今まで更新が出来ず、申し訳ありませんでした。
3週間に及ぶ実習が終わり春休みに突入しましたので、ようやく執筆に使える時間が出来ました。
これからは時間を見つけて執筆を進めていきます。
では、約26日ぶりに書いた物語をお楽しみください。
執筆の腕が落ちていなければいいんですがね…
では、どうぞ!
「うーむ…」
白玉楼の縁側に腰を下ろし、じっと紙面に目を落とす。伝統のお惚気ブン屋が俺の魅力を新聞に書き連ねていた事件が発覚して以来、新聞のチェックと言う意味も含めて俺も文々。新聞を購読するようにした。今まで文の事だから心配ないだろうと思って一切目を通してなかったことが災いして、いつの間にかお惚気新聞となってしまった。このままじゃあ「清く正しい」の通り名がガラガラと音を立てて崩れてしまう。俺も購読しているというと言う事にすれば、文も少しはマシな新聞を書いてくれるだろう。
縁側から投げだした足をバタバタと動かし、マグカップに注がれた真っ黒な液体をすする。緑茶もいいけど、やっぱり朝の一杯はコーヒーに限るな。スッキリと目がさえるし、気分も晴れやかになってくる。今日から始まる一大プロジェクトのため、この1週間俺は幻想郷中を飛び回っては多くの仲間に声をかけて協力を依頼し、数多くの協力を得る事が出来た。それを取り仕切る俺が眠気でぼーっとしていてはみんなに申し訳ないからね。
「ふふっ、新聞にコーヒーなんて、ますますお父さんっぽくなってきているわね」
不意に声が聞こえ、声がした方に視線を向けると、隣に幽々子様が腰を下ろして面白い物を見ているかのような表情を浮かべていた。
「お父さんって…俺はまだ19歳ですよ」
「でも子供がいるんでしょ。…え、19歳?18歳じゃなくて?」
「19歳ですよ。幻想郷に来た時点では18歳ですが、それから1年以上経過していますからね。俺の誕生日は2月22日!プレゼントを用意しておいてくださいね!」
ウィンクを交えて幽々子様にそう伝えた。本当は去年の12月に命を落として幽霊になったから成長は止まっているため、享年である18歳以上年を取ることは無い。しかし、毎日毎年を一生懸命生きていることを実感するため、そして人間として生きていたころを忘れないために生前と同じように誕生日を過ぎたら1歳ずつ年を増やしていこうと決めたのだ。
「気が向いたらね~」
幽々子様はそのような呑気な返答をして、傍らに置かれた古い新聞を拾い上げて一面に目を通した。
「白玉楼の危機、食費が尽きた館に明日はあるのか…ねぇ」
「ああ、それは5日くらい前の新聞です。この前食糧が底をついたことを文に話したときにメモを取っていたんですよ。きっとその時のメモを基にして書いたんでしょうね。しかも紙面で俺を犯人扱いって。事実だけどなんか胸にグサッと突き刺さる…」
まったく、新聞で俺の魅力を書き連ねていたのに今度は犯人って…。夫を犯人呼ばわりするなんて初めて読んだときはあまりの衝撃に飛び上がったぞ。でも、この新聞を読んだからこそ白玉楼の現状について知り、快く協力要請を無償で受け入れてくれたのかもしれない。困ったときは助け合う。そんな優しい友達を持てて本当に有難い。
マグカップを口元に近づけ、残っていたコーヒーをグイッと飲み干した。そして新聞を畳み、膝の上に乗せる。
「さて、俺は今から出かけてきます。帰りが遅くなるかもしれませんが昼食は妖夢に任せておりますのでご安心を。それから、心華の事をよろしくお願いしますね」
「分かったわ。いってらっしゃい」
心華は今妖夢と一緒に枯山水の中庭で遊びながら庭掃除をしている。大丈夫だとは思うが、俺が出かけている間に何かあってもいいように幽々子様に任せておこう。お気に入りのゴーグルを目の位置に合わせ、大きく伸びをした。そして幽々子様に頭を下げ、大空の中へと白玉楼を飛び立った。さあ、目指すは博麗神社。お賽銭は忘れずに…っと。
冥界と顕界を隔てる結界を抜けて空を飛んでいると、お目当ての博麗神社が見えてきた。今霊夢さんは境内を掃除してはいなさそうだ。とすると縁側で休んでいるのかな。久しぶりに博麗神社を訪れたからなんだか緊張する。
「おや…」
今の時間博麗神社にいるのは霊夢さんと萃香さんの2人だけだと思っていたが、その2人以外にもう2人いる。上空から見えるのは、顔を赤く染めた萃香さんに絡まれている文と、霊夢さんにちょっかいをかけている紫さん。なんか幻想郷最強クラスの強さを持つ4人が集まって騒いでいるから、邪魔するのも悪いし、先にお参りを済ませちゃおうかな。
賽銭箱の前に移動して財布から小銭を取り出し、わざと大きい音がするように賽銭箱の中に投げ入れた。そしてこれまた大きい音がするように鐘を鳴らし、柏手を打って目を閉じた。お願いすることはもう決まっている。「無事にレストランが完成しますように」だ。
すると、ドタドタというこちらに猛スピードでかけてくる足音が聞こえてきた。「お賽銭!!」という声と共に目をキラキラと輝かせて目の前に現れたのはここ博麗神社の巫女、霊夢さんだ。
「あら欧我じゃない!お賽銭ありがとうね!」
普段の様子からはイメージできないような満面の笑みを浮かべながら俺の手を取り、ブンブンと握手を交わす。その変わり様には毎回戸惑うが、その戸惑いを表情に出さず、いつも通りの調子で言葉を発した。
「いえいえ、いつもお世話になっておりますので。ところで萃香さんに用事があるのですが…」
「あの酔っ払いね。こっちにいるわ。それよりもお茶を飲んでいきなさいよー!御馳走するわ!」
「ああ、はい。ではお言葉に甘えていただきましょう」
若干強引に引っ張られる形で霊夢さんの後について境内の奥の方にある居住用の建物の方に向かった。なんか文は強引に萃香さんに酒を進められているけど一体どうしたのだろうか。
「みなさんこんにちはー」
縁側にいる3人に向けて挨拶をすると、視線が一斉に俺の方に集中した。3人は口々に挨拶を返してくれたが…
「欧我~!!」
「文ったら…。いいよ、おいで」
文は俺の名前を叫びながら萃香さんを振りほどいて駆け出し、俺の胸に飛び込んできた。文の身体を受け止め、勢いを無くす意味も込めてクルクルとその場で回転しながらぎゅっと抱きしめる。やっぱり文を抱きしめているこの瞬間が一番幸せだな。
「どうしたの?あなたが博麗神社に来るなんて珍しいわね」
「まあね。ちょっと萃香さんに用事があって」
「えっ、私に会いに来たんじゃないの?」
「うん、神社に文がいるとは思わなかったから。でも、こうして会うことができて幸せだよ」
「私もよ、欧我」
「おーい、ラブラブなところ申し訳ないが、私に会いに来たんだろ?」
2人で笑顔を浮かべていると、不意に萃香さんの声が聞こえてはっと我に返った。いけない、2人だけの世界に入り込んでいた。文は赤くなった顔を見られまいと俺の胸に顔をうずめている。仕方ない、このまま話を進めるか。
「ええ。以前お願いしていた通りやってほしいことがありまして」
「ああ、あれね。と言う事はついにレストラン建築がはじまったってことだね!楽しみだなぁ、みんなで集まってワイワイと酒を…」
萃香さんはそう言いながら楽しそうな笑顔を浮かべる。おそらくその時の様子をイメージしているのだろうか。
「レストラン?また何か面倒なこと始めようとしているのかしら?」
あ、霊夢さんいつの間にか普通に戻っている。
「いえ、違いますよ。新聞見ましたか?ちょっと色々あってお金が必要なので、白玉楼の近くに店を立ててお金を稼ぐんですよ。それがレストランです」
「お…お金!?」
あ、もしかして言っちゃいけなかった?なんか目をキラキラと輝かせている…。
「欧我!ちょっと私にもお金を分けなさいよ!」
「そんな無茶な。レストランで働かないと渡せないなぁ」
「そうよ、霊夢。落ち着いて」
あ、何時の間にか紫さんも話に加わっている。そして霊夢さんと2人で口喧嘩を始めちゃってるし…。なんだこの状況。面倒なことに巻き込まれないうちに萃香さんを連れて人間の里に行こう。
「萃香さん、放っておいて行きましょうか人里に」
「うん、そうだね」
「じゃあお願いしますね。文も来る?」
そう言って未だに顔をうずめたままの文に声をかける。俺の声を聞き、文はゆっくりと顔を上げた。
「いいの?」
「もちろん。新聞のネタになるかもしれないよ」
その直後文は嬉しそうな満面の笑みを浮かべた。この嬉しそうな笑顔を間近で見て心がドキッとしてしまったのは文には黙っておこう。
「行きます行きますっ!まさか欧我がネタを提供してくれるなんて!では早速行きましょう!」
嬉々とした表情でそう叫ぶと元気よく空へと飛びあがって行った。いや、俺がネタを提供するのはこれが初めてじゃないんだけど、そんなに喜んでくれるなんて俺もうれしいよ。えへへ。
「じゃあ俺達も行きましょうか」
「鴉天狗に追いつけるのかなぁ」
文の後を追い、俺達も博麗神社を後にした。
物語の中で欧我君の誕生日が出てきましたね。
どうして2月22日にしたのかというと、ハーメルンに幻想郷文写帳を投稿した日が2月22日だからです。
ハーメルンで欧我君の物語が始まった日を欧我君の誕生日としました。
本当のことを言うと欧我君を生み出したのはこの日よりも前なんだけど、その日がいつか思い出せないからね、うん。
っていうか、ハーメルンで活動を始めてあと2日で一周年か。
一年、あっという間だったなぁ…