魔法少女リリカルなのはStrikerS~紅き英雄の行方~ 作:秋風
ゆっくり、投稿していくつもりです
ちなみに、本来なら先週末に投稿する予定だったのですが、ちょっと色々とあって遅れてしまいました。それについて、活動報告に記載しております
一応、タイトルとURLをば
小説投稿延期 コミケ参戦決定
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=116605&uid=25417
こちらに詳細を載せておりますので、ここでの説明は省かせて頂きます
これからも時間があるときにちょくちょく投稿する予定です
宜しくお願いいたします
14「ホテル・アグスタ」(前編)
VAVAの襲撃から一夜明け、機動六課はその異常の無さを確認して警戒を解除。第一世界ミッドチルダへと帰還することとなった。とはいったものの、帰還するのはあくまで機動六課のメンバーとゼロたちのみであり、プレシア、アリシアの二人は海鳴に残ることになっている。そしてここで1人、自分もミッドチルダへ行くといったのが言わずもがなすずかであった。しかし、彼女も大学生という学生の身分である以上別世界などで過ごせばその今いる大学の単位などに影響が出てしまう。故にアリサにそれを止められてしまった。ただ、アリサもすずかの気持ちを理解しているのでたまに海鳴へと戻って来るという約束をゼロとしたことでこの問題は解決となった。そしてそれから月日は流れ、久々に機動六課が出動することになった。場所はホテル・アグスタと呼ばれる場所で行われる骨董品のオークション。任務内容はその警護である。出撃しているのはスターズ、ライトニングの両陣営、そしてロングアーチであるはやて、そしてゼロである。現在ははやてがフォワードの面々に今日の任務内容を伝えている最中だ。
「それで、今日向かう先はここ、ホテル・アグスタ」
「骨董美術品オークションの会場警備と人員警護。それが、今日のお仕事ね」
「取引許可の出ているロストロギアがいくつも出品されるので、その反応をレリックと誤認したガシェットが出てきちゃう可能性が高い、とのことで、私たちが警備に呼ばれたです!」
つまり、今回の任務はかなりの確率で戦闘が予想される、ということだ。それを理解してか、フォワードの顔にも緊張の色が伺える。
「この手の大型オークションだと、密輸取引の隠れ蓑にもなったりするし、油断は禁物だよ。」
「現場には昨日から、シグナム副隊長、ヴィータ副隊長、数名の隊員が張ってくれている」
「私たちは中の警備をするから、フォワードは副隊長達と連携して警護に当たってね」
「「「「はい!」」」」
元気のよいフォワードの返事を聞いて満足するなのはとフェイト。すると、キャロがそのシャマルの足元にある箱に目を向けた。
「シャマル先生、その箱……なんですか?」
「ああこれ? 隊長たちと、ゼロのお仕事着よ」
「「「「?」」」」
シャマルは意味ありげに笑うが、その言葉にフォワードは首を傾げるばかりであった。
*
ホテル・アグスタ
「……何故、俺までこのような格好を?」
「ええやん、すごく似合ってるもん」
ホテル・アグスタのパーティ会場。そこにゼロはいた。現在ははやてと共にそのホテルの中を巡回しているが、その2人の格好はいつもと一風変わっていた。はやてはその髪の毛をまとめ上げ、薄紫色のドレスに身を包み、ゼロはタキシードをその身に纏っていた。会場内で怪しまれないように、ということでゼロもいつものスーツではなくタキシードを着ているのだが、ゼロの容姿と今のはやての姿は別の意味で目立っていた。行き交う人々が二人へつい視線を向けてしまう。それほど、今の二人は魅力的と言えるだろう。
「えへへ、なんか恋人どうしみたいやね」
「そういうのはよくわからん……」
そう言いながらゼロと腕を組んで歩くはやて。ゼロと2人で巡回警備を担当する、ということではやては非常に上機嫌である。立場上、仕事の忙しさの違いで一緒にいる時間が前よりも格段に減ってしまったことでゼロといられる時間を嬉しく思っており、訓練場で一緒にいるなのはに対して少し嫉妬してしまうくらいである。そんな様子にタキシードの下でおもしろそうに見守るクロワール……彼女も空気を読んでかそのタキシードのポケットで静かに二人を見守っている。だが、2人が会場を出て廊下を歩きだしてからそのクロワールの視線が鋭くなる。ゼロも同じく同様だ。今二人が歩いているのはホテルの廊下……そこには2人以外誰もいない。しかし、ゼロはその腰に装着しているホルスターのバスターショットへと手をかけた。
「ゼロ……?」
「誰だ? “先程”から俺を見てくるのは」
ゼロの突然の行動に驚くはやてだが、はやてもゼロがこのような場所で冗談などをいうはずがないのを知っている。はやては瞬時にシュベルトクロイツを手に周囲を警戒する。すると、その廊下の曲がり角から1人の男性が姿を現した。緑色の髪に、白いスーツを来た男の姿。それを見てはやてが驚きの声を上げる。
「ロッサ!?」
「……知り合いか?」
「やあはやて、久しぶりだね。とりえず、その隣の紳士を落ち着かせてもらえるかい?」
ロッサ、と呼ばれた男はそういってはやてに声を掛ける。はやてもゼロに大丈夫だから安心していいと促し、ゼロもそれに従う形でその手にかけていたバスターをホルスターの中へと戻した。
「それで、この男は?」
「ヴェロッサ・アコース査察官。私が昔から色々とお世話になってるんよ」
「初めまして、ヴェロッサ・アコースです。気軽にロッサと呼んでくれると嬉しいね」
「……ゼロだ。こっちにいるのはクロワール」
そう言って握手をするゼロだが、やはりその警戒は終わっていないらしく、すぐにその握手をやめてしまう。
「俺を監視して、何をしようとしていた?」
「……ロッサ?」
「あー…その、あれだよはやて。誤解しないでくれ? カリムから機動六課に次元漂流者が来たって聞いてね。しかも、昔はやてから聞いた凄腕のロボットの剣士っていうじゃないか……これは是非観察して「……後で、カリムとシャッハに連絡したるわ」おいおい!?」
どうも二人のやりとりを見ている限り、はやてが信頼を置いているらしいと判断したゼロは小さくため息を吐きながら警戒するのをやめた。一応敵ではないらしいので戦うこともないだろう、と判断したのだ。
「先程は失礼したね……まあ、見ていた理由は単純に妹分の隣にいる男がどんなやつか知りたかったのさ」
「次からそういう行動は気を付けるんだな。危うくバスターで撃つところだった」
「ああ、気を付けるよ」
ロッサの言葉に全く反省していないな、という印象を受けながらゼロははやてとロッサが会話しているのを見守ることにした。はやてもロッサと楽しそうに話しているところを見るに、彼女が信頼しているというのがよくわかる。彼女も管理局で働き始めた当初はあまりいい目で見られることが無かったが、このように信頼のおける人間が10年で増えた、ということをゼロは実感する。しばらく会話をしていた二人だったが、突如ホテル内が謎の振動で揺れた。その揺れは単なる地震ではない。それと同時に何か所かで爆発音も鳴り響いているのが理解できた。
「「「!!」」」
ことが起きてからは早かった。はやてがすぐに通信回線を開き、指示を飛ばし始める。ロッサは審査員の安全の確保のために会場の中へと戻っていった。
「ゼロ、ここから離れた場所にガジェットが確認された。今、シグナムたちが迎撃に向かってる。なのはちゃんとフェイトちゃんはホテルでの爆発の方へ行ってくれた」
「そうか……はやて、ガジェットの量は?」
「そこまで多くないみたいやけど……なして?」
はやての言葉にしばし考えたゼロだったが、時間もないのですぐに自分の意見をはやてに伝える。
「少数で正面からの襲撃というのはおかしい。敵もこちらが待ち構えているのは承知のはずだ……ガジェットも機械であって自然発生したものではない。もし、ガジェットを向かわせたことに警備の人間が気を取られたら、オークションの商品はどうなる?」
「まさか、囮?」
「断定はできない。だが、そう考えるのが妥当だろう……俺は、オークションの品の場所に行く。たしか、地下の駐車場から搬入されるんだったな?」
そう言いながらゼロはタキシードを脱ぎ捨て、いつもの戦闘用のスーツを身に纏ってヘルメットを装着した。
「ミッションを開始する。何かあったら連絡を頼む」
「……」
「はやて?」
「あ、うん……なあゼロ? 私、何か嫌な予感がするんよ。だから、気を付けて」
はやてはこの敵の侵攻にたいしてゼロの言葉を受けて不安を感じていた。まるで、敵がゼロを1人に仕向けるかのようにしている。そんな風な印象をはやては受けていた。そんなはやての言葉に、ゼロは頷いた。
「わかった、何かあったら連絡を入れる……はやて、指揮は頼んだぞ」
「うん、任せて」
はやての言葉を聞き、走り出すゼロ。はやてもそれを見送るとすぐに空中へディスプレイを展開してロングアーチとしての仕事を開始した。すでに補助としてシャーリーやグリフィス、そしてシエルが動いていた。
「ゼロ、気を付けてな……」
はやてはもう一度、そう呟くのだった。
*
ゼロはそのホテルの廊下を走り続けていた。地下駐車場までは最悪なことにゼロが走り出した地点とは真逆の場所にある。
「ゼロ、ガジェットの反応がホテルの中にまで……」
「わかっている」
どこからかの奇襲。まるでゼロを待ち伏せていたかのように廊下の窓から、天井からガジェットが出現する。ゼロはZセイバーを構え、そのガジェットたちを斬り伏せていく。ゼロにとって脅威でもないガジェットたち……しかし、そのホテル入口のロビーに差し掛かった時、強烈な殺気をゼロは感じ取る。思わず身構えるゼロだが、何も出てこない。その代りに聞こえてくるのはピアノの音色。ロビーに設置されたグランドピアノの音である。その奏でられる旋律は美しくも、明らかに現状では場違いである。ガジェットも襲ってこないその場所で奏でられるピアノ……ゼロはそのピアノへと視線を向ける。そのピアノの席に座り、ピアノを奏でているのは紫色のアーマーを身に纏い、肩には巨大な砲を装備した1体のレプリロイドの姿だった。
「お前は……」
「ピアノ……というものらしいな。音の組み合わせしだいで【芸術】と呼び、賞賛する。だが芸術という観念は絶対的多数の中にしか自分を見出せない者の戯言に過ぎず、己に絶対の自信を持つものはそんな戯言に惑わされることはない……特に、俺達のようなレプリロイドにはな。そうだろう? ゼロ」
「VAVA……」
ピアノの椅子に座っていた男、VAVAがそう言いながら立ち上がり、ゼロを見据えていた。ゼロは手に持っていたZセイバーを握り直し、VAVAを見据える。記憶になくともこのVAVAというレプリロイドの実力は間違いなくトップクラスだ。恐らく、自分が今まで闘ってきた中でもオメガに次いで強いともいえる。
「この仕事を完遂させれば、雇い主から元の世界に帰すという話をもらった……その暁には今度こそ、エックスを俺が倒す……お前の首を手土産にな」
「……」
おそらく、VAVAの中での時間はかつてエックス、そしてゼロがイレギュラーハンターである時代から進んでいないのだろう。故に、エックスが最早この世にはいないこともVAVAは知らない。だが、その事実を告げることはなく、ゼロはZセイバーをVAVAに向ける。
「やってみろ、できるならな」
「ククク、行くぞゼロォ!」
その言葉と共にVAVAがゼロへと肩のキャノンを向けて発射する。その砲撃を回避し、ゼロは左手でバスターを構えて連射。それに反応したVAVAはその場を飛び退き、空中からゼロめがけてキャノンを放つ。しかし、ゼロはそれを更に回避して一気にVAVAとの距離を詰めてZセイバーを振り下ろした。
「セアッ!」
「チィッ……これでも食らえ!」
その一撃がVAVAにヒットするとともに、VAVAの腕がゼロめがけて飛んできた。突然の事に反応できなかったゼロはその一撃を受けて吹き飛び、またしても距離が空く。
「今のは……」
『ゼロ! VAVAの腕、あれ、ロケットパンチだったわ……!』
そのクロワールの言葉を聞いてゼロはVAVAへと視線を向ける。そのVAVAの腕が片方その中を浮いており、ゆっくりとその腕の持ち主であるVAVAの腕へと収まった。
「こいつを受けた途端、反射的にその身を引いてダメージを軽減したか。まあ、そのおかげでお前のセイバーの一撃もそこまでは食らわなかったが……ククク、面白い」
「……」
「どんどん行くぞゼロ! この程度じゃあ、終わらないよなぁ!」
「チッ……」
そのまままた飛び込んでくるVAVAとそれに反応して駆け出すゼロがぶつかり合う。Zセイバーを振るうゼロと、その攻撃を避けながら腕のバルカンを、ロケットパンチを、肩のキャノンを乱射するVAVA。そのお互いの攻撃はホテルのロビーを見る影もない爆心地のような姿へと変えていく。そして、その猛攻に次第にゼロが押され始めた。
「チィッ……!」
「どうしたゼロォ! やっぱりお前弱くなったなぁ!?」
「セアッ!」
チャージされたZセイバーが振り下ろされるも、VAVAはそれを避け、ゼロへと間合いを詰める。そして、その一瞬の隙をVAVAは見逃さなかった。そのVAVAの右腕が、ゼロにピッタリとくっついていた。
「っ……!」
「“ゴールデンライト”、こいつは効くぜぇ? ゼロ」
そのVAVAの言葉と共に発射されるロケットパンチ。それを受けたゼロはその衝撃でホテルの外へと放り出された。
*
ホテル・アグスタ 外
「ティアナ! この馬鹿! 味方撃ってどうすんだ!」
ゼロがVAVAと闘っていたその頃、そんなヴィータの怒号が響き渡った。侵攻してくるガジェット破壊のために防衛に当たっていたフォワードメンバー、そして副隊長であるヴィータとシグナム、そしてその補佐としてシャマルやザフィーラ、リインフォースだったが、そのガジェット迎撃の際に無理な迎撃をしたため、相棒であるスバルへフレンドリーファイアをしそうになってしまったのである。寸でのところでヴィータがそれを防いだからよかったものの、それが当たればどうなっていたことか……
「ふ、副隊長、これはその、こういう作戦で……」
「何が作戦だ! 直撃コースだったぞ! もういい、二人とも……」
すっこんでいろ、ヴィータがそう怒鳴ろうとするも、その言葉は続くことが無かった。その防衛していたはずのホテルの入り口で爆発が起き、突如ガラスが割れて何かが吹き飛ばされてきたからである。ほとんどのガジェットを殲滅し、油断していた一同は突然の事態に驚く。その吹き飛ばされてきたのは真紅のアーマーを纏う戦士、ゼロであった。その体はバチバチと電流が走って音を立てており、ゼロを知る者たちは驚きを隠せない。
「ゼロ!? 大丈夫ですか!?」
「離れていろ、リインフォース。それと、すぐにこの周辺にいる人間を退避させろ」
「退避って、いったい何が……っ!?」
何とか立ち上がり、肩を押さえているゼロの言葉に、シャマルがそのゼロが吹き飛ばされてきた方へと視線を向ける。そこにいたのは1体のレプリロイド。
「あれは確か……」
「海鳴でゼロと闘った……」
「ほぅ? 俺の事は知られているらしいな。だがどけ、貴様らに興味はない」
いいながらゆっくりとその姿を見せるVAVAを見据えるシャマルとリインフォース。そして、獣形態だったザフィーラも人型形態へと変化し、構えを取った。ゼロの実力を知っているからこそ、ヴォルケンリッターたちはそのVAVAの強さを瞬時に理解した。負傷しているゼロを守るように空中にいたシグナムが、ヴィータが、地上にいたシャマルが、ザフィーラが、リインフォースが立ち塞がる。
「ククク、ほう? 俺とやるつもりか……? やめておけ、無駄だ」
VAVAから発せられる凄まじい殺気が周囲を支配する。その光景に実戦に慣れていないフォワードのメンバーたちは震えていた。実戦で戦ってきたのはその目的を遂行しようとするガジェットたち、すなわち機械。だが、VAVAのように明確な殺意を放つ存在と相対するのはフォワードたちにとっては初めての事。
「う、うわあああああっ!!」
「ティアナよせ!」
その恐怖を一番近くで感じ取っていたティアナがその手にあったクロスミラージュを構えた。ヴィータの叫びもむなしく、ティアナはそのトリガーを引いてしまった。そこから発射される弾丸。しかし、その弾丸をVAVAは避けることなく受け、爆発が起きる。しかし、VAVAには焦げ跡が付いた程度で損傷した様子はない。
「……人間ってのは本当に弱い生き物だな、なあおい?」
「あ、ああ……」
その一撃、ティアナは恐怖に駆り立てられたとはいえ、決して手を抜いた一撃ではなかった。しかし、それを受けたVAVAは全く効いていない。VAVAは肩のキャノンをティアナへと向ける。
「攻撃してきたってことは、やり返される覚悟があってのことだよなぁ? 人間」
「ひっ……」
「逃げろティアナ!」
「あばよ」
いつの間にかチャージされていたVAVAのキャノン。この瞬間、ヴォルケンリッターもVAVAへ向けて動きだすが、距離があるせいで間に合わない。ティアナはそのVAVAの殺気で動くことが出来ず、その場にへたり込んでしまっている。それ故に悟る、自分はここまでだ、自分は死ぬのだ、そう覚悟した。そして発射されるキャノン、その攻撃が当たる直前、そのティアナの前に何かが飛び出し、爆発が起きた。
「え……?」
「……無事か」
死を覚悟し、目を瞑っていたティアナがゆっくりとその目を開けた。晴れる煙と共にティアナの前に立つ1人の人物がいた。真紅のアーマーに黒いボディ、そして美しい金髪の長い髪。それは、ヴォルケンリッターの後ろにいたはずの男
「ゼロ、さん……」
ティアナの前には、自身の左腕を消失してもなお、ティアナを守るように立つゼロの姿があった。
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