魔法少女リリカルなのはStrikerS~紅き英雄の行方~ 作:秋風
あれからいろいろありまして、新しい会社が決まり、その忙しさから小説を更新する暇が全くなかったといいながら、漆黒のヴィランズまでFF14を終わらせ、今はクッキーを焼く日々。何が言いたいかというと
投稿遅れてすみませんでした。
去年、PCがぶっ壊れてからWordなどもなくなったことで小説を書くというモチベーションが失われていました。遊戯王のほうはご時世のせいでカードがあっても遊べないのがつらいがゆえに、更新が滞っております。
ちなみに、後編については近いうちに更新予定です。
では、第22話どうぞ
機動六課訓練場
「……次だ」
『右方向にガジェット2機! 後ろに3機!』
『チャージ完了、撃てます!』
「……!」
エックスの偽物との闘いから翌日。今日の早朝訓練はフォワードたちが実戦で疲弊したこともあり、休みとなっている。しかし、その訓練場ではシミュレーターが起動し、爆発音が鳴り響く。言わずもがな、メンテナンスを終えたゼロである。ゼロはクロワールを宿し、さらにリインフォースとユニゾンして訓練を行っていた。相手はフォワードたちと同様のガジェットⅠ型からⅢ型とランダムに戦う方式。そして、そのゼロはいつものゼロではなく、ユニゾン状態で新たに得た新フォームである。
「せあああっ!」
そのいつもとは違う銀色の髪を靡かせ、黒い羽根でゼロは空中を舞い、その手にあるバスターのトリガーを引くとともに、空を蹴って一気に距離を詰め、ガジェットたちを一刀両断する。傍から見ればゼロが新たな力を使いこなしているように見えるだろう。実際、このシミュレーターを動かし、遠くから見守るなのははそう思っていた。しかし……
『ゼロ! リインフォース! ストップ! ストォープ! なのは! 訓練中止ぃ!』
『ふぇ!? あ、うん!』
突然のクロワールの悲鳴にも近い声とともに、ゼロはその訓練場が解除されたのを見てなのはのいたところへと着地する。着地とともにユニゾンは解除され、クロワールのサポートも解除されてしまった。
「どうした、クロワール」
「どうした、じゃないわよ! 3人ともバスターとセイバーを見て!」
クロワールが怒っていますと言わんばかりに腰に手を当ててそう声を荒げる。そんなクロワールの声に、一同はそのゼロが持っていた武器へと視線を移す。ゼロの持っていた武装はバチバチとスパークを起こして悲鳴を上げ、煙を出していた。まるで、昔のスバルが使っていたローラーやナックルのようであった。
「またか……」
「やはり、私の魔力を込めてしまうと武装の耐久力が削られてしまうようですね」
このセイバーとバスターに関してはシエルとシャーリーが開発したもののコピー品。そのため、もともとの耐久性はないものの、最初とは違いかなり改良が施されたものである。しかし、それでもゼロの戦い方とリインフォースの魔力に武器が耐えられないのである。
「これでもかなり私が調整しているんだからね! もう、これで3個目じゃないの!」
「す、すまないクロワール……幾分か調整はしているのだが、ゼロへ魔力を供給すると主はやての時とは方式が違うせいで一気に魔力が溢れてしまうのだ」
そうリインフォースが申し訳なさそうにクロワールへ謝る。とはいっても、もともと魔導師ではなく、レプリロイドへ魔力をユニゾンによって供給しているというのもかなり無理な話なのだ。
「リインフォースさんの理論だと、ゼロさんが魔法を使うのも可能なんですよね?」
「ああ、無論だ、高町。しかし、それはゼロへの負担がかなり大きい。ゼロが稼働に使うエネルギーを通す場所へ魔力を送って魔法を発動させるわけだが、それをすれば当然、この武器たちのようになることもあるからディアボリック・エミッションや、昔お前から収集したことで得たディバインバスターやスターライト・ブレイカーの類も使えない。使えば、ゼロの回路が焼き切れてしまうだろう。魔力によっての空中飛行はともかく、ブラッディ・ダガーが限度といったところだ……ほかにも問題があって、昨日の戦いのあと、ゼロがシールドを発動させたときに誤作動も起きていたからな」
「誤作動?」
「魔力からいつもの武器へ力を供給したときに武器のシステムがクラッシュして発動できなかった……クロワールのサポートがなければ俺たちもヘリも消し飛んでいたところだ」
ゼロとリインフォースの説明を聞いてゾッとするなのは。あのタイミングで、なのははヘリからの砲撃の間に割って入ることができる距離ではあった。だが、それをしなかったのは直前にクロワールからレイジングハートへゼロがヘリへの砲撃を防ぐ、と一瞬にして連絡が来たからである。ゼロなら大丈夫だろう、となのはは心のどこかで思っていたのだ。
「飛行の部分も完全にリインフォースに任せているがゆえに行えているが、俺の意思をリインフォースが受け取るのには若干のラグもある。空中での戦闘もガジェットの相手や、初見の相手ならともかく、なのは、フェイト、そしてシグナム、ヴィータの4人と渡り合うのは難しいだろう。あのコピーエックスに対して圧倒できたのも、相手が初見だったからに他ならない。2度目はおそらく、コピーの半身が対策を講じるはずだ」
なのはやフェイトたちも報告で聞いた、ゼロの世界における『偽りの英雄』、コピーエックスの登場。その半身はまたスカリエッティが作り上げたという別のエックス。エックスという存在については10年前にゼロから軽く聞いたことのある存在だった。なのはにとっては、過去、自分の道を諭してくれたゼロがエックスの話をしたときに見せた笑みから、どれだけゼロが信頼していたのかを知っている。
「もし、私やフェイトちゃんたちがそのエックスと対峙したら……どうなりますか?」
「……仮想で戦った、VAVAとの戦績は?」
「……『3割』です」
なのはの問いに、さらに質問で返したゼロの問いに、なのははそう答える。それは、ロングアーチとシエルがVAVAから得たデータで作り上げた訓練場における架空のVAVAの存在。それに対して、なのはが挑んで勝率は3割。この世界でエースオブエースとまで呼ばれた彼女ですらVAVAには苦戦していた。そうなれば、答えは決まっていた。
「勝率1割……しかも、スターズ、ライトニング両隊長、副隊長で挑んで、誰かしらの犠牲を出さないと難しいと思うわよ」
なのはの答えに対してゼロではなくクロワールがそう答えた。彼女が正確にシミュレートをした結果なのだろう。要するになのは1人で挑みなどすれば確実に死が待っている。それほどまでに、『エックス』という存在は特別であり、強さという点ではコピーなどとはいえ本物なのだ。そこは、素体に天才であるシエルが作り出した技術が盛り込まれているからといえよう。それを聞いて、本当のエックスはどれだけ強かったのか、となのはとリインフォースは戦慄する。
「……遠い記憶、思い出すエックスは確かに戦いにおいて『甘さ』があったが、『弱かった』わけじゃない。アイツには技術も、実力もあった。ただ、非情になりきれなかっただけだ。その甘さがないエックスは脅威に他ならない。もし、奴と対峙したときは生き残ることだけを考えろ」
「わかりました」
なのはが頷き、朝のトレーニングは終了となる。今日フォワードは先日の市街地での戦闘についての報告書の作成に終われており、訓練はなしとなっている。だからこそ、今回ゼロはトレーニングを行っているのだが。ちなみに、なのははすでに作成を終了していたりする。ここは、流石エースオブエースと言われる所以であろう。そして、はやての業務の手伝いがある、と先に訓練場を後にしたリインフォースを確認したなのはは、ゼロへこんな提案をする。
「ゼロさん、今日、1つ私の任務についてきてもらってもいいですか?」
「任務? 今日は、お前は業務を終えたといっていた気がしたが」
「はい。私個人の任務ですので、六課の任務には含まれてないです。保護されたあの女の子の様子を見に行こうかと思いまして。よければ」
「ああなるほど、アルエットとかのこともあるし、ゼロならお手の物ね!」
なるほど、と、クロワールは手を叩くが、ゼロはそれはシエルの役割ではないか、と思う。実際、初対面であったころは割とアルエットから距離を置かれていた。今では、彼女が作成したサイバーエルフであるクロワールを託すくらいには信用しているが。クロワールもクロワールで、なのはに頼まれ、どうにか2人きりなことをしたい、と頼まれているが故である。本当は子供の相手をゼロができるとはあんまり期待していない。
「……いいだろう。了解した。いつ、出発する?」
「今からすぐです。場所は聖王教会の近くにある聖王病院なんですけど……」
「あ、そうだゼロ! だったらあれ使いましょう! シエルが作ってくれたアレ!」
「ああ、アレか。確かにいい機会だ」
クロワールの言葉に、ゼロはそう納得して頷く。あれ、と言われていまいちピンとこないなのはだが、ゼロはその訓練場をなのはと共に後にして、その格納庫へと訪れる。
「これって……!」
「……ああ、俺の世界で発見されたロストデータを元に再現したものだ。名前は『ライドチェイサー』だったか、個体名称は『アディオン』という。」
そう、これはゼロの世界にある『沈没した図書館』と呼ばれた場所にてゼロやシエルたちレジスタンスが発見したロストテクノロジーである。かつて、イレギュラーハンターたちはこれに乗って戦場へ赴いたという。高速移動を目的として開発されたエアバイク型マシンだ。基本武装として、連射の効く小型ビーム砲を装備しており、空中を滑空する形で走行しているため、針が敷き詰められたり高圧電流の流れるトラップ地帯、あるいは水上など、通常なら足を踏み入れられないようなエリアにも突入して行ける万能マシンで、加速性能や最高速度に優れるが、反面ブレーキが効きにくく、一時を争うハンターの任務においては乗り捨てられる場合が多かったという。 また、高い機動性と引き換えに装甲は少なく、耐久力は非常に低い。操縦者が露出するため、搭乗中のダメージも防げない弱点を抱えている。さらにいえば、ゼロたちが復元したアディオンはかなりじゃじゃ馬である。
「すごいですね。これ、2人乗りできるんですか?」
「ええ、もちろん。シエルが改造したから大型化しているの。ああでも、ゼロ以外はたぶん操縦が難しいと思うわ」
そう、このアディオンがじゃじゃ馬と呼ばれる所以がこの機体に搭載された反重力ユニットである『ドライブブレード』だ。単純に推進力としての機能のみならず、ウィリー走行でブレードを前面に押し出しての体当たりで攻撃したり、障害物を破壊できる推進力があり、 元々ハンターの隊長機として開発された……が、性能が高すぎて乗りこなせる者が限られるため、性能をデチューンした量産機の『ハーネット』と呼ばれた機体が開発されたほどである。その古いデータにはゼロが搭乗した記録が発見されたことから、今回それをもとにシエルが作成したのである。
「一応、戦闘においてAMF下でも魔導師を運ぶことなどを想定して2人乗りだ。これを使え」
そう言ってゼロはなのはへヘルメットを渡してアディオンに火を入れる。余談だが、もしここにティアナがいれば、興奮すること間違いなしだっただろう。ミッドチルダにおいて、駆動二輪などはいまだタイヤがある地球の技術とはあまり変わらないものが主流である。なのはにとっては、地球での生活で見たことのあるSFバイクにしか見えない。ゼロがまたがった後、なのはもそれに続いてヘルメットをかぶり、後ろへと乗り込んだ。
「じゃ、じゃあ、失礼して」
『ナビゲート起動、えーっと、場所は聖王病院っと。じゃ、飛ばすわよ、ゼロ!』
起動したライドチェイサーにより、浮遊してなのははゼロの腰を強く掴む。想い人との二人乗りバイク、嬉しくないはずはない。しかし、現実は非常である。なのははそこで一瞬、嫌な予感がよぎったのだ。このバイク、クロワールはなんと言っただろう。ゼロ以外、操縦が難しい。そして、飛ばす? 彼女の第六感が、危険信号を発していた。
「あの、ゼロさん? これ、一体何キロ出るんですか?」
「知らん。だが、そこそこにスピードが出る。しっかり捕まっていろ」
「え、ちょっと待っ……」
瞬間、爆音を立ててライドチェイサー『アディオン』が発進した。その瞬間、なのはは悲鳴にならない悲鳴を上げたのは言うまでもない。
*
聖王病院
「で、ヴィヴィオだったかしら。貴女どうしてここにいるの? というか、ここがどこかわかる?」
「……わかんない。ヴィヴィオ、ママとパパ、探していたの」
「迷子、か。まあ、私も同じなんだけど……」
聖王病院の中庭にて、少女ヴィヴィオに名乗ったレプリロイド、レヴィアタンはそう言いながら困ったように頭を掻く。レヴィアタンも、自分がどうしてこんな場所で倒れているのかがわからなかった。メモリーを引っ張り出しても、最後は自分が惨敗を喫したレプリロイド、オメガへの借りを返すためにゼロに手を貸したのが最後だ。
――何をしている! 早く立て、ゼロ!
――オラァ! 借りを返しに来たぜオメガァ!
――やられっぱなしって、性に合わないのよね!
あの場所へ辿り着くのに自分たちは満身創痍だったが、自分たちの”本当の主”から頼まれた最後の命令を守るためにゼロへ加勢した。そして、最後は他の四天王である2人と共に爆散するオメガの爆風からゼロを守るために盾となった。これが、レヴィアタンの最後の記憶だった。もし、自分のメモリーが奇跡的に無事で、目を覚ますなら当然ネオアルカディアのメンテナンスルームだろう、と思う。ますますわけがわからない。
「戦闘バカはともかく、キザ坊やがいればまだ、冷静に判断ができたもんだけど……」
「う?」
「なんでもないわ。さて、どうしたもんかしら……地上にしては、ネオアルカディアでもないのにずいぶんと綺麗だこと。外だとしたら、まだこんな綺麗な場所があったね」
レヴィアタンの知る地上といえば、土ばかりで埃っぽくて、とてもではないが綺麗好きの自分にはとても耐えられない場所だったはず。しかし、ここはどうだろう。豊かな自然と、心地よい風が吹いている。
「まあ、やることもないし。貴女の親を探しに行くのを手伝ってあげるわ。こう見えて、情報収集は私の分野……っ!!」
ヴィヴィオへ言葉を言い切る前に、レヴィアタンは十の光る武具の一つであり、自身の愛槍である深紅の槍、『フロストジャベリン』を出現させ、それを振るう。それと共に聞こえる金属音。そこにはトンファーのような武器を携えた女性がいた。その表情は酷く驚いた様子だった。
「一応、聞いておこうかしら?
「っ……!?」
「”
攻撃を防ぎながら、レヴィアタンはその攻撃をしてきた人間の女性を分析する。伊達に、ネオアルカディアで冥海軍団を指揮するネオ・アルカディア四天王の一人ではない。しかし、その武器同士の拮抗ははじかれ、女性は距離を取った。
「なぜ邪魔をしたのです! その子は人造生命体! どんな危険があるか!」
「……ふーん? 言っていることはよくわからないけれど、まあ、私からすれば、子供を襲っている危険な女にしか見えないわよ? 貴女。 それに、なんであれ、恩を仇で返すほど私も落ちぶれていないの。人を守るはレプリロイドの誉れ、この子をどうにかしたくば、この妖将レヴィアタンを倒すことね」
そう言いながら槍を回し、構えを取るレヴィアタン。しかし、女性はその名を聞いて驚き、目を見開いていた。
「レヴィアタン!? では貴女が「行くわよ!」っ……! ヴィンデルシャフト!」
女性はそのトンファーで迫りくるレヴィアタンを迎撃する。そんな彼女に対して、レヴィアタンは容赦なくその槍からホーミング弾を発射して牽制を図る。しかし、そのホーミング弾は一つ残らず女性に叩き落された。
「ハッハァ! 人間にしてはやるじゃない! ヴィヴィオ! アンタは隠れてなさい!」
「う、うん!」
一応、その戦闘に巻き込まないようにと惚けていたヴィヴィオへいうレヴィアタンはそのまま槍を回して空中へと跳ぶ。
「これはどう? ヤッ!」
「この程度! はああっ!」
氷の輪を作り出したレヴィアタンはそれを発射するもレヴィアタンの攻撃を女性が迎撃する。本来、レヴィアタンの得意とするフィールドは水中である。その重力から振り切れるその場所で相手を惑わし、踊るように戦うのが彼女の戦闘スタイルである。しかし、ここは地上。彼女が苦手とする場所でもあった。それにより、思うように実力を発揮できない状況でもあった。
(長期戦は不利、なら、一気にケリをつけてやるわ!)
「出ておいで!」
その言葉と共に、彼女の周囲が氷結していく。その周囲の木々が、地面が、そしてその空気すら。女性もそれを見てバリアジャケットを纏っているのにも関わらず冷気を感じていた。そして現れるのは氷の龍。まるで生きているかのように錯覚するそれをレヴィアタンは妖艶な笑みで笑ってひと撫ですると、手を女性へと向ける。
「そらっ! 行きなさい!」
「っ……! ならば、ヴィンデルシャフト!」
再び、女性の持つデバイスがロードされる。その魔力を纏った一撃をその龍へとぶつけるために地を蹴った。しかし、そこで乱入者が現れる。
「そこまでだ!」
「まて!」
飛び出した2つの影。片方は女性のトンファーを『2本の剣』で受け止めており、もう1人はその女性へと迫らんとしていた龍を炎を纏った剣で叩き切った。それを見て、レヴィアタンと女性、双方が目を見開いた。
「まさか、お前とも会うことになろうとはな……レヴィアタン」
「貴方……ゼロ!? それに……」
「……久しぶりだな、レヴィアタン」
レヴィアタンは驚愕する。そこに現れた2人の人物。それはかつて自分が出会い、倒すことに執着してしまうほどに夢中になった好敵手であるレジスタンスの戦士、ゼロ。そして、その先ほどまで自分が戦っていた女性のトンファーを受け止めていた人物。翡翠のアーマーと、背中のジェットパック。そして、2本の赤い双剣。
「ハルピュイア!?」
「”
賢将ハルピュイア。彼がその場にて、女性の一撃を防いでいるのであった。
一口単語
アディオン
ロックマンX4~X5に登場したライドチェイサー。公式イラストではゼロが搭乗している写真がある。
個人的にゼロのライドチェイサーといえば、PSPのイレハンのムービーが印象深いです。
余談
最近、今更鬼滅の刃にはまりました(二次創作に)
推しはカナエ姉さんと、しのぶさん。
カップリングは炭しの