「なら質問を変える。マザーエルフ、お前は俺に何をさせたい」
《…救って》
「…救う? 誰をだ?」
《器…世界を握るであろう、王の器…時間が無い、世界の崩壊が始まっている…》
マザーエルフの言葉をいまいち理解できない一同。しかし、マザーエルフはソレを気にせず言葉を続けた。しかし、彼女が言葉を告げると同時に段々とジュエルシードの光は強さを増していく。
《どうか、世界を頼みます…貴方だけが…世界を…!》
その言葉と同時に、ジュエルシードの光が絶頂を迎える。その強い光と共に、4人は気を失うのだった。
英雄に平穏はない
戦いが終われば、また次の戦場が用意される
戦いの道にある軌跡は終わらず、英雄はそれを作るために歩き続ける
その物語はやがて伝説となり世界を変えて行く
ゼロの新たな伝説が始まる…!
プロローグ 完
というわけで、お疲れさまでした。プロローグはこれにて完結です
プレシアは容姿を20代前半に戻した設定ですが、それは何故かと言えばなのはの母である桃子や、リンディの容姿が変わらないのに、プレシアだけ老けたBB(ry、お姉さまではあまりにも不憫だなと思いまして、ジュエルシードのせいにしました。
まあ、ほら、innocentでも若い姿だし…いいかな、と
これも全部、ジュエルシードってやつの仕業なんだ…!
ではまた次回
NEXT 「異世界での再会」