魔法少女リリカルなのはStrikerS~紅き英雄の行方~   作:秋風

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11月中に投稿すると言ったな。あれは嘘だ

…はい、すみません。リアルが忙しくて手が回りませんでした
HDDのデータが飛んだことでやる気がガクッと下がってしまった故の現状でございますが、なんとか1話だけ完成したので投稿させてもらいました
今後の予定としては次は12月中ごろにでもと思っています
仕事
冬コミ
モンハン
ダークソウルⅡ
Fatego
こんだけやることがあると小説も書けないってもんですわ(おぃ
ちなみに、モンハンは絶賛フレ募集中です。是非一緒にモンハンしましょう。かなり弱いですが(汗

というわけで、今回もどうぞ


13「機動六課出張任務(後篇Ⅱ)」

 無事にロストロギアを確保した機動六課だったが、VAVAという襲撃者についての報告を受けたはやては万が一を考えて海鳴に一日泊るという結論を出した。その夜、部屋の一室でゼロはシエルにその襲撃者について聞くことにした。

 

「VAVA…そう名乗っていたのね?」

 

「ああ、間違いない。シエル、何か知っているのか?」

 

「ええ、エックスに関する資料を見ていた時に出てきたのを覚えているわ。詳細についても、水没した図書館のデータの中にあったはず…これね」

 

 そう言ってシエルは小型の端末から資料を引っ張り出して空中へと表示する。そこには確かにゼロと戦った襲撃者、VAVAの姿は映し出されていた。

 

「製造されたのはネオアルカディア創設以前の話…エックスやゼロが英雄と呼ばれる前の時代にいたそうよ。エックスとゼロはイレギュラーハンターとして活動していたけど、VAVAも元はイレギュラーハンターだった」

 

「元は…?」

 

「電子頭脳回路に異常があり、イレギュラー以上の残忍さを持っていたらしいわ。部隊でも問題を起こすことが多く、拘束されたらしいの。その後どういう経緯かは書かれていないけどその施設を脱走…何度もエックスの前に現れて戦った敵らしいわ…でも、その後の消息については書かれていないわね」

 

 そう改めてデータを見せられたゼロは遠い記憶の中で確かにVAVAに挑んだ記憶があった。しかも、その結果は敗北だった気がするとゼロは思う。

 

「VAVAは自分を修理した男が自分を『伝説の地の遺物』と呼んでいたらしい。これに心当たりはあるか?」

 

「伝説の地…? いいえ、それには心当たりがないわ」

 

「そうか…」

 

「……」

 

 そう答えたゼロからシエルは目を逸らしつつも、チラリと横目でゼロを見つめていた。アリサと話をしてからというもの、変にゼロのことを意識してしまう。自分にとってゼロは大切な仲間…だけのはずなのだが、どうしてこんなことになったのか。

 

「…? どうかしたか、シエル」

 

「え? う、ううん…なんでもないわ。なんでもないの…少し、疲れたみたい」

 

「…疲れているならもう休め。慣れない環境と日ごろの無茶で疲れが出たんだろう」

 

 そう言って部屋を出ようとするゼロだが、そこでシエルがゼロを呼びとめる。

 

「あの…ゼロ…」

 

「なんだ?」

 

「……ううん、なんでもない。おやすみなさい」

 

「…ああ」

 

 ゼロが部屋から出ていくのを見送って、シエルはベッドの上に倒れ込む。銭湯でアリサと話をして以来、ゼロの顔をまともに見ることが出来ない。いったい自分はどうしてしまったのだろうか? そうシエルは考える。

 

「シエル」

 

「…? クロワール」

 

 ベッドに顔を埋めていたシエルが声を聞いて顔を上げた。そこにはクロワールが宙に浮いている。

 

「どうしたの? 調子悪そうだけど…」

 

「ううん、平気よ。さっきも言ったけど疲れただけ」

 

「…ふーん、その割にはゼロのことを直視できてなかったわね」

 

 クロワールの言葉にシエルはドキリと顔を紅くして伏せてしまう。その様子を見てクロワールはカラカラと笑っていた。

 

「知っているわ。アリサから話は聞いたから…ゼロの事、ちょっと意識しているのね」

 

「…わからないの」

 

 わからない。そう口にしたのはいつ以来だろうかとシエルは思う。天才科学者である女性のクローンであったシエルの分からないことなどまったくと言っていいほどなかった。それなのに、今はこの自分の状態が分からないでいる。そんな様子を見て、クロワールは笑っていた。

 

「私、どうしちゃったのかしら…」

 

「シエルはきっと、変わってきているんだと思うわ」

 

「…え?」

 

「私がそうであるように…」

 

 シエルの疑念に、クロワールは静かに答える。変わろうとしている、とはどういうことなのかとシエルが思うと、クロワールは言葉を続けた。

 

「私はサイバーエルフ…レプリロイドのために生まれ、そしてレプリロイドのために死ぬ存在…けどね、最近、自分の中で私という存在は変わり始めている」

 

「変わり始める?」

 

「人間の食事をエネルギーに変換すること、ゼロに意見すること、こんなこと、以前の私では考えられないことだった。私はゼロのために生まれ、そして死ぬ存在…そう思っていた。でも、今は違うの…今の生活が永遠に続けばいい、平和な時間をずっと皆と一緒にいたい、そう思うの……でも、こんな考えはサイバーエルフとしては失格よね」

 

「クロワール…」

 

 そう言って笑うクロワールの言葉に、シエルはどう返していいかわからない。そんな様子を見たクロワールは「だからね」と、言いながらシエルの肩に乗る。

 

「シエルも、変わり始めているんだと思う。平和な今が、きっとシエルを良くしてくれる」

 

「……変わる。私が」

 

 シエルはクロワールの言葉を聞いて、銭湯でアリサに言われたことを思い出した。

 

――貴女はそろそろ、普通の女の子に戻ってもいいと思うわ

 

「変われるかしら? 私も」

 

「うん、きっと。一緒に頑張りましょうシエル」

 

「……そうね、頑張ってみる」

 

 そう言ってシエルは優しくクロワールを撫でるのだった。

 

 

 

 

深夜0時過ぎ

 

 

「……」

 

 ゼロは機動六課の面々を休ませ、1人警戒を続けていた。場所は別荘の屋根の上である。というのも、またいつ襲撃が起きるかは分からない。シエルにはクロワールがついているし、機動六課の面々もそう簡単にやられる心配はしていないが、それでも万が一のことがあるということで警戒を続けていた。

 

「……?」

 

 しかし、そんなゼロの耳に何か音が聞こえる。何かを打ち抜く音と、銃声…ゼロは不審に思い、その屋根を飛び降りると軽快な足取りでその音の元へと向かって行く。ゼロはZセイバーに手をかけながらその音の元を見た。そこにいたのは橙色の髪をツインテールに結った機動六課のフォワードメンバー、ティアナ・ランスターの姿だった。彼女はクロスミラージュを手に、その的へと幾重にも魔力弾をぶつけていた。それを見たゼロはそのZセイバーを鞘に納めてティアナに話しかける。

 

「こんな夜中に、何をしている」

 

「っ…!? 八神……さん」

 

「…ゼロでいい。質問に答えろ、こんな夜中に何をしている」

 

 ティアナは見つかってしまったと言わんばかりの表情でゼロを見ている。さらに、ゼロのその言葉に逃げられないと勘弁したティアナは口を開く。

 

「…自主練習です」

 

「なのはから、今日はこれ以上無理をせず休むように言われていたはずだ」

 

「……」

 

 ゼロの言葉に、ティアナは答えない。それはゼロの言うとおりだからである。無事にロストロギアを確保したフォワードメンバーを見てなのはは今日これ以上の訓練などをせず、身体を休めることをフォワードメンバーに促していた。ゼロもそれは聞いていたし、フォワード全員がそのなのはの言葉に返事をしていたはずである。しかし、ティアナはこうしてその言葉を無視して自主練をしていた。

 

「お前を見つけたのが俺ではなく別の誰かだったら、命令違反になるのは分かっていたはずだ。それとも、なのはたちが見ているはずがないとでも思っていたのか?」

 

「それは…」

 

「何を焦る? ティアナ・ランスター」

 

「!!」

 

 ゼロの言葉に、目を見開いてゼロを見るティアナ。ゼロはそれに気にせず言葉を続けた。

 

「命令を無視してまでの自主練習。よほどお前が何かに焦っていると見える…違うか?」

 

「……」

 

 ティアナが焦る原因の1つが目の前にいるゼロ本人なのだが、そんなことをゼロが知るはずもない。ゼロはため息を吐くとティアナに背を向けた。

 

「…自主練習は好きにしろ。俺はお前の上司ではないし、お前に何か言う資格はない」

 

 そう言ってきた道を戻ろうとするゼロに驚くティアナ。そんなゼロに対して、ティアナはどうして、という疑問が生まれる。

 

「なのはさんに、報告しないんですか…?」

 

「言ったはずだ。俺はお前の上司でも、管理局員でもない俺に口出しする資格はない…だが、これだけは言わせてもらおう。無理をして、なのはの信頼を裏切るな」

 

 そう言ってゼロは別荘に戻って言った。その場に取り残されたティアナはその手にあったクロスミラージュを強く握りしめる。

 

「無理をしてでも、強くならなきゃいけないのよ…最初から強い貴方に、私の気持ちなんかわからないわよ…!」

 

 そのティアナの声は、誰にも聞かれることなく夜風にかき消されるのだった。

 

 

 

 

「……見ていたのか、ヴィータ」

 

「…ん、まあな。アイツはアタシの部下だしさ」

 

 別荘に戻る道中、ゼロがそう静かに呟いた。その空からはグラーフアイゼンを手にしたヴィータが上から下りてくる。もっとも、服装はバリアジャケットではなくヴィータの好きな兎がプリントされたパジャマだが。

 

「…なのはに報告するのか?」

 

「しねーよ。お前がしないって言ってるのに」

 

「俺にはその義務がないだけだ」

 

「身内を嘘つきに出来るかっての」

 

 そうため息を吐くヴィータはグラーフアイゼンを待機状態に戻してゼロと歩き始める。

 

「なのははこのことを知っているのか?」

 

「いや、知らない。ティアナの自主練知ってるのはアタシと…相棒のスバルだろうな」

 

「その様子からするに、アイツが焦っている理由を知っているのか?」

 

「…まあな、すげー胸糞悪い話だよ」

 

 そう言って別荘に戻る道を歩きながらヴィータがティアナについてゼロに教えた。彼女は生まれてから既に両親はなく、家族は兄であるティーダ・ランスターだけであった。そして、ティーダは管理局員であり、ティアナにとっては憧れの存在…ティアナにとって全てといっても過言ではないだろう。だが、そのティーダは任務中に次元犯罪者の凶弾に倒れ、帰らぬ人となったのだ。それだけなら、まだ話は簡単だった…だが、その兄の葬儀でティアナは兄の上司からとんでもない言葉を聞かされた。

 

「ティアナの兄の上官がこう言ったんだとよ『次元犯罪者を逃し、命を落とすなど、とんだ無能だ』ってな…」

 

「……」

 

「アイツはきっと、証明したいんだ…自分の兄貴の魔法は無能なんかじゃないって。だからずっと隠れてでも強くなろうと努力してる」

 

「どういうことだ?」

 

 何故、ティアナの自主訓練が兄、ティーダ・ランスターが無能でないという証明に繋がるのか? ゼロの疑問に、ヴィータは頭をかきながらため息を吐く。

 

「アイツの今の戦術や戦闘スタイルなんかはさ、全部兄であるティーダ・ランスターの物なんだ。武器も同じく銃だったし」

 

「…アイツが努力を重ねているのは理解したが、それはアイツの焦りとどう繋がる?」

 

「んー…私の考えなんだけどさ、アイツ多分周りに嫉妬してるんだと思うんだ。それに気がついてて、そんな自分が嫌で多分焦ってる」

 

「嫉妬…?」

 

 ゼロにはいまいちピンと来ない感情だった。ヴィータもそれを察したらしく、苦笑する。

 

「ゼロにはなさそうだもんな、そういうの。アイツはさ、多分部隊の中で自分が一番下だとか思ってんだ。実際、経歴や才能だけを見ちまえば否定はできないんだけどさ…」

 

 ヴィータの話では相棒であるスバルは陸士学校を首席で卒業しているという。ティアナも同じく主席なのだが、実戦で役に立つ実技についてはスバルの方が若干上。さらにエリオやキャロはまだ幼くも普通の魔導士にはない才能がある。

 

「んで、極めつけは多分ゼロ、お前への嫉妬だよ」

 

「俺への嫉妬?」

 

「ただでさえ実力差が隊長陣とフォワードで差があるのに、お前の実力見ちまったら自分の実力について疑っちまうよ…あれだけ訓練してるのに、自分は成長してないんじゃないかってな」

 シグナムの戦いのとき、その戦いをフォワードメンバーの中でただ1人、畏怖したような眼差しでティアナがゼロを見ていたのをヴィータは気がついていた。

 

「…お前から見て、ティアナはどう思う」

 

「4人ともあんまり変わらない…まだまだ、甘い部分もある。ただ、ティアナは確かに4人の中では成長が遅いのは確かだと思う」

 

「それ故にあの焦り、か」

 

 才能はあると思うけどな…と、ヴィータはどこか心配そうな様子で呟いていた。だが、そこまで分かっているならば…とゼロの中に当然の疑問が生まれていた。

 

「だが、そこまで分かっているなら何故伝えない?」

 

「言っても多分聞いてくれない…少なくとも、今のティアナは」

 

「……」

 

 沈んだ表情をするヴィータ。それを理解しているのにも、何か理由があるんだろうと思うゼロだったが、ゼロはこれ以上ヴィータに何も聞かなかった。そんな話をしているうちに別荘に戻ってきたゼロとヴィータ。ヴィータは少し眠そうに目をこすりながら階段を上がる。

 

「んじゃ、ゼロ…お休み。お前もあんまり無理すんなよ?」

 

「…無論だ。はやてに釘をさされている」

 

「ははは、なら安心だな」

 

 そう言って部屋に戻るヴィータを見送った後、ゼロは警戒を続けるのだった。

 




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