魔法少女リリカルなのはStrikerS~紅き英雄の行方~   作:秋風

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沢山の方から「待ってました」という声を頂き、非常に嬉しく思います。そして嬉しさ余って亀が一瞬だけトランザムして連続投稿……これ、モチベーション持つのだろうか(汗
実は、今回の海鳴編は一番長いです。多分5話分くらいいくんじゃないかな…ホテルアグスタはいつになるのやら…

仕事で忙しかったり、Fategoで遊んでて忙しかったり、カードゲームで遊んでて忙しかったりしますが、とりあえず完結目指して頑張ります

後、おこがましくはありますが、感想と評価、お待ちしております…先ほど感想欄でも「待ってました」という声が多くあり、ありがたく思いましたが、それと同時に話の感想もらえてねぇ…とorz状態になってました
評価に関しても一言が必要なのでアレなのですが、よろしければ頂けると作者の執筆スピードが1.3倍~1.5倍ほど上がります。
これからもこんな作者と、この作品をよろしくお願いいたします


海鳴篇
09「機動六課出張任務(前篇)」


「出張任務?」

 

「せや、今日早朝に来てもらったのにはそれの説明をしようかと思うてな」

 

 早朝に呼びだされたゼロは訓練場には行かずにはやてのいる部隊長室を訪れていた。しかし、その部隊長室にいるはやての恰好はいつもの機動六課の服装ではなく私服であり、その机の下には旅行用の鞄らしきものが置かれている。はやての話では、この世界ではない管理外世界で感知されたロストロギアの回収が今回の任務内容となるらしい。

 

「何故機動六課にその依頼がくる?」

 

「聖王教会…この部隊の立ち上げに協力してくれた人直々の依頼なんよ。そもそも、その管理外世界は地球。私達機動六課の面々は地球出身の人も多いからって理由もあるんやけど…なにより、聖王教会の人も多忙ってことで…」

 

 つまりは厄介事を押しつけられたということである。はやての性格上、その依頼も断るに断れなかったのだろう。そう何となく察したゼロは小さくため息をつく。

 

「それで、その出張任務に出る人間は誰が行く?」

 

「私と、リィンフォースとリィン、スターズ、ライトニング。後シャマルとザフィーラ…それに、ゼロとシエルさんも付いて来てもらおうかと」

 

 ほぼ、機動六課の主力メンバーたちである。そんな主力メンバーがこの世界で欠けてしまった場合、もしレリックが発見されればどうなるかわかったものではない。

 

「俺はこの世界に残ろう」

 

「へ? なして?」

 

「機動六課が機能しなくなる。もし、その任務中にレリックが発見されたりしたらどうするつもりだ」

 

「そこは大丈夫。グリフィス君に指揮を任せているし、陸士108部隊が請け負ってくれる。それに、転送ポートも地球の方は手続きの要らない場所にあるから」

 

 よほど、地球にゼロを連れていきたいのだろう。ゼロの不安要素についてははやても既に同じことを考えているらしく対策済みのようだ。

 

「わかった…シエルにも伝えておく。出立の時間は?」

 

「今から2時間後の9時。あと、今回の任務には『あの人たち』も連れて行くから」

 

「何故だ?」

 

 あの人、とはやてが言うとゼロもその表情を変えた。何故、このタイミングではやての言うあの人を連れてくる必要があるのか。

 

「今回の任務は半分は任務やけど、もう半分は休暇みたいなもんなんよ。だから、フェイトちゃんにも決着つけさせたいやろ? 向こうにはリンディさんたちもおるんよ」

 

「……なるほど、そういうことか。了解した」

 

 こうして、ゼロは部隊長室を後にするのだった。

 

 

機動六課前 トレーラー

 

 

「地球?」

 

「そうだ。この世界でいうのなら『管理外世界』という場所に相当する…俺が、最初に『送られた』世界だ」

 

 ゼロの武器改良に没頭するシエルにゼロはそう説明する。そう、ゼロがラグナロクでバイルを打倒して宇宙に放り出された後、それを見守っていたマザーエルフによって飛ばされた世界。それが地球。はやてと出会い、ヴォルケンリッターと出会い、そしてなのはやフェイト…数多くの人間達と触れ合った世界でもあった。

 

「お前もここの所ずっと研究漬けになっている。気分転換になるだろう」

 

「でも、今研究がかなりいいところまで…」

 

「そう言ってもう2日も寝てないじゃない、シエル。いい加減休まなきゃ」

 

 ここ数日、シエルは碌な休みを取っていない。というのも、ゼロがこの世界で動きやすいようにするためにシエルはそのゼロの持つ武器の改装に没頭していた。ゼロのため、ということで協力者も得てやたら気合の入っているシエル。休めと言っても聞かないシエルに困っていたゼロとクロワールにとっては今回のはやてから言われた出張任務についてはいい口実だった。

 

「それに、地球にはたくさん美味しいものがあるし、見る所もいっぱいあるわ! エリアゼロのためにもなると思うの!」

 

「…美味しい物についてはお前が食べたいだけだろう」

 

「そ、そんなことないわよ? 甘い物だって頭の回転率を上げるんだから! 特に翠屋のケーキは…」

 

 以下、クロワールの地球の美味しい食べ物談が続き、シエルもそんなクロワールを見て苦笑し、出張任務に行くことを了承する。ちなみに、このクロワールが食事をするということについてはシエルでも何故彼女が食事を出来るのかという理由は分かっていない。エネルゲン水晶の代わりとなるものが人間と同じ食事というのは他のサイバーエルフにはないもので、クロワールだけが食事で人間の食事を食べることが出来る。仮説としてはマザーエルフの与えた能力によってクロワールの機構が変化したのではないかということだがそれも確証があるわけではない。当の本人が問題ないようなのでいいのだが

 

「では、準備をしておけ。2時間後に出る」

 

「ええ、わかったわ」

 

 

 

 

 

 

第97管理外世界 銀河系第3惑星『地球』

 

 地球は、「地」という字・概念と「球」という字・概念でそれを表現している。英語やラテン語など他の言語でも多くは「大地」を表す語が当てられている。太陽系の惑星のひとつであり、その形はほぼ回転楕円体で、赤道の半径は6378kmほど。極半径は6357km。太陽からの平均距離は1億4960万kmである。惑星についての説明はさておき、その星ははやて、なのはにとっては生まれ故郷であり、フェイトにとってもその星は自分の故郷である。そして、ゼロが初めて訪れた自分のいた星以外の惑星でもあった。

 

「太陽が1つ…」

 

「綺麗な緑…」

 

 しかし、驚きを隠せないのがその地球に始めて訪れたフォワードメンバーの4人、そしてシエルである。場所は今回の地球にいる協力者が保有する別荘で、その別荘の前から近くの街を一望できる崖でその面々が驚いていた。現在は到着直後と言うことで小休憩が取られており、はやてと、ヴォルケンリッターは別ルートで「ある人」たちと共に2つ目の転送ゲートを利用しているため、その場にいる地球出身者はなのはとフェイトのみである。ゼロは荷物を降ろしていることでシエルの近くにおらず、シエルもその世界との時差ボケを直すためにその風通りのいい場所をフォワード達と眺めている。

 

「すごい…」

 

 そんなシエルにとって、地球の景色は衝撃的だった。見える街の整備された建物や家、道路。そして自分の周りにある、機械制御に頼らなくても自立する木々や花々。さらにその街に隣接して見える青い海…自分の住む星と似ているが、その『雰囲気』におもわず圧倒された。いつか、自分達のエリアゼロもこんなふうになるだろうかと。そんな様子のシエルに、近くにいたフェイトがクスリと笑って声をかける。

 

「どうかな、シエル。海鳴市は」

 

「はい…びっくりです。ミッドチルダとはまた違う雰囲気がありますね」

 

 実は、フェイトとシエルは結構仲がいい。元々人間との会話に慣れていないシエルを最初に助けたのがフェイトで、シエルも良く助けてもらっているため会話することが多い。一方のフェイトもシエルには話してはいないが、シエルと自分が似たような存在ということで、少しシンパシーを感じているのだ。

 

「気に入ってもらえて良かった。エリオやキャロも喜んでいるみたいだし」

 

 そんなことを話していると、紅いスポーツカーが猛スピードで走ってきて機動六課メンバー達の前に止まった。

 

「あ、あれは…」

 

「なのは! フェイト!」

 

「「アリサ(ちゃん)!」」

 

 金髪のショートカットの女性がその車から降りてきた。その女性は車の扉を閉めるとなのは、そしてフェイトの2人へと駆け寄った。

 

「久しぶりね、2人とも!」

 

「うん! アリサちゃん久しぶり~!」

 

「元気そうだね」

 

 そう再会を懐かしむ3人だったが、そんな時間はそう長くは続かなかった。次の瞬間、アリサの視線の先にある人物が目に映ったからだ。言わずもがな、ゼロである。その次の瞬間、脱兎のごとく駆け出したアリサが高いジャンプをして某特撮バッタヒーローのように飛び蹴りをゼロめがけて撃ち放つ。その表情は心なしか、怒っているようにも見える。

 

「ゼ~ロ~!」

 

「…!」

 

 が、しかし、当のゼロはその様子を見ておらず、反射的にその殺気に反応してその足を受け止めて受け流した。その結果、アリサは宙を舞って近くの茂みへと突っ込むのだった。

 

「きゃあ!?」

 

「……アリサか?」

 

 その茂みに突っ込んだ人物を見て、ようやくゼロがその人物が誰か理解してその茂みに突っ込んだアリサを引き起こす。

 

「他に誰がいんのよ…というか、何するのよ、痛いじゃない」

 

「それはお前が蹴ってきたからだ。それと、いきなり何をする」

 

「10年前に突然私やすずかの前からいなくなって、そのセリフはないんじゃないの?」

 

 理不尽だ…と、なのはとフェイト他、フォワードメンバーは突っ込みを入れるが、決して口には出さなかった。それに、アリサが本当にゼロのことを怒って蹴りを入れに行くなんてことをしないのはなのはやフェイトにはよくわかっている。彼女なりにゼロとの再会喜んでの行動だったのだろうと推測する。魔力を持たないアリサ、そしてすずかはゼロとの別れはあまりにも突然だった。特に、すずかの場合ははやて並みにショックを受けてしばらくは立ち直れなかった。それについての一撃という意味でアリサは蹴りを入れに行ったのだろう。結果として、それは当たることはなかったが

 

「……久しぶりね、元気そうじゃない。それに、やっぱり生きていたのね」

 

「おかげさまでな」

 

「すずかに後でちゃんと謝っときなさい。アンタが居なくなってずっとショックだったんだから」

 

「……ああ」

 

 何故、ショックを受けていたのかはわかっていないゼロだが、ちゃんとした別れを言わなかったことについては悪いと思っているので、謝罪は必要だと判断するゼロ。それを見たアリサは「よろしい」と満足そうに笑みを浮かべて立ちあがった。

 

「ええと、アリサ。そろそろみんなにアリサの紹介したいんだけど」

 

「そうね。悪かったわ」

 

「こちらは今回の遠征任務協力者で、別荘を貸してくれる…」

 

「アリサ・バニングスよ。なのはとフェイトの幼馴染でもあるわ。よろしくね」

 

「「「「よろしくお願いします!」」」」

 

 フォワードが元気よくアリサの挨拶に返し、フォワードメンバーはなのはの指示で自分達の持ってきている荷物や任務で使う資材を運び始める。手伝おうとするゼロだったが、そこで携帯電話が鳴る。着信元ははやてである。

 

「もしもし」

 

『あ、ゼロ? アリサちゃんそっち着いた?』

 

「ああ、先ほど。今はフォワードが資材や荷物を別荘に入れている」

 

『後の指示はなのはちゃんに任せてるからアリサちゃんと一緒にシエルさんも連れてすずかちゃんの家に来てくれへん?』

 

「了解した」

 

 そう言って電話を切るゼロはアリサにはやてに言われたことを伝える。アリサは了承して車の出す準備を始めた。それを確認したゼロはシエルに声をかける。

 

「シエル、これからアリサの車を使って移動する」

 

「ええ、わかったわ」

 

「ゼロ、準備出来たわよ。で、貴方がシエルさん?」

 

「あ、はい! シエルです」

 

 そう挨拶するシエル。そんなシエルにアリサは「貴女がねぇ…」と、なにやらシエルをじっくりと眺めている。

 

「あの、何か…」

 

「あ、ごめんね…なんというか、ゼロから話を聞いていたから、私達より年上かと」

 

「そのことは後で話す。行くぞ」

 

 こうして、ゼロ達はその場を後にするのだった。

 

 

 

 

月村邸

 

「ゼロさん!」

 

 すずかの家に到着するやいなや、ゼロに紫色の髪の女性が飛び込んできた。思わず抱きとめるゼロ。その抱きついてきた女性が嗚咽を漏らしているのが分かった。

 

「すずか、か?」

 

「ゼロさん…! ゼロさん…!」

 

 突然のことに驚くゼロだが、それ以上に驚いていたのがシエルである。ゼロに抱きつき、泣きながらもその再会を喜ぶかのように笑顔を見せる女性。そんな様子を見ていると、横にいたクロワールがシエルのことを呼ぶ。

 

「シエル、シエル?」

 

「あ、クロワール…どうしたの?」

 

「大丈夫? ボーっとしてたけど」

 

「え、ええ…ちょっとびっくりしただけ」

 

「まあ、そうよね。すずかはゼロのこと好きだからあの反応は当然よね」

 

 クロワールの言葉に、シエルの胸がどこかチクリと痛んだ。どうしてだろう、と首を傾げているシエルにそれを理解したクロワールは苦笑する。

 

「シエルもやっぱり科学者だけど『女の子』なのね。ちょっと安心したわ」

 

「…え?」

 

「なんでもないわ♪」

 

 そうクロワールは悪戯に笑みを見せるのだった。

 

 

 

 

 

「ゼロとシエルお姉ちゃんだー!」

 

「久しぶりね」

 

「ああ、そうだな…アリシア、プレシア」

 

 すずかの事が落ちついた後、すずかははやてたちと共にアリサの別荘へ向かった。すずかは少し名残惜しそうだったが、ゼロの「また後で会おう」と言う言葉に嬉しそうにしていたのは言わずとも分かる話である。さて、その月村邸の一室にゼロとシエルはいた。はやてが連れてきたある人達…つまり、プレシア、そしてアリシアと再会していた。今回2人を連れてきたのには理由がある。そろそろ、フェイトとプレシア達を会わせようというものであった。何故ここに2人を呼んだのかというと、この世界にフェイトの義母であるリンディ・ハラオウンがいるからだ。はやてがプレシアたちについて極秘でリンディに報告すると、是非1度会いたいということである。最初ははやても困惑したが、リンディが「管理局員としてではなく、フェイトの母親として会いたい」ということを言ってはやても了承した。プレシアも現在のフェイトの母をしているリンディと会う必要はあると考えていたためプレシアはアリシアと共に地球に来ることを了承したのだ。

 

「プレシアさん、大丈夫ですか?」

 

「……大丈夫、といえば嘘になるわね。ちょっと緊張しているわ。リンディ・ハラオウンに何を言われるか…ってね」

 

 一度捨ててしまった娘に会いたい…そう考えていたプレシア。だが、今のフェイトの母はプレシアではなくリンディである。リンディからすれば、今更どの面を下げて会いに来たのか、という心境かもしれない。

 

「リンディ・ハラオウンはそんな人間ではないと思うがな」

 

「管理局員のリンディ・ハラオウンはそうかもしれないわね…でも、母親のリンディ・ハラオウンはまた別なのよ」

 

 同じ母親と言う立場だからこそ、プレシアも自分が逆の立場だったら…と考えてしまうのだろう。そんなことを考えていると、扉が開きメイドが扉の前に立っていた。

 

「プレシア様。リンディ・ハラオウン様がお着きになりました…」

 

「ありがとう、今行くわ」

 

 そう言ってプレシアはメイドの後に続き、ゼロもその後に続くのだった。

 




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