初めに言っておきます。
文さんがものすごくキャラ崩壊しています。
勢いに任せた結果がこれだよw
ま、まあいいや。
では後編 -文の甘えタイム- をどうぞ!
縁側に座って小傘達と話していると、何やらものすごいスピードでこちらに走ってくる足音が聞こえた。その直後…
「おーうーがぁー!!!」
「きゃん!」
「ぶへっ!?」
その声と共に文が胸に飛び込んできた。その勢いで小傘と心華が弾き飛ばされたけど、文はそのことに気づいていないようだ。弾き飛ばされた2人は打ち所が悪かったのか伸びちゃっている。猛スピードで飛び込んできた文はそのまま胸にすりすりと頬ずりをし始めた。
「ど、どうしたの?大丈夫?」
「ん~、私は大丈夫れすよ~」
そうは言ったものの呂律は回っておらず目はうつろになっている。それよりも文から漂う酒の匂い…。間違いない、文は思いっきり酔っぱらっている。鴉天狗である文をこれほどまで酔わせる事が出来るのは、鬼である萃香さんと勇儀さんしかいない。
「大丈夫って、かなり酔っているじゃないか」
「にゃぁ~ん」
猫の鳴きまねまで飛び出す始末。こりゃあじゃれる猫と同じじゃないか。いや、それ以上か?
「ちょっ、文…」
「文ちゃんと呼んでくらさい!」
「えっ!?……あ、あああ文ちゃん?」
「うふふふ~よくできました」
文は笑顔を浮かべると俺の頭をいい子いい子と撫でる。文に撫でられるのはあまりないからとっても嬉しいんだけど、これはさすがに酔い過ぎだろう。いつもの文の姿からは考えられない。中身だけ一気に幼児化したような言動に、甘えられる嬉しさと突然予想外の出来事に見舞われたことに対する混乱も合わさって頭の中でグルグルと渦を巻く。
「え、ねえ文…ちゃん、どうしたの?」
「どうしたのって?私は欧我の、何?」
「えっ?……つ…妻」
「そーよ。欧我の妻はこの私。だから思いっきり甘えたっていいでしょ?」
そう言うと今度は俺の身体を抱きしめて俺の頬に頬ずりをし始めた。頬に文のほっぺの柔らかな感触が伝わり、髪の甘い香りが鼻孔をくすぐる。そんな刺激に、一気に心臓の拍動が激しくなった。
「まったく、仕方ないな」
その一言で文の気持ちを読み取ると、優しく文を抱きしめ返した。文だってたまには思いっきり甘えたいんだね。
しかし、その光景を会場に集まったみんながニヤニヤしながら見ているのに気が付いて、顔が一気に真っ赤に染まる。
「むぅ~、見てんじゃないわよ!私の…ひっく…見世物じゃないんだからぁ~!」
「ちょっ、文ちゃん抑えて抑えて!」
こりゃあ部屋の中に連れて行った方が良いんじゃないかな?俺自身みんなの視線から逃げたいと思っているし、こんな文の姿を見られたくないという思いもある。それに、みんなに見られている中ではいつ何時文が酒の勢いに任せて暴れ出すか分からない。よし、誰もいない部屋の中に避難しよう。
文の手を握り、立ち上がって部屋の方に引っ張った。
「ほら、文ちゃんこっち」
「あー分かったぁ。欧我、もしかして私と…」
「そんなんじゃないから!」
思いっきり酒に酔って豹変した文を連れて白玉楼の一室に入った。そして文の方を振り返った途端…
「それぇ!」
「うわっ!?」
突然文が抱き着いてきてそのまま力を加える。不意を突かれたためその力を受け止める事が出来ず、畳の上に押し倒されてしまった。畳に打ち付けて腰が痛む。しかし、俺の気持ちなんか考えもせずに胸の上で頬杖を突いてじっと俺の顔を見つめながら、俺の頬や鼻を指で突っついたり耳を引っ張ったりしてくる。こんな文は今まで見たことが無い。
「えへへ~、欧我~」
「ちょっ!やめふぇっ!」
俺の懇願もむなしく、文は頬を突っつく指を止めてはくれなかった。それだけではなく、頭を撫でたり耳たぶを摘まんだり頬を引っ張ったりとやりたい放題。逆にどんどんエスカレートしていく始末。そんなに俺の顔で遊ぶことが楽しいのかと聞きたいくらい文は笑みを浮かべていた。しばらく遊ばれていると、こんどは何故か頬をぷくーっと膨らませる。
「ねえ欧我もやってよー」
「はいはい」
両腕を上げて文の頭をよしよしと撫でたり、柔らかくて張りのあるほっぺをすりすりと擦ったり突っついたりすると文は「えへへへ~」と言いながら満足そうで気持ちよさそうな笑顔を浮かべる。その普段は見せないような笑顔を見て思わず可愛いと心の中で叫んでしまった。くそっ、理性を失ってはいけない。あくまでペースを崩さないように…
「あ、そうだー。ねぇあれをやってみない?ほらー、早苗さんが言っていた何とかゲームっていう…」
そう言いながら懐から何やら細いものを取りだし俺の口にくわえさせた。その行動と何とかゲームというワードを聞き、何がしたいかを理解した途端顔が真っ赤に染まっていった。
そ、そんな!?ま、まさかあのポッキーゲーム!?
「ちょ、ちょっとまって!今日は11月11日じゃないし、それにこれはポッキーじゃなくてスルメ…」
「細かいことはいいのよ!ほら、始めるわよ」
俺の言葉なんかお構いなしに文はやる気満々のようだ。酔いが回ってきたのか先ほどよりも目はうつろで顔も真っ赤だ。しかもいつもより少しテンションが高い。
もうどうにでもなれ。俺は諦めてスルメを口にくわえ直し、目を閉じた。
「んっ!?」
しかし、その直後唇同士が重なり合った感触に驚いて思わず目を見開いた。目を見開くと間近にトロンとした文の目があり、その光景がドキドキに拍車をかける。
その目が閉じられたかと思うと…
「んんっ!?ん~~っ!!」
口の中に文の舌が入り込んできた。そのいつもより激しいキスをされたのはわずか数秒だったが、驚きと混乱とドキドキによってかなり長く感じられた。唇が離され、2人の口の間を細い線がツーっと繋ぐ。
「えええええっ!?ちょ、ちょっと文ちゃん!?」
「はぁ、美味しかった」
「ちょ、ちょっと…」
俺の身体に馬乗りになり、満足そうな笑みを浮かべる文。このままいったら理性が保てなくなる。ここは一旦落ち着いて…
「まったく、やり方が違うよ」
え、俺今なんて言った!?明らかに自分の気持ちとは全く違うことを言っていなかったか?
文を身体の上から降ろし、向かい合わせで座らせた。
「今からやり方を教えるからスルメを口にくわえて」
心の中では一旦離れて落ち着こうと願っているのに、なぜか自分の言動を制御することができない。今まで見てきた文の甘えてくる言動に影響され、もう自分のブレーキが利かなくなっていた。
文はもう1本のスルメを取り出すと口にくわえてじっと俺の顔を見つめてくる。ああもう、なんて可愛いんだ…。
「じゃあ、目をつむって。あ、スルメは離さないでね」
コクンと頷いて目を閉じた文の顎にそっと手を添えると、唇を近づけスルメを少しかじる。思っていたよりも柔らかいのか、スルメは簡単にかじり取る事が出来た。味は全く分からなかったが。
その後も少しずつスルメを食べ進めていく。どんどん短くなるスルメ。どんどん近づく2人の唇。
「こうやって、少しずつ食べ進めていくの。そうすれば、このキスまで続くドキドキを味わうことが…」
俺の身体の動きがピタリと止まる。なぜなら、すぐ目の前に文の顔があったからだ。今まで、こんな近くで文の顔を見つめる事なんて片手で数えられるくらいしかなかったかもしれない。酒なのか恥ずかしさからなのか真っ赤に染まってはいるが、白く滑らかで張りのある顔にきりっと引き締まった鼻、きれいに整った眉にさらさらで
そんな可愛い顔をじっと見つめていると、自分の中の何かが外れたような音が聞こえた。文の口にくわえられたスルメを取り上げると、両腕を頭の後ろにまわして唇を重ね合わせた。
それからの記憶が曖昧になってしまったが、気が付いたら文は俺の膝を枕にしてぐっすりと眠っていた。周りには空になった徳利やコップが転がっているところからすると、部屋の中に酒を持ち込んで2人で飲んだのだろう。確かに今酒に酔っていて頭が痛い。あ、言っておくけど2人とも着衣の乱れは無いぞ。
それにしても、まさか酒に酔った文があれほどまで甘えてくるなんて思いもしなかった。何度心の中で可愛いと叫んでしまったことか…。でも、酒に酔ったことで本来の気持ちがあらわになったことを考えれば文はもっと俺に甘えたかったんじゃないかな?もしそうだとしたら今までずっとその気持ちを我慢してきたことになる。今まで我慢して押さえ込んでいた感情が酒に酔ったことで一気に解放されたとすれば、今回の行動も理解できる。たまには俺も文に甘えてみよう。根拠はないけど、そうすれば文も嬉しいんじゃないかな?
「ふぁ~あ…」
文の寝顔を眺めていたら、突然睡魔に襲われた。文も寝ているし、俺もそろそろ寝るか。
「文、お休み」
頭をよしよしと撫でながらそう呟くと、膝から頭を降ろす。
さっき文は俺に思いっきり甘えてきたから、今度は俺が甘える番だよね。文を抱き枕にして寝よう。
文の身体を、抱き枕をするように抱きしめると目を閉じてすやすやと寝息を立てた。今日は、いい夢が見られそうだ。
次回予告。
ついに「レストラン白玉楼」建設決定!
もうレストラン要素ゼロなんて言わせません!
(↑地味に気にしていた人)